表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/16

序章――生徒の名簿

◆幻想物語『透明で空白な世界より』(原題:悪魔の鎖)


どうか綴る言葉に羽が生えて飛んでいきますように祈りを込めて紡ぎます。

笑って頂けましたら幸いです。読んだ方を笑わせたくて書き綴る物語です。


=回答欄= ※特に回答する必要はありません。登場人物の中から記入可能でも

この物語は謎解きを主題といたしません。お遊び程度に捉えて頂けたら幸いです。



◆☆* 宝石の人 *☆◆ 数字は宝石の人になった順番を示しています。


1.オパールの猫四姉妹

彼女たちがどのようにして『宝石の人』になったのか、詳細は不明です。

ただし、宝石の人になると、新たな宝石の人を生み出すことができるらしいです。


元々の猫四姉妹は、無邪気に屋敷の庭を駆けまわりながら「ごっこ遊び」を

楽しむ少女たちでした。その姿を記憶しているのは、序列5位のいたちまでです。


動物としての姿は、キジトラ長毛で、短くふさふさした鍵尻尾をもつ雌猫です。

この猫は、猫四姉妹の三女が内緒で大切に可愛がっていた半野良猫でした。


•長女猫:

 妹たちを唆す、一番狡猾でサイコパスとも呼べる存在。美しく、聡明な少女。

•次女猫:

 読書好きで賢明だが、癇癪持ち。激しい憎悪と破壊衝動を秘めた美少女。

•三女猫:

 恥ずかしがり屋で動物好き。けれど姉たちには逆らえなかった気弱な少女。

•四女猫:

 家庭教師の先生が大好きだった、甘えん坊で無邪気な愛らしい少女。



2.シトリンの犬:

もとは猫四姉妹の屋敷に住み着き、鎖にも繋がれず、自由気ままに街を

闊歩していた野良犬でした。ある日、とある山の神が老人の姿となって

人里に下り、彷徨っていたところ、四姉妹に捕らえられます。


やがて牢に繋がれ、最終的には四姉妹全員に嬲り殺されてしまいました。

神である彼には本来、死ぬ必要などありませんでした。にもかかわらず、

与えられるすべての苦痛に悲鳴を上げ、身体中から血を流して苦しみ藻掻き

四姉妹の目の前で死んでみせたのです。


その理由は、生き返って彼女たちを驚かせようという、

ただそれだけの無邪気な遊び心からでした――。



※ この存在が四姉妹に特別な力を与えたことにより、

この物語の悲喜劇が幕を開けます。



3. ピンクトルマリンの兎


もとは、猫四姉妹が暮らす屋敷の庭で飼われていた兎の群れの一匹でした。

四姉妹が兎たちをいじめ殺す姿を目撃した父親は、厳しく叱責した上で、

優しく諭し、二度としないように言い聞かせました。


その出来事を恨んだ長女猫が父親を殺害し、彼を宝石の人としたのです。

彼女は父親を踏み躙り、犯罪の協力者とすることで、その支配を完成させました。


かつては何もかもに恵まれ、誰もが羨む立場だった彼ですが、いまやすっかり

狂わされてしまいました。



4. ラピスラズリの鼠


もとは屋敷の蔵に住み着いていた鼠で、猫四姉妹の家の執事でもありました。

父親の死後、口煩さを嫌った長女猫に唆された次女猫と三女猫に惨殺されます。


けれども、金儲けの才能を買われ、犯行資金を調達させる目的で宝石の人にされたのです。

その後、長い間、誰よりも孤独な立場に置かれていました。



5. 本翡翠の鼬


もとは猫四女が大切に可愛がっていたフェレットです。

屋敷に住み込み、発声のできない孤独な家庭教師として四女に勉強を教えていました。


けれども、長女猫の唆しによって、嫉妬に狂わされた四女猫に殺害されてしまいます。

その後、四女猫は深く悔いて嘆き、自らの手で鼬を宝石の人にしたのでした。



◆猫四姉妹の融合について(補足)


この事件を経て、猫四姉妹は融合し、一塊のバケモノへと変わり果てました。

見た目こそ「普通の人間」に見えますが、犯罪を愉しむときには自在に

分裂することもできるため、始末に負えません。


※ 宝石の人は、融合と分離を自在に行う存在であると、認識しておいてください。



6. カルサイトの羊:


