表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/267

29話 王子暗殺計画① 〜アシュリー飛ぶ!

 マージェリー様はクラリッサよりも背が高く、私の目線は鎖骨辺り。さり気なく確認しながらマージェリー様の歩き方を真似してみる。


 手の位置、首と顎の角度、目線・・・

 ロッティ先生に注意された事を思い出しながら、マージェリー様で確認するのだ。


 うん、お手本があるといいな!

 毎日続けたら身に付くだろう。

 これは、マージェリー様に仲良くしてもらわねば!



「ふふふっ 本当にお可愛らしいですわ!」

「ええ、以前ヘクターさんのお膝に乗っていらした時は、私感激しました!もう一度お会いしたいと思っておりましたの」


 何やら、周囲の女の子達が騒いでいる。ヘクターの膝とか言っているので、私のことか!


 小さいからな・・・

 マスコット的な扱いか?


「貴方達、聞こえていましてよ?」

「あっ!申し訳ありません!」

「グレンヴィル様の仕草が余りにもお可愛らしいので、私達我慢できなくて・・・」


「ふふっ、仕方ありませんね。アシュリー様、ごめんなさいね。この子達の失礼を許してくださるかしら」

「いえ!失礼など全くありません!」


「私も、我慢出来そうにないですわ」

「・・・?」



 結構歩いてホールに着いた。

 ここは入学式の会場だったところだな。こんな広いところでダンスの練習か・・・。

 ああ、他の学年もいるようだ。2つの学年の淑女科と領主科が集まったくらいかな?1学年以外は大人っぽいので最高学年か、3学年かと思われる。

 先輩に教わろうという企画だろうか。


 今、ふと気が付いた。


 私のこの身長では、相手をする人が可哀想ではないか?絶対踊り難い!私サイズの相手って居ないよな。周りを見渡したいが、マージェリー様は絶対キョロキョロなどしないのだ。じっと優雅に立っているのだ。


 しかし、何やら、高学年の人達が揉めている様な・・・男女共に。


「ふふっ、あれはきっとアシュリー様のお相手を決めていらっしゃるのですよ」

「え?高学年の方がお選びになるのですか?」

「ええ、毎回同じ相手にならないように考えてくださっているのです」

「私のお相手で揉めているのは、やっぱりそれほど私では不足なのでしょうか・・・」

「まあ!違いますよ!全く反対ですわ。アシュリー様の取り合いですわね」


 そうなのか?

 でも、女生徒も一緒に揉めてるのは何故だ?



 しばらくすると、私の前に先輩が一人手を差し出す。


「お嬢様。お手をどうぞ」


 女の先輩なんだが・・・。

 マージェリー様の方を向くと、にっこり頷かれたので、先輩の手を取り、エスコートされるまま中央へ向かう。


「グレンヴィル嬢、私はナタリアよ。一応この国の第一王女だけど、殿下呼びは無しでお願いね!」

「・・・!お初にお目にかかります」


 カーテシーをしようとしたら・・・


「ああ!堅苦しい挨拶はいらないわ!

 アシュリーって呼んでいいかしら?」

「はい!ナタリア様!」


 何と気さくな王女だろう!


「もう、アシュリーったら可愛いわね!ジェイムズと張る程に強いとは思えないわ〜。王宮で貴方のことを知らない人は居ないくらい有名人なのよ。まさか今日会えるなんて思わなかったわ!」

「・・・はあ」

「国王もギルフォードも貴方に興味津々よ」


「・・・!!」

「ふふふっ、もちろん私もね!」


 どういう意味だろう?

 どういう興味だろう?

 怖いな・・・ブルブル。


 王女の怖い発言を聞いているうちに、パートナーはそれぞれ決まった様で、皆が中央に集まって来た。



「皆さん準備はよろしいですか?それでは授業を始めます。

 今から、2曲続けて演奏してもらいますので、最高学年の人達は、その間にしっかりパートナーを導くのですよ!」


 先生の声が響いた後、演奏が始まる。


 ロッティ先生に社交ダンスも叩き込まれたので何とか踊れるが、ナタリア様にリードされながら踊るのはとても踊りやすい。

 男性パートも出来るとは、さすが王族!


 いち、にーー、さん。

 いち、にーー、さん。


 ゆったりしたリズムに身体が乗ってくる。ナタリア様が次にどう動くのかも分かってくると、合わせるのも楽しい。

 剣の鍛錬と同じだ!

