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こんな良い女、現実にいるわけがない  ―詰んだ中年男が「取りに行かない恋」で人生をやり直すまで  作者: 早乙女リク


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第11話 この人は、私を必要としていない (里緒視点)

 会話が一段落したところで、

 私ははっきりと気づいた。


 この人は、

 私を必要としていない。



 それは、

 冷たさでも、

 無関心でもない。


 むしろ、

 とても丁寧だ。


 でも、

 距離の取り方が

 一貫している。



 必要とされていない、という感覚は、

 久しぶりだった。


 完全に無視されることはない。

 軽く扱われてもいない。


 ただ、

 私がいなくても成立する。


 その前提が、

 最初から崩れない。



 これまで出会ってきた人たちは、

 どこかで

 私を必要としていた。


 仕事のつながり。

 肩書き。

 将来への不安。


 理由はそれぞれ違っても、

 「関係を持つ動機」が

 相手側にあった。



 神崎には、

 それがない。


 少なくとも、

 私には見えない。



 私は、

 少しだけ苛立つ。


 必要とされたいわけじゃない。


 でも、

 完全に無関係でいられるほど、

 割り切れてもいない。



 会話の中で、

 私は意図的に踏み込んだ。


 「私と会うメリットって、

  あまりないと思いませんか」


 挑発に近い言い方だ。


 普通なら、

 否定が返ってくる。



 神崎は、

 少し考えてから答えた。


 「そうかもしれません」


 即答ではなかった。

 でも、

 否定もしなかった。



 胸の奥が、

 少しだけざわつく。


 この返しは、

 想定していない。



 「でも、

  だから会わない、

  という理由にも

  ならなかったです」


 声の調子は変わらない。


 説得でも、

 弁明でもない。



 私は、

 言葉を失う。


 この人は、

 価値交換で

 人と会っていない。


 それは、

 誠実とも言えるし、

 無防備とも言える。



 私は、

 少しだけ居心地が悪くなる。


 評価する側で来たはずなのに、

 主導権を握っていない。


 上下の関係が、

 成立していない。



 必要とされない立場は、

 楽なはずだ。


 期待されない。

 役割を背負わない。


 でも、

 ここまで徹底されると、

 自分の立ち位置が分からない。



 私は、

 初めて自覚する。


 私は、

 選ばれたいわけじゃない。


 でも、

 「最初から選択肢にない」

 という扱いには、

 慣れていない。



 神崎は、

 私に何も求めない。


 助けも、

 判断も、

 未来も。


 それは、

 安全で、

 同時に、とても不安だ。



 店を出たあと、

 私は自分に問いかける。


 この人と関わる理由は、

 何だろう。


 答えは、

 まだ出ない。


 ただ一つ、

 はっきりしたことがある。


 この人は、

 私を必要としていない。


 それなのに、

 なぜか私は、

 そこから離れられずにいる。


 それが、

 一番、厄介だった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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