もとは、猫四姉妹が「生贄ごっこ」で殺したとされる羊。

その遺体を用いて、鼠が協力を求め、宝石の人として蘇らせた存在です。


彼は元々、母子家庭で育った、貧しくも真っ直ぐな心を持つ青年でした。

幼い頃から努力を惜しまず、過酷な環境の中で医師を志し、やがてその免許を手に入れます。


白髪混じりの静かな風貌と、どこか時空の外を見つめるような眼差しを持ち、

“この世界の痛み”を誰よりもよく知っている人物です。



かつては、時空を彷徨う旅人として、意味も出口もない時間の渦を漂っていました。

そして、宝石の人となったその瞬間――

彼を縛っていた名もなき呪いは、静かにほどけていったのです。


※ 彼は「特別枠」として位置づけられる、物語の鍵を握る存在のひとりです。



7. 天珠の島梟:


もとは、ある学者の家で静かに眠っていた、剥製の島梟しまふくろう

生前の彼は、山奥に隠れるように暮らしながら、木彫や陶芸に没頭する寡黙な青年でした。


ある日、その類いまれな陶芸の才に目を留めた鼠が、山を訪ねてきます。

鼠は、島梟が持つ**“人の魂に刻まれた記憶を覗き見る”という不思議な力に目をつけ、

彼を宝石の人として迎え入れた**のでした。


何をさせても優れた作品を作り出す、卓越した才能の持ち主です。

(※ この人物も特別枠に該当します)



8. 青金剛石の虎:


もとは、大きな酒場に飾られていた剥製の虎。

かつてこの虎は、店の用心棒として知られ、腕に覚えのある男でした。


ある日、「腕試しごっこ」と称してやってきた猫に決闘を挑まれ、敗北します。

誇りと肉体を打ち砕かれ、静かにその生を終えた彼を、

その酒場を経営していた鼠が宝石の人として蘇らせたのでした。


彼は文字も読めない文盲の中年。

力には自信があっても、言葉を持たぬがゆえに、哀れと嘲笑の中で生きてきた存在です。


宝石の人となった今でも、その拳には戦いの記憶が焼きついており、

言葉より先に拳が動くことがある――それが、彼の悲しき習性でもありました。



9. ブラッドストーンのキメラ猫(本体は白い猫):


もとは野良の白猫でした。

黄色い犬の姿となって街を彷徨い、遊んでいた犬と出会い、仲良くなります。

しかし重い病を抱えていたことに気づかず、病状は悪化。

彼女は九歳で命を落としてしまいました。


十数年の時を経ても、少女との思い出を忘れられなかった犬が彼女の墓を暴き

宝石の人にしたのです。

これは、犬の無垢な愛情が引き起こした、もう一つの犠牲でした。



10. ガーネットの蝙蝠:


もとは道端で死んでいた蝙蝠で、キメラ猫の生まれつき全盲だった異父弟です。


彼は、キメラ猫(姉)の内臓機能が回復しなかったため

それを補助する目的で宝石の人にされた青年でした。

この蝙蝠もまた、犬の犠牲者の一人です。



◆ 猫と蝙蝠の融合について(補足)


序列9位の猫と10位の蝙蝠は融合し、一時期『蝙蝠猫』として存在していました。

その姿は、背にオレンジ色の蝙蝠の羽をつけた、青い目の白猫です。


人格は、猫だった頃も、蝙蝠だった頃もありました。

ただし、一つの身体に二つの心が同時に存在していたのかどうかは不明です。


その後、序列17位の蛇が融合し、蝙蝠猫は“黄緑の蛇の尾”を持つ

キメラ猫へと変化します。



11. ローズクォーツの桜文鳥:


