③ 日本が先行している乗り物
質問者:
日本は車以外はあまり技術がないと自らおっしゃっていたような気がしたのですが……。
日本が今先行している技術はあるのですか?
筆者:
確かに今現在具体的に海外に対して輸出したり、マネタイズできる分野は車がほとんどだと思います。
しかしながら、世界を変えるだけの技術を日本は持っています。
一つ目は超電導リニアです。
東海道新幹線で使われる予定のリニアの技術について
「リニア中央新幹線」のページから抜粋させていただきますと。
『走行路となるガイドウェイの側壁内側に、8の字の形をした浮上用コイルが取り付けられています。このコイルの中心から数cm下側を車上の超電導磁石が高速で通過すると、コイルに電流が誘起されて一時的に電磁石となり、超電導磁石を押し上げる力(反発力)と、引き上げる力(吸引力)が発生し、車両を浮上させます。
磁石どうしの反発力と吸引力を利用して車両(超電導磁石)を推進させます。ガイドウェイの両側の側壁に並べられた推進用のコイルに、変電所から電流(三相交流)を流すと、ガイドウェイに移動磁界が発生します。車上の超電導磁石がこれに引かれたり、押されたりして車両は進みます。』
この技術は2015年4月21日にJR東海の山梨リニア実験線でL0系が達成した時速603キロが、国内・世界ともに最速の記録をたたき出しています。
超電導リニアの技術を実用化するリニア中央新幹線では時速500キロ程度での営業運転が見込まれています。
品川から名古屋間の286キロを現在は「ひかり」で1時間半のところをおよそ40分で結ぶ予定になっています。
質問者:
すごい技術じゃないですか……ですが、どうして開通に至っていないのでしょうか?
筆者:
リニア中央新幹線開通の最大の弊害は静岡県知事がいろいろと理由をつけて邪魔をし続けていることですね。当初の開通時期が2027年だったものが、2030年ごろになるようです。
2020年9月16日の日経新聞によると『アナリストの見立てなどをもとに試算すると、延期中は年1000億円規模の利益の圧迫要因になるとみられる。』ともあります。
質問者:
どうして静岡県知事はそこまでして抵抗しているのでしょうか?
筆者:
静岡県がJR東海に不満を抱くのは、(1)のぞみが止まらない(2)新駅をつくらない(3)リニアも素通り――という三つの「静岡飛ばし」が挙げられています。
また、長期的に見た場合は健康被害も電磁波によって引き起こされる可能性(JR東日本はそんなことはないと否定している)もあるために駅が無いことで静岡県としてはマイナス面しかないわけです。
のぞみぐらい最低でも止めるべきですし、リニアも多少時間かかっても駅を作ってあげたほうがいいでしょう。
とにかく、JR東海と静岡県知事のいざこざによって国益が損なわれていっているのです。
やはり海外に輸出するためにはいかに安全安心だと言っても、実際に日本国内で使われていないものを出すわけにはいかないわけです。
質問者:
海外の方から見ても『いや、お前の国ですら使ってないものを何で輸出するの?』ってなりますものね……。早く決着をつけてほしいところですね。
筆者:
健康不安などのリスクについてもやはりまず日本でどの程度影響があるかについてみていなければいけませんからね。
次に水素エンジンについてみていきます。
質問者:
世間では太陽光発電の電気自動車が主流になりつつあるんですけど、今更水素エンジンなんて流行るのですか?
筆者:
前も太陽光発電について話したことがあるのですが、実を言うと走行中のCO2排出量が無いだけであって、太陽光パネルの生産・廃棄に関しては非常にCO2を排出するのです。
現状生産されているハイブリットエンジンとほとんど変わらないという試算もあるようです。
さらに太陽光パネルを多く作る中国のウイグル自治区では奴隷労働の可能性もあり、いずれ太陽光パネルが輸入できなくなる可能性もあります。
そんな中、水素の技術はトヨタ自動車やホンダには技術を持っていることから日本に大きな優位性があると言われています。
水素エンジンは普及を目指しカローラに搭載した。燃焼の仕組みは、ガソリンエンジンとほぼ同じで、多くの部品を流用できる。燃焼速度がガソリンの8倍も速いとされ、低速時の加速力が強く、アクセルに対する応答も速いため、スポーティーな走りができるとしています。
質問者:
それを聞くと乗ってみたくなりますね……。
筆者:
ただ、質問者さんのご指摘通り太陽光発電が全世界的に優勢です。
というのも、水素補給インフラの不足が主な原因です。
これはトヨタの水素技術に勝てないので“外圧によって敢えて日本国内に作らなかった”というのが正しいです。
これも国が日本国内のみでも支援して水素エンジンを補給するためのインフラを整備すればいいのですが、それを完全に怠っていると言えるでしょう。
“世界的な潮流“というのもトヨタ自動車の販売台数や売り上げシェアを下げるために行っているにすぎません。日本国内の独自インフラを行っておけばよかったのです。
質問者:
確かに、合理的だから流行っているとは限りませんからね……必ずお金や権益が絡んできます。
筆者:
水素エンジンが世界において今、注目されているのは僕たち一般人が乗るような軽自動車用ではありません。
大型トラック、蓄電池や宇宙など膨大に電力を使うところで注目されているのです。
エンジンオイルが燃焼する際に、ごく微量の二酸化炭素が生じる以外は生じないこともポイントが高いです。
特に太陽光のみと比べて水素は電力の蓄電と比べて蓄えることが可能です。
風力や太陽光で発電した余剰電力を、大量に貯蔵できる(エネルギー密度の高い)水素に変換することができます。
また、川崎重工業は世界で唯一、液化した水素を船で運搬する技術をもっています。こうしたことからも日本は優位性があるのです。
トヨタは19年に水素エンジンで培った約2万3740件の特許技術の無償開放を行いました。
ドイツは特に注目していまして、BMWなどの海外でも実証実験が行われだしています。
また23年9月10日の日経新聞の記事ではドイツに世界初の水素取引市場ができるそうで、生産コストが高いという課題に対して市場の開設などで取引量を増やして価格を下げ、普及につなげることが期待されています。
質問者:
確かに蓄電や市場ができなければ話になりませんからね。
水素エンジンの面でも輸送の面でも優位性があるのなら確かに国内インフラがあれば太陽光よりもよさそうでしたね……。
筆者:
国が整備しなかったのが悔やまれます。せめて大型車で成功してほしいところです。
さらに自動車に関することですと自動運転では東芝の技術にも注目が集まっています。
日本経済新聞などの新聞では23年9月26日の記事で、
『東芝は9月26日、距離計測を行なうLiDARにおいて、車両や人などの物体を世界最高精度となる99.9%で追跡できる技術を開発するとともに、LiDARの取得データだけで98.9%の精度で物体認識を実現できる技術を発表した。
さらに猛烈な雨や濃霧の環境下における検知距離を2倍以上に改善し、80mm/hの猛烈な雨環境で40mの距離計測ができる「雨・霧除去アルゴリズム」を開発。また、「計測範囲可変技術」によって従来技術に比べて計測距離を350mまで伸長させながら、約6倍の画角で120mまでの計測距離を実現したという。これらの3つの技術はいずれも2025年度の実用化を目指している。』
とあります。自動運転においては電気や水素かどうかはあまり関係ありませんので、雨や霧でも問題なく走行できる可能性があるこの技術でリードしていることは大きな意味があります。
質問者:
確かに、物体検知の精度が高まれば事故などを防げる確率が上がりますから凄い技術ですね。
筆者:
次の項目でも日本が先行している勿体ない技術についてみていこうと思います。