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彼女と親友と親友の幼なじみでタコパをしていたら毒を盛られていたんだが?

作者: 瀬田一

「それじゃあ、動画撮るよー。我がたこ焼きサークルの繁栄を祝してかんぱーい」


 誠は片手でスマホを持ちながら乾杯の音頭を取った。同時に4つのグラスがぶつかる。


「「「かんぱーい」」」 

「ぷはー、うまいねー。のどごしがたまらん」


「おっさんくさいこと言うね、秋本は本当に女子大生かよ」


「うるさいなー、うまいものをうまいって言って何が悪いのよ。てか、なんで真田は動画撮ってるの?」


「今日という日を記念に残すためだよ。サークルが発足して以来誰一人欠けずにここまで活動してきたじゃないか」


 自信満々に誠は話すが、優香がジト目でツッコミを入れる。


「誰一人って4人しかいないじゃないの。増えてないから繁栄もしてないし」


「まあまあ、優香ちゃん。今日はサークルが始まってから一年の記念日だから、少しくらい誠君がはしゃいでもいいんじゃない?」


 冷めたツッコミをした優香を真由美が穏やかに宥める。


「もー、真由美は親友のあたしよりも彼氏の真田の肩を持つんだー。お仕置きが必要だね。うりうりー」


 優香は真由美の背中に覆いかぶさりながらほっぺをつねる。


「はへへほ、ゆうははん。ほうゆうふほひははひほ(やめてよ、優香ちゃん。そうゆうつもりじゃないよ)」 


「いーやーでーすー。やめませーん」

 真由美の涙目ながらの抵抗を優香は無視した。


「いちゃついてるところ悪いんだけど、全部動画に撮られてるよ」


 優しげな低音な声の指摘が入る。


「そうだ、忘れてたよ。信二ナイス!真田は動画止めろ、消せ」


「余計なこと言うなよ、信二。百合は需要があるから儲かるかもしれないだろ。秋本はともかく、俺の真由美は世界で一番可愛いからな」


「ちょっと、あたしの扱いが雑」


 優香が誠に毒づいた。


 誠と優香の痴話げんかがまた始まりそうなので信二が仲裁に入る。 


 「勝手に動画撮ってアップしたら誠が捕まるかもだよ。真由美ちゃんも嫌がると思うし」


 「私もネットにアップされるのは少し嫌かな」


 信二と真由美が味方になったと思った優香は得意気になった。


「3対1であたしたちの勝ちだ、誠」


「ちっ、しょうがないなー。百合で儲けるのは諦めるよ」


 誠はそう言ってスマホをポケットにしまった。


 パチパチと油が跳ねる音がする。


 信二はその音を聞いて、たこ焼きの生地の側面がきつね色になっていることを確認した。信二はちゃぶ台の上に置いている4×6のたこ焼き機に入ったたこ焼きをピックでひっくり返した。


