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250話 オンブローの復旧③ 〜実は高級だった件

 お父様はオンブローへ着くと、直ぐに村人達に声をかけた。



「村人達よ、今すぐ畑に行くのだ!」

「グレンヴィル辺境伯様!?」


「家を無くし家族を亡くした者もいるだろう、こんな大変な時だが悲しみに耽っている暇は無くなった」

「何事でございますか!」


「すまない・・・お前達の村を元通りの元気な村にする為にアシュリーのかけた魔法が効きすぎたのだ・・・今、畑の作物はどんどん育っている。早く収穫しないと大変なことになる」


「わ、分かりました!いえ、よく分かりませんが、辺境伯様が仰るのでしたらすぐさま向かいます!」

「みんな!収穫に行くわよ!」


「家の籠を使って!」

「我が家からも持ってくるわ!」

「俺も手伝いに行こう!」

「そうね、私達も一緒に行くわ!」


「誰か!馬車を出せ!」

「分かった!待ってろ!」

「一台では足りぬ、もっと馬車を用意するのだ」

「「はい!」」



 何だか大忙しだな・・・

 家族を亡くした人もいるだろうに、悲しんでいる暇もない。


 村人達が準備している間、私は亡くなった人達に障壁をかけた。

 周りに人が居なくなってしまったからな、遺体を保護する為にも・・・。



「アシュリー!準備は出来たようだ。頼むぞ」

「承知しました!皆さん、行きますよ!」

「はい!お願いします!」



『クロベェ!皆を国境の村まで連れて行って!』


 ブォーーン!



「「「・・・・・・ぉぉぉ…」」」


 こっそり驚いている。

 控えめな人達だった。



 そーっと降ろしてもらったのだが・・・


 村の様子を見て、誰もが落ちそうな程に目ん玉を大きくしている。


「これは・・・」

「本当に私達の村か?」


「あれだけ荒れてしまった村が・・・」

「焼けてしまった畑が・・・」

「踏み潰された畑が・・・」


「でも、家は無い」

「我が家も無いわ」


「家の畑はどこかしら?」

「道も家のあった跡も残っているから分かるだろう。早く行こう!」



 徐々に我に返った人達は、それぞれの畑に向かって歩き出した。

 だが、私達が建てている家の前で佇む40歳くらいの男女がいる。


 建てかけの家を見上げて動かないって事は、ここの人達かな?そうすると、村長さんの息子さんとお嫁さんかな?



「どうした」


「「ギルフォード殿下!?」」


 王子が声をかけると、驚いて飛び上がったよ。


「やっぱりギルフォード殿下なのですね!そんな高い所で、何をなさっておいでなのです!」

「柱と梁を繋いでいる所だ」

「いや、それを聞いているのではないのですが・・・」


 ああ、王子が自分達の家を建てている事に驚いているのか。

 そりゃ驚くよな!


 国民の家を建てる王子・・・うん、なかなか良いではないか!



「ギルフォード様!素敵な窓に仕上がりましたね!」

「そうだろう?我ながらなかなか良い出来だと思うのだ!」


 うん、クラリッサの指示だったとしても、とても綺麗に出来ている。



「なんて素敵なお家・・・」


 奥さんらしき女性はうっとりして、とても嬉しそうだ。喜んでもらえそうで良かった!



「この家か、アシュリー達が造っておるのは」

「はい!お父様、いかがでしょう」

「うむ…この左側の家は別棟になっておるのか?」

「ここは『蔵』と申しまして、収穫した作物を保管する為の建物です。作物が長持ちするように造ってあります!」

「ほぉ!この厚い土壁といい、保存庫にぴったりだな!良く出来ておる」


 へへっ!褒められた。



「お前達、早く収穫をして来るが良い、畑も広いだろう、大変だぞ」

「「は、はい!!」」


「私達もお手伝いします」

「ヘクター、クラリッサ、そうしてあげなさい」


 ヘクターとクラリッサは収穫の手伝いをするのか、ならば私は今のうちに屋根の瓦の付け方を教えてもらって来よう!


