命とは何なのか
マンションの屋上で。:17転生目
とあるマンションの8階の部屋で七瀬は目覚めた
すぐに二度寝をしてしまいそうなぐらいフワフワなベッドの上。
七瀬は寝返りをした。
窓から溢れ出る朝の陽射しを遮るかのようなカーテンが顔の前まで迫ってくる。
ソレを避けるかのように七瀬は再度寝返りをした。
ガタッ…
七瀬はベッドから落ちた。
落ちた衝撃により七瀬は深い眠りからようやく目を覚ます
「ふふぁ…」
七瀬は欠伸をしたあと首をポキポキと鳴らし手元にあるスマホで時間を確認する
14時39分
七瀬はいつもより少し早く目覚めた
ぼーっとしながらも七瀬は体を必死に起こしてベッドの上に置いてあったペットボトルの水を飲む
そのまま、トイレ、歯磨き、着替えを済ませる
七瀬のいつもの過ごし方だ
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八村七瀬 (偽名)
年齢:不定 (平均的17歳前後)
性別:男
主な転生先:荒廃した世界、一般社会
特技:転生場所への適応、気配消し
転生理由:暇つぶし
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この世界では死んだ後に転生が行われる
転生先はランダムであり、誰も推測できない
転生した時、基本は記憶が残らないが
時々転生前の記憶を持ち合わせる人間が存在する。
そしてこの世界には訳あって転生を繰り返す者。
《転生者》が存在する
七瀬もその内の一人だった。
転生者は転生後、種別こそ変わるものの、人間時の見た目や、本人の技量、性格などの本人を表す様なものは変わることが無い
七瀬は現在、ただの高校生になっている
普通に生活し普通に学校に行く
ただの平凡な高校生だ
今日は日曜日
日曜日は家でゆったりするのが七瀬の生き方である
朝の用事を済ませた七瀬は少し遅めの昼食を摂ることにした
七瀬には自炊能力が備わってないのでもちろんカップ麺にする
蓋を開け、火薬、粉末スープを入れ
お湯を線まで入れたあと、3分待つだけで完成する
なんとも簡単な工程だがこれだけで美味いものが食べれてしまうので七瀬の料理スキルはいつまで経っても磨かれることは無い
-3分後-
ピピピピ…ピピピピ…ピピ……
セットしていたタイマーを止めて割り箸を割
蓋を開ける
七瀬は両手を合わせて
「いただきます」
いくら一人とはいえ、食べ物を食べれるという感謝の言葉は忘れてはいけない
カップ麺を食べ終えるとカップ麺のゴミはそのままに。部屋を出た
階段を登って行き、屋上に着いた
屋上には特に変わったものはなくただ平然とした平らな場所だ
ここで何をするのか、答えはひとつだ
《飛び降り自殺》
最もオーソドックスな死に方だと七瀬は思う
ただ高所から落ちるだけ
当たり所が”悪ければ”死なないが
高所があるところでは1番手っ取り早い
更に七瀬の住んでいるマンションは外に鉄格子が付いているのでますます都合がいい
七瀬は屋上の柵を越える
静かな風の音が心地よい
覚悟を決め、飛び込む
はずだった
「はいストップー」
「?!」
後ろから何者かに腕を掴まれた
だが、後ろを見なくても誰だかわかる
「まだ死ぬのは早いよー七瀬ー」
「一か、何だよ」
一一
七瀬の知り合いである
一も転生者であり七瀬とは4回目の転生で出会った
転生回数は七瀬と同じ17回である
とてもうるさく頼れないやつだが、常人離れした身体能力を持ち合わせている
「なんで止めるんだよ」
「なんでって言っても、俺がまだ飽きてないから、俺が飽きるまで生きててもらうよ。死ぬ時は一緒だから」
七瀬が一の手を振りほどこうとしても、常人離れしたその筋力から繰り出される掴みはなかなか振りほどけない
「腕。痛いから離して」
「無理、落ちるじゃん」
七瀬の願望はあっさりと否定された
「この人生が始まって早半年、もうやることが無くなったんだ。別にいいだろ」
「やだやだー!死ぬ時は一緒だよぉ!」
一の掴む力がより一層強くなる
「ガキかよ。いてぇから、いい加減離せ!」
