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15話 勘違いからの規格外

誤字報告ありがとうございますm(*_ _)m

見つけて頂き、とても嬉しいです!

 あー良かったー!

 木剣をぶち折った時はどうなる事かと思ったけど・・・全く怒られなかった!


 トーマスお兄様は、怒られると思ってビビってる私を抱っこしてくれたりして気を使って優しくしてくれた。

(ただの抱っこ好きという気もしないでもない)

 お父様にも全く怒られることもなく、魔力解放について全部バレても怒られることもなく、逆にすごいって褒められてしまって恐縮恐縮。


 これは、魔力解放した当初の目論見が達成されたということでいいのでは?

 そういうことにしておこう。うん。



 今日のトーマスお兄様との訓練では、どうしてもお兄様に勝てなくて、悔しくて、カーッとなったら拳で向かっていた。

 自分でも驚いた程の衝動的なものだった。


 お父様との訓練は、もう力の差がありすぎてこんな気持ちにはならなかったかもしれない。

 お父様は強すぎる!

 何という名前だったかな?あの寺院の前にで〜んといらっしゃる・・・金剛力士像だったか?

 いや、動かない辺りは不動明王か?

 いや、手が幾つもあるほどに感じる辺りは千手観音か・・・。

 どれも仏像のイメージだ!



 トーマスお兄様との一戦には少しの好機が見えたりするから欲がでたのだろうか。

 もちろんお兄様に勝てた事などないし、好機と思われたものも全てお兄様の戦略でもある訳なんだが・・・。

 皆は身体強化魔法だと言うが、どうやったのか自覚がないのが残念だ。



 実を言うと、

 拳で木剣をブチ割った時はすごくスカッとした!


 自分の血が騒ぐのが分かる。


 最近、お父様との体術の模擬戦ができる日がかなり少なくなった所為かも知れない。

 剣の鍛錬もやり甲斐はあるが、やはり闘いは殴ってなんぼだと思ってしまうのだ。

 蹴りも繰り出したい。


 剣で戦っている時は、騎士の闘い方ではないと思って拳や足技などは我慢していたのだが、一度拳を使ってしまったら、何だか諦めきれなくなって来た。殴ってなんぼ、蹴ってなんぼの闘いがしたい!


 前世で死ぬ前はムエタイの訓練を一番頑張っていたからだろうな。世界チャンピオンの座を手にした虎兄に心酔していた自覚はある。格闘技は何でも好きだが、自分に一番合っていると思っていたしなあ。

 私も女子チャンピオンになりたかった。

 死んでしまって、その志を遂げる事が出来なかったのはかなり心残りである。



 漫画も色々読んだけど、友人にいつも笑われた愛読漫画は『北斗●拳』だったし、『DRAG●NBALL』もジャッキ●チェンの映画も大好きだ。

『ベスト・●ッド』はどれも最高に面白かった!

 とにかく格闘技でも体術派なのだ!



 身体強化ができる様になったら『北●百烈拳』できるかな・・・。

 あ、でも『か●はめ波』も挑戦するとしたら魔法かな?気功魔法とか無かったよな?何魔法になるだろう・・・。




「お嬢様、お着替えはどちらにいたしましょう」


 エリーの問いかけに思考が現実に引き戻された。


 私の水魔法で皆びしょ濡れになったので、着替えてから昼食とのこと。食事をしながらまた私の魔法について話し合うのだとか。


 自分でサクサク説明できれば、もっと話は早く進むのだろうが、いちいち言葉を選びながら話す内容や口調を考えているので、どうしても言葉足らずで遅い。

 いっそ、話し方もこのままボロを出そうか・・・


 はっ!

 また思考が危険だ!


 この上私が全く別の世界の人間だったと知ったら、お父様達の受けるショックはどれほどのものか。もう優しくしてくれないかもしれない・・・。


 それはダメだ、隠し通そう。



 そうだ、お父様達なら私の属性も分かるようになるかもしれない。もしかしてこれからは魔法も教えてもらえるのか?


 もうあまり興味はないから少し面倒なんだが・・・お父様もお兄様達も私の魔法に興味津々のご様子。

 私は身体強化さえ出来れば満足なので、身体強化だけ教えてくれないかな・・・。





「アシュリー、先程の水魔法はどうやったか説明できるかい?」

「本に書いてありました・・・通りに」

「本にはなんて書いてあったのかな?」

「身体の中で魔力をモミモミ・・・」


「もみもみ・・・?」

「あ、ちがいます。揉む、です!」


 ついイメージしている時の事が言葉に出てしまい、慌てて訂正して続ける。


「だから、こう、柔らかくする様に」


 テーブルの上のパンを手に取って、モミモミしながら説明する。


「・・・それで?」

「全身から魔力を放出できるようにして・・・詠唱しました」


「「「全身!?」」」


 皆が一斉に驚愕の表情をする。何故だ?

