89.10階層
10階層へと進んだ俺達は予想通り扉と対面することになった。俺とレイナは再度入る前に装備を点検し異常が無いか確認する。万が一があったら恐いからな。異常が無いのを確認し終えた俺達は扉に手を掛け中へと入っていった。
中は広いの変わらず今までの部屋と変わらない造りである。ただ、違う事と言えば部屋の中央に2体の角を生やした巨体が居ることである。身長は3メートルあるかないか、筋肉は発達し鎧らしい物は身に付けておらず、上半身にいたっては布すらも身に付けていない。下は腰巻きの布と動き易そうなズボンを履いているのでブツがぶら下がっているの見えないのが有情だろう。手には通常の人が持てそうに無い鉄の塊·······金棒が握られている。そして何よりなのは厳つい顔だな。まるで獣みたいな毛深く獰猛な顔で鋭く尖った牙を剥き出しに威嚇してくる。
「ほう、やっぱりオーガだったか。こりゃ戦いがいがあるな」
レイナはニヤリと口許を吊り上げながら大剣を抜き、深紅之羽衣を纏いはじめた。
「視るからにパワータイプだが·····全力でいけば渡り合えるか」
「なぁに言ってんだ。お前の方が断然強いんだから渡り合えるもねぇよ。本気のお前の方がオーガより強いしな」
「有難い言葉だが油断はしたくないんだよ」
「了解。じゃ、互いに頑張るか」
「おう」
俺も最初から全力を出すため2本の剣を抜きつつ仙気と魔力を同時に纏い、練り合わせ更に5本のロックシュートを展開しオーガを見据えた。前の階層から魔力と仙気は消耗してきているから余り多くは使えないだろうから長期戦になるとキツいな。こういった時にレイナの深紅之羽衣が羨ましいと思うよ。無い物ねだりはここまでにしてどうするかだな。今回は基本タイマンとなるだろう。レイナも俺のサポートは不要だと思うし自分の戦いだけに集中しよう。
俺とレイナが戦闘態勢に入ったと同時にオーガは威嚇の為か咆哮し、ビリビリと大気を震わせた。うるさいが畏縮するほどではない。俺とレイナは同時に駆け出し各々正面にいるオーガに向かった。俺は先ずは牽制の為に1本のロックシュートを撃ったが小バエを払うかの様に素手であしらわれた。傷を負った様子も無いしこれは有効では無いのかもしれない。
俺はそのまま速度を落とさず近接するとオーガは大きく振りかぶり片手で金棒を振り下ろした。受け止めるのは愚策かと考え左に跳躍し避けると振り下ろされた金棒の風圧を感じると共に元居た場所に窪みが出来ていた。レイナよ、受け止め切れる自信が無いんだが·····
俺は内心で戦慄を感じつつも着地した足をバネにしオーガに向かって跳躍、身体を回転させながら独楽のように斬りつけた。だが、オーガは直ぐに反応し引き寄せた金棒で俺の斬撃を防いだ。仙気と魔力を纏わせた剣なのだが金棒が厚く硬いせいか表面を軽く傷つける程度になってしまった。だが、少し安心した。何故なら斬りつけた方向へと金棒が動いた事だ。これは力負けは余り無いと考えていいだろう。
オーガは怪訝そうに唸るとまだ空中にいる俺をはたき落とそうしてきた。俺は足場として新たなロックシュートを足元に出しオーガの足元に向かって跳躍、降りる最中にも片足を斬りつけ更に着地した足を軸に身体をひねり再度2、3斬りつける。浅い。思いの外オーガの肉体は硬いせいか中々刃は深く入らなかった。その事に舌打ちし剣を素早く仕舞い大剣に持ち替え、仙気と魔力をより濃く練り合わし纏わせ今度はスタンピングをしようとするオーガの軸足を思いっきり斬り払った。今度はしっかりと刃が通り叩き斬ることに成功したが、途中まだ硬く感じられたので更に力を入れ込まないと止まっていたな。本当に硬すぎる。
突然軸足を失くしバランスを取ることが出来ず前へ倒れたこんだオーガの上へと向かって大きく跳躍。今展開しているロックシュートと追加で通常より大きくて鋭い螺旋を描いたロックシュートをいつも以上に回転させ自分の落下地点ではない箇所に撃ち込む。俺は刃を真下に大剣の握り部分を自分の顔よりやや高めに持ち上げ落下していく。先にロックシュートを撃ったことで回避行動を制限させることができ思惑通りオーガのおよそ胸の位置に大剣を突き刺せた。オーガから凄い唸り声が聞こえ続けるがお構い無しに更に突き入れ、そして力任せに捻る。ごりっと音が鳴った所で段々と唸り声は小さくなっていき、遂には聞こえなくなってた。
俺は身体から力を抜くため大きく息を吐き、レイナの方に目を向けるとまだ闘っていた。·········いや、違うな。あれは遊んでいる。何であんまり攻めないで普通にあんな金棒相手に打ち合ってるんだよ。しかも弾き飛ばしてるのレイナの方だし。普通に考えて逆だろ。
「おらおら、どうしたどうした。威勢だけか?ん?」
うわぁ、余裕で煽ってる。確かに深紅之羽衣の色は俺と最後に闘った時より少し薄い位だと思いたいが······あ、いや?同じくらいか?わからん。だがそうだとしたなら俺も実はオーガとあれくらい打ち合えたのか?明らかに力負けしそうなのに······いや、現にレイナは打ち合えているし·············話が逸れそうだ。とりあえずだ。
「おーい、こっちは終わったぞー」
