第二話
せつ兄が全く使い物にならなかったので、仕方なく僕が聞くことにした。やはり最初からこうするのが、最も手っ取り早かったか。
コンコンと扉をノックする。思ったんだけど、せつ兄がノックをしていれば、こんなことにはならなかったんじゃないだろうか?いや…もう過ぎたことだから、気にするだけ無駄だね。
『はい。なんでしょうか?今は着替えているのですが。』
あちゃー、誰の声かはわからないけど、これは根に持っていらっしゃいますね。まぁせつ兄にことだから、いずれ何とかなるだろうけど。僕もやるべきことを済ませちゃおう。
「えっと、先ほどは兄がすみません。一応は反省してるみたいなので、今回のことはできるなら大目に見てやってほしいです。」
『セツナに悪意がないことはわかっていますので、別に構いませんよ。それにこういったことは以前にも何回かありましたので、すでに慣れております。』
マジですか。異世界でもやってるとは思ってたよ。だけど実際に聞くと、やっぱり驚きがやってくるね。
『それで、私たちに何か用があるのですよね?』
「えぇ、一応は。ほんとに言いにくいんですけど…下着って持ってますか?この家には女性用の下着がないので、下着がないとちょっとまずいことになっちゃうので。」
数瞬の沈黙。うーん、まずかったかな?めちゃくちゃ気まずいのだけれど。沈黙を破ったのは、誰かも分からない女性の笑い声だった。
『アハハハハッ、そんなことでしたか。』
そんなことって…現代を生きる女性からすれば、死活問題な気もするが。人類の天敵である悪魔とやらが存在する世界では、下着などその程度の問題らしい。
『その程度のことは大丈夫ですよ。下着なんてなくても、生きていけますし。でも、それはこちらの世界ではおかしいらしいですので…女神様がくださった下着が異空庫に入っているので、それを履かせていただきます。ですので下着の心配は要りませんよ。』
何から何までありがとうございます…女神様。って、今聞き捨てならない言葉が聞こえた気がしたんだけど…。異空庫っていう、聞き捨てならない言葉がさぁ!!
グルンとせつ兄の方に頭を回転させる。たぶんだけど僕の表情は今、年甲斐にもなく輝いているのだろう。でも仕方ないだろう?異空庫って単語からして、アイテムボックスのような能力だろう。
生きててよかったよ。まさかこんな近くで非日常を体験できる日が来るとは思ってもなかったからさ。
「万理にも分かるかもしれないが、異空庫っていうのは魔術の一種だな。時空魔術っていう希少属性の魔術の中でもかなり高レベルなやつだ。」
「へー、じゃああの人たちはすごい魔術師ってこと?さすがは異世界を救った勇者の一行だね。」
「そうなんだよ。アイツラはほんとにすごい魔術師なんだ。俺も異世界で勇者って呼ばれてたけど、魔術に関してはアイツラに勝てっこないからな。」
ん??今の話の感じ的に、せつ兄は魔術を使えるのか!!好奇心に満ちた瞳を、せつ兄に向ける。僕から向けられる視線に気づいたせつ兄は、ほんの少し笑ってこうつぶやいた。
「今度見せてやるから、今は我慢してくれ。」
ほんとは今見たいのだけれど、別にやることがあるのでしょうがない。だけど見せてもらう約束はできたので、それで我慢するとしよう。
「それじゃあ僕たちはリビングに戻ろうか…ここでやるべきことはないからね。あの人たちが来る前に、お菓子を用意しないといけないし。」
「おぉ、そうだな。それにしても……なんで万理はアルシャたちのことを、あの人たちって呼んでるんだ?」
いや、せつ兄が教えてくれなかったからでしょ!!そう言いたいのを我慢して、僕は苦笑いを浮かべるのであった。