もとは、鼠が大切に飼っていた友人のような存在の桜文鳥。

その正体は、とある事情により鼠が引き取ることになった孤児の少年でした。


彼はやがて、「果し合いごっこ」と称する戦いに巻き込まれ、

猫たちと対峙することになります。

あまりの強さに怯んだ猫四姉妹は、四体に分裂してまで彼を倒そうとし、

ついには卑怯の限りを尽くして、ようやく勝利を収めたとされています。


それほどの猛者でありながら、彼自身は暴力を憎み、

実は深く重い線維筋痛症に苦しみ続けていました。


やがて、床に伏すことが日常となり、

彼は自身の心の中に広がる空想の世界を旅するようになります。


そして――

その旅の記録として、数々の物語を書き綴るようになったのです。


いまもどこかで、ひとり静かに、まだ見ぬ誰かのために

物語を綴っているかもしれません。



12. スノーフレークオブシディアンの狼:


もとは、猫四姉妹の屋敷に飾られていた剥製の狼。

生前の彼女は、複雑な事情を抱えながらも、兎に囲われるようにして暮らしていた、

いわば“愛人”のような立場の女性でした。


けれども、やがて猫に見つかり――殺されてしまいます。


その死に耐えきれなかった寂しがり屋の兎が、彼女を宝石の人として蘇らせたのでした。


彼女は他の誰よりも静かに、そして誰よりも深く、他者の痛みに共鳴することのできる人でした。

その眼差しはいつもどこか遠くを見つめていて、

言葉を交わさずとも、その存在が「味方」であることを伝えてくれる、

そんな優しさを持っていたのです。


けれど――

彼女は今も、己の過去を語ろうとはしません。

ただ、誰かを守るために立ち上がるその背に、

過去のすべてが刻まれているのです。



13. ルビーの鹿:


もとは、森の奥で朽ち果てていた鹿の死骸。

その傍らには、口いっぱいに落ち葉を詰められたまま命を落とした少女の遺体がありました。


偶然その場を通りかかった羊と、**当時“羊の鞄持ち”をしていたキメラ猫(人格は蝙蝠)**が、

その遺体を発見します。


少女を哀れんだ蝙蝠の懇願が、羊の心を動かし、

彼の手によって少女は宝石の人として蘇らされることになったのです。


後にわかったことですが、彼女はかつて狼の実の娘でもありました。



また、彼女は生前――

猫四姉妹に暴行され、命を落としたとも言われています。


その記憶により、鹿は長いあいだ、羊・蝙蝠・狼たちに対して複雑な感情を抱き続けました。

けれど、彼女はとても心の強い子でした。


数多の不遇や痛みをくぐり抜けながらも、

やがて――自らの過去を、しっかりと乗り越えていったのです。



14. アメジストの龍:

もとは、ある山の神であり、犬と対になるような存在の龍でした。

山で遭難した人の遺体を利用して人里へと下りてきたのは、

かつて兄貴分だった犬を、遥々迎えに来たのが当初の目的だったはずです。

しかし今では、老いた犬が「孫代わり」として可愛がった、

瞳を輝かせる元気いっぱいの幼い男児の姿へと変化しています。



15. パールの白文鳥:

もとは、三人の少女を護衛する役目を担っていた青年が飼っていた白文鳥でした。

「誘拐ごっこ」と称して犯行声明を出したうえで少女を殺害することを愉しんでいた猫と対峙し

雨の降りしきる夕暮れ時、命を落とすこととなります。

事件を未然に防ごうと関わっていた狼は、白文鳥の正義感と高潔さに感銘を受け、深く敬意を込めて

自身が大切にしていた指輪の石を使い、彼を「宝石の人」として蘇らせました。

その後、狼とは長らくコンビを組んでいたものの、ある事情により解消。以後、しばらくのあいだ

皆の前から姿を消していた時期もあります。



16. エメラルドの大熊猫:

もとは、人々の眼を和ませ、愛された見世物としての役割を終えた大熊猫パンダの亡骸でした。

心に深い傷を抱えたキメラ猫と蝙蝠を支えるため、孤独な兎が「友達がほしい」という我儘から

自らの手で蘇生させた存在であり、姉弟の父親にあたる蝙蝠の実父でもあります。

キメラ猫にとっては、この存在が自らの心の拠り所である兎とどう向き合っていたのか

複雑な思いを抱かせる要因にもなっていたようです。



17. ペリドットの蛇:

