表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴブリンから始まる物語  作者: となりの戸愚呂
99/124

97.忘れられた男


 広間へと足を踏み入れた俺とレイナはそれぞれの武器を抜き戦闘姿勢をとる。それに呼応してか部屋の中央に複数の魔方陣が現れ続々と魔物が這い出てくる。5体のミノタウロスに二足歩行の狼······たぶんコボルトだろう魔物が10体。ミノタウロスもコボルトも毛の色や肌の色が異なる魔物も2、3体混ざっている。


「いけそうか?」


「ったりめーだ。全力で楽しもうぜ!」


「りょーかい」


 俺は仙気と魔力を、レイナは深紅之羽衣を纏い特に合図はしていなかったが同時に駆け出した。


 俺はいつも通りロックシュートを周囲に展開しながら、更にファイアーボールを3つ作りだし前方のコボルトに放つ。だがそれは避けられ地面に着弾し爆発を起こす。当たればラッキー位だったから特に問題は無い。それにしても今の動きは素早いな。ただ、これくらいの速さ俺達にとってはまだ足りていない。


「っしゃあ!」


 先に接近したレイナが1体のコボルトを切り捨てた。相変わらずレイナの斬り込むスピードは早いな。俺の魔法の展開スピードをもう少し早めた方がいいな。ただ、俺ももう間合いの範囲だ。俺は2本の刀を平行に揃え接近したコボルトに左下段から斬り上げる。コボルトは俺の攻撃に反応し鉄甲で受け止めようとするが仙気·魔力を纏わせた刀は鉄甲に弾かれる事、また防ぐ事も無かった。感触は僅かにだが感じられたがあまりの切れ味に内心驚いてしまった。だが戦闘中であるため一旦その雑念を隅へ追いやり、もう1体のコボルトへと間合いを詰め右手の刀を右上段から斜めに振り下ろし、右足を軸に回転しながら左手の刀で水平に薙ぐ。後ろに回り込んだ追加の1体は展開しているロックシュートで撃ち抜く。消費したロックシュートは素早く補填する。横目でレイナを見るが余裕そうな·······いや、愉しそうな笑みを浮かべながら次々とコボルト、ミノタウロスを蹴散らしていく。これは負けてられないな。ただミノタウロスが大斧を振り上げているのは見過ごせ無いから阻止させてもらおう。

 俺は展開し直したばかりのロックシュートをレイナの背後に迫っているコボルト、大斧を振り上げているミノタウロスに一斉に掃射した。狙い通りそいつらの胸や腕を貫き風穴を空ける。


「ガンガンいくぞ!!」


「おうよ!ペース上げてくぜ!」


 そう互いに掛け合いオーラを更に濃く淡く高めペースを上げていく。俺は重心を軽く落とし神経を研ぎ澄ましていく。段々と周りの動きが遅くなっているのを感じながら隣まで接近しているコボルトを水平に薙ぎ払う。寄った重心を起点に軸足を強く踏み締め一気に別のコボルトまで急接近し掬い上げ斬る。更に動きを止めずに次へ次へと左右の刀を繰り出し斬り込んでいく。大きな雄叫びとともにミノタウロスが大斧を横に振るおうとしていたので俺はロックシュートを放ちながらそいつに向け大きく跳躍する。狙い通りロックシュートを受けたお陰で攻撃のタイミングが僅かに遅れができ、首下まで近付けたのでそのまま首を狩る。着地した後すぐに次へと意識を巡らせるが既に立っている魔物はいなくなっていた。

