78話 誕生日パーティが貴族っぽい ②
誤字報告ありがとうございますm(_ _)m!
ローレンティア様とお揃いの真珠をプレゼントされてしまった・・・。
表に出れば、争いが起きると危惧されるほどに貴重な真珠である。
小ぶりだが綺麗な真珠を中央に、周囲をキラキラした(ガラス…じゃないよな、ダイヤモンドかな…いやぁ~考えたくないなぁ~)とにかく高価そうな宝石で飾られたペンダントである。
「ローレンティア様と対の宝石は、私が命がけで守ってみせましょう!」
「いやいや、アシュリー、方向が間違ってるから!」
あれ?
違ったか?
「アシュリー様のお命をかけるほどの物ではありません!ただ、この世に二つとないものを共有したかったという私の気持ちを受け取っていただけただけで嬉しいのです!」
「そうなのですか?」
気持ちかぁ~・・・かなり高価な気持ちだ。
でももらうと言ってしまったので、ローレンティア様を哀しませない為にも受け取るしかないのである。
よし、覚悟を決めよう!
ローレンティア様とお揃いなんて、親友みたいじゃないか。
そうだ、忘れるところだった。
「私、ローレンティア様にお願いがあるのです」
「は、はい、何でしょうか?」
「私もハロルドお兄様の様に『ローラ様』と呼ばせていただけないかと…」
「もちろんです!ぜひとも『ローラ』とお呼びください。それに『様』などいりませんわ!」
「そ、そうですか?では…ローラ、私のことも『アシュリー』と呼び捨てでお願いしますね」
「え!私もですか?」
「ええ、同じ辺境伯家ですもの、片方だけ呼び捨てでは変ではありませんか」
「分かりました!アシュリー」
やった!愛称ゲットだぜ!
私に愛称がないのが残念だ。
まぁ、クリフォード君の「あーしゃん」だけで我慢しよう。
「アシュリー、良かったね♪」
「はい!」
ハロルドお兄様が安心したように笑ってくれている。
「どうだい、君達も踊って来たら?」
踊る?
そうか、ホールだからダンスもできるのか。
もう踊っている人もちらほらいるようだ。
ダンスかぁ~正直面倒くさいんだが…ここは貴族令嬢として踊るべきなのか?そうすると、この場合誰と踊るのがベストの選択か。
うーん・・・。
「何でダンスを勧めたらそんな難しい顔になるんだか」
「いえ、誰と踊るのが良い選択なのかと」
「堅苦しい・・・アシュリーは踊りたい人はいないの?」
「ダンスの腕前としてはライオネル様が適任ですが、今回一番選んではいけない人物です!」
「何で・・・あ、そうか。ライオネル様はオデット様一択で踊ってもらわないとね」
「はい。そうしますと、ゼイヴィア様は候補として適任でしょうか?」
「いやいやいや!候補じゃないから!!」
あれま、すごい勢いで否定されたよ。
面倒だな・・・。
ローラは引く手数多だろうから、ハロルドお兄様に見極めてもらった方が良いだろう。
私は、こういう時にいつも助けてくれる出来る従者がいるのだ!
「では、角が立たないヘクターにしましょう」
「え?」
「お兄様は、ローラのお相手をしっかり見極めてください!」
「それはいいけど」
「あ、でも…。ローラ、もしジョン様が誘って来たら踊ってあげてください。最近頑張ってますからご褒美です」
「え?ええ、構いませんが…」
「お願いしますね。ヘクター!」
給仕の手伝いをしていたヘクターを呼ぶ。
「お嬢様、どうかされましたか?」
「ええ、ちょっとダンスに付き合ってちょうだい」
「は?」
「だって、他に適任者がいないんだもの。踊れるわよね?」
「はぁ・・・まぁ・・・」
「よし!行きましょう!」
丁度曲が変わる。
次は少しアップテンポの曲のようだ。
ヘクターとも身長差は大きいが、まぁ、踊れないほどではない。
これがお父様やトーマスお兄様だったら踊れたもんじゃない!
「ふふっ!ヘクターもちゃんとリードができるのですね」
「父に特訓されました…」
「セバスチャンに?さすが出来る執事は違うわね!」
うちの執事もその子供達も本当に何でもエキスパートである。
ヘクターのリードはとても踊りやすい。
ナタリア王女の時も楽しかったが、ヘクターとも息が合うのか次の動きも読める。
だんだんのって来た!
