② 日本は実は資源大国!?
筆者:
質問者さんは日本が実は資源大国だということはご存じですか?
質問者:
ええー!? そんなことは信じられないです。だってよく考えてくださいよ。
電気代が高いのだって天然資源が無いからですし、
自動車の納品が遅いのだって電子製品が半導体のための鉱物が無いからじゃないですか。
それにもかかわらず資源大国だって言われても――何か役に立たないものばかりじゃないですか?
筆者:
そうおっしゃりたくなるのも理解できます。
今、物価高になっているのも輸入価格が上がっていることから始まりましたし、“資源がある”と言われても信じられないかもしれませんね。
ちょっと事実と違うので正確な表現を変えるならば“潜在的資源大国”とでも言ったほうが分かりやすいでしょうか?
発掘や採取する技術が確立し、安価でそれを実行することができれば、たちまち輸入に頼るどころか資源を輸出する側に回ることができるのです。
質問者:
え!? 海外に売るほどの資源が眠っているだなんて信じられません……。
筆者:
一つ目は「レアアース泥」と呼ばれるレアアースが高濃度に凝縮された泥が日本近海に眠っています。
レアアース泥とは、2011年に東京大学大学院工学研究科 エネルギー・資源フロンティアセンター 教授の加藤泰浩氏らが発見した新たな海底鉱物資源のことです。
太平洋の深海底に、中国などにある陸上鉱山と比べて2~5倍のレアアース濃度の泥が10~70mの厚さで分布していることが発見されています。
さらに2013年には、南鳥島の排他的経済水域内の海底で、中国鉱山の約20倍となる7000ppmの超高濃度レアアース泥が発見されています。
レアアースは「産業のビタミン」と言われているほど多種多様な製品に活用されています。
永久磁石だけでなく、LEDやレーザーなどの発光材料、水素吸蔵合金、研磨剤、MRI造影剤、医薬品やゴムの合成触媒などがあります。
これらは日本がまだ力が残っている分野でもあるハイテク産業の中核を成していますが、日本の1年間に消費するレアアースの300年分が最低でも眠っているという試算があります。
質問者:
そんなにあるんですね。
しかしながら、レアアースの輸入は相変わらず多いですよね? 何か発掘するうえで障壁があるのでしょうか?
筆者:
最大の課題は海底レアアースが多く眠る5000mを超える海底にある泥を海上に引き揚げる採泥・揚泥の技術開発です。
22年10月31日の読売新聞の『レアアースの脱中国依存へ、南鳥島沖の水深6000m海底から採掘…技術開発に着手』という記事の一部を抜粋しますと、
『 複数の政府関係者が明らかにした。レアアース泥は、レアアースを豊富に含む泥で、12年に同島沖の排他的経済水域(EEZ)の海底でも確認された。同島沖の埋蔵量は国内消費量の数百年分相当と推計される。
採掘には内閣府の事業で今年8~9月、茨城県沖で試験が成功した世界初の技術を用いる。試験では海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」が深さ2470メートルの海底まで「揚泥管」を伸ばし、ポンプで1日約70トンの泥を吸い上げることができた。来年度以降、深海に対応するためにポンプの強化や揚泥管の延長などを進め、1日350トンの採掘を目指す。
中国では鉱山などで採掘できるのに対し、深海の底からの採掘はコストをどこまで下げられるかが課題となる。政府は今後5年間で効率的な採掘・生産の手法を実現させ、28年度以降は民間企業が参入できる環境を整えたい考えだ。』
と22年の時点でも約2500メートルの開発が可能でかなり期待できる内容になっています。
しかし、これに対する予算は21年度の予算で重要資源確保は900億円とかなり少ないです。(22年度予算については調べがつかず)
レアアースだけでなく他の資源も含まれてこの金額ですからあまりにも心もとないです。
質問者:
確かに「産業のビタミン」と呼ばれている存在に対してそれしか出さないのは国家プロジェクトとしては不安がありますね……。
筆者:
「28年に民間企業参入」とか大変呑気なことを言っていますが、今の政府だとそれすらも実現できるか怪しいのではないかと思ってしまいますね。
見込みがないわけでもないのでもっと予算を付けて海底から引き揚げる技術の実用化までの年数を短くして欲しいところですね。
次に日本に眠るゴールドについてみていこうと思います。
ゴールドはかつて貨幣の裏付けとして存在していましたが今は信用経済になっているために貨幣経済そのものという重大な存在ではなくなりました。
しかしながら、今でも一定以上の価値はあります。
IMF(国際通貨基金)の体制下において、加盟国の政府・中央銀行(国の金融の中心となる機関)は、輸入代金・対外債務返済等の支払い、国際通貨不均衡の是正、為替相場介入、国の破産や世界的企業の倒産、テロや戦争などで世界的に経済が不安定などのために、一定比率以上の外貨や金の資産を保有する義務はあります。
その中で日本は外貨準備金のうちゴールドの割合は僅かに4.2%(2023年時点、765トン)とアメリカ、ドイツ、イタリア、フランスなどは外貨準備金に占めるゴールドの割合は60%と比べてもかなり少ないことが分かります。
質問者:
ゴールドというと“昔の栄華の証“や小判で使っていたというイメージがありましたけど、今でも国際的な価値はあるのですね。
筆者:
ちなみに、今の日本の外貨準備金の50%以上はアメリカ国債です。つまりアメリカの経済に浮沈や円ドル相場によって日本の外貨準備金残高が左右されてしまうのです。
これは事実上のアメリカの従属国であることから“返済する気があまりない負債”として日本に対して押し付けているんですね。
ですから、日本の「脱アメリカ」を行うためにも外貨準備金のゴールド比重を高めていくことは非常に重要になってくるわけです。
質問者:
そのゴールドは日本でも取れるんですか?