 俺は張り巡らせていた意識を抜くため大きく息を吐きながら納刀するとレイナはとても満足そうな表情で俺に手を挙げ向かってきた。


「よう、お疲れさん」


「レイナもお疲れ」


「なかなかに良い動きだったぜ」


「ありがとさん。レイナも相変わらずの身のこなしだな」


「ま、当然だ。しっかし進化したお陰か数段強くなったんじゃねぇか。それでも俺にはまだまだ勝てないと思うがな」


 カラカラっと笑いながら言ったレイナに俺は肩を竦めながら言う。


「だろうな。いつになったら勝てる日が来るのかねぇ」


「頑張って強くなれよ」


「はいよ」


 激励の為か背中をバシバシ叩かれているんだが······防具越しでも痛いんだけど。ちょっとは加減してほしい。そうしているとローナ達が俺達の下へと到着した。


「お疲れ様。相変わらず······というか改めて2人の戦闘は凄まじかったな」


「そうですね。想わず魅入ってしまいました」


「だよね。あー僕も上を目指すならあれくらいできないとダメなのかなぁ」


「·············リン、大丈夫。こいつらが規格外なだけ。···········地道に強くなれば良い」


 規格外って··········そうでも無いとは思うんだが。連携が良くなったのはたぶんモンスターハウスのせいだと思う。


 合流組から口々に褒められて俺はなんだか照れ臭くなった。逆にレイナはそりゃもう自慢気に鼻を高くしてドヤ顔を決めている。


「ま、これくらい俺達にとっては朝飯前だからな」


「流石よね。もう2人だけで攻略していっても良いんじゃないかしら?」


「ああ、それくらい余裕ーーーー」


「いやいや、2人でもその内限界はあるだろ。体よくサボりたいだけじゃ無いのか?」


「流石にバレましたかぁ。レイナちゃんなら騙せたんですけどね」


「ちょ、マリア!俺はそんなに単純じゃねぇよ!!」


「··········でもルゴウが言わなければ本当に2人で行く気だった。··········単純馬鹿」


「馬鹿にするなユーリ!」


 あー、また始まった。この2人は毎度毎度飽きずによう喧嘩というかじゃれ合いするよな。本当に仲良いよな。

 そんな2人の様子をほっこり観ているとリンとレヴィアが俺の方に近いてきた。


「お疲れ様。ルゴウ怪我は無い?」


「ああ、問題無いぞ」


「2人じゃ大分苦戦するかとは思ったのですが·······いらない心配でしたね」


「あれくらいなら魔物が大量に出てくる部屋と比べたら何てことはないからな」


「比べる対象がおかしいのは分かってますか?」


「いや、うん······ってかレヴィア若干怒ってない?」


 俺はさっきからレヴィアの貼り付けたような笑みと僅かにではあるが声のトーンが低いから何となくそんな気がした。


「ええ、まあ······リンも不安がっていたので何か私達にすべき事があるんじゃないでしょうか」


「そ、そうだよ!最初は2人に何かあったらて思ったら心配だったんだから」


 2人ともずずいと近づき何かを求めるように覗きこんでくる。いや、わからんて。とりあえず困った時は頭を撫でておこう。たぶん合ってる筈だ。俺はレヴィアとリンの頭を撫でてあげると違ったのかレヴィアが不服そうに見てくる。


「とりあえず頭を撫でたら満足するとでも?」


「え、あ、違ったか?」


「ええ、違いますよ」


 そういうとレヴィアは俺の手を優しく退かし、少し下がると両手を広げた。


「正解は抱擁ですよ。さ、お願いしますね」


 い、いやいや。その選択肢は恋仲じゃないと出てこない発想だぞ。レヴィアとはまだお互いにそういった関係でも無いんだからそれは違うんじゃないか。そんな早くしてって言いたげな眼で見ないで欲しい··········いや、リンも「次は僕ね!」じゃないから。ローナ達が居る前では非常にやりづらいんだから察して欲しい。でも、やらないといけなさそうな感じだし········うん。諦めて恥も外聞も気にせずにしよう。


 俺はままよとレヴィアに近寄りそっと抱き締めた。まだ防具や武器を持っているので力強くではなく優しく包み込むように。


「えっと········心配かけたな」


「はい、心配しましたよ。レイナに付き合うのは良いんですがもう少し自分を大切にしてください」


「あー、善処する」


「まぁ、難しいとは私も思っているのですけどね」


「無茶は出来るだけしないでおくよ」


「はい、そうして下さい」


 少し抱き合いレヴィアは満足したのか俺から離れ先程とは違って柔らかく微笑んでくる。何となくその微笑みに母性というか綺麗というか········まぁ簡単に言えば見惚れてしまった。そんな俺にリンが軽く手を触れてきた。リンに顔を向けると少し怒っているのか頬を膨らませてジトっと見てきている。俺はすまないと想いつつ同じようにそっと抱き締め、安心させる為に背中を軽くポンポンと叩いてあげる。