「そろそろ食べごろかな。僕特製のたこ焼きの完成だよ」


「おー、うまそー。やっぱ信二に任せておけば間違いないな」


「ちょっと誠、また信二にたこ焼き作り押しつけたの?」


「押しつけたとは人聞きが悪いな。お願いしただけだ」


「信二も信二だよ。ちゃんと断らないとだめでしょ」


 信二は困った表情を浮かべながら優香に答える。


「うーん、頼りにされると断りにくいし、たこ焼き作ること自体は楽しいから気にしてないよ」


「昔から信二はお人好しよね。ま、今日はあたしと真由美も手伝ったから格段に美味しくなっているはずよ」


「うん、優香ちゃんが生地を混ぜて、私が生地をたこ焼き機に流し込んだもんね」


「うわー、そうやって俺だけ仲間外れにするんだー。ひどーい」


 誠は手ぶりをつけて噓泣きをする。


「真田がずっと寝てたのが悪いんでしょ!」


「はいはい、俺が悪かったです。そんなことよりもせっかくのたこ焼きが冷めちゃうから早く食べようぜ」


 誠が悪びれもせずに謝りながら場を仕切る。


「言ってることは正しいけど真田が言うのはムカつくはね。まあ、いいわ。それじゃあ、」


「「「「いただきます!」」」」


 4人が声を合わせた直後に真由美が大きい声で割って入る。


「ちょっと待って!」


 3人は驚いた顔を見合わせる。


「どうしたの?」


 信二が落ち着きを払った声で尋ねる。


「あ、ごめんね。急に大きい声出しちゃって。実は生地を流し込む時に一番左端の4個のうちの1つにデスソースを混ぜたの。だからロシアンルーレットやってみない?もちろん場所を私はわかっているから最後に選ぶね」


 真由美はそわそわした様子で自分の提案を明かした。


「真由美ちゃんがこういうことするなんて珍しいね」


「変かな?」


「いや、全然。僕は賛成だよ」


「あたしも面白そうだからいいと思う」


「俺も異論はない」

 


「誰から食べるの?」


「一番何も仕事をしていない誠が先陣を切るべきだな」


「お前らチキンだなー。そうやって俺に押し付けるなんて。だが、いいだろう。俺は大の辛党だから、デスソースくらいではリアクションが取れないかもしれないな」


「辛党なのは知っているから、誠君でも満足できるくらいの量のソースを入れているから安心してね。今日一日お腹壊してトイレから出られないかもだけど」


「真由美ちゃん、かわいい顔しながらえぐいことするね」


「俄然、楽しみになってきたわね。真田、早く食べな」 


「そっかー、じゃあ俺は最初に食べるのはやめておこうかなー。明日朝早いしお腹壊すと困るからなー。秋本と信二、お前ら幼なじみだよな。仲良く二人で先に食べていいぞ」


 誠は冷や汗を書きながら慌てた様子で優香と信二に先に食べるように促す。


「それ、幼なじみ関係ないよ。真田、男に二言はないよね。早く食べな」   


「くそー。食えばいいんだろ」


 誠はデスソースが入っているのがどれかを見極めようと一個ずつ凝視して見極めようとする。


 「誠君、見た目はどれも変わらないから、区別つかないと思うよ」


 見た目で判別しようとしている誠に真由美はアドバイスを送った。


「なるほど、これはノーマルのたこ焼きと判断した。いただきます」


 真由美の表情を見て、誠は意を決して一番上にあるたこ焼きを食べた。

「どうやら俺は当たりを…」


 口に入れた瞬間に辛さが押し寄せてこなかったことから勝利を確信した誠だが、急に苦しみ出して口元を押さえる。


 その様子を見た3人は誠がデスソース入りのたこ焼きを食べたと考えた。


「いきなりハズレを引くなんて真田の日頃の行いの悪さがでたね」


「手伝わなかった罰だ」


「誠君も運が悪かったね。ほら、お水」


 それぞれが言葉をかけるが誠は反応せず、口元を押さえたまま足をばたつかせている。

「おいおい、リアクションがオーバーすぎるぜ、誠」


 様子がおかしいと感じながらも、信二は誠を茶化した。


 全員が状況を察したところで、誠は気を失ったのか、あるいは死んだのかわからないが動かなくなった。


「お、おい!誠!起きろ!誠!」


 信二は呼びかけながらゆするが、返事はない。 



 部屋には水を打ったような静けさが広がった。誠の状態に対する不安もあるが、素人である自分たちには何もできない。


 だが全員が取り乱さずにいられるのは別の理由があった。


 誰かがたこ焼きに毒を入れて誠かもしくはそれ以外の人物を殺そうとしていたからだ。犯人がまだこの中にいる。その事実が静寂を作り出している。


 静寂を破ったのは信二だった。


「僕らが一緒にいられるのは今が最後かもしれない。だから聞いてほしい話がある。

 僕が誠を殺した」


 信二の言葉は滑らかに口を出て2人の耳にはっきりと届いた。


 優香と真由美の両者が驚きや驚愕よりも困惑の表情を浮かべている。


「そんなの間違ってる……」  


「なんで……」 


 小声で同時に呟いた。


「そうだよね。何もわからないよね。今から説明するね」


 信二は説明を始めた。


「正直、説明するほどのトリックとか複雑な動機があるわけではない。殺した方法は毒。生地の材料を入れるときに毒を混ぜただけ。動機は小さな不満が色々積み重なった結果かな。その不満が爆発したきっかけはお金を騙し取られたことだ。


