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Y染色体ハプログループにおけるD

 先にお断りしておきます。僕は学者でも専門家でもありません。この文章は僕が内容を咀嚼するためのアウトプットになります。僕の理解が間違っている可能性があります。話半分で読んでください。


 僕たちの肉体は、DNAの配列によって設計されていました。DNAは、アデニン、チミン、グアニン、シトシンの4種類の塩基で構成されていて、二重らせん構造になっているのは有名な話です。1990年に人間のDNAを解析するプロジェクト「ヒトゲノム計画」がはじまり、2003年にヒトのDNAを構成するすべての塩基配列が解読されました。その後、2020年にはヒトX染色体の解析が完了し、2022年にはヒトY染色体の完全配列データが発表されました。


 ヒトの染色体は、22対の常染色体と1対の性染色体の計46個で構成されています。女性はXXの配列、男性はXYの配列になります。染色体は数千年単位で突然変異を起こし、その特徴は親から子へと受け継がれていきました。この染色体を世界中からサンプリングすることで、人類が進化してきた過程を解析することが出来るのです。その代表的な方法は2つ。女性だけに受け継がれていくミトコンドリアを調べる方法と、男性しか持たないY染色体を調べる方法でした。今回はY染色体から、日本人が持つ特徴についてご紹介したいと思います。


 Y染色体の変遷を過去に遡っていくと、およそ20万年前にアフリカに存在していた一人の男に辿り着くことが出来ます。この男が人類共通の先祖と言われており、便宜上「Y染色体アダム」と呼んでいます。このアダムから現代までのY染色体の変遷を特徴に応じてグループ化したものが「Y染色体ハプログループ」になります。ハプロとは単一という意味で、アルファベットのA、B、Cを使って分類されました。アダムから始まる最も古い一群はハプログループAと表記し、後進するほどに新しい遺伝子になります。


 代表的なものを紹介すると、A、B、Eはアフリカに広く分布しています。以下、Cはユーラシア大陸全域、F、G、Hはインド洋に面する南インドからコーカサス周辺、Iは北欧やヨーロッパ周辺、Jはアラブ周辺、Kはニューギニアとオーストラリア周辺、Nは北ユーラシア周辺、Oは中国全域、Qはエスキモーやネイティブアメリカン、Rは西ヨーロッパ周辺に分布しています。


 サルから枝分かれした様々な猿人が存在していた中で、ホモサピエンスの誕生は新しい。20万年前に誕生したホモサピエンスは長らくアフリカ大陸だけに留まっていました。ところが7万年前になぜか移動を開始するのです。アフリカを出発した人類は紅海を渡りアラビア半島に到達し、ここからユーラシア大陸全域に拡散していきました。海岸で生活を始めた一群は、海岸沿いに東に向かいます。5万年前にこの一群はオーストラリア大陸に到達しました。また別の一群は北方へと進出していきます。西ヨーロッパには別系統の人種であるネアンデルタール人が生活をしていました。ネアンデルタール人は2万年前には絶滅するのですが、現生人類には数パーセントのネアンデルタール人のDNAが混ざっているそうです。日本列島に人類が最初に到達したのは4万年前でした。その後2万年前に最終氷河期が地球を襲います。ユーラシア大陸北方で生活していた人類は暖かい南への移動を余儀なくされ、一部は日本列島に流入し、一部はアメリカ大陸へと流れていきました。


 ここで日本人のY遺伝子を見てみましょう。比較対象として、中国と東南アジアと合わせてご紹介します。アルファベットの後に数字が付いているのは、ハプログループを更に細分化したサブグループになります。数値は正確ではありません。参考程度に考えてください。


 日本

  D2――39%

  O2――34%

  O3――17%

  O1――5%

  C3――3%


 中国

  O3――74%

  N――13%

  O2――8%

  C3――5%


  東南アジア

  O3――51%

  O2――20%

  O1――16%

  N――5%

  C3――4%

  D1――3%

 