「リンも心配かけたな」


「うん。ルゴウもレイナも何事もなくてよかった」


「おう。まぁ俺としてはリンが心配なんだけどな」


「むぅ、そりゃルゴウとレイナ達に比べたら弱いんだけど僕だってこれから頑張るんだから!」


「無茶はしないでくれよ。リンが居なくなったら悲しいからな」


「わかっるよ。僕だってルゴウとレイナとこれから色んな事をしていきたいんだから居なくなったりしないよ」


「じゃあ約束だな」


「うん!約束だよ!!」


 俺とリンは互いにキュッと抱きしめ合い、離れる間際に軽くキスをした。さてと皆の方へと目を向けるとレイナとレヴィアは羨ましそうに、それ以外は顔を赤らめたり呆れて苦笑いをしている。あー········うん。本当に申し訳ない。つい衝動的にしてしまった。


 その後は手分けして落ちている魔石を回収し宝箱から鍵と獅子の模様の入った手斧、底の部分に青い宝石の付いた黒いタクトを手にいれた。鍵に関してだが今までに回収してきた鍵と形状が異なり、ブレード部分が無く棒状で何やら刻印が刻まれている。俺は疑問に思いながらも何処かで使うのだろうと深く考えはせず魔法袋へと入れた。


 回収も終え、俺の住処にしている洞窟へと帰っている際に見たことのある人物達に遭遇した。


「よう、いつぞやのゴブリンにレイナさん達じゃないですか」


「ちっす!お久しぶりです」


 一瞬、なんかゴツイ奴が俺を睨んでいた気がするんだが········誰だったかな。俺が思い出せずにいるとレイナも首を捻りながら言った。


「ん?誰だお前ら?」


「え········いやいや、この前あったばかりですよ!ほら、このゴブリンとやり合ったガストですよ」


「········ん?んー、わりぃ記憶にねぇわ」


「そ、そんなぁ」


 レイナの苦笑いと全く悪びれる様子を感じられない言葉にゴツイ男はあまりにもショックだったのか膝を落とし項垂れていた。ゴツイ男の仲間がそいつを不憫そうに憐れむように見たり励ましている。俺もそいつを可哀想にとは思うがかく言う俺も思い出せていない。さっきそいつが言ってた名前········ガスト········ガスト········?ふむ、忘れた。忘れたものはしょうがないよな。俺はガストと呼ばれる男の仲間に何故ここに来たのか聞いてみた。


「あー、この間ギルマスからここのダンジョン調査の依頼を請けて、『紅の戦乙女』が先に調査しているけど“ある事情“もあって俺達『竜の牙』も別々ですることになったんだ」


「ある事情?」


「ああ、何でも近々ここの探索に腕試しがてら『勇者パーティー』も参加するらしくある程度の情報や難易度の見立てが俺達と『紅の戦乙女』の相違が無いかを知りたいらしい」


「········相違と言ってもそんなに誤差は無いんじゃないか?俺達が嘘を報告するわけでも無いし」


 ガルシアは何を考えているんだ?まさか俺達を信用してないって事なのか?俺の言葉に男は同意するように肩を竦めて言う。


「さあ?正直俺もそう考えてる。でも念の為にって事らしい。········その時のギルマスの顔ときたら凄い面倒くさそうだったからな。後、愚痴もだいぶ吐いていたし」


「あー、何と言うか········お疲れ様だな」


 何となくだがその時のガルシアを思い出し憐れむ感じで察する事が出来た。たぶん王国からの要請で何かしら合ったのだろう。それを拒否することも出来ず渋々って感じだったんだろうな。まぁこれは俺の憶測だから当たってない可能性が高いがな。


