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呪われた令嬢の婚約者探し  作者: 高木一
第六章 急転直下の出来事
39/52

04

(なんだかんだ言って内心ではフィーナ様のお力のことを認めていらっしゃるのね)


 大人たちとフィーナの会話を聞きながらソフィーはほっこりした気持ちになった。それは黙ったまま様子を窺っていたトールヴァルドやリキャルドも同じだったみたいだ。先ほどまで張りつめていた室内の空気が一気に柔らかいものへと変わる。


「フィーナ様、占いの続きをお願いしてよろしいですか?」


 ソフィーが、よかったわねという意味を込めて微笑みかけると、フィーナが嬉しそうにはにかんだ。


「はい。それでは続きを始めさせていただきます」


 フィーナが全員を見回すと白妖精族たちがゆっくりと頷きながら再びテーブルの上にある石へ視線を向けた。ソフィーも彼らのならい石を見つめる。すると先ほどと同じようにフィーナが手のひらで石を指し示す。


「まず過去を示すハガルには災いや困難という意味があります。予測がつかないような変化、または防ぎようがなく、どうすることもできない悪い出来事に遭遇する。つまりソフィー様でいえば『祝福の儀』で言われた言葉こそがこれに当たるのではないでしょうか」

「確かに。我が家にとってはあのお言葉でいろいろなことが変わりました」


 ソフィーが顔をあげると、フィーナの碧色の瞳が目礼するように瞬く。そしてハガルにかざしていた手を隣へ移動させる。


「現在を示しているのがラドの正位置です。これは旅や移動という意味です。そこから、物事がスピーディーに進んだり、目標に向かうためのやる気や行動力が出てくるといった意味も表しています」


 フィーナからもたらされた言葉にソフィーは目を丸くした。


(すごいわ! 確かにわたくしは現在、マルデル王国からホーン国への留学してるもの。それに留学の本当の理由が運命の相手探しだってことも当たっているわ)


 残るは未来のみ。この結果で運命の相手がわかるのだろうか。緊張から心臓が飛び出しそうだ。ソフィーは胸元を手で押さえ、ごくりと唾をのみ込んだ。


「そして未来を表しているのがギューフとなります。これは愛や贈り物、友情、そして天賦の才といった意味を持つ文字です。ソフィー様がこれまで周囲の人たちを幸せにしてきたご褒美として、ソフィー様の願いは思い通りに進んでいくことを示しています」

「そ、それはつまり、伴侶となる人ができるという意味なのでしょうか?」


 あいまいな物言いにソフィーは恐るおそる、フィーナを見た。


「はい。そういう意味として捉えてよいと思います。ただ……」


 きっぱりと言い切ったフィーナが急に言葉を濁しうつむく。先ほどまでの堂々とした表情から一変、困惑した様子で眉と一緒に長い耳も下がる。ソフィーは不安になった。


「ただ、なんですか? 何かあるのですか? 伴侶が見つかっても命を落としてしまうとかですか?」

「いえ、そういうことではないんです。今の段階でソフィー様が病やケガをするといった結果は出ていません」


 詰め寄る形でフィーナへ迫ると、彼女はこちらを真っすぐに見つめてきた。ソフィーは彼女の言葉に安堵する。だがそれなら何を言い渋っているのだろう内心で首をひねっていると、トールヴァルドの優しい声が耳に届く。


「それじゃあ、どういうことなんだい? フィーナ」

「その、ラドとハガルが組み合わさると、他者の悪だくみを跳ね返すことができるという意味になるのですが、それが今回の結果に関係することなのかわたくしには読み取れなくて……」


 トールヴァルドの声に勇気づけられたようにフィーナが吐露した。その言葉にソフィーは瞬きを繰り返す。言っている言葉は理解できたのだが、意味がまったくわからなかった。説明の続きを待っていると、アルノルドが会話に入ってくる。


「つまり、『祝福の儀』の結果が操作されていた可能性があるということか?」

「まあ! 神聖な儀式にそんな操作がされてるなんて」

「なんてことだ! これは由々しき問題だぞ」

「本当よね」


 アルノルドの言葉を皮切りに、カリーナやフレア、イーヴァルの大人たちが騒ぎ始めた。そんな彼らの様子に、フィーナが慌てた様子で首を左右に振る。


「ま、待ってください。わたくしは決してそのような意味で言ったのではありません」

「そうですよ。『祝福の儀』が操作されたなど少し決めつけすぎではないですか?」

「そうだよ。それに悪だくみされても跳ね返すことができるっていうなら、何も問題ないんじゃないか?」


 トールヴァルドが否定すると、リキャルドも同意するように異論を告げた。そして、長耳を伏せるフィーナを励ますように笑みを向ける。彼の慰めにフィーナが嬉しそうに微笑んだ。


(結局のところどういうことなのかしら? わたくしの呪いはなくなったということでよいのかしらねぇ?)


 困った。誰か詳しく教えてくれる人はいないのだろうか。ソフィーが視線を大人たちへ向けた、そのとき。室内に翡翠色の鳥が旋回しながら入ってきた。よく見ると、その鳥の上に小人が乗っている。


(あの鳥はこの間の消火活動で見た鳥さんだわ)


 ソフィーが鳥を目で追いかけていると、その鳥がイーヴァルの肩にとまった。そして小人が鳥に乗ったまま彼の耳元で何かを囁く。イーヴァルの口角が微かにあがった。


「新しいお客さんがいらしたようだぞ」


 イーヴァルが言い終わると同時に扉が音を立て、開いた。



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