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61話 騎士団見習い研修 グレンヴィルの子供達

 私が神獣と話せる事は、この中ではお父様以外知らないんだよな。

 ヘクターやクラリッサまで驚き過ぎて固まってるよ。


「えっと・・・父上は知っていたんですね。トーマス兄さんもですか?ジェイムズ兄さんも?」

「トーマスも知らぬだろう」

「私も今初めて知ったよ!」


 騎士団と行動を共にしているトーマスお兄様はここにはいないので、お父様が答えた。私も頷いておく。


「え?じゃあ知ってるのは・・・」

「お父様以外では、ロバート先生とオンブロー伯爵様だけです」

「魔術師団長は分かるけど、オンブロー伯爵って・・・」

「まぁ、儂もオンブロー伯爵のついでで知った様なものだ」

「何それ・・・」


「ここにおる皆もこれ以上は口外せぬ様に。ギルフォード殿下もエドゥアルド殿もライオネル殿も頼む」

「ああ、もちろんです!」

「「承知しました」」

「アシュリーは少々その場しのぎであるからな、もしもの時は助けてやって欲しい」

「それはそうだ!父上分かりました!」

「確かに。こうなった時の何らかの理由を考えておこう」


 あれま。

 皆が私のフォローをしてくれるってよ!

 これは話して良かったかも♪


『お前は気楽なもんだの・・・』


 へへっ♪




 そろそろ昼の訓練の時間も近付いて来たので、お開きとなりそれぞれの準備の為に部屋に戻ったが、クラリッサはまだ何か考えている様なので、一応声をかけておく。


「神獣様とお話できると分かったのは最近なのですよ。神獣様からお声をかけてもらうまで、私自身も知りませんでしたから」

「そうなのですか?」

「はい。魔術大会に出場する事が決まって、練習を初めてからの事です。どうやら魔力が同調しているとの事です」

「そうですか⋯魔力が同調・・・なんというか何とも言えないというか。オンブロー伯爵様がアシュリー様は『神に選ばれた娘だ』と仰ってみえましたのはこの事だったのですね」

「神に選ばれたとは、大袈裟ではありませんか?私はただ神獣様と繋がっているだけですのに」

「そんな簡単な事のように・・・まあ、アシュリー様ですからね・・・分かりました。アシュリー様の常識に一つ『神獣様と繋がっている』という項目が増えるだけですね!」


 何か違うような・・・。

 でも納得してくれた様で良かった。




 訓練着に着替えて見習い訓練所に行くと、既にほとんどの研修生が揃っていた。

 王子とエドゥアルド様もだ。

 ほんの少し後に、慌てて入って来たのはダドリー長男とゴードン様だ。


「「申し訳ありません!遅くなりました」」

「いえ、まだ時間前です。慌てなくてもよろしいですよ」

「お前が何時までも食い続けるから!」

「それを言うならお前もだろ!」


 どうやら昼飯がお気に召した様である。


「グレンヴィルの食事は美味しかったですか?」

「「はい!大変美味しかったです!」」

「良かったです。研修中はいっぱい召し上がってくださいね!食事が身体を作ります。騎士団の食事はそういった体に必要なものを考えて作られているのです」

「「はい!」」



 それから時間になるまで、朝の訓練について王子達に説明することにした。

 昼の訓練でもやる走り込みや体操、身体能力の向上に必要な運動などを教える。


「皆様に一つ言っておくことがあります。もう既に目に入っているとは思いますが、昼の訓練には本来の騎士団見習いの子供達が一緒に訓練をします」

「あの子供達か?」


 隅の方に寄っている12〜3歳くらいの男の子達を見て、王子が聞いてくる。


「はい、そうです。

 クインティン!サンダー!ソル!こちらにいらっしゃい」

「「「はい!」」」


 3人の少年が走って来る。


「速い!」


 王子達が驚いているが、この程度で驚いてもらっては困る。


「もう、何人かはご挨拶させていただいているかと思いますが、今日から訓練に参加される方々には初めてだと思いますので紹介いたします。この3人が、この騎士団見習い訓練生の中のまとめ役の様なものです。何かありましたら彼らに言ってください」