 日本人は3系統のハプログループが混ざり合っています。最も多いのがハプログループOでサブを合計すると56%。次いでハプログループD2が39%、Cも若干混ざっています。CとDは古いハプログループで縄文人由来の遺伝子、Oは水田稲作の技術を日本列島に持ち込んだ弥生人だと考えられます。弥生時代から古墳時代にかけて、大陸から多くの人々が日本列島にやってきました。このY染色体ハプログループの結果は、僕たちが学校で習ってきた歴史認識と合っています。中国と東南アジアも、ハプログループOが一番多いのですが、日本にはないNが混ざっています。これは北方系の騎馬民族の影響でしょう。これらの比較で注目したいのは、日本人だけに見られるハプログループDの存在になります。


 ハプログループDはアフリカで誕生した最初期の遺伝情報でした。ごく限られた地域でしか観察されておらず、ヒマラヤ山脈北方にあるチベットとインド洋に浮かぶアンダマン諸島、そして日本列島になります。これらの地域は共通の特徴がありました。チベットはヒマラヤ北部にある高山地帯、アンダマン諸島は日本列島と同じように島国になります。ガラパゴス諸島のように周辺から隔離されていました。このような環境が影響してDの遺伝子が残されたと推測することが出来ますが、それだけではありません。ユーチューブ「TOLAND VLOG」から、彼らの考察をご紹介します。


 農耕の起源を遡ると、1万年前に肥沃な西アジアで始まりました。麦や豆は効率的にカロリーを摂取することが出来るのですが、食べるためには加熱しなければなりません。ただ、肉のように焚火で焼くような方法では燃え尽きてしまいます。そこで農耕のタイミングと合わせるようにして、土器が発明されました。土器があれば、穀物を煮ることが出来ます。昔の研究では、土器発明は農耕の始まりと同じ1万年前と考えられていました。


 ところが、日本において1万6千年前の縄文土器が発掘されます。その後も中国大陸で更に古い土器が見つかり、現在では人類の土器の発明は2万年前と予想されました。どちらにせよ日本列島ではかなり早い段階から土器の使用が始まり、旧石器時代から縄文時代へと移行しているのです。日本と西アジアを比較するとき、日本は早い段階から土器の使用を始めましたが、本格的な農業は行っていません。青森県の三内丸山遺跡では栗の栽培を行っていたようですが、米を作るような大規模なものではありません。日本が本格的に農耕を始めるようになったのは3千年前の弥生時代からになります。


 ――農耕は人類に何を与えたのでしょうか?


 ハラリ著「サピエンス全史」では、「人類は農耕の奴隷になった」との表現がありました。麦や米は人類に豊かな食生活を提供しましたが、その副作用も大きかったのです。生産性の向上は人口の増大を招くことになり、狩猟採取だけでは食料が足りなくなりました。農耕を維持しなければ、生きていくことが出来ない。また農耕を維持するためには、多くの人間が組織的に働く必要がありました。このような背景から、強いリーダーを頂点とするヒエラルキー社会が誕生します。また、農業は土地が必要なので、コミュニティは一か所に定住するようになりました。つまり国の誕生です。


 縄文時代は1万6千年前から始まりましたが、遺跡からは戦死者が見つかっておりません。このことから縄文時代には戦争がなかったと考えられています。対して弥生時代は、戦争による被害者が発掘されたり、魏志倭人伝では倭国大乱と記述されました。農耕は天候によっては収量が大きく減少することがあります。増えすぎた人口を維持するために、何とかして食料を手に入れなければなりません。つまり、農耕の始まりは戦争のはじまりでもあったのです。


 インドでもヨーロッパでも中国でも、戦争によって相手一族の子供まで抹殺してしまった歴史がありました。そのような戦争によって、それまで残っていた遺伝子情報が絶たれてしまいます。つまり、中国大陸にハプログループOばかりが残っている事実とは、それ以外の遺伝情報を根絶やしにしてきたことの裏返しでもあったわけです。対して日本列島は海に囲まれていた環境的要因もありますが、長らく縄文時代を維持してきたことで、Dの遺伝子が現在まで残されました。


 次回は、縄文時代の思想について、僕なりの見解をまとめてみたいと思います。

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