 実は僕と誠で会社を作ろうって話をしていたんだ。誠が何かに打ち込んでいるのは初めてだったし、僕自身将来やりたい仕事があったわけでもなかったから、手伝うことにした。


 誠は積極的に面倒な書類の手続きもしていたから信じていた。でも実際は違った。だから殺した」

 

 信二は説明を終えて改めて2人の表情を見ると、どちらも困惑の表情を浮かべたままだった。


「あれ? 2人ともどうしたの? 僕の話に何かおかしなところがあった?」 


 2人の表情から今度は信二が困惑し始める。


「おかしいよ」


 声を上げたのは真由美だった。


「どこが?」 


「だって、誠君を殺したのは私だから」


「「え?」」  


 信二と優香の疑問が重なった。


「方法は信二君が言ったのとほぼ同じ。生地をたこ焼き機に入れるときに毒を混ぜたの。 

  

 左端のたこ焼き全部に毒を入れたから、ロシアンルーレットで誠君が先に食べるように誘導するだけ。


 みんなで一斉に食べる雰囲気になることは避けたかったけど、みんなが誠君が最初に食べることに乗ってくれたから良かったよ。もしそうなっても、私があーんして誠君にだけ食べさせるようにするだけなんだけどね」


 「真由美ちゃんはなんで好きなはずの誠を殺したの?」


 「好きだからだよ。誠君はかっこよくて、優しくて、面白くて、少しお金にだらしないところがあるけど、そこもかわいい。


 でもね、浮気癖があることだけは許せなかった。私が問い詰めたのは3回だけど多分もっとしてる。毎回すごく謝られて結局許しちゃってるから今でも関係が続いてるし、今でも好き。 


 浮気してる誠君は嫌い。でもいつも浮気を許してる自分も嫌い。何とかしたかった」


 真由美はこれまでの誠の浮気を思い返したのか、それとも浮気を許してきた自分を思い返したのかわからないが、表情は深い深い闇の中を覗いているような暗さだった。


 その表情を見て信二と真由美は背筋がぞっとした。


 だが、その表情から一瞬で太陽のように明るい、けれでも歪な笑顔へと表情が変わった。 


「そこでね、私思いついたの。誠君を殺せば一生浮気できない体にできるって」


 話終えた真由美はどこか恍惚とした表情をしていた。



「あたしにも話さなきゃいけないことがある」


 優香が切り出した。


 「信二と真由美が言っていることが本当かどうかはわからないけど、真田を殺したのはあたしだよ。方法は2人と似てる。生地を混ぜるときに毒を入れただけ。


 動機は信二と真由美を助けるため。あたしは信二が騙されていることは知っていた。でも、それを信二に伝えるだけじゃ駄目だと思った。真田自身が反省して直接謝らなければいけない。だから真田に謝るように何度も説得した。 


 でもあいつはいつも次会ったときに謝ってお金も返すって言うだけで実際は何もしてない。普段から信二に色々押し付けていたことも含めて本当に頭にきてた。 


 真由美のためっていうのは、真田の浮気癖で真由美がすごく苦しんでいるのを知っていたから。真由美が相談してくるたびに真由美はいつも泣いていた。あたしの親友を何回も何回も悲しませていた。あたしは真田のことは大事な友達だと思っていたけど、同じくらい大切な友達2人にひどいことを繰り返していたことが耐えられなくて、殺したよ」


 優香は終始鬼のような形相で自分の殺した理由を述べた。

 


