『2024年』が殺されたッ!?
──『2024年』が殺された。まだ1年しか経過していないのに、彼は殺された。
俺は彼が殺された現場へ急行し、現場に群がる聴衆たちをかき分け、規制線をくぐった。そこには『2024年』がただ一人、血を流して倒れており、蛻の殻と化していた。
「『2024』……。お前は良い奴だった」
雨に滴れる中、俺は動くこともない彼の傍に静かに腰掛けた。周囲は鑑識たちによる作業で慌ただしい。今年最後の1日だというのに、騒がしい。
「──さん。お疲れ様です」
横から声が聞こえてきたので、俺は立ち上がって傍へ視線を向けた。そこには、旧知の仲で同僚の姿が立っていた。雨の中、彼はビニール傘を差していたが、肩を見ると少し濡れていた。
「ああ。状況は?」
「被害者は何者かによって背中を刺され、そのまま息絶えたようです。今は鑑識による作業が終わるのを待っているのですが、すぐに事件が終わりそうです」
「そうか。なら良かった」
そう言い、その場を後にしようとした時、突如、カチャリ、と冷たい金属の音が周囲に響き渡った。一瞬だけ周囲を見渡すと、自分の右手首に手錠が掛けられていた。その手錠を掛けた主──『2025年』が俺の目を射抜くような表情をしていた。
「あなたですよね。『2024年』を殺したのは」
暫し、静かな時間が流れる。
冷たい雨が地面を叩き付ける。
低い笑った声が、俺の鼓膜を響かせる。
「ああそうだ。俺だ」
「やっぱり。……動機は?」
「悔しいんだよ。まだ1年も経過していないくせに、俺のことを後輩面しやがって」
「……」
「だからよう、俺は殺したんだ。彼を」
俺はニヤリと笑みをつくった。すると、『2025年』は突如として俺の顔を殴った。ビニール傘が天に浮かんだのを一瞥した後、俺は自分の頬を、冷たい雨に滴れる中、触った。
「何が悔しいんですか! なんで悔しがるんですか!」
「……」
「僕が今まで見てきた先輩の姿はそんな姿じゃ、なかったはずです! なんで……なんで、先輩は彼のことを……」
『2025年』がすすり泣く。そんな彼を一瞥しながら、俺はゆっくりと立ち上がり、両手首を差し出した。
「ほらよ。ちゃんと逮捕しなきゃ、格好つけられねえだろ」
その俺の言葉通りに、『2025年』は俺──『2023年』は一筋の涙を流しながら、『2025年』と共にその場を去った。




