⑥ 国内外の利権に潰された技術
筆者:
では、ここでは国内から消された技術とどうして有用なのにもかかわらず消されてしまうのかについてみていこうと思います。
今から22年前の2001年、洗剤の要らない洗濯機が発売されていたことをご存知ですか?
質問者:
えっ……洗濯には洗剤が必要なのが当たり前なんじゃないですか?
筆者:
ドヤ顔で語っておいて僕も最近知ったのですが、
2001年8月、三洋電機は洗剤の要らない洗濯機「超音波と電解水で洗おう」を発売しました。
洗剤を使わず汚れを落とす洗濯機は、世界初だった超音波と電解水で洗うこの洗濯機は評判もよく「洗剤を一切使わなくても粉石鹼で洗ったのと同じくらい汚れが落ちた」
「他の洗濯機では洗剤を使わないと汚れが落ちなかった」などとレビューがあったようです。
たった2か月で3万台を売り上げるほどの人気ぶりだったようです。
当時の洗濯機が今でも使えているとTwitterで投稿されていたりもするほどの性能です。
しかし、これに対して大手洗剤メーカー達の連合軍(日本石鹸洗剤工業組合)は猛反発
「洗剤を使わないで汚れが落ちる訳ない」とわざわざ実験までして、三洋電機を全力で潰しにいきました。
更に不幸にも発売から約3年後の2004年10月、新潟県中越地震で三洋電機の半導体工場は凄まじい被害を受けてしまいました。(地震が人工地震かもしれないという都市伝説的な要素アリ)
この地震で生産ライン5本のうち、200mライン1本を失い、機械およびその他被害額で184億円,棚卸資産で46億円,および復旧費用などで270億円,復旧のための新たな設備投資として3億円を見込んでおり,合計で503億円。機会損失は310億円だったようです。
その結果、140億円を見込んでいた当期純利益は得られず、逆に710億円の純損失を計上することになってしまいました。
洗剤を販売する会社に叩かれたせいか、2005年になると、三洋電機は性能を落とした洗濯機を発売、
2011年には会社ごと買収されてほとんどなくなってしまいました。
しょうもない既存企業の利権のために最新鋭の有効な技術は消滅させられてしまったのです。
本来は国家規模で支援し、世界に広める技術にしなくてはいけなかったのですが、国はそれをしませんでした。
質問者:
多少は盛っているのかもしれませんし、会社が潰れてしまったのは企業努力が足りない要因もあったかもしれませんが、全く技術が残っていないのは闇しか感じませんね……。
筆者:
このように「利権次第」で素晴らしい技術は消えてしまう可能性があるのです。
資本主義経済は言い換えれば大量生産・消費社会です。
実を言うと「持続可能な社会」を最近訴えていますがそう言った永続性がある商品を作ってしまうと「持続可能な会社」が成り立たなくなってしまうので、いい「商品が必ずしも残るわけではない」という悲しい現実があるのです。
良い技術ができればその分、会社が潰れ失業者で溢れてしまいます。
それを防ぐために彼らも必死なのも分かりますが、製品開発で後れを取ったのも事実なのですから受け容れるしかないように思いますがね。
質問者:
確かに、製品保証の期間が終わった瞬間に壊れるといったことがあったりしますからね……。
筆者:
残念なことに国内で潰しあいをしている結果、技術が盗まれたりして、世界から置き去りになっているというのも事実なのです。
次に“海外”によって潰された事例についてみていきます。
TRONというパソコンがありました。当時のMacやWindowsと比べて『動作安定性』『セキュリティ面』で圧倒的な優秀さを誇っていたのが日本独自の技術『TRON-OS』だったと言われています。
ちょっと都市伝説や陰謀論じみた話ではあるのですが、1985年に日航ジャンボ機123便墜落事故というものがあります。
そこでこのTORON―OSプロジェクトに関わっていた天才エンジニアたち総勢17名がこの墜落事故で全員亡くなっているんですね。
陰謀論では意図的に乗り込まさせられたという話になっていますが、そうで無かったとしても空前の悲劇だと言えます。
更に弱り目に祟り目だったのは1989年アメリカ合衆国通商代表部から不当な貿易への対処、報復を目的とした「スーパー301条」によって、TRONは制裁を受けることになりました。
分野ごとに指定されることはあっても、製品を指名しての制裁は、異例中の異例だったようです。
1986年に旧通産省、旧文部省の関連団体CEC(財団法人コンピュータ教育開発センター)は、日本の学校教育用標準OSとしてB-TRONの導入を検討していましたがこのアメリカの「スーパー301条」を皮切りに全面撤回しました。
導入されなかったので実際にTRONがどの程度の性能だったのかはわかりませんが、
国産OSが未然に潰されてしまったのは事実です。
この様に良い技術があっても“外圧“によって破滅させられてしまう可能性があるのです。
質問者:
必ずしも良いモノが残るわけではないのですね……。
筆者:
それだけ既得権益者が強く、だからこそ「政治の力」というのが重要になってくるんですね。
特にエネルギーに関しては国内の問題だけではなく世界的な注目ポイントであります。
ですから、『世界利権が敢えて技術そのものを隠してしまう』という可能性すらあるのです。
前回紹介した合成石油と廃アルミについてはこれに近い懸念点がありまして、
サウジアラビアNO.1石油会社のサウジアラムコとENEOS、出光とのMOU(基本合意書)調印式が、
23年7月16日、ビジネスラウンドテーブルにて行われました。
この調印式では、ENSOSのページから抜粋しますと、
『合成燃料の早期社会実装に向けて、海外プロジェクトからの合成燃料調達および国内での実用化・普及に向けた検討を進めています。また、国内のグループ製油所・事業所における合成燃料の生産検討を進め、2020年代後半までに合成燃料の生産・供給体制を確立することを目指しています。
本合意により、当社と同様にこれまで石油の安定供給により日本のエネルギーセキュリティを支えてきたアラムコ、ENEOSと、それぞれが持つ液体燃料や内燃機関に関する技術・知見を活かし、次世代型低炭素燃料である合成燃料の導入を加速させます。』
とありますが、先ほど挙げた合成燃料と現在の石油の“いい具合の塩梅“のレベルにされてしまう可能性があるので注意が必要ですね。
また、この調印式に富山のアルミゴミのアルハイテック社も同行していることから“日本が牽引する永続的な資源”の技術はことごとく“唾を付けられた”ということになります。
質問者:
もしかすると技術そのものが潰されてしまうか、それとも「骨抜き」になってしまうかもしれないのですか……。
筆者:
残念ながら今のところその可能性が高いと思っています。
対米従属をしているためにアメリカの言いなりになっていることも非常に大きいと思います。“外交“が制限されている上に、アメリカに”法律規制“などで技術を取られてしまいかねないですからね。
次の項目では“利権”に対抗し対米従属から脱する方法について考察していこうと思います。
まぁ、僕に政治的影響力も無ければ、技術開発者でもない上に世間への影響力もほとんど無いのでただの空虚な提案だけになってしまいますがね(笑)。