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31話 王子暗殺計画③ 〜スーパーアシュリー!

誤字報告ありがとうございますm(*_ _)m

 Sクラスの部屋に戻ると、昼食の時間だからか誰も居なかった。


「お嬢様。昼食は何処で召し上がりますか?」


 あんな事件があった後だ。

 これで貴族が集まるレストランや平民が集まる食堂などへ行こうものなら、噂の的にされるのは目に見えている。

 本当にお弁当で良かった!


「今日は天気がいいわ。中庭で食べましょう。」


 今の時期、天気が良い時は屋外が気持ちいい。外で食べる食事というのは、いつもより美味しく感じるのだ!

 芝生に直接座って食べたい心境ではあるが、そこはちゃんと東屋を利用する。


「お嬢様、手を拭いてからですよ!」


 オカンか!

 そんな事分かってるよ!


 企画・アシュリー、制作・ボニファスのランチボックスには、所謂(いわゆる)カツサンドと玉子サンドをメインに、チョリソー、ポテサラ、フルーツと盛りだくさん。

 カツにはちゃんと特製のソースが絡ませてあり、キャベツに似たシャキシャキ野菜の千切りと共に、ボニファスが焼いた美味しいパンに挟まれている。


「美味しい!」


「はい。美味しいですね。ボニファスと一緒に何かしていると思ったら、こんなに美味しい昼食を考案していたんですね」

「ふふん!明日のメニューも楽しみにしてるといいわ!」

「お嬢様、勝負じゃ無いんですから、その勝ち誇った顔は良くありませんよ」


 おっと、すぐ顔に出る癖は直さねば!



「午後は魔法実技訓練ですが、私は風属性の授業で、お嬢様は魔術師団長様の特別授業でまた別になりますね」

「そうなの?」

「今日の日程、全く把握してませんね」

「・・・今日からですから、当たり前ですわ!」

「部屋の前に大きく貼ってありますが?」

「目に入りませんでしたの。ホホホ・・・」

「もう!教えなかった私が悪かったです。

 でも、魔術師団長様は先程の件で来られるかどうか分かりませんね」

「・・・確かに。そういう場合は、私はどうしたら良いのでしょう?」

「先生に聞くしかないでしょう。食べ終えたら確認に行きますよ」

「はーい!」





「ああ、ヘクター。担任がグレンヴィル嬢を探してたよ」


 クラスに戻ると、ヘンリー先生が私を探していたと教えてもらったので、急いで先生の部屋に行った。


「アシュリー、探したよ。昼食はもう食べたかい?」

「はい」


「午後の魔術師団長の授業なんだがね、先程の件がまだ片付かないらしくて…」

「やっぱり個別授業は出来ないのですね?私はどうしたら良いのでしょう」

「いや、魔術師団長の授業はできるらしいよ。ただ、殿下の受ける授業と合同になるだけだ」

「・・・?」



 どうやら、首謀者の予想は付いているらしく、実行犯が捕まったことで、証拠を隠滅にかかるか、焦って事を成そうとしてくるか、今が微妙な時らしい。

 王子を王宮に帰すことも考えたが、王宮が安全とも言えず。逆に、これからの授業は全て予定を変更して、まだ学園に残る方が良いと判断したと。

 魔法実技の授業も場所を変更し、騎士団とロバート先生も同伴する方向で話がついたらしい。


 魔法実技の授業は危険だと思うんだが・・・しかも、火魔法ときたもんだ。狙ってくれって言ってる様なものではないか?


 誰の案だ?


 まあ、ロバート先生も居るだろうから何とかなるだろうと、いつもの闘技場へ行った。思った通り騎士団のメンバーにはお兄様も騎士団長もいたのでひと安心。当たり前だが、皆が気を張り詰めている感じがするな。


 しかし、王子は呑気そうだ。


「やあ、グレンヴィル嬢。

 魔術師団長が必要でね、個別授業を受けさせてやれなくてすまない。でも、合同授業にしたから、君は魔術師団長に指導を受けられるから安心してくれ」


 王子・・・

 もしかして、これはお主の案か?