もとは、瓶の中に酒とともに漬け込まれていた「ヒバカリ」と呼ばれる蛇でした。

美しい女性のように見えたキメラ猫と、偶然に出逢い、互いに事情を知らぬまま

ごく普通の恋愛関係を経て結婚生活を送っていた心優しい青年です。

その後、事故死した彼に執着していた蝙蝠は、姉の身体を離れて彷徨い続け

ようやく彼の墓を見つけ出すと、それを暴いて、彼を宝石の人へと変えてしまいました。

一時は蝙蝠に対し深い憎悪を抱いていたものの、元来素直で優しい心を持っていたため

やがて激しい憎しみを手放し、静かな気持ちで全てを受け入れるに至ったのです。



◆補足:宝石の人について


『宝石の人』たちには、性別という概念は関係ありません。

容貌も、望むままに自在に変えることができます。

ただし、自らの力に気づいて「覚醒」しなければ

ごく普通の人間として日常を送ることも可能です。

また、覚醒した後でも「普通の人」であるふりをして生きることはできるようです。


ただし、「記憶」に関しては、羊と島梟は特別な枠とされています。

宝石の人たちは、通常の生物のように自然な形での繁殖はできないはずですが

「普通の人間」としての形であれば、この歪んだ世界において

新たな命を生み育てることが、あるいは可能なのかもしれません。



※この物語を読みはじめる事前に、宮沢賢治「貝の火」、太宰治「竹青」

 三国志関連の小説や漫画など読んでおいた方が解し易いかもしれません。




◆序文


かつては単なる「生まれた順」にすぎなかったものが、いつしか

『序列』という名の力関係となり、

基本的には序列下位の存在が、序列上位の者に従うようになっていきました。

『宝石の人』たちは、それはそれは長い時間、

そのような序列のもとで生きてきたのです。


その中でも、トラブルメーカー的存在だったのが、長兄でもある『猫』でした。

彼は無邪気さのままに、殺人をはじめとするあらゆる罪を楽しみ、

他の弟分たちはその後始末に奔走するしかありませんでした。


猫が犯罪を起こさないよう未然に防ごうとする者、

犯罪を揉み消したり賠償を肩代わりしたりする者、

凄惨な殺害現場の後片付けを担う者、

さらには新たに生じた怨恨を鎮めるために後始末の殺人を請け負う者まで――

宝石の人たちは、それぞれの立場で対応してきたのです。


猫は気まぐれに姿を現すと、激しい暴力を振るいます。

犬のお気に入りだったキメラ猫も「同じ猫である」ことが気に入らなかったのか

無惨なほどに虐げられました。


とりわけ被害が大きかったのは「虎」でした。

優れた回復能力を持つ彼は、内心では猫のことを羨ましくさえ思っていたのですが、

その肉体は何度も何度も切り刻まれ、

首を刎ねられたことさえありました。


しかし――飛んだはずの首はすぐに元に戻り、

外傷はまるで最初からなかったかのように塞がってしまう。

猫でさえ呆れるほどの頑健さでした。


「どうやったら、虎をズタズタに傷つけられるのだろう?」

猫の心に潜む長女猫は、そのことを考えると時間を忘れるのです。


もちろん、虎自身は激しい苦痛を感じており、

長い生の中で心も酷く疲弊していました。

それでも彼は、「宝石の人たちの盾となろう」と、

身を張って生き続けていたのです。


犬は、序列一位の猫を生み出してしまった存在でもありますが、

世界の終末期には、年老いて耄碌しかけた姿を楽しむようになっていました。


犬の家では、お気に入りのキメラ猫(背には蝙蝠の羽、尻尾は蛇)に

炊事洗濯をさせ

孫のような姿をした龍を遊び相手にして

鼠が用意した郊外の邸宅で

宝石の人たちは仲良く、倹しく暮らしていたのです。


三位一体のキメラ猫は能力に秀でており、

行方不明者の捜索などの特殊な仕事も担っていました。

その頃、島梟は海辺の町でひとり、のんびりと暮らしていたようです。


兎は絶対回避の能力を持っていましたが、

娘たち(猫四姉妹)の暴走を止められない自分に嫌気がさし

同じ父という立場である大熊猫を伴って、

「現実逃避の旅」へ出た時期もありました。


しかし、こんな状況で生き続けることに疲れ果ててしまった兎と鼠――

そこへ、誰よりも辛い立場にいた時空の旅人・羊が知恵を貸します。

(彼はおそらく、あらゆる意味で最上位の存在だったかもしれません。

医師としての役割も果たしていました。)