 何か不味い事を言ったのだろうか・・・。


「あ、緑魔法を使ったときは・・・こう、木に触って、手から魔力を流しました!」

「そうか、どこからでも思った通りに放出できるのだな」


 あれ?もっと不味い?


「父上、アシュリーは・・・」

「ああ、既に有り得ない程の最上級の域に達している。身体強化を無意識に発動したとしても不思議はあるまい」


 え?上級?


「あの・・・身体強化魔法は上級魔法なのですか?」

「ああそうだ。騎士団の連中でも使える者は限られている」


 なんと!


 身体強化魔法の使い方がわからなかったのは、上級魔法の事が書かれた魔法書を読まなかったからであった。


 くっ・・・上級の魔法書も読むべきだった!


「あとな、我が家の魔法書に書かれていたのは魔力を『揉む』ではなく、多分『捥ぐ』だ」


「・・・もぐ?」


「ああ、5歳のアシュリーには難しい言葉だったかも知れぬ。確かに『揉む』とは文字が似ている。魔法書によって多少言い回しが違うが、我が家には魔力解放の文献は一つしか無かったはずだからな…、あの文献は数百年前のもので古文で書かれているから、独特な表現を間違えて覚えてしまったのだろう」


「魔力をもぐ、とは、どのような・・・」


 大きな勘違いにかなり動揺はしているのだが、間違いは正さねばならない。


「そうだな、私は学園で、たくさん生っている木の実から必要なだけ千切るという感覚だと教えてもらったよ」

「私は桶に入った水から、必要なだけ掬うと習った」

「まあ似たようなものだな」


 どうやら『必要なだけ取る』というのは同じなようだ。一応、放出する魔力は多くしたり少なくしたりしていたので、特に間違ってはいないのではないか?


「父上、アシュリーが魔力を使う前にもみもみと揉んでいた事と、あの膨大な威力と何か関係がありますか?」

「うむ。これは自分達で実践してみるしかなかろう。その価値はありそうだ」

「それよりも魔力の巡り方ですね。やはり魔力解放の方法でしょうか」

「アシュリーの魔力は既に全身に行き渡っているのは疑いようもない事実。皆がこの目で見ましたから」


 なに?魔力は全身に巡らせるものじゃないのか?


 目を見開き驚いて固まっている私を、ハロルドお兄様が可哀想な子を見る目で見ている。


「ふふっ、アシュリー・・・普通、魔力解放は手に魔力を巡らせる程度で終わるんだよ」



 なんと!驚愕の事実!



「アシュリーはきっと最初から全身に魔力を巡らせることができたんだね。すごいね!」

「すごいで済む程度の話ではないが・・・」

「時間も長くかかっただろうし、かなり苦しかったと思うが、凄まじい精神力だ!さすが我が娘!儂も身体全体に巡らせておる!」

「うん、怖いくらいに父上と同じ・・・」


 ハロルドお兄様、怖がらないで!


 そういえば、魔法書には全身にとは書いてなかったかもしれない。勝手に全身だと思い込んでいたということか。でも「手に」とも書いてなかったよな?

 確かにあの苦痛は長かった・・・。

 フルマラソン完走したくらいかな?マラソン大会に出場したことはないけど。

 でも、終わったらスッキリしたよな?


「でも、終わった後は、何といいますか…身体に力が、沸いて来ました・・・」


「「「「え!?」」」」


 あれ?

 これも違うのか?


「あー、アシュリー?魔力解放が終わった直ぐのことかな?」

「はい・・・」

「そうか・・・」


「本来なら、心身共に疲れ果てているはずなんだがなぁ…」

「そうですね。魔力解放が終わった子どもが癒しの魔法を必要としないなど聞いたことがないですね」

「うーん…アシュリーの魔力解放に何か違いがあるのだろうか」


 変だな?

 終わった後の方が力が漲っていたぞ?

 もしかして、全身虹色に光ったとか言ったらまた驚かれるかも・・・黙っておこう。


「どうやって身体全身に巡らせたのかな?教えてくれる?」


「えーと・・・」


 心臓とか毛細血管とか言ったらドン引きだよな。何か良い表現はないか?


 ・・・ああ、子どもらしく花に例えよう!


