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駄作  作者: 明月 心
1/6

 蝶の羽音が夢と現実の狭間で交差して粉をまき散らし、虹色の世界を魅せる。

 行方知らずの意識が息を吐き出し、儚い現実に残される。

 風が図らずも外から蝶を連れてきて、遠くに見える時計の針が歪む。

 青色が存在を肯定して、ようやく酸素を飲み込む。

 時間が機能しなくなったこの世界でどう動けばいいのか。

 その答えは無意識的に分かっていたが、音が際限なく流れるので考えられなくなった。

 夢をもっと買いたいなど、贅沢は言ってられず、黒い眼は動き続ける。

 感覚的に灰色に近づいていくことは、しょうがなかった。

 部屋を見渡し、動き出していつもの姿を演じる。

 顔に描かれている白い肌が自分を魅了して離さない。

 身にまとう虚像の形が鏡に映った途端に存在そのものが実像になっていく。

 蝶に呼び掛けられて入口の方を見ると、暗さの中に生きづらさが飛んでいる。

 唐突に、けたたましく鳴る騒音が心地いい。

 騒音はボタンを押すことで、その空気は残しつつ消えていく。

 蝶の努力が報われたのか、暗い世界から飛び立つ。 

 そのせいで強制的に光が遺影を輝かせる。

 光は黒い眼を刺激して現実の匂いを嗅がせる。

 ステージは濁った空気の中に移っていく。

 上を見上げても灰色しか見えないのに、口に残っている赤色が白色の水を吐き出す。

 腹に騒音が移動したのか、うめき声をあげながら異音を鳴らして救いを求める。

 三角が正解の形で、それに黒が混じることで安心する。

 心臓が動き出して、脈がクラシック音楽を奏でる。

 前を向くと、二人の男女が人目を気にせずに恥じらいを始めようとしていた。

 だけど、一粒の雫が二人の間をよぎると音をあげて周りが邪魔をする。

 二人は透明の箱に閉じ込められ、私は曇った眼でそれを見続けると、音は唐突に止まって、二人は姿を消す。

 探そうと何回もカーテンをめくるが、着いた場所は沼だった。

 幻想的な緑色の草木に水色の沼が意識を崩壊させていき、濁った心をどっかに放り投げる。

 地獄のような味が喉を通り、水面がうるさく音を鳴らす。

 心は金色になって、泡に包まれながら空が手から離れる。

 命が嫌な音を立てながら、生きたいと願う。

 眼に金色のお城が映り、非常識な世界観に手を伸ばす。

 そこで手に入れた物は、輝きもせず醜いだけの緑色の体だけだった。

 「ゲコ、ゲコ」と言うが、答えるのは酒瓶一つのみで、体が綺麗になる以外の生き方が強制されているみたいで嫌気が差す。

 或る人が救ってくれるおとぎ話のような、美化された妄想があるわけもなく、人間の醜さが転がっているだけだ。

 ボールが憎らしく睨むが、命の優越感を教えてやった。

 いつまでも一番上などと馬鹿な考えの者たちが作った道を、木々のことを思いながら歩いて行く。

 灰色は青色に占領され、行き場もなく東に流れる。

 青色のせいなのか、手の指が一本増え、血を吸い取ったように赤く染まって、妄想が途切れ始めた。

 緑色が消えるまで時間はかからなかった。

 妙に合わない体をぶら下げて、騒音の中に潜っていく。

 皮肉なことに生きるためには、肉体を捧げなければならないらしい。

 体はゴミ箱の中にいるようだから、掃除をする。

 重なった偶像になって、顔を変える。

 敵が、「死二 体」と私の名前を呼ぶ。

 白色に染まった歯を輝かせながら、上下関係を作るために冷笑する。

 彼女はくびれを煽るようにして、どっかのアニメのように尖った胸を見せる。

 その胸のせいで、春を売ってしまったことを誇りにでも思っているのだろうか。

 愛情に飢えたその姿が、鏡に映った自分の姿とよく似ている。

 空が青色であることを知らず、春の訪れないこの空間は、自分にとっては家よりも居心地が良い。 

 彼女たちはドアのない自分の部屋に籠り、その中で繰り広げられる声が音楽となって自分の部屋にも聞こえてくる。

 やがて、自分も美しい音楽を奏でる。

 その声は男たちを虜にして、本能的に愛を注ぐ。

 空が黒になっていくたびに、虫はどんどん近寄ってくる。

 何十回も同じことを繰り返した後に、その部屋から解放される。

 まだ咲き続けている花と自分を交換して、楽しい出来事は終わりを告げる。

 春は藍色に染まり、続きは愛情の中へ取り残される。

 ただ、おかしくなった人を眺めて飯を食べれるほどの度胸は持ち合わせていないのだ。

 無敵だと思っていた人は現実を知って、醜くも美しくもなれるし、自分の体を世界に捧げなくとも生きられる。

 おなかがすいたときに、目の前に牛丼があることを誇りに思えば、とても幸福になれる。

 遺言状と儚く散っていった血が生きている証拠をくれる。

 いつも通りの道が白くなって答えを教えてくれた。

 次の黒くなった世界を眺めて、動くものに乗り込んで常識というものから、行く当てもなく離れていく。

 金というものに見境がなくなって、何時間か経った頃に森が手を振ってくれる。

 見当は一切なく、生きているという証拠が口に残っていればよかった。

 窓から見える景色が、白だけになったところを見計らって冷たい空気に触れることにした。

 恐怖感が一切なく、それよりも幸福感の方が勝っていた。

 自分の青さを求めるために、白色の世界を楽しむことにする。

 吐いた息が、白い雲に溶けてゆく。

 白色を堪能しようと思ったが、黄色が邪魔をする。

 だが、自分の黒色は黄色よりも勝っていた。

 愛情のピンク色と黒色は自分だけが持っている武器である。

 花が息をせずに死んでいくこの土地で、自分なら生き残れるという、底なしの自信があった。

 口から出た赤色が、白色を蝕んでいくのが、この白の侵略のスタートとなる。

 湖の近くで淡いうさぎを眺めて、火を全身に浴びる。

 うさぎの光が行き先を決めてくれた。

 行こうと思っていたトンネルとは、真逆の方向を差す。

 その先には町があり、光がまばらに存在感を示す。

 普遍的な感情は、暗い中の光に嫌な匂いを感じ取る。

 自分の現実感が薄くなっていることに、火が教えてくれた。

 華やかな妄想を身にまとって、死のフルコースを味わいに感情に揺さぶられる世界に向かった。

 

