⑦ 思い切った無償公開/日本が「真の独立国家」になるための3条件
筆者:
さて、「対米従属」の現状についてまずは解説させていただきます。
日本は1951年サンフランシスコ講和条約でGHQの占領からは解放され主権を回復し「名目上の独立国家」になりました。
しかしながら、その後も「事実上の占領」は続いています。
まずは日米合同委員会で事実上の言いなりになっていることがまず一つ挙げられます。
また、日米地位協定や「横田空域」と呼ばれるアメリカの主権が事実上まかり通る基地が日本領土にあったりすることですね。
更に、食料においても小麦、大豆、トウモロコシ、牛肉、オレンジなど多くの製品で依存しています。
このことから、「日本からアメリカ軍が撤退するがいいのか?」「農作物を止めるがいいのか?」などと言われるだけでアメリカに対して屈せざるを得ない状況にあるのです。
実際に1980年代の貿易摩擦にはアメリカの要求を前面に吞みましたし、80年代のバブル発生もプラザ合意からでしたし、バブル崩壊もBIS規制(銀行の自己資本比率引き上げ)がきっかけになりました。すべてアメリカが大きく関わっていたわけです。
質問者:
日本の戦後史はアメリカによって作られたと言っても過言ではないのですね……。
筆者:
この状況では日本が「世界を変えるだけの技術」を作ったとしても奪われる可能性が非常に高いのです。
何も対策ができなければ、WindowsやMacや原油にやられ続けた平成30年間のように、今度は海外産の量子コンピューターやAI、水素や人工石油に向こう30年やられ続けると思われます。
質問者:
それじゃぁお先真っ暗じゃないですか……。
何か打開する方法はあるんですか?
筆者:
一つは有力な技術の特許権や商標権などの権利をすべて放棄してしまい、
全世界が平等の条件でスタートすることです。
特にエネルギー関係の技術は平等にしたほうが良いでしょう。
質問者:
えっ……それってかなり勿体なくないですか? せっかく座っていてもお金が入ってくるのに……。
筆者:
確かに短期的に見れば大きな損かもしれません。
しかしながら、どうせアメリカに迫られて技術を手放したり、中国の産業スパイに盗まれたりするぐらいならば自主的に世界に無料で公開し、権利を放棄してでも対等な条件で戦ったほうが良いのです。
特許を先に取られて周回遅れの技術を使わざるを得ない状況や、エネルギー問題で不安定な状況が続くリスクがあるということは非常に問題です。
それぐらい特にエネルギーの面で日本は苦しんでいますからね。
質問者:
確かに、中東にエネルギーを依存して、中東で戦争があるたびにエネルギー価格が上がって日本が大騒ぎになるだなんてもう嫌ですからね……。
それで給料が上がるわけでは無いですし……。
筆者:
ひとつ前の項目で話題にしました、TRONのシステムの後継である「μITRON」は省エネ・高速処理に優れ、様々な機器に採用されて搭載数世界一のOSに成長を遂げました。
というのも、『仕様が無償で公開されて』『誰でも自由に入手でき』『自由に変更を加えることができた』という3つを兼ね備えていたためにより多くのOSに搭載されました。
研究者の坂村健氏は社会の発展のために無償で提供するという奉仕の精神があったわけですね。
パソコンの生産性が上がるたびに日本の生産力も向上していますからね(ただし賃金価格には反映されていないために実感している人は少ない)。
大きく日本にとってマイナスの部分が世界的に平等になるだけでもかなりプラスになると思っています。
質問者:
無料で提供することで世界で使われる技術になる可能性があるのですね。
確かに、みんなで使うことができれば利権にはなりにくいですね。
しかし、エネルギーや技術面のみでは対米従属から脱却できないと思うのですがどうですか?