 危機感のない王子だな。

 まあ、お兄様やロバート先生がいたら大丈夫か。


 私は今まで、同級生(ここにいるのは皆年上だが)の魔法を見た事がなかったので、とりあえずは普通の授業というものを見学することになった。

 ロバート先生の提案だ。


「では、前回の続きです。

 火矢の魔法の飛距離が足らなかった人は1番から5番までに並んで。

 的に当たらなかった人は6番から9番。

 どちらも出来た人は10番に並んで、距離を測って伸ばしていきましょう!」


 女性の教師がキンキンした声で指示を出す。どうやら、火魔法の的当て訓練の様だ。


「1列目。発射!」


『『『我が身に宿りし火の力、来たれ我が手に、焔の流れを操り、炎の矢よ、疾風の如く敵を射抜け』』』


 これまた見事に同じ詠唱だ!

 チラッとロバート先生を見ると苦笑いしている。私の考えている事が分かるのだろう。

 何といっても、どの火矢も弱っちい。

 的に届かない人達は、きっと届かなくても困らない様な人達なのだと思う。特に落ち込んだ様子もないので平民なのかもしれない。竈に火を付けられればいいと思う程度なのかも。


 他の人達はどうだろう。

 結構必死さが滲み出ている奴もいる。騎士志望かな?魔術師志望かな?

 王子は10番に並んでいる。

 この中では一番安定しているようだ。さすがは王族ということか。


 女教師はキンキン声を張り上げているだけで、特に指導などしていないがそういうものなのだろうか。詠唱を教えて的を用意するだけなら、教師でなくてもできると思うのだが・・・。


「ロバート先生。あの様に届かない人達に助言などしないのですか?」


 コソコソとロバート先生に耳打ちすると、先生もコソコソと返してくれる。


「ああ、まあ、した方が良いだろうな。あの8番に並んでいる子は、魔力を集める時と詠唱のタイミングが全く合っていない。あれでは威力も落ちる」

「そうなのですね」


 やっぱりあの女教師はダメ教師に決定!


「あの7番の女子はどうです?私には炎を怖がっている様に見えるのですが」

「ああ、そうだろうな。魔力は多そうなのにもったいない」


 暇なのでコソコソ話を続けていたら、ダメ女教師がギロっと睨んで来た。


「グレンヴィル嬢。とてもお暇そうですので、あなたも参加してみてはいかがですか?」

「え?よろしいのですか!」

「いや、それは止めた方が・・・」


 ダメ女教師が良き提案をしてくれたと言うのに、ロバート先生が止めに入る。


「カーネギー魔術師団長様。何故ですの?」

「いや、危険というか・・・」


「まあ、魔術師団長様は大変過保護でいらっしゃるのですね!魔術師団長様が直々に指導していらっしゃる女生徒の魔法は皆様もご覧になりたいでしょうに・・・。

 それとも火魔法は出来ませんでしたか?」

「いや、そういう訳では・・・ただ先生の魔法理念が根本から覆されるというか・・・」

「まあ、そんなこと言って誤魔化すとは、何か後暗い事でもあるのかしら?」


 これは『悪意』だ!

 私ではなく、ロバート先生に、だ!

 愛弟子(勝手にそう思っている)として、これを見過ごすことは出来ない!


「先生、やりましょう!」

「アシュリー、やめておけ」

「いえ、売られた喧嘩は買うのが私の信条。受けて立ちましょう!」

「いや、喧嘩は売られてないと思うぞ?」

「いいえ、はっきりと感じます!」


 コソコソ話を終え、宣言する。


「では、私も参加させていただきます。皆様、今の位置よりもっと下がってください。もっとです!もちろん、そちらの女性も」


 先生なんて呼んでやらないからな!


「では、どのような火魔法がよろしいですか?皆様と同じ『炎の矢』がよろしいですか?」

「なっ!的に当てられるなら何でもよろしくてよ!当てられるならね!」


「承知しました。ロバート先生、後はよろしくお願いします」


 ふっ!

 言質は取った。

 的に当たれば何でも良いと。

 派手にやってやる!


 ロバート先生が私の顔を見て、慌てて生徒達を集めていく。きっと障壁魔法を使ってくれるだろう。

 私に注目してる間に王子が狙われたら本末転倒だ。


「アシュリー!頑張れー!」


 何か勘違いしていそうなジェイムズお兄様の声援にも一応笑顔で応える。王子の護衛は大丈夫か?



 さて、ここは「炎のシ●レン」再びだ。

 魔心臓モミモミは禁止なのでしない。

 両手に魔力を集中していく。


 的は敵。

 10人想定。



 よし!


『五●炎情拳!』



 ゴーーーーーーーーー!

 ゴーーーーーーーーー!

 ゴーーーーーーーーー!

 ゴーーーーーーーーー!

 ゴーーーーーーーーー!