「私はメイスン組に瓦の付け方を聞いて来ます!」

「あっ、私も行こう!」


「「ヒィー!」」


 王子が屋根から飛び降りて来たので、村長の息子達が悲鳴をあげた。

 王子はあれくらいの高さから飛び降りても大丈夫なのだよ。




 メイスン組の組長は、探すまでもなく隣の家…と言っても畑を挟んでいるので離れているが…の敷地で呆然とこちらを見ていた。

 いや、組長だけでなく、メイスン組と生徒組は全員いるのではないだろうか。


 君達仕事しなさいよ?

 まだ全然進んでいないのではないか?



「メイスン様?」


「・・・・・・」


「メイスン様?」


「・・・・・・」


「おい、兄さん!アシュリー様に呼ばれてるぞ!」


 組長はメイスン先生のお兄さんなのか。


「あ、アシュリー様!?ギルフォード様も!?いかがなさいまされましたか!」


 言葉使いが変だぞ。


「あの…瓦を敷きたいのですが、やり方が分からなくて、教えていただけないでしょうか」

「瓦ですかっ!?藁葺きではなく?」

「はい、これだけの軒数を藁葺き屋根にするのは大変でしょう?瓦の方が早いかと思いまして、山から石を拾って来ました」


 クロベェからさっき採って来た石を出して見せると、組長さんはまたもや目ん玉落ちそうな程の驚き顔になった。


「こ、これは…スレート!しかもこんな高品質のスレートは貴重な・・・ハッ!もしやまたグレンヴィルから採掘して来たと・・・」

「はい、その通りです。グレンヴィルの山脈にある事をご存知でしたか?」

「もちろんです!グレンヴィルの山脈で採れるスレートは耐水性にも耐久性にも優れた最高級の品質であるにも関わらず加工し易いという、建築に携わる者なら誰でも知っております!」


 へぇーそうなんだ。


「しかし、採掘できる場所は、かなり危険な場所にあり、山登りに長けた者でなければ行き着くことが出来ない為、なかなか手に入らない代物なのですが・・・それをちょっと行って来たように・・・」


 あれ?

 あの山はそんなに危険な場所だったのか。

 クロベェで行ったから全く気が付かなかった。


 ・・・って事は、これはグレンヴィルの特産品を勝手に持ち出して来たってことかっ!


 これはアカン!


「ギルフォード様!私、グレンヴィルの特産品を横領してしまったようです!」

「何を言ってるんだ?」

「お父様には採って来てから言いましたが・・・勝手に特産品を採掘してしまったのは事実です」

「申し訳ありません!私が(そそのか)したのです!」

「おいヘクター!唆したとは言い方が悪いだろう!」

「横領と言えば『唆した』が適当かと」

「やっぱりこれは横領なのですね!」

「ちょっと待て・・・」



「ははっ!何を今更騒いでおる」

「お父様!」

「グレンヴィル辺境伯殿!」


「アシュリーがそれで金儲けをしたと言うなら横領になるであろうが、国民への奉仕活動で使うというのに横領になるはずがなかろう」


 それと同じ事を、私が採って来た量を知っても言ってくれるだろうか・・・。


「お父様、山から採って来たのは5軒分くらいあるのですが・・・」

「何だと!?5軒・・・いや、どれくらい採って来たのか出してみなさい」

「はい・・・『クロベェ、さっき仕舞った石を全部出して』」


 ブォン!


 ドス!

 …ドスドスドス!!



「「「・・・・・・」」」



「アシュリー、これは5軒分とは言わぬ」

「・・・?」

「20軒分はありますね・・・教会のような大きな建物なら2棟は建てられそうです」


 あれま、多かったか!


「クックック・・・」

「ククク…」

「ふふふ・・・」


「「「あははははははは!!」」」


 え?

