討伐隊の出立
婚約披露のパーティー後も、オーギュ様はお時間があると私をお屋敷に誘って下さいました。
行くと美味しいお菓子とお茶が用意されているだけでなく、アクセサリーなどを細々と贈ってくださって、婚約者として凄く大切にして頂いています。
ジスラン殿下の時とは何という違いでしょう。
うう、あまりに幸せ過ぎて、罰が当たりそうで不安になってしまいます。
とっても幸せなのですが…オーギュ様、ラフな私服だと服の上からでも筋肉の存在が感じられてしまい、私は鼻血が出ないかと気が気ではないのです。
あ、大丈夫です、まだ鼻血は出していませんから。
「討伐隊、ですか?」
婚約披露パーティーから一月ほど経った頃。
オーギュ様のお屋敷でお茶をしている時、一月後にオーギュ様が討伐隊を率いて暫く王都を留守にする旨を聞かされました。
討伐隊とは年に何度か定期的に行われる盗賊などの討伐で、今回は北方の国境付近を回るとの事です。
騎士団の重要な任務の一つで、私の父も年に1回は参加しているので、おおよその事は知っています。
「今回は北の隣国が盗賊を雇って我が国を荒らしているとの情報もある。少し時間がかかるかもしれない」
「そうですか…」
討伐隊は、大体一月ほどかけて国内の決まったエリアを回ります。
今回は北の国境付近ですが、ここは数年前から北の国がちょっかいをかけてきているため、いざこざが増えていると聞きます。
「婚約したばかりで側を離れる事になってすまない。出来るだけ早く終わらせてくるから…」
「お役目ですもの、仕方ありませんわ。それに、私も騎士の家の生まれ。お役目の重要性は理解しております」
「すまない」
「いいえ、オーギュ様の武勇伝をまたお聞き出来るのですもの。楽しみにお待ちしていますわ」
「…ありがとう」
オーギュ様はそう仰ると、私の額にキスをされました。
は、恥ずかしいですわ…最近、挨拶代わりだと言ってよくされるのですが…オーギュ様は私より8歳も上で大人ですし、これが普通なのでしょうか…
赤くなった私を見て、レットは可愛いなと仰るのも反則だと思います。
そうこうしている間に、討伐隊が出発する日が来てしまいました。
私はこの日までに、加護魔法を毎日重ねがけしたお守りを作っていました。
「オーギュ様、これを…」
「これは…」
それは私が聖女の力から作り出した青虹玉で作ったペンダントでした。
青虹玉は聖女の力の結晶のようなもので、かなりの力がないと作り出せません。
私は一月かけてペンダントに加護魔法を込めていたところ、偶然にも青虹玉を作り出すことに成功したのです。
青虹玉は聖女が一生に一度、たった一つだけ作り出す事が出来るとても貴重なものです。
聖女の力の結晶なので、作った本人以外の者が力を籠めると効果がなくなってしまいます。
そして…この青虹玉こそが、呪いを防ぐ唯一の手段なのです。
「私が作ったお守りです。精一杯加護魔法をかけてあります」
「そうか…ありがとう。聖女の力を持つあなたが作ったのなら、きっと素晴らしい効果があるだろう。これで無事の帰還は保証されたものだな」
オーギュ様は力強くそう仰ると、私に笑顔を向けられて出立されました。




