93.朝の一幕と女子会
今が朝なのかどうかは分からないが目が覚めると全身が重く感じた。昨夜の激戦と寝る前にちゃっかり魔石を吸収したのが原因だろう。しかし前回と比べると喉の渇きや空腹が感じられないからちゃんと進化出来ているか不安ではある。まぁ、急ぐものでもないからな。出来ていようがいまいがどちらでも良いか。それにしても身体が動かせないのはどうしてだ?疲れていると言ってもここまでの事は無かったはずだし······そしてこの温もりと柔らかさいったい···········?
「··········ん······んん」
微睡む視界と思考の最中に俺の身体の上でモゾモゾと動いた。あー、思い出した。魔石吸収後に皆が俺を抱き枕にして寝たんだっけか。左右にレイナとレヴィア、俺の上にリンという構図だ。2人に比べるとリンはかなり寝ずらかったんじゃないか?人の上で寝るって寝心地悪そうだし。ん?俺の方が寝ずらいだろって?目が覚めた今ならそうだが疲れ過ぎて気にする余裕がなかったんだよね。本当に3人相手はキツいなとは思った。
それにしても何て言うか、やってしまったな。あんだけレイナに言っていたのに守る事は出来なかった。·········まぁ、そのレイナがあの状況を作り出し、一番の乗り気で最後まで俺とシていたから防げないだろう。リンとレヴィアを相手している際だって寂しくなったのか········思い出すのをやめておこう。納まりが利かなくなるし態勢的に若干不味い。お願いだからリンはこれ以上動かないで欲しい。
俺は元気になりかけてるモノを鎮めよう心を無にした時、右で寝ていたレイナに動きがあった。
「············ん、おはよ」
レイナは寝惚けながらも俺の目が覚めていることに気づいたのかそっと微笑みながら挨拶してきた。
「おはよう。身体は大丈夫か?」
俺はレイナの方に顔を向け同じように微笑みながら言った。
「·······んー、少し気だるいくらいだな。気になる程でもないくらいだ。ルゴウはどうだ?」
レイナは軽く身体を伸ばし自身の具合を確認した後、再度俺の腕の中へと収まった。
「俺は動けなくはない位だが、今日は探索とかは控えたいな。流石にまだ疲れが残ってる感じだ」
「まぁ、あんだけ激しければな」
「そうだな。ここで応えなければ男が廃るって思ったから全力で相手させてもらったよ」
「お、言うじゃねぇか。ま、ローナ達が来てからはこうも出来ないから今日はのんびりすっか」
「それは有難い」
互いにまだ寝ている2人を気遣いながら小さく笑いあい、軽くキスを交わした。確かにこういった事はしづらくなるからな。自制しなければな。
もう少しゆっくりしようかなと思い始めた時に逆側にいるレヴィアがモゾモゾと動き始めた。リンと同じく寝返りだろうと思ったが違った。枕にしていた腕から頭をどかし、その手を自分の胸へ持っていき挟めた。寝やすい様にしただけかと思い放置しようとしたがそれを擦る様に上下へと動かし始めた。········たぶんこれ起きていて態とやってるな。俺はあえて無視してレイナの頭を撫でるとレイナははにかみながらも気持ち良さそうにされるがままでいる。レヴィアよ。そんな誘惑は残念ながら通じんよ。
「なんで無視をするのですか?」
不服そうなレヴィアに溜め息を吐きつつ顔を向けるとムスっとした表情で見つめていた。
「いや、態とだなと思ったから放置してた」
「酷いですね。少しは構って欲しいからやっていたんですよ」
「本当は?」
「寝ている隣でイチャついているのが気に食わなかっただけです。今だってほらレイナのこの緩みきった顔」
「んな!?べべつに緩んでねぇよ」
頭を撫でられ続けていたレイナは照れ隠しの為か声をあげたが、レヴィアは何を言ってるんだと呆れていた。
「いえ、ゆるゆるです。なので一夜を共にした仲である私にもそれくらいしてもらってもいいじゃないですか」
「確かにそうだが······俺にしてもらっても嬉しいものなのか?ほらレイナとリンは恋人だから嬉しいだろう。でもレヴィアは·········そうではない訳だと思うんだが」
「嬉しいか嬉しくないかは·······················んー、どうでしょうか?そう言われると確かにそうですね」
俺の言葉でそうでも無かったなと気づいたレヴィアは頷いた。するとせもてもの反撃だと思ったレイナは顔をまだ赤らめつつもニヤケながら言った。
「だったら試しにしてもらえば良いじゃねぇか」
「減るものでもないですしね。お試しと言うことで」
「まあ、良いけど·······」