「まあ、その分俺達も報酬は弾んでくれるらしから頑張るけどな。あ、そうだ。先にこのダンジョンの情報をくれないか?ある程度知ってはおきたい」


「教えるが聞いてそのまま帰るのは無しだからな」


 そうはしないと思うが一応念の為に釘は刺しておく。すると男は声を出し笑った。


「ハハハ、そんなことは流石にしないぞ。ダンジョン産のお宝はおいしいからな。依頼報酬にプラスしてのボーナスつまり稼ぎ時ってやつだからな」


「だろうな。じゃあおいしい思いをさせるために教えるよ」


「助かる。今度会ったら何かお礼出来たらするぞ」


「あいよ。成果に期待してるからな。このダンジョンのの特性はーーーーー」


 俺は男と途中から他のメンバーも加わり話していった。注意する点や危険な箇所を大まかな地図を使い説明していく。時折、男達が質問してくるのに答え今持っている情報を伝える。伝え終えると最初に話した男が頭を抱えて深い溜め息を溢した。


「マジかよ········行けて5階層までだな。せめてミノタウロスが1体なら良かったんだが、2体より多いと進めないぞ」


「だな。もし突破出来ても9階層で詰むのは確実だ。本当に教えてくれてありがとう」


「これくらい問題ない。5階層以降はあんたらで決めてくれ。無理して探索するなよ」


「分かってるって。さてと········なあガスト何時までそうしてるんだ。情報も聞けたしさっさと行こうぜ」


 結構話し込んでいたのにガストと呼ばれた男は今だにあの態勢から立ち直っていなかった。


「そんな········せめて顔ぐらいは覚えておいてくれよ········」


「駄目だこりゃ。引き摺っていくか?」


「その前に引っ叩いておこう。何時までも落ち込んでるな!」


 男がガストに近づき思いっ切り頭を叩くとハッと顔を上げ叩いた男に顔を向けた。


「お、俺は········」


「はいはい、聞きたいこと聞けたからもう行こうな。後、もうレイナさん諦めておけよ。興味すら持たれてないんだから」


「し、しかしだな········」


「うるせぇ、さっさと行くぞ。じゃ、そういう事で俺達はこれで」


「あ、あー········レイナさん!せめて俺の名前覚えておいて下さいね。ガストです。ガスト!また会いましょうね」


 仲間の男に引き摺られながら必死にガストは自分の名前を言うが当の本人ことレイナはどうでも良さそうな顔をしている。絶対に覚えてないな。可哀想なガストだ。せめて俺は覚えておくか。


 『竜の牙』を見送った後に俺はローナ達にさっき教えて貰った事を話すと何故彼等が来たのか納得してくれた。


「しかし勇者パーティーがここに来るのか········面倒事にならなければ良いのだが········」


 ローナが俺にチラリと目線を送ってくる。正直苦笑いで返すしかない。言いたいことは分かっている。初対面ならまず警戒はされるか攻撃されそうだもんな。ゴブリンだし。関わらないの事を祈っておこう。


「まあ、その時はその時でしょ?とりあえずもう帰りましょう。お姉さんもうクタクタで早くお風呂に入りたいわ」


「だな!運動した後の風呂は格別だからなさっさと帰ろうぜ」


「僕も楽しみなんだよね!あ、ルゴウ。今日は一緒に入ってくれるよね?」


「えっ!?あ········考えておくよ」


「それ絶対に考えて無いやつでしょ!もう」


 バレてしまったか········さてどうやって断るか考えないとな。絶対に収集がつかなくなると思うし。だからってレイナも乗り気にならないの。レヴィアも賛同するな。ユーリの視線が痛い。ってマリアも然りげ無く手を挙げるな·······いや、いっそのこと皆で入ればいいじゃないからな。ローナも反対してくれよ!········駄目だこいつフリーズしてやがる。ユーリは目線だけじゃなくて言葉に発してくれませんかね!?お願いだから反対してよ、ユーリさん!!


善行 9/108

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