筆者:
そうですね。エネルギーの問題は経済の苦境は助けてくれると思いますが、根本の問題は解決してくれません。
「対米従属」から脱却のためには最低でも3点の問題を解決する必要があると考えています。
絶対に必要なのは食料自給率の上昇です。今のところ食料、肥料、飼料に大きくアメリカに依存しており、これらをアメリカに止められたらたちまち飢え死にしてしまいます。
他の物質があっても食料が無ければダメですからね。
残念ながらゴミから作った水素を食べて生きていくことはできませんからね。
僕も霞を食べて生きていけたらどんなに便利だろうか――って最近思ってますけど(笑)。
質問者:
確かに、「腹が減っては戦はできぬ」という言葉もありますからね……。
筆者:
しかも日本は食料自給率が全世界的に見ても極端に低く、4割を切り続けている状況です。肥料・飼料の自給率まで考慮すれば10%を切っているという試算もあるぐらいです。
この食料自給率を合成肉やゲノム編集、昆虫食などで補おうとするのはまた問題があるのですが――これについては詳しくは別の項目で触れることにします。
第一次産業は地域の防衛とも直結すると思うので、個人的にはと兼ね合わせて屯田兵として僻地に駐在させる公務員にして、国防と農業生産力を両立することが良いかなと思います。
一次産業の人員確保と価格競争に負けてしまうという懸念を両方を解決してくれる最善策だともいます。
そもそもの自衛隊の待遇の改善も必要ですけどね……。
質問者:
自衛隊の方々には災害救助もしてもらっているのにあまりにも待遇が悪いですよね……。
以前はトイレットペーパーすらも持参だったとか……。
筆者:
日本は世界と比べると公務員の割合が少ないそうなので、ほとんど戦わない最低限の訓練をして農作業をする「自衛隊」という形で農業も強化してほしいところですね。
2つ目はスパイ防止法の制定とセキュリティクリアランスの拡充です。
将来の技術流出を防ぐためには必須です。
セキュリティクリアランス(スパイではないと国が認定)が無いと、他国との協力すらもままならなくなることがあるので、日本にいるスパイを排除して世界的に安全な人を選んでいくことが大事になります。
スパイ防止法に関しては全世界にある法律ですが、「定義づけ」や運用次第で危なくなるのです。
というのも今の政府はあまりにも税金を取りすぎて、国民の益にならない「サイコパス政策」と言ってもいい愚策を実行し、国民を虐げ過ぎているので、「監視社会」になってしまう懸念が浮上しているからです。
というのも、スパイの「定義づけ」の範囲が広すぎると、一般国民を管理・監視し続けるだけでなく、政府の不都合な人物を逮捕するといったことが起きる懸念があるからです。
スパイを「日本の安全に影響を及ぼすか否か」などで明確にする必要があるでしょう。
(これはLGBT法案で皆さん痛感した問題だと思います)
かといってスパイ防止法が無いと軽い刑罰で済んでしまったり、海外に脱出されてしまうと国際指名手配をしにくくなったりしてしまいます。
質問者:
日本はスパイ天国と言われているぐらいですからね……。
ただ、安倍政権の時にできた「特定秘密保護法案」では対応できないのですか?
筆者;
中国共産党のスパイ活動が「情報をとる」から「内政に影響を及ぼす」という段階に入っている現在、公的情報の「特定の秘密」へのスパイ活動だけを取り締まる特定秘密保護法だけでは不十分です。これの範囲を広げていく必要があるんですね。
オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、イギリス、アメリカの5カ国によるファイブ・アイズが2023年10月17日に、「知的財産の窃取と各国に対するハッキングやスパイ活動にAIを利用している」として中国を非難する共同声明を発表しています。
AIではフェイク画像や動画なども作り自国の有利な情報操作を行おうとしているのです。
もはや技術情報や知的財産だけでなく“認知戦”の領域になりつつあります。
認知戦についてはこれも個別に解説していこうとは思いますけどね。
質問者:
なるほど……民間の技術に関しては特定秘密保護法案では守れないわけなんですね……。
筆者:
これについてはちょっと世間の認知度が低いので懸念したいところですが、政府が「骨抜きの無意味な法案」や「全体管理社会にする法案」にしないか注目したいところです。
次に、兵器の日本自国の生産能力を上げることです。
今現在のように防衛費の全体のパイを上げても型落ちのトマホークを3倍ぐらいの値段でアメリカから買うという愚行をしていたらいくら予算があっても足りません。
ですが、これに関しては朗報がありまして最近兵器に関しては脱アメリカを進めています。とくにイギリスと最新ジェット戦闘機や、宇宙開発分野で共同開発を行っています。
幸か不幸かアメリカは近年“世界の警察”であることを諦めつつあります。2020年1月まで大統領だったトランプ元大統領に至っては日本から米軍を撤退しようというプランを出してきたこともありました。
時と場合やアメリカの大統領次第では「軍事的独立」をすることも可能なのです。
あとは、アメリカがいなくなった際の対核保有国への対抗方法についても考えていく必要があるでしょうね。
質問者:
なるほど、今は「真の独立」に向かって力を蓄えたり備えたりする時なのですね。
筆者:
ところが日本政府はこれまで見てきたように日本にとって有用な技術であったとしても予算を出す気があまりないようです。
そもそも、アメリカに従属しているという感覚が政府に無いのか分かりませんが、タイムラインを示す気もないようですしね。
次の項目では、そもそも日本政府が研究開発や人材に対してお金を出し渋るために、技術が開発できないのではないか? ということについて触れて今回のエッセイを終わりにしていこうと思います。