筆者:
今現在の日本のゴールド生産量はほとんど鹿児島県菱刈鉱山で採掘され、生産量は23年は4.4トンを予定しており、しかもほとんど埋蔵量は残っていないと言われています。
しかしながら、熊本大学大学院の横瀬准教授によりますと、日本の海底は、沈み込み帯に属する部分も多く、海底火山活動に伴った鉱床形成が期待され、海底における精密音響計測を効率的に行うことで日本の“潜在的金埋蔵量”がかなりあるようです。
質問者:
昭和で金鉱山がほとんど掘りつくしたという話もあった気がしたんですけど、こちらも海に可能性があるのですね。
筆者:
NHKオンラインの『ゴールドラッシュおきるか 深海に眠る金鉱脈』 22年5月27日の記事によりますと、
『東京から南へおよそ400キロ。伊豆諸島の青ヶ島周辺の海域で2015年、東京大学の研究チームが海底から熱水が噴き出す「熱水噴出孔」を発見しました。
水深700メートルの深海のおよそ48平方キロメートルの範囲に数百の熱水噴出孔があると見られています。噴き出す熱水の温度は250度ほどで、最大で40メートルを超えるものも確認されています。ただ、熱水噴出孔はこれまでにも伊豆諸島の周辺でいくつか見つかっていたので、ここまでであればそれほど驚きではありませんでした。
持ち帰った岩石を調べて研究者は信じられないような数値を目にします。それは「金」の濃度です。熱水噴出孔の周辺の岩石に含まれる「金」の濃度が平均で1トンあたり17グラム。世界の主要な金鉱山が1トンあたり3~5グラムなのに対してそれを大きく上回る値だったのです。』
『熱水噴出孔は通常、1000メートルから3000メートルほどのとても深い海の底にあり、高い水圧の影響で300度を超える熱水となって噴き出します。この温度だと熱水は銅や鉄、亜鉛などの金属を多く溶け込ませます。一方の青ヶ島近くの熱水噴出孔は、水深が700メートルと比較的、浅く、熱水の温度も270度ほどと少し低いのが特徴です。この温度が、ちょうど金が溶け出しやすい温度なので、熱水が地下の金を集める役割を果たしている珍しい場所になっているのではと野崎さんは指摘しています。
ただ、それだけでは説明できないほど金の濃度は高く、ほかにも理由があるとみられますがわかっていないのが実情です。』
と、世界でも稀にみる高濃度の金の熱水が発見されているようです。
また、同配信では
大手機械メーカー、IHIの技術開発本部に勤める福島康之さんが
『「ラン藻」と呼ばれる原始的な“藻”の一種を使って金を吸着できることを知り、これを応用できないかコツコツと研究・開発をしていました。この藻は、東北の温泉地でしか知られていない特殊なものでした。当初は研究費もなく周囲に相談できる人もほとんどいません。藻の培養方法などイチから始めたのです。』
と、藻を活用した金採取方法の研究も進んでいるようです。
質問者:
これらがうまく連携していけばもしかすると日本が再び「黄金の国」になる可能性もあるのですね。
筆者:
そうなんです。日本の国土のみを見ると使える資源は限られてきますが、海にまで視野を広げるとかなり様相が変化します。
海の海底地形は火星の地形よりも分かっていないと言われており、その知られている割合は僅かに20%前後と言われています。
日本は島国ですので領海や排他的経済水域が非常に広くあるので、今回取り上げたレアアースやゴールド以外も眠っている可能性があり、潜在的海洋資源大国と言えるのです。
これから技術が発展していけばいくほど、採掘費用が下がり、現実味を増していくことと思います。
質問者:
今すぐには難しいかもしれませんが2030年ごろには期待できそうな感じですね。
筆者:
そうですね。上手いことすべてが進めば、それぐらいの時期には資源に関して今とは全く様相が変わっている可能性はありますね。
日本の国土だけを見たら狭いのかもしれませんが、海には無限の可能性を秘めているのです。
ただ、悲しいことに海底資源も東シナ海の天然資源などは中国に奪われているので本当にそういったことも含めて国防を考えていって欲しいなと思いますね。
次に、日本がかなり先行している技術についてみていこうと思います。