 また静けさが部屋を支配した。3人がそれぞれの理由で自分が殺したと発言した。状況が膠着している。今だけが3人で話せる最後の時間である焦りから信二が口を開いた。


「とりあえず、証拠を出そうか。もしみんなが毒で殺したなら今持っているはずだ」


 信二はそう言って毒の入った容器を机の上に置いた。真由美と優香も毒の入った容器を机の上に置いた。


「なるほど……。僕が言っておいてあれだけど、中身が本当に毒かどうかなんて確かめられないよね。でもこの状況で誰も救急車を呼ばないってことはそういうことだよね。だからここからは全員が犯人だと仮定して聞いてほしい。」


 信二は一息ついた。


「誠を殺したのは俺1人にしてくれ。3人全員が捕まる必要はない」


一瞬沈黙の後、優香が激昂した。


「ふざけないでよ! なんで信二なの⁉ あたしでも真由美でもいいじゃん!」


「どうせすぐにこの事件は明るみに出る。今から誰が捕まるかなんて話し合う時間なんてないだろ」


「でもそれは信二君だけが捕まる理由にはならないよ」


「確かにそうかもしれないね。まあ、男としてのプライド的にね、女の子にこういうことは押し付けたくないんだよね」


信二は少しおどけた調子で言う。


「あたしは認めないよ。信二は昔から自分が損するってわかってるのに嫌な役を引き受けてる。信二がよくてもあたしは認めない。犯人になるのはあたしでいいよ」


「それはだめだ。優香は自分のために誠を殺したんじゃなくて俺たちのために殺したはずだ。犯人にまでさせるわけにはいかない」


「少し落ち着いて。私に提案がある。言い争わずに短時間で決められる方法がある」  


信二と優香は真由美の提案に耳を傾ける。


「スマホアプリのルーレットで決めよ。運だけで時間もかからずに決定できる。誰になっても恨みっこなし。どうかな?」


「現状の最善策はそれかもな」 


「みんながそれで納得できるならあたしも賛成」


 2人の同意を得たことで真由美はルーレットのスタートボタンを押し、そしてストップボタンを押した。

 

 「俺を殺そうとしていたのは真由美だけじゃなかったのか」


 誠は毒で死んだふりをしたまま心の中で呟いた。


 誠は自分が真由美に殺されることに気づいていた。きっかけは真由美のスマホを見た時だ。真由美の愛の重さに嫌気が差していて、別れる理由を探すためにスマホを見た。


 浮気をしていそうなやり取りは見つからなかったが、怪しい薬のようなものを購入していることがわかった。調べると致死性のある毒だった。誠は真由美が自殺を考えていると最初は考えた。そこで自分からも優香からも自殺について探りを入れたが、そんな素振りはないようだ。 


 ただ、優香から最近は真由美から聞く誠の話が悲しさよりも怒りや憎しみを強く感じると聞かされた。誠は買った毒で自分が殺されるのではないかと考えた。 


 今日、真由美がトイレに行っている隙に真由美のカバンを見たらサイトにあった毒が入っていた。寝たふりをして真由美を観察していると、周りの様子に気を配りながらあの毒をカバンから出していた。 


 誠は今日殺されると確信し、対策を練った。


 まずは牽制として動画を撮ることにした。カメラがあれば何かと動きにくくなるだろうと考えたからだ。


 次に食べないことと被害を増やさないことにした。食べなければ毒は受けない。だが何も知らない他の人が食べるのも阻止しなければならない。そこで自分が最初に食べたふりをして倒れることにした。こうすればたこ焼きに何か入っていると気づくと考えた。

 


 まさか全員が俺を殺そうとしてくるとは。焦ったが、むしろ好都合だ。真由美とは別れられるし、信二から借りた金は返さずに済むし、秋本からは小言を言われなくなる。


 誠は自分のポケットにあるスマホに視線を落とした。


 動画は撮れなかったが、俺は撮影終了のボタンは押さずにポケットにしまった。音声だけは拾えているから十分に証拠になる。どうやら信二だけが罪を被ることになったようだが、そうはさせない。全員警察に突き出して、俺を殺そうとしたことを後悔させてやる。


読んでいただきありがとうございます!


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次回の投稿は4月1日です!

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