「あの・・・お花の茎や葉の先までお水が行き渡る感じで・・・」


「へえー!」


「葉の筋みたいなのをお水が通っていくような・・・」


「ほぉー!素晴らしい!」

「想像力も大したものだ!」

「魔法はイメージが大事だからね!

 アシュリーは魔術師の特性も兼ね備えているみたいだ」


 皆が大絶賛である。

 これは怒られない?


「アシュリーには葉脈のように全身に細かく魔力が行き渡っていると考えられるな」

「そうですね、一本の筋ではないと思います」

「規格外に大量放出できるのは、その葉脈のように巡らせることに関係があるのかもしれません」

「これは簡単には実践出来ぬな」

「一本の魔力の道を作るのにも苦労しましたからね」



「魔力が目に見えるといいのに・・・」


 私の手を取り、じっと見つめるハロルドお兄様が怖い。


 普通は一本の魔力筋なのだろうか?


 因みに、イメージしたのは葉脈ではなく血管だ。

 毛細血管を繋ぎ合わせると地球を何周かするくらいの長さになるのだ。私の身体は魔力管ばかりになっていると思う。

 見られたら恐ろしい・・・。


 それより、私の身体大丈夫か?


 まあ、健康そうだから問題ないか。




 皆が興奮気味に進んだ魔法会議は、私の説明を元にそれぞれが検証するということで、昼食が終わると同時にお開きとなった。

 皆は仕事があるだろうから、いつまでも私の事だけに構ってはいられない。


 本心では・・・

 これ以上面倒くさい事にならず終わってほっとしているだけである。

 身体強化については、また後日教えてもらえるだろうと思うことにする。





「お嬢様」


 家族会議からのほほんと部屋に戻った私に、エリーが神妙な顔付きで話しかけて来た。


「私には魔力がございませんので魔力解放の苦痛は分かりませんが、お嬢様がそのようにお辛い思いをしていたことに全く気が付きませんでした・・・。

 しかもたった5歳の奥様が亡くなられたばかりの頃と仰るではありませんか!

 乳母として失格でございます!」


 いやいやいや!

 そこまで辛くなかったから!

 中身18歳だったから!

 終わったら力が漲っていたから!


「エリー。そんなこと言ってはダメ、です」

「お嬢様!なんとお優しい・・・」


 いやいやいや!

 罪悪感溢れそうだからやめて!


「お嬢様はもうすぐ魔法学園へ入学いたします。そうなればこの乳母はお嬢様のお側にはいられません!

 お嬢様の体調に気を配る事もできなくなるのが残念でなりません・・・」


 そうか、王都へ行ったらエリーは居ないんだ。それはちょっと困るかなぁ?


「こうなれば同じ歳の娘のクラリッサをお嬢様の専属侍女としてお仕えさせていただきましょう。多少魔力があるクラリッサですから学園にも入学する事になっております。

 今のうちに鍛えて、立派な侍女にいたしましょう!」


 友達がいない学校というものは寂しいが、一緒に行けるクラリッサが居るから安心していた。その彼女が専属侍女になっても特に問題はないと思われる。


「ありがとうエリー。でも、鍛えなくても大丈夫よ?一緒に学園に行けるだけで十分だわ」


「いいえ!慣れない王都での生活には、今からお嬢様の全てを理解し、何時でも万全の状態に保てる術を身に付けなければなりません!

 ええ、クラリッサなら大丈夫でございます。既に見習いメイドとして働いておりますので、ほとんどの事は身に付いております」


 そうなのか、クラリッサはもう働いてるんだ。同い年なのに偉いな。



「長男のヘクターは専属従者にいたしましょう!ヘクターは2歳上ですので、既に学園に行っております。王都に行かれましたら、ヘクターに何なりとお申し付けくださればよろしいかと」


 え?従者なんて要らないんだが・・・

 しかもヘクター学年違うんだよね?


「エリー?そこまでしてくれなくて、いいわ」

「そういう訳にはまいりません!

 お嬢様には何不自由なく王都生活をしていただかねばなりません!」


 うーん・・・これは引きそうにないな


「お父様に・・・お聞きしてみるわ」

「ええ、きっと旦那様にも良い考えだと仰っていただけますわ!」




 エリーの言う通り、お父様は大賛成だった・・・。

 何故かセバスチャンまで。



 入学まで半年もないので、直ぐにクラリッサが専属侍女として付くことになった。

 ヘクターには手紙を出して知らせるらしい。


 専属侍女とは、いつもお世話してくれるメイドがクラリッサになるというだけではないのだろうか。専属になれば何かが変わるのだろうか。


 疑問は残るが、特に不便もなさそうなので安易に構えていた。




 今は、そんな自分を崖から突き落としたい・・・。




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