④ 宝の持ち腐れになるかもしれない日本の先行技術
筆者:
次に注目したいのは量子コンピューターです。
量子コンピューターは従来のコンピューターとは桁違いの計算能力の高さで、新薬の開発や金融市場の予測など、さまざまな課題を解決することが期待されており世界中が開発競争を行っています。
『量子コンピューター 何がすごい?国産初号機が本格稼働』というNHK23年3月27日の記事によりますと、
『超高速の計算を可能にするのは「量子ビット」の「重ね合わせ」ですが、実用化に向けた最大の課題は、この状態が電磁波や熱などといった「ノイズ」に非常に弱く、正確な計算ができるかどうかが周辺の環境に大きく依存する点です。
理化学研究所の量子コンピューターの場合「量子ビット」からなる集積回路は、動作を安定させるために、円筒形の容器で何重にも覆って「ノイズ」を遮るとともに、「絶対零度」と呼ばれる氷点下273度近くに保ちます。
そこで、誤作動による誤りをあらかじめ検知し、訂正しながら計算する「誤り訂正」の仕組みが考案されています。
「量子ビット」が1つの場合、「誤り訂正」を確実に行うには理論上、その1万倍の「量子ビット」が必要だと考えられています。
去年、433量子ビットの量子コンピューターを完成させたIBMはことし1121量子ビットの開発を計画していますが、実用化には少なくとも100万量子ビットが必要だということです。』
と、量子コンピューターの計算速度を速めるために必須の技術である世界でも上位の絶対零度の技術を持っています。
23年10月5日には量子コンピューター日本国産2号機も稼働し始めたようです。
しかしながら、この量子コンピューターの開発資金が日本は世界的に見てもかなり少ないです
質問者:
海外の国はどれぐらいの資金を出しているんですか?
筆者:
中国では約100億ドル(1兆5000億円以上)を投じて国立量子情報科学研究所の建設
ステルス潜水艦に搭載される量子ナビゲーション・システムや量子暗号など、軍事・安全保障に関する量子技術に注力すると見られています。
バイデン政権は技術革新を促す科学振興費に、4年間で3000億ドル(30兆円以上)を投じる計画があり、ここには「クリーン・エネルギー」「5G」「AI(人工知能)」等と並んで「量子情報科学」が含まれています。
それに対して日本は2019年度は約160億円だったところ、2021年度には約360億円、23年度には380億円+誤り耐性の量子コンピューター実現のための1480億円の基金。となっています。
申し訳ないが基金は何年もかかって繰り越されるうえに、中国アメリカと比べても桁が1つか2つ足りないレベルで失笑せざるを得ない金額と言えます。
質問者:
確かに世界の形勢を変えるかもしれない技術に1桁足りないお金だと頼りないですね……。
筆者:
しかも人員が足りないわけではありません。
産官学の連携を目的として東大が設立した「量子イノベーションイニシアティブ協議会」の参画メンバーには東大、慶應大、日本アイ・ビー・エムの他、JSR、ソニーグループ、DIC、東芝、トヨタ自動車、日立製作所、みずほフィナンシャルグループ、三井住友信託銀行、三菱ケミカル、三菱UFJフィナンシャル・グループ、横河電機が参加しています。
つまり、日本の企業や大学がやる気が無い訳ではないのです。
ですが、お金が無ければできないことも多いと思うんです。
質問者:
確かに、先立つものが無いと厳しいことはありますよね……。
機械の購入・整備や維持管理には電気代だけでも規格外のお金がかかりますし……。
筆者:
そうなんです。日本が先進している技術でも国が不作為によって発展を阻害していると言わざるを得ないことばかりなんですね。
次に見ていきたい日本の技術としては地熱発電です。
実を言うとこれはリニアと違って海外での実証が先なんですね。
ニュージーランドは地熱資源量が日本の6分の1以下にもかかわらず、発電量は日本の約2倍、国内の電力量の約20%を地熱発電でまかなっています。
そしてその地熱発電所は、住友商事、富士電機など日本の技術によって地下または半地下に建設されています。
ナ・アワ・プルワ地熱発電所は熱水を再々利用するのが「トリプルフラッシュ」という初の技術も日本が提供しているようです。
質問者:
あれ……? でも日本ではほとんど地熱発電ってほとんどされていませんよね? どうしてなんですか?
筆者:
日本は世界第3位の推定2347万キロワットの地熱資源を持つ国ではありますが
公園や温泉地に有力な候補地が集中しているのです。
「自然公園法」によって、自然公園(国立公園や国定公園)の中に地熱発電所を建設することは困難でした。また、温泉への影響が懸念されるため、温泉地域との調整が必要だからです。
掘ってみて初めて資源の量や質がわかり、中止となるプロジェクトもあります。
石油や天然ガスを発見する可能性に比べればリスクは低いものの、有望な地熱資源が発見できるのはプロジェクトの50~60%程度とされています。
質問者:
なるほど、規制や発掘のリスクがあるわけなんですね……。
筆者:
ただ、こういう規制は“お金が多く絡まないと取っ払われない”という傾向があります。
日本各地にある原子力発電所はいわゆる“原子力村”と言われる多重構造の利権スキームがありますが、
※原子力村に関しては後日別の項目で解説しようと思います
日本で最初に設置された松川地熱発電所は、現在もそのまま運用されており、今年で57年目を迎えます。今も順調に発電しているので、この記録はもっと伸びるでしょう。地熱資源は石油などのように枯渇するということがないため、設備を更新していけば、半永久的に運転できると考えられています。
管理の大変さや事故などは利権団体からしてみれば“起きて欲しい”のです。
質問者:
こんなにもクリーンな資源が日本に眠っているのに利権のせいで邪魔されているのですね……。
筆者:
少なくとも規制改革だ! と言って積極的に太陽光発電や風力発電のように規制を取っ払って推進する政治家の方は見たことが無いです。湯水のようにお金が湧いてくるものではないとダメなんでしょうね。
現在は地熱発電は50万KWで2030年までに150万KWとしているが埋蔵量推定値2347万キロワットを考えたら目標数値が小さすぎると思います。やる気のなさの現われですね。
※現在の地熱発電の日本の全体の発電割合は0.2%
ニュージーランドの発電所の多くは美術館のような見た目になっており“観光地化“もしています。
また、地熱発電の周りでは温泉、暖房や融雪、温室農業、魚の養殖、料理などにも活用するなどプラスの面も多くあります。
本来ならばこういった複合的経済利益を前面に押し出してもっと推進していくべきですが、声は非常に小さいように思えます。
質問者:
なるほど、ここでもまた利権な訳ですか……。
筆者:
全く効果が無いことが予想される少子化対策という名の子育て支援策にお金をつぎ込むぐらいなら、こういった日本がリードしている技術にお金をかけてほしいところです。
若者が未来に希望を感じる社会を作るのも政府の務めと言えます。
実際にインターネットサービスプロバイダーの『BIGLOBE』の350人に対するアンケートによりますと「日本社会の未来に希望を感じていない(感じない+あまり感じないの計)」と答えた18~24歳(Z世代)は74.6%となっています。
次の項目では世界を変えてしまうかもしれない合成燃料(人口石油)や廃アルミについてみていこうと思います。