 身長が違うので、ナタリア様の顔は見上げなければ見えないが、時々目線を合わせると自然と笑みが溢れる。


 だんだん調子に乗ってくると、お互いに大胆なステップになっていく。

 手を伸ばして、引き寄せられて、

 同じ気持ちが伝わってきて、とても楽しい!



 あっという間に1曲目が終わり、続けて2曲目。

 さっきより少しアップテンポだが、最初からお互いにノリノリだ。大胆なステップでも息は合っている。



 気持ちいいな!



 クルッと回って

 むっ!殺気?



 ステップ踏んで

 何処だ!



 クルッと回って

 2階か!



 アレは・・・弓矢か



 ヤバい!

 標的は誰だ!?


 王子だ!!

 王子の動きを追っている。


 曲が終わった瞬間を狙うつもりだ。

 あとどれ位で曲は終わる?

 間に合うか!?


「ナタリア様!王子殿下に近付きます!」


「え?」


 驚いているナタリア様をくるくるっと振り回しながら王子の近くまで行き、魔力を手に集中させる。


 そして、曲が終わるかどうかの瞬間。

 来る!



『壁よ!王子を護れ!』



 ドドーーーーーン!



 高さ3mほどの壁が王子の前に立ちはだかり、一本の矢を遮ったのを、犯人を追いながら確認する。


 間に合ったか!

 思ったより小さい壁で良かった。

 次は犯人!

 逃すかっ!!


 2階部分がどうなってるのか分からんが

 このまま見逃さなければいい。



 ダッシュでホールの壁を蹴り、垂れ下がっていた金色のロープを掴み、もう一度壁を思い切り蹴る!

 2階部分の手摺りに飛んで掴まり攀じ登る。


『キャーーーーーーーーー!!』


 下から悲鳴が聞こえてくるが、

 今は犯人だ!


 2階に飛び移って来た私に驚いた犯人は、

 慌てて走って逃げるが、


 ふふふふふふ・・・私に勝てるかな?


 2階席を悠々と飛んでいく私に追い込まれていく犯人は、振り返って矢を撃って来たが、私が避けるから当たるわけが無い!


 おっしゃ!

 追いついたーっと!

 渾身の回し蹴りを喰らえ!


 グフォッ・・・ドサッ!


 ・・・あれ?

 もう終わりか?

 ノックダウン?

 呆気ないな・・・暗殺者ならもっと骨のある奴かと思ったのに。


 これは映画で観た様な展開だ!

 それでコイツは下っ端か、捨て駒か、

 弓矢の腕だけで雇われたか、

 首謀者が居るのだろう。


 首謀者は誰かな・・・

 王宮では誰かが何かを暗躍してるのか。 王宮の事は皆目分からんので、私に事件を解決出来る術はない!

 映画のヒーローにはなれそうもないなあ。


 などと考えていると、ドヤドヤと騎士らしき人達がやって来て、私と落ちてる犯人を交互に見て驚いていたが、直ぐに犯人を捕らえに来た。



 そしてまたしばらくすると、ヘクターの声が聞こえる。


「お嬢様ー!!」


 あれま。必死に走ってくるが、自分の授業はどうしたのだろうか。

 まあ、いいか。


「ヘクター!

 犯人はやっつけたわよ!」


「あー!もう!お嬢様はっ!!

 怪我は?痛いところは?

 犯人に何かされませんでしたか?」


 慌てて走り寄って来たヘクターは、ぺたぺたと、私の顔や手や足を確認する。

 すごく動揺しているみたいだ。

 心配させてしまったか・・・すまん!


「大丈夫よ。私は無傷で、犯人は蹴り一発で落ちちゃったわ・・・」

「そんな残念そうに、もう!ホールの方から悲鳴が聞こえた時は生きた心地がしませんでしたよ!」


 少し呆れた様に安心するヘクターにニッコリ笑って見せると、笑い返してくれる。


「お嬢様、私達は下に降りましょうか」

「はーい!」



「・・・お嬢様!階段からですよっ!」


 来た道(道ではないが)を戻ろうかと、2階席の手すりに足を掛けた所で止められた。




 ホールの1階に戻ると、これまたドヤドヤと人が押し寄せて来た。


「アシュリー!」

「グレンヴィル嬢!」

「アシュリー様!」

「グレンヴィル様!」


 さっきのヘクターと同じだ。

 皆が私の怪我を心配してくれている。

 ありがたいものだ。


「皆様、ご心配をおかけしたようで申し訳ありませんでした。この通り、どこにも怪我などしておりません。ご安心くださいませ」


 皆が一斉にホッと息をつく。

 うん、良かった!