こうして序列2位以下の全員で力を合わせ、

これまで暴虐の限りを尽くしてきた「猫の核」である宝石を打ち砕き、

猫はもとの、無邪気で可愛らしい四姉妹の姿に戻されました。


――めでたし、めでたし。


……とはなりませんでした。

分離されても能力は完全には失われなかったのです。

彼女たちは「ただの不死の猫四姉妹」になったに過ぎません。


それでも、四姉妹の「良心」ともいえる三女猫は、

もとの動物好きで控えめな少女に戻り、犬の家で穏やかに暮らすようになりました。

そのうち、一番可愛らしかった四女猫もよく立ち寄り、遊んでいくようになります。


彼女は大熊猫のことをとても慕っており、

会うたびに突進していくほどでした。

四女猫にとって、大熊猫は父のような存在だったのかもしれません。


その姿は、宝石の人たち皆の心に――

微笑ましい風景として、深く刻まれていきました。


しかし――

どれだけ努力しても、猫四姉妹の上の二人を変えることはできませんでした。


彼女たちは、譬えるならば「無邪気さ」という名の仮面をかぶった、

命を奪うことを愉しむ猟奇的な存在であり、

狂気と破壊衝動、破滅願望を持ち続けていたのです。


その衝動を止められる者は、宝石の人たちの中には一人もいませんでした。


父親である兎でさえ、完全にお手上げでした。

牢屋に閉じ込めても、彼女たちは簡単に脱獄してしまいます。


ブラッドストーンのキメラ猫には「記憶消去(不要な記憶を掃除する)」能力がありましたが

それは序列下位の者にしか通用しないという制約がありました。

宝石の人たちの中で、猫四姉妹には効力がなかったのです。


この世から彼女たちを完全に消し去ることができれば――

そう思ったこともありました。

しかし、誰にも「殺す」ことはできません。

何より、宝石の人たち自身も――

もう、死ぬことすらできない存在になってしまっていたのです。


彼らは、罪を犯しても、現行法では裁けない存在でした。

だからこそ、考えました。


――これ以上、猫たちが通常の世界で殺戮を繰り返さぬように。


そのために、「特別な牢獄」と呼べる一つの世界を、

自分たち自身の手で創り出すことを決めたのです。


その代償として、宝石の人たち全員が犠牲となり、

記憶を捨てて新たな世界に生まれ変わり、

その中でまた生きていくことになりました。


序列四位の鼠の役割は、「みんなが暮らしていくための資金を集めること」でした。

彼が本気になれば、毎日豪遊できるほどの資産を生み出せる――

まさに、無尽蔵とさえ言えるほどの「お金儲けの能力」を持っていたのです。


けれど、その力の代償として、彼は深く孤独でした。

中間管理職のような立場にあり、

下位の者たちに仕事を割り振り、叱咤することもしばしばだったのです。


ふと気づけば、彼には**「友」と呼べる存在が、誰ひとりいません**でした。

本当は、いろんなことを話し合って笑い合える――

そんな「友達」が、ただ欲しかっただけなのです。


鼠は思いました。


「序列」などという上下関係など、なくしてしまいたい。

猫四姉妹だって、もし“普通の友達”になれたなら、

きっと何かが変わるかもしれない――と。


そこで鼠は、宝石の人たちに一つの提案をします。


「学校を作って、みんなで一緒に勉強してみないか?」


それが、すべての始まりとなりました。


鼠には、長く長く生きてきた中で築いた広い人脈がありました。

みんなの同意を得たあと、彼は古くからの知人に連絡をとり、

新しい世界での設定や準備を整えてもらうよう依頼します。


さらに、かつて猫四姉妹の母親だった魂を持つ人物を訪ねて――

こう懇願しました。


「新しい世界では、四姉妹が罪を犯さないように、できる限り助けてあげてほしい」と。


すべての準備を終えたあと、

鼠はみんなよりも遅れて、新しい世界へ旅立ちました。


目覚めたときには、自分が鼠だった記憶はもう――

きれいさっぱり、消えているはずです。


けれど、それでもいいのです。