 ゴーーーーーーーーー!

 ゴーーーーーーーーー!

 ゴーーーーーーーーー!

 ゴーーーーーーーーー!

 ゴーーーーーーーーー!



 おお!

 前の時より勢いいいな〜!

 魔力多すぎたか?

 でも、ちゃんと10本出来たし。


 100本くらいに増えたらどうしようかと思ったが、成功だ。


 10本の炎が渦を巻きながら的に突進し、あっという間に焼き尽くしていった。



 どうだ!見たか!

 女教師の方に振り返ると腰を抜かしていた。

 あらら・・・。


「な、な、何ですか!その詠唱は!」

「何と言われましても、詠唱です」

「何て非常識なっ!」

「非常識と言われましても、魔法は発動しております」


「だから魔法理念が覆ると言ったのに」

「魔術師団長様はこの様に非常識な教育をなさっていらっしゃるのですね!魔法への冒涜ですわ!」


 まだ言うか。


 詠唱に関しては理解されるのに年月がかかるとは思っているが、あの女教師みたいに頭ごなしに否定することしか出来ない奴は多いのだろうか。


「闇魔法が使えるというだけで魔術師団長になられたという噂は本当の様ですわね!」


 ほぉ…?

『悪意』が増しておるのぉ

 では見せてやろう。

 その理念とやらをもっと覆してやろう。


 自分で消せる魔法。

 私が魔力を切ったら消える炎の魔法。

 ロバート先生から教わった暑い時寒い時に使える便利魔法の応用だ。


 イメージは、某有名漫画の主人公。

 全身に魔力を込める。



 よし!


『スーパーサ●ヤ人見参!』


 シュンシュンシュンシュン・・・


 私の全身が紅く光り、その周囲に炎が燃え上がる。

 もちろん私は熱くない。

 温かい程度だ。


「な、な、何ですか!その炎は!」

「あら?変ですね・・・どなたかの『悪意』に反応したのでしょうか」

「なっ!また非常識なっ!」


 炎を大きくする。


「ほーら♪」


「ひっ・・・・!」


 何か、ダメ女教師以外にもすごいビビってる男子がいるな。ちょっとやりすぎたか?


「アシュリー!もうい・・・」


「うわあああああ!

 ごめんなさい!

 ごめんなさい!

 ごめんなさい!

 許してください!」


 は?


「僕は・・・僕は・・・

 頼まれただけなんです!

 本当に殿下を傷付けるつもりなんてありません!

 許してください!許してください!」


 これは、自爆だな・・・。


 勝手に自爆してくれたので、このまま回収したいところだ。

 ロバート先生と目配せをする。

 頷き合い、同じ考えである事を確認。

 騎士団長には手で制して合図をする。


 そして、私は芝居を始める。


「しかし『悪意』はまだ感じます」


 また炎を少し大きくする。


「うわあああああ!

 違います!違います!

 僕は、魔法を失敗した振りをすればいいって!」


 一歩近づく。


「殿下を医務室の人に診てもらえばいいって言われただけです!

 傷付ける気なんてなくて!

 ああああああ!ごめんなさい!」


 お兄様が騎士2人を連れて出て行った。

 多分、医務室だろう。


 見えてきたが、これは首謀者の人選ミスではないか?

 こんな肝っ玉の小さい男にそんな重要な役を独りで・・・


 そうか!

 大人がいるんだ。

 この生徒を見張っている大人が。


 気配を探るが・・・それらしきものは感じない。

 感じないが・・・女教師を見る。

 酷く青ざめた顔が

 ()()()だと言っている。


 騎士団長も気付いたかな?

 気付いてなさそうだな。

 んー、私の思い過ごしか?

 もうちょい続けてみるか。


「あなたの協力者からはもっと大きな『悪意』を感じます」


 また一歩近付く。


「あ、あ、あ・・・」


 何も言えないようだが、目がもう言ってるぞ。

 やはり「コイツ」だ!


 炎を纏った手を女教師に向け、近付く。


「きゃーーーーーー!

 私は何もしてないわ!

 何も知らないわ!」


 本当に何も知らない人の態度ではない。


 見ろ。

 他の生徒はポカーンとしてるだけだ。

 何か、手を前で組みキラキラした目で私を見ている生徒もいるが・・・アレは無視しよう。


 騎士団長が動いたので、私の寸劇も終了だ。魔力を切ってロバート先生の所へ行こう。



「アシュリー、よくやった!」



 えへへ・・・

 また褒められた。




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