お互いステップも大胆になっていく。
服装も、ドレスじゃないから動きやすい。
ヘクターなら、ちょっとぐらい無理な体勢も大丈夫だろう。
思いっきり身体を逸らしても支えてくれる。
フィギュアスケートの選手になった気分だ。
わはは!
こりゃ面白い!!
ヘクターも呆れているような楽しんでるような面白い顔だ。
私達の斬新なダンスにのせられてなのか、曲がもっとアップテンポなものに変わる。
ステップ、ステ~ップ!ステップ
次はジャンプも入れてみよう
ステップ、ジャーンプ!ステップ
「もう!どこまで飛んで行くんですか!」
とか言いながら、ちゃんと受け止めてくれる。
クルクルクルクル
いっぱい回って
クルクルクルクル
「もう!回りすぎです!」
今日は3倍回っておりま~す!
ステップ、ステ~ップ、ステップ
ステップ、ステ~ップ、ステップ
最後は思いっきりジャンプして
ポーズもバッチリだ!
「ヘクターありがとう!とても楽しかったわ!」
「ご期待に沿えたようで何よりです」
「期待以上よ!ヘクターじゃなきゃ無理なダンスね」
「自覚があるようで何よりです・・・」
気分ものって来た。
次は・・・お友達アピールでオデット様がいいだろう。
「オデット様。踊っていただけますか?」
紳士よろしく手を差し出すと、満面の笑みで応えてくれる。
「喜んで!」
オデット様と踊った次はローラも誘って楽しく踊り、ジョン君にバトンタッチする。
真っ赤な顔して大喜びだ。
可愛いツンデレだな。
次はクリフォード君と抱っこダンスだ!
抱っこしてクルクル回ると、クリフォード君はキャッキャと喜ぶ。
そうか、楽しいか!
たかいたかいをしながらクルクル回してやるともっと喜んだ。
そうか、高い所が好きか!
ポーンと放り投げてやると、もっと喜んだし、抱えてバク宙したり、結構なアクロバットもしてやったのだが、ずーっと大はしゃぎだった。
なかなか胆の据わった幼児である。
本人は大喜びたったが、ティファニー様が悲鳴をあげていたのは気付かなかったことにしておこう。
「クリフォードはなかなか見所がある!」
お父様は爺バカだったようだ。
私が自由に踊ったのが良かったのか、平民の子供達も飛んだり跳ねたり楽しそうである。
普通とはちょっと違ったかもしれないが、主役として良い仕事が出来たのではないだろうか。
そんな自画自賛をしていたら、テニスン子爵家のノルベル君がオズオズ…といった感じで近付いてくる。
お?やっと勇気が出たか?
「あ…アシュリー様」
「はい、ノルベル君、どうしましたか?」
「あ、あの…僕…」
これは、諦める前に捕まえておこう。
「私のおすすめのサンドイッチは食べましたか?」
「⋯え?」
「我が家の料理長と一緒に考えたパン料理なのです。とても美味しいのですよ!こちらに来てください」
「は、はい!」
強引に手を引いて料理の所に連れて行く。
「これがカツサンド、これがたまごサンド、これがハムサンドです。ノルベル君はお肉は好きですか?」
「は、はい、好き、です」
「では、是非カツサンドを食べてみてください」
皿にカツサンドを乗せてノルベル君に渡し、自分も同じものを持って近くの椅子に座る。
「いただきましょう」
「は、はい!」
ちょっと強引ではあったが、嫌そうな雰囲気ではないので良いだろう。
ノルベル君はカツサンドをひと口食べて目を見張る。
「いかがですか?」
「美味しいです!こんな美味しいパン料理は初めて食べました」
そうだろ、そうだろ。
カツも良いのだが、このソースが決め手なのだ!
「ふふっ、喜んでもらえて良かったです」
「僕…私は・・・」
「『僕』でいいですよ。デヴィッド様も『僕』ですし、私は気にしません」
「あ、ありがとうございます。僕は何をやっても上手く出来なくて・・・」
「でも真面目な努力家です」
「え?」
「違いますか?不真面目でしたか?」
「いえ・・・」
「私はいつも黙々と頑張っているノルベル君しか知りませんよ」
「そんな・・・」
ノルベル君はポツポツと話し始めた。
何をやっても人並みに出来なかったノルベル君は、使用人にすらバカにされていたらしい。陰口をよく聞いたそうだ。
(そんな使用人は蹴飛ばしてしまえ!)