夢を見ることを楽しみにする子どものように、

ただ、眠りにつきました。


みんなと、ごく普通の……できれば、良い“友達”になれるようにと、祈りながら。







◆或る二人の訪問者──二〇〇六年三月某日のこと


夢を見ました。

二人の男性が、私のもとを訪れたのです。


体型や身形からして――「男性かな?」と、かろうじて判断できたような、そんな印象でした。

私は病床に伏しているらしく、一人で寝台に横たわっていました。


けれど、掛け布団や枕などの感触は、まったく記憶にありません。


見まわしてみても、

薄灰色の、どこか古びた雰囲気を漂わせる壁の室内には、

目につくような調度品はひとつも見当たりませんでした。

殺風景というよりも、「何かが最初から存在していない空間」――そんな印象です。


二人は、私の寝台の右手――壁際に並んだ椅子に座っていました。

そして、随分と長い時間……。

ただじっと、動くこともできない私を、黙って見守っていたのです。


そのうちの一人は、もう一人の付き添いであるように感じられました。

仕方なく――あるいは、そうする「義務」があるかのように。

追従せざるを得ない者の、静かで重い気配がありました。


誰かが私に、何かを語りかけていたようにも思えました。

けれど、そのたった一言すら、私は記憶していないのです。


なぜなら――

懸命に話していたはずのその言葉が、一切、聞こえなかったからです。


……けれど、それ以上に、私が恐ろしく不思議で仕方がなかったのは、

その男性二人の――首から上が、まったく見えなかったことでした。


影すらもない。

印象すらも、残っていない。


そこには確かに二人の姿があったのに、記憶に残るのは「首から下」のみ。

どちらも華奢ではなく、やや大柄な体格で、

着物に似た、深い青のような服を身につけていたことだけは覚えています。


あの夢を見てから、もう何年も経ちました。

けれど――いまだに忘れることができません。


思い出すたびに、喉と胸が詰まるようになり、

気づけば涙が溢れて困惑する……

そんな、狂おしいほどに胸を締めつける夢の記憶なのです。


これは妄想ではありません。

飽くまでも「夢」ではありますが、確かに、私はその夢を見たのです。

それは記憶として、こうして書いているだけでも涙が出てくるほど、

あまりにも鮮明で、揺るぎないものなのです。


……そして、その夢を見てから二年後――

二〇〇八年四月一日。


耐えがたい体の不調に耐えかねて病院へ行き、

いくつかの病院を転々とした末に、

私はようやく「1型糖尿病を発症していたらしい」と気づくことになりました。


それはまさしく【生き地獄】の始まりでした…。








◆序列不明の宝石の人の独白.


取引させてほしいんです。俺がこのような馬鹿げた姿に変わっても

唯一の友と呼べるような存在でいてくれた、あいつを救いたくて…。


はい、灰でも泥でも何だって被ります。俺の目や耳、口を塞がれても

この身が生き地獄へ落とされようとも構いません。覚悟は決めてます。


あいつを病の身体から解放してやって頂けませんでしょうか?


あいつらの苦しみ、黙って見ちゃいられません。

他の同胞も一緒に解放してやって頂けませんか。

何卒お願い申し上げます。ですから、どうか…。



ありがとうございます。



あいつと同じ苦しみを味わい、生きていくことが罪滅ぼしになるんなら。

もし一つ勝手を言わせてもらえるのでしたら、新たに構築された世でも

再び何処かで、あいつと出会って…できたら親友と呼べるような仲に…。


これは、多くの者を死の運命から救うための寝返りです。

それだけは忘れ…。いえ、べつにどうでもいい話でした。









◆*登場人物*◆


※回答欄に記述する名前は、以下の氏名からお選びください。

 容姿及び氏名と動物名が意図的に結びつくことはありません。

 もしあるとしたら、それは『単なる偶然』です。


⸻⸻


一組


担任:小林喜一(こばやし きいち)

