ぽるたんずの救済
「違うからね、きみらはね、転生できていないからね」と王様っぽい人に言われてしまった。
ミリョクとチリョクをなぜゼロにしてしまったのか? 素早さ重視です。ところがミリョクのミは魅ではなかったらしい。身力(みりょく)だなんてワレワレのうちの誰ひとりとして聞いた覚えなしだ。
「わが星の人口を増やしたいなぁ、丈夫で可愛くて賢くて思いやりのある赤ちゃんがたくさん産まれたらいいよねぇ」などと王様は思ったそうです。思いやりのある赤ちゃんて何。
で。
地球から魂を分けてもらったと。そんでもって王様は魂の群れに向かって言っちゃった。個人の「とくちょう」の「ぽいんと」振り分けはそれぞれ自分で好きにしていいからねと。
無事に赤ちゃんとなった子たちのことはよいのです。問題はワレワレ転生失敗組です。
救済策を考えるから待機していてねと王様に言われるままにワレワレは歌ったり踊ったりして過ごしていました。「ポルターガイスト化した」と頭を抱えた王様はワレワレを船に乗せてミとチを稼ぐ旅へと送り出したのです。
旅というか。
王様の星からワレワレのモトモトの出身地である地球への転移です。ワープ。
さてさて。
『知らない天井だー』『やったー』『知らない天井だー』『やったー』
「天井なんて無いけど」
『でも』『だけど』『だって』
「青空が広がってる」
『青? あれは』『アオミドリ』『ぶるーぐりーん』
ワレワレは「体」を起こす。あたりを見回す。
『あ。野原で寝ている状態だったのか』『生えている草は草色だ』『ごくごく普通だ』
けれども見上げれば青緑色の空。ちょっとワレワレが受け取る色の情報の調整をしてみようか。ミドリをアオに変換っと。どうだ。
『空は青くなった』『しかし』『これだと』『草の色もブルーになるのか』
まっさおな地になってしまった。
『これは落ち着かない』『元に戻そうか』『もどそう』
ブルーグリーンスカイ界でワレワレは過ごすこととなった。とりあえずカラダを立ち上がらせるとしよう。「体(カラダ)」とは王様が貸してくれた人型宇宙船なのですけれども。ひとがた。うちゅうせん。乗員兼動力のワレワレ。
うっかりしていたが挨拶だ。
(せーの!)『はじめまして! ワレワレはウチュウジンです!』
「え」
さっきからずっとワレワレの様子を見守ってくれていた彼女はよろけた。突風にあおられたように。
『ややや』『申し訳ない』『いちどきに』『みなで』『今のは皆で一時に』『アイサツしたせいです』『あなたは大量のアイサツを受信しました』
彼女は無表情だった。
「宇宙から来たの」
『きました』
「言葉が通じてる」
『いいえ』『コトバは通じていません』『これは念話』『ねんわです』『てれぱしー』
「そうなのかしら」
『ワレワレは』『かいむ』『語学力皆無ですから』
ちりょくポイントがアレだから。
この人にアレを言おう。
『あなたは』『この地上で』『ワレワレが最初に出会った知的生命体です』『記念すべき』『人物です』『ワレワレのタマシイの友の会に入会しませんか?』
「友の会に」
ゆっくりした反応だが彼女は聞いてくれている。
『そうです』『お誘い』『歓迎』
「わたしを歓迎」
『大歓迎の大勧誘です』『だい』『かん』『ゆう』『入会』『仲間』『テーコーはムイミだ』『ムイミいろいろ』『ゆめのたび』
彼女をワレワレは吸収した。
ワレワレは! チリョクを! 得た!
人型宇宙船の外観を地元民であるわたしの容姿に似せたものに変更。肩につくかつかないかぐらいの長さの黒髪のすそは縦巻きである。巻きは細巻きだ。細巻きカワイー!
王様から通信があった。ちりょくポイントが付いたっぽい会話をご希望だ。よーし。
『地球の自転速度は一秒間に七回転半です』
「それじゃ一秒で一週間と半日が過ぎ去っちゃうよね!?」
そうなのかしら。