 この3人は研修生に加わって訓練してもらうつもりなのだ。

 研修生達にはきっと良い刺激となるに違いない。


「一番年長者のクインティン。14歳です」

「よろしくお願いします!」


「次がサンダー。13歳です」

「よろしくお願いします!」


「最後がソル。12歳です」

「よろしくお願いします!」


「3人とも、こちらはこの国の第一王子のギルフォード殿下です。失礼はあってはなりませんが、訓練に関しては他の訓練生と同じ様に考える様に。分かりましたね?」

「承知しました!」

「よろしく頼む!」

「「「はい!」」」


「他の方たちも訓練しながらお名前を覚えましょうね」

「「「はい!」」」

「お嬢様もね・・・」


 ヘクター、うるさいよ!



 訓練始まりの合図である鐘が鳴った。

 まるでゴングが鳴った様である。

 第2ラウンドの始まりだ!


「それでは始めましょう!まずは体操からです」


 私は再び詠唱する。


『ラジオ体操第一!』


 ちゃんちゃか、ちゃちゃちゃちゃ

 ちゃんちゃか、ちゃちゃちゃちゃ


 音と共にジェイムズお兄様が4体登場する。


「なんだ!なんだ!」


 ちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃ

 ちゃちゃちゃちゃちゃ、ぽろん。


「のびのびと背伸びの運動!」


「ちょっと、アシュリー!

 何で私なんだよ〜!」


 ちゃーんちゃんちゃーんちゃん

 ちゃーんちゃんちゃーんちゃん


「腕と脚の運動!

 肖像権の問題です!」


 ちゃんちゃんちゃちゃんちゃん

 ちゃんちゃんちゃちゃんちゃん


「腕を回します!」

「も〜!かなり恥ずかしいよ!

 同じ騎士ならトーマス兄さんにしてよ!」


 そうか、トーマスお兄様でも皆の憧れだよな。次はそうしよう!


「分かりました!明日はトーマスお兄様にします」


「「ブフォッ!」」


 騎士団長とハロルドお兄様が笑っている。


「頼んだよ!アシュリー!」



 体操が終わったので、走り込みだ。

 今回は軽く身体を温める程度にして、後から100mダッシュをする。



「皆様、2列に並んでください。

 なるべく遅い方を内側にしてあげてください。

 体力に自信のある方は、前の方の外側へ。

 ではゆっくり足並みを揃えて走りますが、ついて来れない方は無理をせず、自分の速さで走ってください。では出発します」


 私は、軽いランニング程度のゆっくりとしたスピードで走り始める。

 ゆっくりなので、それほど離れてしまう人はいないのだが、やはりブービー君は遅れてしまう様だ。

 今回びり君は頑張ってついて来ている。


 ほんの3周した所で、クインティン達がポールを準備し始める。

 よく分かっている。

 100mといっても測った訳ではない。何となくそれくらいという長さである。

 その最初と最後に2本ずつ赤いポールを立ててくれた。


「ここからあの赤い棒まで全力で走ってください」

「「え?全力?この長さを?」」

「はい。戻って来る時は歩かず、ゆっくりでも良いので走りながらここまで戻って来てください。

 戻って来る時は赤い棒の外側です。内側は全力で走ってくる人にぶつかりますからね、必ず外側を走って来てください!」


 そう説明しているうちに、ヘクターとクインティン達が既に並んでいる。

 まあ、見た方が早い。


「位置について!よーい、ドン!」


 ヘクターとクインティンが走る。

 ヘクターの方が断然早いが、クインティンも結構速いのだ。


「速い・・・」


 王子だけじゃない、他の研修生達も驚いているな。



「次、位置について!よーい、ドン!」


 サンダーとソルが走る。


「速い!あんなに小さいのに!」


 悪かったな。

 私はもっと小さいよ!



「次。早く並んでくださいね」


 ダドリー長男とゴードン様が並んだ。やはりこの2人はライバル同士だ!


「位置について!よーい、ドン!」


 おお!接戦だな♪

 僅差でゴードン様か?