 皆が笑い出した。

 王子も、お父様も、メイスン兄弟も・・・。


「さすがアシュリー!規格外だな!」

「全く、どうやってこんな短時間でこれだけの石を切り出して来たのか・・・」


 剣でスパッと切った!


「サイプレスと言い、このスレートと言い、アシュリー様には本当に驚かされます。しかし、一番驚かされているのはあの家の建て方です!」


 家?

 村長の家の事か。


「柱の立て方から全て見ていました!何という速さ!しかも丈夫さも美しさも最高です!」


 ずっと見ていたら、そりゃ仕事は進まなかっただろうな・・・。


「アシュリー様だけではありません。ギルフォード殿下も素晴らしい!自分の身一つで大木の柱を担ぎ、打ち込む殿下には驚きました!」

「そ、そうか?」


 王子が褒められて照れている。


「あの家が村長の家で良かった・・・村民の家だったら、残りの全て同じ程度の家を建てなければならなくなる所だった・・・」


「いや、メイスン殿・・・」

「はい、何か?」

「アシュリーは、全部同じように建てるつもりだったようだぞ」


「は?」


「一軒建てて要領が分かったら、残りの家を一挙に建てるつもりだったらしい」


「・・・え?残りの家?この百軒近くある家を?」

「そうだ」


「「「・・・・・・」」」


「いやいやいやいや!全部にあの高級なサイプレスをあんなにたくさん使うのですかっ!!」

「アシュリーにはそんな価値は分からんよ」

「それは・・・今すぐ分かってください!」


 でも、もう切って来てしまったからなぁ・・・。


「まぁ、切って来てしまったものは使えば良いだろう。被害に遭った者達に良い家を造ってやってくれ」

「はあ…辺境伯様がそう仰るなら・・・」


「ではこうしよう。アシュリー、村長の家の屋根はメイスン殿に任せるのだ。メイスン殿、瓦はあるのだろう?」

「はい、すぐに始められます!」

「ならば問題ないだろう。アシュリーが採って来たスレートは、グレンヴィルからメイスン家への工賃として渡そうではないか」


「「ええっ!!」」


「そんな!いただけません!これはオンブローの領民として当たり前の・・・」

「良いのだよ、物は高価かもしれぬが、アシュリーにとってはちょっと行って採って来た程度の物、大して労力もかかっておらぬのだろう?」

「はい!ちょっと行って、スパッと切って、ササッと帰って来ました!」


「スパッと切って・・・」


「ほーら、アシュリーにとっては簡単な事なのだよ。誰も損はしておらん、ならば頑張っている者が得をしても良いのではないか?」

「そんな・・・」

「その分、領民の為に働いてやってくれ」


「・・・はい。承知しました!」


 ふむ、これで私は泥棒にも横領にもならず、良い事をした事になるのではないだろうか。

 ありがたい!!


「よし!メイスン家の者よ!オンブロー復旧の為に精一杯働くのだ!」

「「「おーー!!」」」



「さて、アシュリー。お前は、残りの家を建てる準備をしなさい。必要な柱の数を数えてもらい、どんどん造って行けば良い。あの者達が手伝ってくれるであろう」


 そう言ってお父様が見た方には、メイスン組の組員、生徒組、応援組の人達、そして・・・収穫が終わっただろう村人がずらーっと並んでいた。


 うわぁ…いっぱいだ。



「アシュリー様!私達も手伝わせてください!」

「俺らの為にこんなに頑張ってくんさる人がいるんだ、俺らが怠けているわけにゃあいかん!」

「いつまでも悲しんでちゃ死んだ父ちゃんに怒られっから!」



 これはやるしかないな。

 最初からそのつもりだったのだ。


 よし、一気に行こうではないか!

 一気に!!



「分かりました!皆さん一緒に頑張りましょう!」


「「「おーーー!!」」」





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流石アシュリーのお父さん、三方一両損みたいな納め方した、いや、誰も損はしてないけど…
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