でも、ロイだけがバカにすることなく面倒をみてくれて、何でも根気よく教えてくれたらしい。
(ロイって、あの自爆した少年のことだな)
ロイの父親の失態を無かった事にする為に、王子に向かって魔法を暴発させなければならなくなったのだと本人から聞いたノルベル君だが、止める事も出来ず今回の事件となった。
大好きだった優しいロイの為に自分は何も出来なかったのに、事件は未然に防がれ、ロイも特にお咎めなしになったのは全て私のおかげだと。
(それはちょっと良いように考えすぎではないだろうか?私、ロイ君を結構脅したよ?)
ロイとは離れ離れになったけど、元気で生きているなら良かったと、寂しいのを我慢しているのがありありと分かる表情で語り終えた。
「僕は直接アシュリー様にお礼が言いたかった・・・本当にありがとうございます」
「いえ、私は何もしていません」
「そう言うと思ってました。まだ数日ですが、研修生としてアシュリー様と訓練させてもらって、アシュリー様のことをちゃんと知りました!」
お?
ちょっと勢いが良くなったぞ。
「僕はどんなに頑張っても、きっとアシュリー様のように剣や体術では強くなれませんが、心は強くなりたいです!」
「なれますよ」
「はい!アシュリー様はきっとそう言ってくれると思ってました」
「ふふっ そうですか」
「だから、こんな僕でも最後まで訓練頑張りますのでよろしくお願いします!」
「はい!頑張りましょう!」
良い子ではないか!
テニスン子爵はどういうつもりでノルベル君をグレンヴィルへ送り出したのだろう。お父様は手紙をもらったと言っていたが、内容聞いたら教えてくれるかな?
「ノルベル君のお父上は、今回、グレンヴィルへ来る事を賛成してくれましたか?」
「はい。父は、最初から脅されていただけなので、グレンヴィル家の人達には感謝しかありません。僕が研修に参加したいと言ったら・・・」
「言ったら?」
「泣きながら喜んでくれました」
ははっ!
テニスン子爵もノルベル君と似たような人物なのだろう。息子は成長して帰って行くから待っていろ!
しかし・・・ちょっと気になる。
「脅されていたとは?私が聞いても?」
「アシュリー様なら大丈夫です!オンブロー伯爵様にも言われました」
なんと!
オンブロー伯爵はテニスン子爵家も丸め込んだか。
「父はウィルクス伯爵にお金を借りているらしいのですが、急に全額返せと言われました。もちろん一度に返せないので、そうお願いしたら今回の事件になったらしいです」
「ウィルクス伯爵・・・確か、私の高等部編入に苦情を言ってきた家ですね」
「そうなのですか?」
「ええ、まぁ」
テニスン子爵も仲間だったよ。
事情は分かったけどな。
「ウィルクス伯爵家とはどういった繋がりがあるのか分かりますか?」
「えーと…何年も前のことでよく分かりませんが、ウィルクス伯爵家のご長女様がアトール公爵の奥様で、何かお祝いの品を、うちの特産品の宝飾品を使ってくれたとか・・・後はよく分かりません」
「大丈夫です。それだけ分かれば十分です」
見えて来た。
多分だが、その宝石にイチャモンでも付けられたのだろう。汚いやり方だ!
そうか、アトール公爵の奥方はウィルクス伯爵家の人間なのか。そいつがウェリントン家の奥方もそそのかしていると。
ふーーーん
覚えておこう。
「話は終わったようだな」
「お父様。はい、ノルベル君ともお友達になれました!」
「そうか、良かったな」
「グレンヴィル辺境伯様…ありがとうございます」
「いや、儂は何もしておらんよ」
「アシュリー様と同じことを仰います」
「あら、そうですね。ふふっ親子ですから」
「そろそろ先程の件をローレンティア嬢に説明しておこうと思って呼びに来た」
「分かりました。ノルベル君、ではまた」
「はい!僕はこれで失礼します」
以前より元気に歩くノルベル君の後ろ姿を見て、お父様がニコニコしている。
「彼も変わっていくのだな」
「彼も…とは?」
「まあ、無自覚だからな」
「・・・?」




