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聖女の力は…

「おい、これにまたいつものやつを」

「はい、畏まりました」


そう言ってお父様が最近雇い入れた侍女に手渡したのは、この国の最高級品の茶葉でした。

ジスラン様がお気に入りの銘柄のこのお茶は、大変高価なものです。

それだけでもジスラン様は喜んでくださいますが…


実はこのお茶には、聖女の力が籠められるのです。

そう、目の前の侍女によって。




私はリアーナ。オランド侯爵家の次女で、ジスラン様と同じ17歳です。

幸いな事に、私は他の誰よりも恵まれた容姿で生まれつきました。

赤みがかった金の髪は華やかで女性らしく、オレンジに輝く瞳は人目を惹きます。

大きなたれ目がちの目と小作りの整った顔立ちは、庇護欲をそそるらしく、男女問わず私がお願い事をすると、みんなが叶えてくれました。

少なくとも、今まで私が出会った人の中で、私ほど可愛い容姿を持った人は見た事がありません。


でも、そんな私でも、負けた…と思った方が一人、いらっしゃいました。


それが、この国の第三王子でいらっしゃるジスラン殿下です。

初めてお会いしたのは9歳の頃でしたが、私など足元にも及ばない素晴らしく整ったお姿は天使のようでした。


そして、私は確信したのです。

あの方こそが、私の運命の方だ、と。


なのに…

ジスラン様の婚約者になったのは、私よりも容姿も家格も低いアルレットでした。

どうして…?と泣きじゃくった私にお父様は、あの娘が選ばれたのは、殿下の呪いを防ぐだけの強い聖女の力があるからだと仰いました。


私の聖女の力は…残念ながらそこまで強くはありません。

10歳の時に行われた聖女の力の測定会でも、婚約者を決める選定会でも、私には婚約者になれるほどの力はありませんでした。


そんな私に希望の光が見えたのは、半年ほど前です。

きっかけは、お父様が聖女の力を持った娘を雇った事でした。


その娘はとある商家の娘で、窮屈な聖女になるのを嫌がって辞退していた子。

でも、実家が詐欺にあって破産してしまったため、お父様が侍女として雇ったのですが…


彼女が茶葉に聖女の力を籠めると、その力が茶葉に宿るようになったのです。


これを飲むと呪いの力が薄れる事が分かったお父様は、これを使ってジスラン様の御心を射止めよと仰いました。

ずっと憧れていたジスラン様の婚約者になれるかもしれない…

その思いから、私はジスラン様に積極的に話しかけ、お茶を飲ませることに成功しました。


そして…アルレットを婚約者の座から追い出し、私は近々正式に婚約者としてお披露目される事になったのです。


「おお、リアーナ。殿下はいかがかな?」

「お父様のお陰で何の問題もありませんわ」


そう、この頃の私は、何一つ問題がないと確信していました。

でも、それが大きな間違いであるとは…その頃の私にはわからなかったのです。


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