級長:花田聖史(はなだ きよふみ)

副級長:桜庭潤(さくらば じゅん)

寄宿舎生:望月漲(もちづき みなぎ)

寄宿舎生:劉遼(りゅう りょう)

寄宿舎生:竜崎順(りゅうざき じゅん)

通学生:飛島賢介(とびしま けんすけ)

通学生:比内純(ひない じゅん)

通学生:三上灯(みかみ ともる)

通学生:村元黎(むらもと はしむ)

通学生:八木橋千明(やぎはし かずあき)


⸻⸻


二組


担任:池田直己(いけだ なおき)

級長:斎藤和眞(さいとう かずま)

副級長:谷地敦彦(やち あつひこ)

寄宿舎生:相馬達哉(そうま たつや)

寄宿舎生:西谷晴一(にしや せいいち)

寄宿舎生:林原晃司(はやしばら こうじ)

通学生:鯨井信(くじらい まこと)

通学生:高橋虎鉄(たかはし こてつ)

通学生:新山紫峻(にいやま ししゅん)

通学生:松浦悠一郎(まつうら ゆういちろう)

通学生:杜陽春(もり ようしゅん)


⸻⸻


三組


担任:浅井草太(あさい そうた)

級長:浅井壱琉(あさい いちる)

副級長:浅井彰太(あさい しょうた)

寄宿舎生:夏目翼(なつめ つばさ)

寄宿舎生:夏目宙(なつめ そら)

寄宿舎生:三上操(みかみ みさお)

通学生:小山内嵩(おさない たかし)

通学生:猫間智翔(ねこま ちしょう)

通学生:三上仁(みかみ じん)

通学生:森魚慶(もりお けい)

通学生:森魚脩(もりお しゅう)


⸻⸻


校医:前田則明(まえだ のりあき)

   学校に保健室はなく、怪我や病気は村内にある診療所まで行きます。



寄宿舎の寮母:高橋美紗子(たかはし みさこ)

       二組通学生、杜陽春の実母。高橋虎鉄の叔母でもあります。

       寄宿舎の一階に住み込んでいます。夫は現在行方知れず…。


寮母の手伝い:新山緋美佳(にいやま ひみか)

       二組通学生、新山紫峻の二卵性双生児の妹。

       七年生に進級した四月から二組へ編入した形で授業に参加。

       周りから美少女と認められる容姿ですが気にしてない様子。



※校長である筈の劉遼の祖父の名を知る者は誰もいません。


⸻⸻


緊急検証部(きんきゅうけんしょうぶ)


部長:望月漲

部員:飛島賢介

部員:村元黎

部員:八木橋千明


※決してカードゲーム同好会ではありません。(部長談)


⸻⸻


◆軟式庭球同好会 (熱血テニス部・全員揃いも揃って王子様だコンチクショー!)


会長:竜崎順 (ネッケツ王子)

会員:桜庭潤 (キラキラ王子)

会員:花田聖史 (おそうじ王子)

会員:三上灯 (ともしび王子)

会員:村元黎 (やさぐれ王子)

会員:八木橋千明 (さわやか王子)

会員:相馬達哉 (うるわしの星の王子様)

会員:林原晃司 (いやしの森の王子様)

補欠:比内純 (たまひろい王子)


※昼休み限定の活動です。雨天及び部長の気分により休止。

 王子名は会長の独断と偏見で勝手に付けられたもので

 はっきり言って、殆ど意味なんてないかもしれません。

 前衛・後衛のダブルスを組んで試合しています。




=☆=警告=☆=


解答はあります。宝石の人は、この物語の登場人物の一人として記入可能です。

しかし、この物語に『答え合わせ』といったものはありません。ご了承ください。

何故なら読んでくださった方の『思い』を一つも否定したくないからです。


※.全登場人物の独白には”煙幕”があっても、心情の吐露には嘘が含まれません。


※本作では、点線で囲んだ語句に特別な意味が含まれています。

それは語り手の曖昧な思考、感情の揺らぎ、あるいは気づかれにくい

重要性を示す『鎖』のようなものです。

文章に「…いる…」のように囲まれた言葉が登場します。ご注意ください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