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呪われた令嬢の婚約者探し  作者: 高木一
第二章 新たな出会い
18/52

11

「フィーナ様は『祝福の儀』の占いができるのですね」


 手のひらへ視線を集中させたままフィーナが応える。


「ありがたいことに昔から直感力が強いようで。学園を卒業したらわたくしも『祝福の儀』で占いをする一人に選ばれております。ですが今日は手相のみで占わせていただきますね」

「手相のみですか?」

「本来ですと、人相やストーンを使って行われるものなのです」

「ストーン? そういえば石のようなものがグルグルと宙を舞ってきれいでした」


 あの時もそうだった。視線の置き場に困っていたところ、どこからともなくいくつもの楕円形の石が現れたのだ。不思議に思い手を伸ばせば、石は逃げるようにソフィーの身体の周りをクルクルと移動した。それはまるで踊り子が舞っているようで、幼かった自分は目の前にいた人のことなど忘れ石に夢中になった。

 ソフィーは当時のことを思い浮かべながらフィーナとの会話を続ける。


「たしかそのあと石を選んで……そうそう、石には記号のようなものが書かれていましたよね?」

「それは記号ではなくルーン文字ですね」

「文字だったのですか」


 今さらながらに知った事実にソフィーは驚いた。フィーナがにこりと微笑む。


「今も魔法具や陣を書く際に使われているんですよ」

「あの文字が……知りませんでした」

「マルデル国では魔術も一部の方のみが使われているのですからソフィー様が知らなくても当然ですわ」

「そう言っていただけると気が楽になります。それはそうと『祝福の儀』で占いをされる方は闇の塔出身の方なんですか?」


 ソフィーが好奇心から尋ねると、話ながらも続けていた手相占いをやめ、フィーナが顔をあげる。


「多くはそうですね。ですがまれに、あら?」


 おもむろにフィーナの動きがとまった。そうかと思えば、すぐに手のひらへ目線を走らせる。

 何かよくないことが出ているのだろうか。ソフィーは不安になった。


「……もしかして、わたくしに運命の相手はいないのですか?」

「あ、申しわけありません、違うのです。もうすでにソフィー様はお相手と出会っている、とお顔と手相に示されておりまして……」

「え?」


 ソフィーはまばたきを繰り返した。予想外の結果だ。

 フィーナが困ったように眉を下げる。


「お心あたりになる方はいらっしゃいませんか?」


 おずおずと尋ねてくる彼女の声を耳にしながら、ソフィーはこれまでに出会ってきた男性たちを脳裏に描く。


(王国で出会った方は除外していいわよね)


 何せ彼らにはすでにちゃんとした相手がいる。そう考えると、ホーン国へ着いてから出会った人の中に運命の相手がいるということなのだろうか。


(リキャルド様にはフィーナ様がいらっしゃるから違うわよね。あとは、オルソン先生とフィーナ様のお兄様のトールヴァルド様?)

 だが、オルソンは妻帯者だったはずだ。となると、トールヴァルドが運命の相手なのだろうか。

 怪我をした妹のために颯爽と現れた細身の男性。物腰の柔らかい顔立ちは、一見するとひ弱そうに見える。だが、危なげなくフィーナを抱きかかえた彼は、見た目に反して鍛えられているだろうことは窺えた。


「はい」


 ふいに聞こえたノック音にフィーナが返事をした。ソフィーは俯いていた顔をあげ、扉を見つめる。フィーナの入室許可とともに入ってきたのは、トールヴァルドだった。


「お兄様どうなさったの?」


 兄の来訪に驚くフィーナを横目に、ソフィーはリズミカルな音を奏でながら近づいてくるトールヴァルドを眺める。


(この方がわたくしの運命のお相手……)


 灰色に近い黒のチュニックを纏っている姿は、美麗な顔立ちをさらに際立たせていた。紗がかかっているからだろう。白い服が透け、濃いはずの袖口の広いチュニックが淡い色に見える。それがトールヴァルドの優しさを表しているようで、ソフィーは見惚れた。


「突然すまない。さっき蛇を見たから心配になってね」

「まあ!」


 トールヴァルドの口から聞こえてきた言葉とフィーナの頓狂な声に、ソフィーは我に返る。


「そういえば、わたくしも最近よく耳にします。あの、フィーナ様。何かよくない知らせなのでしょうか?」


 ソフィーが心配になって訊いてみると、フィーナは眉を下げ、肩を竦める。


「夢で見たのならそれぞれ意味がありますが、実物との遭遇はあまり意味がないかと」

「そうなのですか」


 ソフィーは胸をなでおろした。だがそれならなぜ、よく話題に上るのだろうか。内心で首をひねっていると、トールヴァルドが顎へ手をやる。


「蛇の巣が近くにできてしまったのかもしれませんね……。フィーナ、悪いがぼくにもお茶をもらえないかな?」

「あ、気づかないで、ごめんなさい。ちょっと待っていて」


 トールヴァルドが向かい側のソファーへ腰をかけながら苦笑する。


「突然入ってきてしまい申しわけありません」

「いえ、こちらこそお邪魔しております」


 ソフィーは座ったままトールヴァルドへ会釈した。


「ソフィー様、すみません。少し席を外させていただきます」


 フィーナが席を立ち、こちらを見た。ソフィーが了承の意を表すと、フィーナは部屋を出ていった。




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