「それよりも、王子殿下は大丈夫でしたか?私の慣れない魔法の被害に合ってはおられませんか?」

「あ、ああ・・・驚きはしたが無傷だ。グレンヴィル嬢のおかげで助かったよ。心より感謝する!」


 ホールを見ると、その場に全く似つかわしくない壁がデーンと鎮座する。


 あれ?

 王子を護るという仕事は終わったから消えるはずでは?

 うーん・・・まだ狙われている?


 まあ、自分で作っておいて何だが、原理が不明確なので、何とも言えない。

 とにかく、あれはどうすればいいかな。

 ロバート先生、来てくれないかな。

 ブラックホールで消してくれないかな。


「あの・・・その・・・あの壁はですね・・・自分で消せないので・・・」

「ああ、あれか。王宮の者で何とかさせよう。グレンヴィル嬢が気にする事ではない」


 あ、多分、ロバート先生が駆り出されそうな気がする・・・先生、ごめん!


 騎士団らしき人達がこちらにやって来る。


「アシュリー・グレンヴィル様」

「はい・・・?」


 騎士団の全員が跪く。

 何事だ?


「この度は、ギルフォード殿下の御身をお守りいただき感謝致します。

 ギルフォード殿下には、我々の度重なる失態に申し上げる言葉もありません!」


 度重なる?


「つきましては、この度の状況を始めからご説明いただければ有難く、解決の道も早まろうかと。少しばかりのお時間を頂きますようお願いいたします!」


 ああ、状況も分からず、犯人も私がやっつけたと。


「はい。私でお役に立てるのであれば直ぐにでもよろしくてよ」


 私は、騎士団や王子に請われるまま事態の説明をした。


 ナタリア様とのダンスの途中ですごい殺気を感じたこと

 2階のカーテンに隠れた人影を見付けたこと

 弓矢が見えたこと

 それが王子の動きを追っていたこと

 私に見付かって逃げたこと・・・

 犯人の様子をひとつずつ説明した。


 皆一緒に聞いてる。

 ホール中の人が。


「アシュリーは、身体強化魔法が扱えるのか?」

「いえ、まだ教えてもらっておりません。魔力のコントロールが出来るまではお許しが出ないのです。

 あの壁は思ったよりも小さく出来て良かったと思いますが、いつもならもっと巨大になっていたかと・・・

 もしかしてホールを壊していた可能性もありまして・・・王子殿下がご無事で本当に良かったです!」



「そ、そうか・・・」



「あの⋯身体強化魔法を使うこともなく、あの様に2階へ飛んで行けるものなのでしょうか?」


 マージェリー様が騎士に質問をしているが、聞かれた騎士は一斉に首を横に振っていた。


 え?


「兄はできるのではありませんか?」


 また、騎士団の皆は首を横に振る。

 そうかな〜?



「えー最後に、犯人を捕らえた時にはどのような策を?奴は気を失っておりましたが・・・」


 よくぞ聞いてくれた!


「回し蹴り一発です!」


「「「「「「「・・・・・・!!」」」」」」」


 決まった!・・・と思ったが、

 ヘクターが額に手をやって項垂れている。

 もしかして、不味いことを言ったか?


 話を逸らそう!


「あの・・・早く犯人の口を割らせないと、あの犯人を雇った者を辿れないのではありませんか?

 使った矢に毒など仕込んでいたら、その毒も調べる必要があるかと思います。

 事は一刻を争うものではないでしょうか」


 犯人が捕まったことは直ぐにバレるだろう。早くしないと、首謀者に逃げる隙を与える!


「はっ!その通りであります!

 早速、この場は失礼させていただきます!」



 ・・・・・・。


 しかし、残った皆の視線が痛い。

 ヘクター助けて!



「アシュリーは体術も人並外れて優れているのだな・・・」


 はい!

 剣術よりも好きです!

 とは、言ってはいけないのかな?


 チラッとヘクターを見ると、諦めた様な何ともいえない顔をしている。よく分からんな。


「お嬢様。ここまでしておいて誤魔化す事は出来ませんよ」

「それはバレても良いと?」


 コソコソと耳打ちし合う。


「ええっと・・・

 ジェイムズお兄様との訓練では、いつも剣術と体術を交ぜた模擬戦をしております。私はその訓練が一番楽しいのです!」


「そ、そうか・・・楽しいのか・・・」




 皆が残念な子を見るような目で私を見てくる・・・。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