オーギュ様の告白
あの後オーギュ様からお聞きしたところ、今回の件は最初からオランド侯爵とリアーヌ様が怪しいと疑われていたそうです。
これまで一度もリアーヌ様に聖女の力があるとの話がなかったのに、急にあると言い出したためです。
ですがジスラン殿下がリアーヌ様を庇い、またリアーヌ様の力で体調がよくなった、私よりもリアーヌ様の方がずっといいと殿下が強く仰ったため、有耶無耶になっていたのだとか…
内々に調査していたところ急に殿下が体調不良になられたため、ここで一気に片を付けようとの流れになったのだそうです。
「すまなかった、レット。あなたが大変な時に側を離れてしまって…」
陛下の元を辞した後、オーギュ様は直ぐに謝ってこられました。
「そんな…オーギュ様はお仕事だったのですもの、仕方ありませんわ。それよりもお留守の間にこんな騒動になってしまって…申し訳ございません…」
これは私の本心です。お留守の間にご心配をおかけする事になるなんて、騎士の妻となる者として恥ずべきことです。
「…実は…私も…知っていたんだ…」
「え?」
「今回、こうなることを…」
「…」
さすがにそのお言葉に、私は言葉が出ませんでした…
オーギュ様もご存じだった?
私が逮捕されるのを?もしかして…私は…
「もしかして…私は囮だったのですか?」
恐る恐るお尋ねすると、オーギュ様は苦虫を噛み潰したような表情になってしまわれました。
ああ、これはきっと…
「すまない…陛下には危険すぎると反対したんだが…徹底的な調査が必要だと言われて…」
「……」
「私が討伐隊に出たのも、大聖女様が同行したのも、オランド侯爵たちを油断させるための作戦だったんだ。…彼らは殿下を隠れ蓑に中々尻尾を出さなかったし、レットは私の婚約者になったせいで呼び出しにくくなったから、と…」
「……」
「私が王都を離れればきっと彼らは動き出すだろう、と。すまなかった、レット。あなたを危険な目に遭わせてしまった…」
オーギュ様は、苦しそうにそう仰り、謝ってくださいました。でも…
「…オーギュ様が離れられたのは、私の安全を陛下が確約して下さったからではありませんか?」
「…」
「だって、オーギュ様はとてもお優しいお方ですもの。少しでも危険だと思われたら、断固反対為されたのではありませんか?」
私の言葉に、オーギュ様は目を瞠られた後、バツが悪そうな表情を浮かべられました。
きっと私の予想は間違っていなかったのでしょう。
「全く、レットには敵わないな…」
「え?」
次の瞬間、私はオーギュ様に抱きしめられていました。
あまりの事に言葉も出ません。こ、これはどういう事でしょう…
それに…抱きしめられた事で、オーギュ様の尊い筋肉を服越しとはいえ感じてしまいました。
お、思った以上に…柔らかい感触です…
筋肉とはもっと固い物だと思っていましたが、オーギュ様の筋肉は柔らかくて温かくて、何とも言えない素晴らしい張り具合です。
や、やはり筋肉は尊いですわ。
でも…まずいですわ…!は、鼻血…吹きそう…
私は鼻血を堪えるため、意識を逸らそうとジスラン殿下の筋肉を想像しました。
筋肉皆無のジスラン殿下…うん、見るに堪えない…でも、落ち着きましたわ。
どうしようもない殿下でしたが、この日初めて役に立ってくださいました。
結果から言うと、私は最初から疑われてなどいませんでした。
全てはオランド侯爵たちの陰謀を暴くための演技だったそうです。
そう言えば…王子殺害容疑なら問答無用で地下牢行きの筈です。
でも私は部屋こそ質素でしたがベッドはふかふか、食事も罪人にしては豪華で、二度のおやつまで出ていましたわ。
陛下からは殿下の命を救った恩人として報奨金だけでなく、ウエディングドレス用の素晴らしく上質な生地を賜りました。
しかも、女性憧れの王室御用達のデザイナーの仕立て付きです。
今の私にとっては、筋肉の次に嬉しいご褒美となりました。