はいどうぞと云わんばかりに撫でやすい位置まで移動したレヴィアにこれで良いのかとは思いつつも撫で始めた。レヴィアの髪は見た目通りサラサラとしていてリンとレイナと違った触り心地がするな。
俺は特に何を言うわけでもなく黙って撫でているとレヴィアは心地良さそうな表情へと変わっていった。
「これは·········意外と·······」
「レヴィア、顔が緩んできてっぞ」
「そんなことはないですよ。ただちょっと懐かしさがあるだけです」
ニヤケながら言うレイナに少しだけムッとはしたものの、過去の事を思い出したのか嫌がりもせず撫でられ続けていた。
「ん······皆なにしてるの?」
「すまん、起こしたな」
あんだけ騒いでいれば流石にリンも起きるだろう。リンはまだ眠そうな目をしながらレイナとレヴィアを見てしばらくするとハッとし声をあげた。
「あ!ズルい!僕もして欲しい」
「順番な。流石に手が足りないから待っててくれ」
近い近い。そんなに顔を近づけて言わなくてもいいじゃないか。
「むー、しょうがないか。じゃあせめておはようのキスする」
そう言うとそのまま俺の唇に軽くキスを交わすと満足してくれ···············てなかった。そのまま物足りなかったのか再度軽くキスをし、離してはもう一度としてきた。
リンの行為を見たレイナは身体を起こしやれやれと呆れた口調で言った。
「おいおい、リン。それ以上は止めておけよ」
「そうですよ。朝から盛るのは止めましょうね」
2人の声が聞こえていないのかどんどんとリンのキスはエスカレートしていき、より深く味わうように舌も絡ませてきている。ん?俺は止めないのかって?そりゃ·········止める気が起きないんだよな。疲労や怠さはまだ残っているが求められるなら応えるし、それに夢中にキスしてくるリンが可愛いから段々と俺もスイッチが入ってきてるからな。
「あーあ。止めたからな······ま、俺は良いんだけどさ」
「え、もう少し止めましょうよ。流石に······」
「別にレヴィアは他の事してていいぜ。俺はまだ足りないから一緒にするわ」
「な··········」
「ルゴウ。リンばかりじゃなくて俺にも········な」
「わかった。一緒にしようか」
リンとのキスを一度止め、レイナに頷くと嬉しそうな顔をしそのまま唇を重ねた。はじめは軽く啄むように次第に舌も重ね合わせていく。
リンも負けじと俺とレイナのキスを参考にしたのかレイナと交代したときに同じようにしてきた。多少ぎこちないがその内馴れてくるだろう。
そんな俺達をレヴィアは見てわなわなと震えていたが、諦めたのか肩を落とした。
「全く·······まぁ、今日はいいでしょう。明日から自重してくださいね。と言うわけで私も交ぜてもらいますよ」
吹っ切れたレヴィアも加わり、俺達は朝から愛と友好を深めていった。···········今日も変わらない1日のスタートになった。
ーside.ローナー
はぁー、レヴィアには困ったものだ。何が「先に行ってますから宜しくお願いします。案内にはリンもいますので問題ありません。ゆっくり来てくださって構いませんので」だ。なぜ先に行く必要があったのだ。ダンジョン探索前とは言え自由過ぎやしないか。
私は今日で何度目か分からないくらい溜め息を吐いているとマリアが心配になったのか声を掛けてきた。
「何を溜め息吐いてるの?」
「それは言わんでも分かるだろう」
「まぁ粗方予想はついてるのだけど·······レヴィアの件ね」
「そうだ。はぁ」
「············レヴィアもレイナも自由過ぎる。ローナがガツンと言わないと分かってくれない」
百歩譲ってレイナは分かっている。私としても面白そうだから了承したし、居なくても変わらないと思ったからである。だがレヴィアは居てくれれば助かる事が多いので抜けたのは痛い。それを分かってるのかいないのか、レヴィアは言うだけ言って断りもなく行ってしまったからな。正直あれでこのパーティーの年長者だと言うのが残念である。
「まぁ、2人とも問題児ですからねぇ。今更って感じよねぇ」
「·········だとしても身勝手なのは変わらない」
ユーリは怒りを表しているのか目の前の肉にフォークを乱暴に突き刺し頬張っていった。マリアはその様子に「あらあら」と言って困り顔を浮かべている。
「でも、自由と言ってもちゃんと行き先は言ってるんだし問題無いでしょう?それにレイナちゃんが居たところで役には立たないわよ」
「·········そうだね。むしろ邪魔。········ルゴウが連れてってくれて助かった」
「そうねぇ。お陰で準備も滞りなく進めているし、今日まで目立った問題事は少なかったもの」
