27話 それぞれの憂鬱〜それぞれの視点
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第2章 最終話。
短めです。
〜アシュリーの憂鬱〜
「ジェイムズお兄様!
私、高等部へ編入できる事になりましたの!」
「そうか!すごいじゃないか!さすがアシュリーだ・・・兄としてアシュリーが誇らしいよ・・・」
感無量か!
「お兄様。高等部に編入しましたら、騎士科の人達ともっと訓練出来ますわね!」
「アシュリー・・・それは・・・」
「お嬢様!お嬢様は、高等部に入ったら専門は必然的に『淑女科』ですよ。騎士科の選択はありえません」
がーーーーーー〜ん!
「ヘクター!ど、どうしてですの?」
「騎士科とは将来騎士になる者が選択する専門科目です。お嬢様は『淑女科』です!それ以外は許されません!」
ヘクターは保護者か!
「お嬢様。以前、立派な淑女を目指すと言ったのは嘘だったのですか?」
「立派な淑女になるとは言ってないような・・・」
「屁理屈を言うのは淑女のすることではありませんよ」
屁理屈かな・・・。
まあ、確かに。
辺境伯令嬢として恥ずかしくない様にというのは『立派な淑女』かも知れない。
「そうですね・・・」
「でも、ほら、アシュリー。この前のように、魔術師団長の指導が早く終わった時に騎士科へ行ったらどうだ?」
「ジェイムズ様。その様な甘言はお嬢様の為になりません。ジェイムズ様がいらっしゃる時ならまだしも、騎士団の他の方にもご迷惑がかかりますでしょう?」
「いや、きっと皆喜ぶと思うんだが・・・」
「お兄様・・・」
傍から見れば、ダメダメ兄妹かも知れない。しかし、私も楽しみのひとつを潰されたくないので、ここは大人しく引いておこう。
その内チャンスはあるはずだ。
「お嬢様。私に隠れて事を成そうとしたら、ウォルポール元公爵夫人に言いつけますからね!淑女科の先生に、ご親戚がいらっしゃいますから!」
なんと!
ヘクターが厳しすぎる・・・。
そんな子に育てた覚えはないのに。
(育ててないけど)
これは、権力者の協力が必要か。
学園長は、どうも私を避けている様な気がするので除外。
魔術師団長って権力者かな?
今のところ、私の一番の理解者なんだが。
王宮の騎士団長はどんな人だろう。騎士科で好きな様に鍛錬する為には最適な人脈ではないか?
そういえば、騎士団はいくつもあると聞いたことがあるが、ジェイムズお兄様はどんな騎士団なのか聞いたことがないな。
「お嬢様?何を企んでいるんですか?」
「えっ!?何も企んでなどいませんよ」
鋭い!
ここは・・・逃亡あるのみ。
「もうそろそろ鍛錬の時間かと思いますの。さあ、お兄様行きましょう!」
「あっ、お嬢様!」
逃げるが勝ちである。
〜学園長の憂鬱〜
アシュリー・グレンヴィル。
既に魔力解放が完了し、魔法も使えるという12歳の少女が、この魔法学園に入学して来ることは、グレンヴィル辺境伯からの手紙を受け取った後すぐに国王に報告した。
その少女が「完全なる全属性」を持つ事もその日のうちに報告した。
あの信じられない魔力のことも・・・。
属性のことで動揺していたのだろう、魔力測定の魔道具があの様に砕け散ったことがそもそも異常なのだ。
魔術師団長からの報告は、その異常さを裏付けるかの様だった・・・。
私はアシュリーが恐ろしい。
魔術師団長は、アシュリーの根源は「悪」ではないから大丈夫だと言うが、ひとつ間違えばこの国の行く末はどうなるか分からぬだろう。
それなのにだ。
国王も殿下もアシュリーに興味津々なのだ!
最初は国王が「完全なる全属性」の少女を王族に取り込むと良いような発言を少しした程度だったが・・・
ギルフォード殿下とグレンヴィル家の次男があれほど懇意にしているとは知らなかった。
王宮第二騎士団のジェイムズだったか、溺愛する妹の強さを王宮で自慢して回る阿呆のおかげで、殿下はその妹に多大な興味を持っていたのだ。
その彼の妹というのがアシュリーだとは何の因果だ!
しかも、高等部に潜入してひと暴れしていたとは!!
ギルフォード殿下の興味はより大きくなってしまった・・・。
もし、ギルフォード殿下の結婚相手がアシュリーになってしまったら
彼女に王族の権力を持たせてしまったら
そう思うと恐ろしくて、どうしても阻止したかったのだ!
しかし、もう高等部への編入は決定だ。
ギルフォード殿下と同じSクラスへだ。
私にはもはや為す術も無い。
後は神に祈るだけだ・・・。
〜ヘクターの憂鬱〜
とうとう決まってしまった・・・
お嬢様の高等部編入が。
しかも俺と同じSクラス。
ギルフォード殿下とももちろん同じだ。
本当に、目指すものがはっきりしてると猪突猛進だな。あの努力の方向を少し変えるといいのに。まあ、あれがお嬢様の良いところでもあるんだけど。
でも断言できる。
この先、絶対何かが起きる。
何かは分からないけど
絶対起きる。
さっきも何か企んでるのは分かった。
でも、今から何か出来るかと言っても俺に為す術はない。
なるべく事件が起こらないよう、お嬢様には目を光らせておこう。
〜クラリッサの憂鬱〜
アシュリー様が高等部へ編入してしまう。
あぁ分かっていた。
アシュリー様がその気になったら、絶対そうなるのだということは分かっていた!
あの、イノシシ娘が!
高等部に上がるまでの2年間はゆっくりできると思ってたけど、もう第一王子と接触してしまっている上に、同じクラスに編入だよ〜!
あのアシュリー様がギルフォード殿下を好きになるとかはありえないと思うけど、逆はかなりありえる!
アシュリー様可愛いもん!
ちょっとアレだけど・・・。
婚約者に選ばれたら、グレンヴィル家は断れない立場だよね?
ああああああ困った。
ヒロインのリアーナは、実は私と同じクラスに居る。希少な光属性持ちだから、時々貴族令嬢に嫌味言われてるのは見るけれど、軽い程度で済んでいる。
何が起こるか分かんないから、絶対アシュリー様とは会わせない様にしてたけど、これからはそんな心配は要らなくなった。アシュリー様が初等部から居なくなるんだから。
リアーナの事は2年後でいいかな?
アシュリー様が予想外の事ばかりしてくれるから、先がちっとも読めない!私は何をどうしたら良いのか分かんない!
でも、とりあえずは
アシュリー様が高等部で何かやらかさないか
そっちの方が心配だ。
いや、やらかさないかじゃないな
やらかす!
何か分からないけどやらかす!
絶対!
事の大きさにもよるけど、頼りになる人脈を旦那様に用意してもらっておかないと!ここには旦那様は居ないんだから。
うん、頑張ろう。
次からは第3章になり、アシュリー高等部編になります。
続けてお付き合いいただけると嬉しいです!




