人間は1日に24時間も働けない
「おや、あの音はなんだろう」
カーン。
カーン。
キツネが森を歩いていると、カーンカーンという音が聞こえてきました。
気になったキツネは、音のするほうに行ってみることにしました。
カーン。
カーン。
「なんだろう、木を切る音みたいだぞ」
キツネが森の奥をのぞくと、木こりがオノで木を切っていました。
カーン。
カーン。
「やあ、あれは木こりのジレンマじゃないか」
木を切っていたのは、ジレンマという木こりです。
ジレンマはとても働き者の木こりです。
オノを使って、いっしょうけんめいに木を切っています。
カーン。
カーン。
それを見たキツネはおどろきました。
ジレンマのオノが、とてもボロボロだったからです。
ジレンマが、あんまりいっしょうけんめいに木を切ったので、オノの刃がこぼれてしまったのでした。
オノの刃がこぼれていると、上手に木を切ることはできません。
キツネは、とっとこと、とっとこと、とやってきてジレンマに言いました。
「やあジレンマ、がんばってるね」
「おや、キツネさんか。こんにちは」
ジレンマはキツネにあいさつをしました。
ですがジレンマは、木を切るのを休んだりしません。
カーン。
カーン。
「ジレンマ、きみのオノは刃がこぼれてしまっているよ。そんなオノじゃ、うまく木を切れないよ」
キツネは、親切に教えてあげます。
「こぼれたオノは、川に行って削るのがいちばんさ。川の石で削れば、オノはよく切れるようになるんだぜ」
ジレンマは、それでも木を切るのをやめません。
カーン。
カーン。
いっしょうけんめいに、よく切れないオノで木を切っています。
「キツネさん、教えてくれてありがとう。でも木を切るのに忙しくて、川にオノを持って行く時間がないんだよ。オノを削っていたんじゃ、木を切るのが間に合わないんだ」