七瀬は掴まれた腕を思いっきり体の近くに引き寄せた
「あ…」
「あ……っ!」
手を思いっきり引いた衝撃で体が外側に引っ張られ七瀬の足は重力に従い地上から離れた
「な、七瀬ー!!」
一の体は柵から半分身を飛び出し精一杯手を
伸ばした
「それじゃあ……」
そういうと七瀬は手を前に伸ばし…
「またね……」
グシャッ…
七瀬の体は下にあった鉄格子に刺さった
6月19日 15時12分 日曜日
八村七瀬 《高所からの飛び降り、及び鉄格子に刺さり出血多量により死亡》
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ネクロマンサーと殺人鬼:4転生目
目を覚ました。
暗く薄気味悪い廃墟のような場所。
床はコンクリートで出来ていて所々苔やツタが生えている。
時刻 2013年8月7日3時52分月曜日
日本に転生し、殺人鬼としての人生を過ごしていた
殺人鬼の仕事はなれると簡単なものであり
人目の付きにくいところに待ち伏せ
1人か2人程で歩いている人を奇襲し
逃げれないよう、片足首に一発
声を出されないように喉に三発
拳銃の弾丸を打ち込む
あとは傷をなるべく付けないように体の部位を少し大きめのナイフで解体し袋に詰めて同業者の車で持ち帰る
持ち帰った”ブツ”は闇取引などに使うことで生計を立てている
ナイフ、拳銃、袋を次々と同業者の黒塗りの車の中に入れ始める
今日も生活のために人殺しを行う
車で現場まで移動する
今回の待ち伏せ場所は森林近くの公園
「いや〜まさかこの業界に転生者が来るなんてね〜」
同業者の男、山部 遊斗は言った
「どうだい君。この業界には慣れたかい?」
「はい。少しづつですが」
山部は先輩に当たる男だ。
だ最近まで業界を降りようと考えていたらしいが、後輩が来たことにより業界を続けることにしたらしい
2人は少しばかり雑談をして気づいたら公園の近くまで迫っていた
車が近くの駐車場に止まると
荷物を持ちドアを開け
「行ってきます」
と、一言いい公園に向かった
山部はとても見送る笑顔とは思えない顔でこちらに怪しい笑顔を送り続けている
公園に着いてみるとあまりにも殺風景だった
滑り台は愚かブランコすらない
広く、殺風景な公園にあるのは砂場とベンチ…そして
隠れるには丁度よさそうなトイレがある
個室の中で誰かが来るのをずっと待っていた
幸いトイレは少し大きめで個室は4個
家のような形をしているトイレにはそれぞれ前後に扉が着いていた
逃げる時に便利である
時刻は4時30分
明け方だ
現在公園にいるのは自分のみ
朝方に来ることにより誰にも見られずに待ち伏せ場所へ行くことが出来る。
更に明け方に外を出歩く人間は極小数
安定して犯行に及べる
もし外の風景が分からないような場所に待ち伏せする場合は山部が遠くから監視してくれているため無線で状況を把握する事ができる
今回は無線で教えてもらうことにした
しばらくトイレの個室で人を待っていると
「…今回の獲物が来た、推定18歳男性
現在ベンチに座っている…」
「…分かりました。気を引き締めておきます…」
無線での会話が終わると拳銃を両手で持ちドアの裏に隠れる
「それで……が…って感じで~~~」
獲物は1人ではなく誰かと話しているらしい
だがトイレは個室で話している内容がよく聞き取れなかった
そんな時
「…聞こえるか?…」
「…はい。どうしましたか?…」
「…見られている。今回の相手、只者では無さそうだ」
「やばそうだったら1度引くということも考えておくように…」
「…了解です…」
どうやらこちらに気がついているらしい
(より気を引き締めなければ)
そんな事を考えている時
「…逃げろ。今直ぐに」
まじか…と、思いつつも先輩の命令なので逃げなければならない
隠れるために開けていたトイレの個室のドアの裏から出てきた
だが…
「?!」
魂だ。
丸く、周りに煙のようなものをまといふわふわと淡い光を漂わせている
この世界の人間は死ぬと転生する
だが転生前に魂の中にある《核》を破壊されると転生できなくなってしまう
核を破壊される、即ち本当の死を意味している