「次、位置について!よーい、ドン!」


 デヴィッド君とリロイ君だ。やはりリロイ君は走りに自信があるようだ。

 僅差でリロイ君だな。デヴィッド君が悔しそうだ。



「次、位置について!よーい、ドン!」


 ヨナ・ビュートとメイビル・ハンティントンの勝負はメイビル様の勝ち。



「次、位置について!よーい、ドン!」


 次は斜め君⋯ムスタファ様とスコット様。ムスタファ様の方が勝った様だ。

 皆の走り終わった時の様子でよく分かるな。



「次、位置について!よーい、ドン!」


 赤毛のアンことナイジェル様と爬虫類系のルシアン様では、ナイジェル様の勝ち。



「次、位置について!よーい、ドン!」


 やっと並んだよ、王子とエドゥアルド様。

 おお!いい勝負じゃないか。でも、後半エドゥアルド様の燃料切れで王子の勝ち。王子がむっちゃ嬉しそうで笑える。



「次は・・・誰が組みますか?」


 1人残った高等部のデコポンと初等部組である。


「私が」

「では、位置について!よーい、ドン!」


 ローレンティア様とデコポンである。

 ローレンティア様頑張ってるなぁ〜♪デコポンとあんまり変わらない・・・おっと、デコポン抜かれてるではないか!やっぱり奴は体力と気力が無さすぎる!



「次、位置について!よーい、ドン!」


 びり君とブービー君は黙々と走っている・・・うん。2人共頑張った。

 びり君は朝よりも少し変わった様な気がする。


 そして、残りは最後を3人で走ってもらい、平民4組も走り終わった所でハロルドお兄様を呼んだ。


「ハロルドお兄様。次からの掛け声をお願いします。私も走りますから」

「了解♪」


 もちろん、ヘクターと私である。


「位置について!よーい、ドン!」


 ヘクターとの短距離はほぼ互角なので、他の人には嫌がれると思う。

 僅差で私の勝ち。


 次の勝負を見ながらランニングで戻る。

 一人分ズレたので、どうやってペアが変わるかな?

 クインティンとサンダーはまあ普通だが、次は?


 おっ、リロイ君が出てきた。やる気だなぁ♪

 ソルとリロイ君では、僅差でソルの勝ち。

 リロイ君悔しそう・・・まぁ、ソルはまだ12歳だからな。リロイ君は3学年だったか?そうすると4歳年下って事になる。そりゃ悔しいか。



 次は、デヴィッド君とゴードン様だ。ほぉ〜僅差でデヴィッド君。

 と、いうことは、リロイ君はゴードン様より速いということになる。

 面白いな、皆が勝手に相手を考えて勝負してるみたいだ。

 でもな、まだまだ勝負は分からないのだよ。ここから変わって来るからな。



 ダッシュが5回を過ぎた頃から変わって来た。ハロルドお兄様にも、「よーい、ドン」の間をもう少し詰めてもらう様お願いしたから余計だろう。

 10回を過ぎる頃には、全員の息が荒くなって来た。それでもグレンヴィルの子供達は変わらない。


 それまで僅差だったリロイ君は、ソルとの差に愕然としている。

 その代わりデヴィッド君は疲れてはいるようだが結構変わらないので、リロイ君に勝てる様になった。


 そして、平民グループが本領発揮である。

 体力という点では、平民の方が勝っているのだろう。

 平民に負ける人が続出であった。

 それでもダドリー長男は強かったな。体力が違う。ゴードン様もなかなかだ。

 30回目では、ほとんど・・・ダドリー長男ですら全力疾走とは言えない結果になっていたけどな。

 ヘクターもちょびっとヘタっているようだ。



「アシュリー。これで終了だね」

「はい。飲み物の準備をしてもらって来ます」

「ああ、私が行くからいいよ」

「では、お願いします」


「皆様、一旦休憩にします」

「やっとか・・・」


 王子!情けないぞ!


「あちらにお飲み物を準備しますので、少し移動してください」

「ありがとう。助かるよ」


 うん、王族でもちゃんと礼が言えるのは良い事だ。

 しかし、思ったより王子は体力があったので驚いた。

 10本終わった後くらいから、年長者との対決に勝てる様になっていたからだ。

 さすがに25〜6本目辺りでは全力疾走とは言えない走りだったが。

 真面目に訓練しているのだと少し見直した。


 エドゥアルド様は全然体力なかった・・・うん。王子の付き添いで参加させられたとしたら少し同情する。






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