第14話 何も起きない時間が、続く (恒一視点)
何も起きない時間が、続いた。
連絡もない。
約束もない。
終わったとも、続いているとも言えない。
そういう時間だ。
*
俺は、
それに慣れている。
仕事も、
だいたい同じだ。
手応えがないまま、
日だけが進む。
うまくいっている実感も、
完全に失敗した感覚もない。
ただ、
続いている。
*
高瀬里緒から、
連絡は来なかった。
だからといって、
不安になるほど
期待していたわけじゃない。
そう言い切りたい。
*
ただ、
気づくと
一日のどこかで
スマートフォンを確認している。
癖のようなものだ。
通知がないことを
確かめるために。
*
俺は、
自分から連絡しないと決めている。
必要としない。
追わない。
それは、
彼女に対してだけじゃない。
自分の生き方そのものだ。
*
連絡しない理由は、
いくらでもある。
忙しい。
用事がない。
今は余裕がない。
どれも、
嘘じゃない。
*
でも、
連絡したい理由も、
正直、見つからない。
会いたい、と言うほど
自分は素直じゃない。
話したい、と言うほど
余裕もない。
*
だから、
何も起きない。
*
仕事を終えて、
夜になる。
部屋は静かだ。
テレビをつけても、
内容は頭に入らない。
*
ふと、
思う。
もし、
このまま何も起きなかったら。
それは、
自然な終わりだ。
無理に意味を作る必要はない。
*
俺は、
この状態を
悪くないと思っている。
期待しない。
期待されない。
それは、
安全だ。
*
でも同時に、
少しだけ、
息苦しい。
何も起きないというのは、
何も試されないということでもある。
*
俺は、
逃げていないつもりだ。
でも、
動いてもいない。
その違いを、
ちゃんと区別できているかは
分からない。
*
「取りに行かない」
それは、
自分を守るための選択だ。
でも、
守っているだけで
何かが始まることはない。
*
それでも、
俺は待つ。
理由がないまま
動くのは、
昔から苦手だ。
*
里緒が、
どんな判断をしたのかは
分からない。
分からないままでいることも、
一つの選択だ。
*
何も起きない時間が、
続いている。
それは、
終わりかもしれないし、
途中かもしれない。
俺は、
そのどちらでもいい顔をして
今日も眠る。
本当は、
少しだけ違うくせに。
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