 命は一つしかないらしい。

 歪んだ感情が徐々に浮き出してきて、自分が飲み込まれるまでに時間はかからなかった。

 愛情を表現してみるが、ただ好きと言うことしかできなかった。

 今日はピンク色しか使えないらしい。

 人生観の有無は、誰かの言葉でしか変えることができないので、生まれたときから何も変わっていない。

 現実と引き換えに心の温かさを手に入れたので、周りの白色は消え去っている。

 湖は魚の拷問施設と化して、遺言を言う時間すら与えられずに、弱肉強食に飲まれていく。

 未来に不透明な現状を持っていくのが、小説の主人公みたいで、いない彼に思いをはせる。

 全てが噓という現実に、恐怖が現れるがあの青さが作られた物なはずがない。

 沈み込む現実のように、抵抗できずに進んでいく。

 簡易的な意識を持ちながら、元気な光を仰ぐ。

 感覚が白色に溶けていくことを、心が口うるさく批判して、体が天に昇ってくことがあり得ないと思わせた。

 白色だけの世界が、茶色という新しい色に合わせてくれることを嬉しく思う。

 すぐに消える色が混ざったこの場所は、雑な心の集合体ではなく、日常的に貴重な心が交差する。

 既に自分の心は、新しい色を覚える。

 足が軽くなったはいいが、歪んだ眼が空気を切り裂いて、自分の方に向かってくる。

 そのようなものに、揺らぐような人間ではないと思い、ピンク色を装備する。

 あっちの世界とは違く、柔らかい雰囲気が、所々空気を操りながら伝染していく。

 それに相応しくない存在が、異質な空気を吐きながら新たな空気に飲まれていく。

 いつのまにか、色がたくさんある場所に存在していた。

 正当な対価を支払って、無機質に有機物が与えられ、匂いが支配される。

 安易に手渡されたそれは、男を縛るあれに似ていた。

 口の中がどんどん統一されていき、やがて白い水を求めるようになる。

 死ぬことを求め続けるには、何もないことが重要だが、気持ちは生きたいという気持ちに傾く。

 眼の灰色が若干黒さを取り戻してくる。

 或る世界はこんなに美しいのか、自分の価値観というのはどれほど愚かなのか、それを気づかされる。

 消え去った思い出が、ここに残り続けることを祈る。

 濁り切った悪意が祈りを邪魔しながら、記憶に刻まれる。

 絶え間なく続くため息が終わりを告げて、眼に新しい行き先が現れる。

 慣れてきた体に心は喜んで、足は止まることを知らない。

 濃い茶色に染め上げられていた景色は青さという結果にたどり着いて、愛に歪んだ正解はあきらめがついた。

 空は暗くなり、恐怖感が体中を這い回るが、前に見える黒い月が自分の姿を変える。

 山から聞こえてくるはずの声が、自分から出てきたことに驚く。

 前は醜かったのに今度はかっこいいじゃないかと、この妄想には慣れてしまった。

 人は見るなり逃げ出したので、この一匹狼を楽しもうではないか。

 この肉体を持って最初の場所に戻る。

 風は応援して、森は道を示してくれ、月は微笑みかけて、街は居心地をよくしてくれている。

 星の訪れは、心を輝かせて、人間というものを魅了して夢を与えてくれる。

 ピンク色を中心に体中の色が混ざり合って、虹色を獲得した。

 黒き存在が、人生を駆け巡るとき口の中は透明になっていく。

