第13話 必要とされない側でいることを、選ぶ (里緒視点)
帰り道、
私はすぐに結論を出さなかった。
切ることも、
続けることも。
どちらも、
今の自分には
しっくりこなかった。
*
神崎は、
私を必要としていない。
それは、
もうはっきりしている。
誘わない。
縛らない。
期待しない。
どの行動も、
一貫している。
*
普通なら、
ここで離れる。
必要とされない関係に、
意味はない。
少なくとも、
これまでの私の基準では。
*
でも、
今日は少し違った。
必要とされないことで、
私は何も失っていない。
軽く扱われたわけでも、
否定されたわけでもない。
ただ、
役割がない。
*
それが、
思ったより
静かだった。
*
私は、
これまでの自分を思い返す。
仕事では、
常に役割があった。
判断する側。
決める側。
責任を引き受ける側。
恋愛でも、
どこかで
同じ立場に立っていた。
*
必要とされることで、
関係は整理できる。
でも同時に、
逃げ場がなくなる。
*
神崎との関係には、
それがない。
頼られない。
期待されない。
その代わり、
何も背負わなくていい。
*
私は、
ふと気づく。
私は、
「必要とされない側」で
いる経験が、
ほとんどなかった。
それは、
強さでもあるし、
弱さでもある。
*
この関係を続けるとしたら、
私は
何者かである必要がない。
支える人でも、
選ばれる人でも、
救う人でもない。
ただ、
そこにいる。
*
それは、
不安定だ。
でも、
嘘がない。
*
私は、
自分に問いかける。
私は、
何を守りたいのか。
プライドか。
安全か。
正解か。
*
答えは、
意外と簡単だった。
私は、
自分で選んでいる
感覚を守りたい。
*
神崎は、
私を必要としない。
でも、
私が彼を
「必要としない側でいる」
ことを
拒んでもいない。
*
それなら、
選択肢は一つだ。
必要とされない側でいることを、
自分で選ぶ。
*
それは、
我慢じゃない。
諦めでもない。
立ち位置の変更だ。
*
私は、
次に会う約束を
自分からはしないことにした。
切る連絡もしない。
ただ、
距離を固定する。
*
期待しない。
役割を持たない。
判断を急がない。
この状態で、
何が起きるのかを
見てみたい。
*
それは、
恋愛としては
とても不安定だ。
でも、
人としては、
正直だと思った。
私は、
神崎を
試しているわけじゃない。
自分の立ち方を、
試している。
必要とされない側で
いられるかどうかを。
今は、
それでいい。
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