【2話 錬成術式】
「等価交換の法則を知ってるか?」
ショッダールタは言う。
「確かこの国と言うか大陸の外の技術だろ?」
「あぁ」
「私も使わせてもらってるんだ」
「ふむ,能力と呼ぶべきか?」
「そうだね,具体的に言うと俺は,自身の触れた
物質の元素の分子配列を組み換えて任意で
自動的にFeに変換する鉄の錬成術式が身体に刻み込まれて居るんだ」
「そして電磁気力を操る能力もある,まぁ
電磁気力の術式だね,引力と反発も操れる,
鉄を操り自身の装甲にも兵器やロボットにも
出来るか
「しかも引力と反発と言う相反する作用が空間に
展開されたなら最後,触れる事など不可能だ,
自身が反発と引力の層を重ねたバリアを
展開することで自身に対しての如何なる
物体の攻撃や物理的な相互作用を持つ力は
通用しない,かすり傷ひとつ着かないって
訳,強いだろ」
「そりゃまた強い刻印だね」
「これなしでも強いってのに」
「お前にもこれを掘る」
「マジかよ」
ショッディーの機械の肉体に刻まれたその時,
その紋紋はホムンクルスの意味を持った。
「ホムンクルス?」
「人造人間,錬成の中から生まれた生命,まぁ
お前の体は今を持って不死身の身体を得た,
オラァ!」
次の瞬間アンデレブローをぶち込む。
「ガハ⁉︎」
一瞬にして身体は爆散する,,,だが。
グチュグチュ。
「は⁉︎,,,あれ?」
体は再生した。
「即死の攻撃を受けても瞬時に蘇生する再生能力
を得たのだよ,一応不老にもなる」
「は,はぁ,てか断りもなくパンチしてきやがって!くそジジイ!」
「まぁまぁまて」
「偏差理論の刻印も刻まれたろ,使ってみろ」
「え?あぁ」
偏在理論,それはこの世界のすべての存在は,粒子の集合体であり,そしてその粒子の一つひとつにはわずかな偏差が存在すると言うものだ。
物質を構成する粒子は本来であれば重力や熱力学,神経伝達などの自然法則に忠実に従う,だが,すべての粒子が完全に同一の挙動を取るわけではない,常に微小なブレ,すなわち偏差が含まれている。
この偏差は通常,無視できるほど小さく粒子群また原子などの構造的システム全体に影響を
与えることはない,だがそれはあくまで誰も偏差を操作しない限りの話である。
偏差理論とは,全体の中に埋もれた高偏差粒子だけを抽出,制御することで,物理法則や生命活動の根幹に干渉する理論である,たとえばだが。
重力に従って落下する物体の中にもわずかに上昇方向へ逸脱しようとする粒子が存在する,それらを意図的に引き出し,増幅,優先させることで,物体全体の挙動をねじ曲げることが可能となる。
「はぁぁ!」
故に今ショッディは,落下するはずの体が宙に
浮く状態になって居る。
「はぁ」
降りるのも可能,組織が本来の自己修復速度を
超えて瞬時に再生する,敵の神経系に誤作動を起こさせ動作精度を著しく低下させる,内臓器官が逆転し生命維持機能が崩壊していく,,,。
このように偏差理論は正常な秩序を支える平均値ではなく,無視されがちな逸脱にこそ真の力が宿るという,逆説的な法則である。
「強い,こりゃあすげぇ」
「みんなも強くするぞ」
こうして,五感の皆んなと元七獣の奴らが
新たな力を手に入れて行った,中でも
一番面白いのが。
[痛覚性愛/MASOCHIST]
攻撃,痛覚を感じれば感じるほどに精神力が
回復し続けて闘争本能と言う業火が更に
強く燃え上がり戦闘能力が上がり続ける,
無限に弱体と化す状態異常を付与された
ならばそれを相殺してしまうほど何にでも
適応されてしまう,なんなら精神攻撃すら
回復の一つにしてしまう。
それは,,,朱雀だった。
「なんでだよ!クソネタ!」
「ぎゃっはっはっはっは!」
「くははははは!」
「アヒャヒャヒャ!」
こうして進展していくのだった,裏でも
同様にことは進んでいた。