「·············ハッ!?確かに。··········酒絡みとか無かった気がする」
「何気に2人とも酷い事言うな·······私もそうだとは思っているが」
本当に旅先での問題は少なかった気がする。まぁ、どれも意図してやったわけでも無いのだが·········いや、酒絡みが多かったな。
「それにしてもレヴィアが行くなんて珍しいな」
「そうねぇ。たぶん飲み仲間が居なくても寂しくなったんじゃないかしら」
「··········あー、かもしれない」
確かにマリアの言うことに一理あるし、私もそうだとは思っている。ルゴウに会うまではよく2人で飲み歩いていたしな。
私もユーリも特にこれ以上思うことは無かったのだがマリアが変な事を言い出した。
「もしくは別の目的があるんじゃないかしら」
「別の目的·········か?」
「そう。私達って冒険者やってるでしょ。出会いらしい出会いも無い訳だから堪るモノは堪るじゃない?」
「な!?·····ま、まぁ·····そうだが·····」
突然の下世話な話に驚いてしまったがマリアはニヤリと口許を吊り上げながら続けた。
「そこに優良そうな人が現れたら発散したいじゃない」
「わ、私はそ、そうは思わないぞ!そういうのは段階を踏んでだな················ってまさか!?」
「そのまさかじゃない?それにほら、ルゴウってゴブリンでしょ?安全で優しく自分の興味と堪ったモノを解消してくれそうじゃない」
「きょ、興味って!!そ、それは確かに······いやでも、一時の気の迷いでするのはどうかと思うぞ」
「·························不潔」
「あら、2人とも興味無いの?私は興味あるわよ。だからと言ってゴブリン達にされたくは無いけどね。それとあの2人に茶々入れたく無いしね」
「そんなおおっぴらに言うことでは無いだろう」
「···········ローナの言う通り。場所を考えて」
「あら、ごめんなさいね」
ふふふっと笑いながらワインに口をつけた。ユーリも私もマリアの態度を不服に思い見つめているがどこ吹く風である。しばらくそうしていたが私は諦め、すっかり冷めてしまった料理に手をつけ始めた。
しかし堪るモノは堪る·····か。実際に私もそういった欲求はあるし恋人も欲しい。確かにルゴウはそこらの男と比べれば悪くはない·······むしろ良い方だ····とは思う。変身した姿は好みなのだが種族が違うし、何より抵抗が少なからずある。って私は何を考えているのだ!ダンジョン探索前だぞ!集中せねば。
私の様子を見ていたマリアはニヤリと不敵に笑いながら言ってきた。
「なぁに?ローナも興味あるのかしら」
「ち、ちが······断じて違う!」
「まぁまぁ、照れないの。ローナもお年頃なのだから興味くらい出てもいいじゃない?その方が可愛げがあるわよ」
「て、照れてなんかないぞ。ってユーリもそんな顔をするな!?」
「···············はぁ、不潔。······まぁお年頃なのはしょうがないけどレイナもローナも毒されすぎ」
「な!?だ、だから違っ····」
「良いじゃないの。種族を越えた愛。相手が複数いようとも関係無いじゃない?」
「だから人の話を聞けーー!!」
この後に散々マリアとユーリにおちょくられた私は精神的な疲れでフラフラになりながら宿のベッドに倒れ込んだ。くそぉ、いつもならここはレイナなのに何故私がこうならればならんのだ。私があの時変な反応をしたのが悪かったのか?それでも納得できない。マリアだって興味があるとか言ってたのに·········はぁ。
でも、レイナが羨ましいとは思うんだよ。種族はどうあれ相手が見つかって······前にレヴィアが言っていたが仲良くしてるらしいし、毎日········いや、うん。あれは流石に引いたな。幾らなんでも限度というものがあるだろう。·······けどそんな経験してみたい気もするし···········好きな人が出来るとそうなるものなのか?それともやはりハマるくらい良いものなのだろうか?私も相手が出来たら············って何を考えているのだ!?何で······っく、もう!!
枕に当たったり要らぬ妄想で恥ずかしくなり、のたうちまわったり悶々とするのを繰り返し続け、色々としていたら夜が更けていった。
善行 9/108
ローナ視点中の裏ではちゃんと新装備の刀の訓練とかしてます
ただ、その他の時間は自分の考えていた場面がほぼアウトだったので省略させていただきました
申し訳ありません