ここにいる魂もきっと誰かに核を破壊されたのだろう
可哀想にとも思いつつなぜここにあらわれたという疑問も抱いた
そんな事を思いつつも七瀬は魂の横を素通りする
フワ…
魂が着いてきた
どこまで行っても着いてくる
何か恨みがあるのではないかとも思った
殺人鬼という職業柄、人を殺すというのは日常茶飯事である
そして殺す時は必ず核を仕留めるため相手は転生できなくなる
相手は復讐目的で殺しにくることが不可能になるので自分の核が破壊される確率は低くなる
時々殺された魂は現世で漂う事があるが
普通は生きている者の目には映らない
だから今、目に見える魂についてとても不思議に思った
そんな事を考えつつも山部からの逃げろという命令に従い全速力で走る
状況から察するに山部はもう無事ではないだろう
もし生きてたとしても致命傷辺りは負ってるはずだ
この確証の無い考察により車に戻るという選択肢を失ったため自分たちの拠点に戻ることにした
拠点まで走った
後ろに着いてきていた魂はいつの間にか消えていた
もっと見たいなと思いつつ前を走る車に目をやった
山部の車だ
黒光りしている車体にリムジンの様な形をした車だ
死んでなかったのかと思いハンドサインで乗せてもらおうとした
だが不可解な事に
助手席にもう1人乗っている
更に言えば後部座席にもう1人
計3人が山部の車に乗っていた
今回の業務に来たのは山部と自分の2人のみ
先程の獲物が乗っている確率が高い
捕らえたか捕らえられたか
獲物を捕らえていて欲しいという願望を持ちながらハンドサインを送り続けた
ハンドサインが届いたのか、車は急停車し、ドアを開けた
だが出てきたのは山部では無く
「どうも。はじめまして」
「ちわーす!」
礼儀正しいフードの女と元気の良いパーカーの男が現れた
「はじめまして。どちら様ですか?」
身構える
「自己紹介ですか…
私は九十九零香と申します」
「俺、一一っていいます!漢字の一が二つです!」
「そういう君は?名を名乗らないのかい?」
「……名前…」
現在の4転生目まで人と関わることがほとんど無かったため、自らの名前を忘れていた
しばらく考え込んでいると
「そんなに考え込むということはなにか事情があるようだね?例えば………」
そう言って間を開けた女は言う
「転生者だったり…フフッ…」
無駄に察しが良いと感じた
少し後ろに下がる
「御明答…と言ったところですね」
「それがどうした」
「いえ…なんでもありません。」
零香は続けて言う
「ですが、名前が無いまま生活していると不便でしょう、現に私もあなたをどのように呼べばいいか考えていたので」
「好きに呼べばいい」
「そうですか。なら私達があなたの事を名ずけてもよろしいでしょうか?」
予想外の返答に少しばかり驚く
だがそんな様子を無視して
「そうですね…今日は何日でしたっけ?」
「8月…10日?だった気がします!!多分!」
「曖昧な答えじゃ分かりませんよ…今日は8月7日です」
わかってるなら聞くなよ。と内心ツッコミを入れると
「そうですね…8月7日という事で七村八…」
「八八七七とかはどうでしょうか!!分かりやすくていいと思いますよ!!」
一が割り込んで話してくる
「安直すぎです…私の考えた七村八瀬の方がよろしいと思います」
どちらも微妙だなと考えつつ自分の名前も考える
そして自分の名前を考えつくと2人の口論を遮り…
「じゃあ2人の案を取って苗字に八、名前に七を入れて『八村 七瀬』にする」
「八村七瀬…ですか良いネーミングセンスをお持ちですね…ではあなたはこれから八村七瀬という事で…」
急に決まった自分の名には慣れないものの
名前が決まって良かったと七瀬は安堵する
「そういえば九十九さん!今回ここに来た目的って何でしたっけ?」
「おっと…すっかり忘れていましたね」
零香は少し間を開けてから本題に移る
「我々の職業は 死霊術師 今日ここに来た理由は、私の愛しい魂さん達が殺人鬼に復讐したいと言うので少し捜査をしに来たのですが」
その瞬間、七瀬の背筋が凍る
「どうやら…もう目的は達成したようですね」