 人々が怯える姿を楽しく見ることが自分の生き様である。

 憎い目が自分を見るたびに幸福感が生まれてくる。

 自分の価値がないことを証明されたことが分かって、金色の心は音を立てて赤くなる。

 ギザギザの牙は、この世界を修復不可能な形に嚙み砕く。

 長い鼻は、腐った匂いをうやむやにしてくれる。

 尖った耳は、悲鳴がよく聞こえて心地よい。

 誰かを食べるわけではないが、腹の中は黒く染まった。

 或るビルに登ると、そこで遠吠えをして、光を呼び出す。

 人々は夢を見るのを諦めて、空を憎む。

 ビルの上で変わらない空を眺めていた。

 

 心は自然体を取り戻して、周りの景色が花に変わる。

 見渡してみると、一つだけ違う花が眼に入る。

 現実に遺書を残しておかなかったことを悔やんでも、もう遅い。

 名前も知らぬその花は、ピンク色を散らして空を目指そうと手を伸ばし続けている。

 こちらに気が付いたのか、頭をこっちの方に向ける。

 甘い香りに誘われて、考える間もなく体は引き寄せられていた。

 花は軽くお辞儀をして、人間を初めて見たのか、少し警戒心が強くなっている。

 視界は何も見えなくなって、すべての感覚が匂いに頼りっきりである。

 その花が微かに男の匂いを放つと同時に、古い記憶が蘇ってくる。

 息を切らしながら生きていく自分に、何にも代えがたい愛情をくれた男は、嫌な匂いのせいで記憶の奥にしまわれた。

 確かに、彼が最後にくれた花がピンク色だったような気がする。

 愛を上手く言えないのは、自分ではなく彼なのだ。

 未来が見えない日常を過ごすのは、二人だからとても楽しかった。

 肉体的な愛情ではなく、言葉足らずの愛情を求めていた。

 暗さは徐々にろうそくの火に代わって、光がどんどん増えていく。

 色はそこかしこに溢れて、彼はそれを拾い上げる。

 騒音は消え去って、心地いい音だけが響き渡る。

 そんな普通な日常を一つも疑問に思わないだけでよかった。

 静かな暗さがそこを覆わない限り、赤い心は燃え続けると、信じ続けた。

 だけど、夜にそんなことは関係なかった。

 うるさくなり続ける亀裂が空を覆ったときに全てを悟った。

 愛情の不足は、自分をあらぬ方向に連れていく。

 沈み行く夢は灰色を飲み込んで、全ての感情が行方知らずになった。

 白に溶け込む現実は頭を壊して、その記憶を消そうとしていた。

 しかし、少し残っていた理性がそれをやめさせる。

 生きるために、操り手がいない操り人形になって、現実を演じる。


 それなのに、この花が記憶を呼び覚ました。

 現実とも妄想ともいえないこの世界で、次は何を演じさせるのだろう。

 体はもうその答えを教えてくれた。

 自分の体から出る虹色は、風を操って空に飛ぶ。

 空気は澄んで空は輝く。

 自分の生き方はこれでいいんだ。

 羽を伸ばして、曇りなき世界に飛び立つ。

 その前に或る暗い世界に寄ろう。

 風は考えが分かったのか、その場所に連れていってくれる。

 醜い姿を目にとらえて、鱗粉をそいつにかけてやった。

 沈んだ気持ちが蔓延るこの部屋に、或る写真を見つけた。

 自分はその写真に腰掛ける。


 

 

 

 

 

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