俺は大剣を引き抜き終え、レイナにそう声を掛けると手を振って返してきた。
「お、早かったな。····っと、はい残念。んじゃこっちもそろそろ終わりにすっか」
途中オーガの攻撃を軽く弾き返しながらも尚も余裕そうに軽い口調であるが、本当に終らせる為に先程よりも輝きを高まらせた。そして腰をやや落とし大剣を下段に構え溜めをつくる。
「『豪炎斬烈空』!」
一気に横へと振り抜いた大剣から飛ばされた斬撃はオーガを貫通し壁へと打ち込まれていた。1拍を置いた位だろうか。オーガの胴体ズレ落ちながらも燃え始めたのは。本当に終らせるのが早かった。いや、その前に正直魅とれてしまった。前に横目で見たモノとは違うのもある。なんと言うか·······光の粒子が飛んでるような気がする。たぶん深紅之羽衣のせいだとは思うがそれはとても綺麗な一撃に見えた。振り終えた後も残滓がチラチラと残りつつも炎の粒子も拍車を掛け幻想的に見えた。
俺が呆けた様に見ているといつのまにかレイナは大剣を背負い俺に目を向けニカッと笑いかけてきた。
「おう、終わったぞー」
「あ、ああ。お疲れ様」
俺はレイナのその言葉で意識を戻し、つまりながらも返した。
「いやー、楽しかったな。ルゴウもそうだろう?」
「それはレイナだけかと思うんだが······俺は初見だからそれどころじゃ無かったぞ」
「その割にはあっさり勝ってたじゃねぇか。次は打ち合ってみなよ。意外に楽しいぜー。······ま、最初だけだけど」
「あんな巨体にかよ······あんまりしたくはないな」
あっけらんと言うレイナに俺は肩を竦めるとバシバシと肩を叩いてきた。
「そう言うなって。ま、次の機会にやってみなって」
「·········考えてはおくよ」
絶対にしたくはないがな。出来なくはないとは思うが勇気が起きないよ。それだったらまだレイナと打ち合ってた方が·······いや、変わらないか。相手が人間サイズか巨体かの違いだけだし。あと地味に痛いから止めて。
お互いに労い終えると出てきた魔石や人が持てる位のサイズになった(だからと言ってかなり重い)金棒を回収し宝箱を開けた。中にはシンプルな片刃の大剣とオーガのメダル、緋色の籠手が入っていた。今回の宝箱は大きめだなと思った大剣のせいかもしれないな。一応レイナに大剣のをどうするか聞いてはみたが·····
「んー、これがあるから要らね。ルゴウが貰っちまえよ。因みに籠手も要らないからな。こっちのグローブの方が動き易いし野暮ったくないからな」
とのことである。まぁ、指輪に干渉するのもあると思うしな。俺もそうだし。これは素直に売りだな。大剣は······うん、替えておこう。だいぶさっきの戦いで無茶したせいか刃が欠けていたり若干重心が曲がってる気がするんだよな。有り難く使わせて貰うとしよう。
さて、回収するものは回収したし魔石の吸収は一旦お預けと言うことになった。理由は進化前の俺の状態を説明したら寝る前にしようと話になった。以上。··········理由になってないって?察してくれ。話を戻そう。俺達は次の階層へと繋がる扉に入り5階層の時と同じ場所に鍵の掛かった扉があった。
「ほぉ、これが鍵が必要な扉か·····確かに5本必要なんだな」
レイナがまじまじと扉を見ていたが言わせてもらうか。
「いや、レイナ。5階層で同じもん見ただろ」
「あ、そうだったな。いやでもそんな詳しく扉なんか見てなかったからよ」
「まぁ、扉なんて開いてしまえば一々造りなんて気にしないしな」
「そうそう。わかってるじゃねぇか」
まぁ、ダンジョンの扉ってだけの話なのだが····それは言わないでおこう。もし違ったら頭を抱えるかもしれない。
俺の何とも言えない感情を露知らず、レイナはウキウキとしながら俺に手を出してきた。
「扉開けたいから鍵をくれ」
そう言いながら差し出した手の指をくいくいと曲げていたので俺は軽く笑いながらも自分の魔法袋から鍵を取り出し渡した。
「はいよ、これで開くはずだ」
「おお、こういうのやってみたかったんだよ。アイツらはやらしてくれなかったんだよな。レイナがやると危ない気がするって」
「あー······うん。この扉は大丈夫だから気にしなくていいよ」
たぶんそれは罠とか関係なしに開けようとするレイナを止める為のことかもしれない。もしくは力を入れすぎて鍵穴を壊すかもとかだと思う。俺よりもレイナといる時間が長い人達の言うことだから何か過去に事例があったのだろう。
等と思っていると扉の解錠をし終えたので中へと入っていった。
中も特には変化はない。部屋の真ん中に台座があってそこにメダルを嵌め込むと思われる窪みが在るだけだ。俺はその台座にオーガのメダルを嵌め込み手をかざそうした。そこでふと思ったのだがこれって2人同時でも行けるのだろうか。試しに2人で一緒にかざしてみると問題無く動作し2人の手に光が集まっていき転移が可能となった。
試しにレイナに残ってもらいダンジョンの入り口へと戻り10階層へと戻ってみた。これで2人揃わないと使えないじゃ笑えないしな。もし少し経っても俺が帰って来なければレイナにも同じ様に入り口に戻ってもらうことも伝えているし問題無いだろう。そして10階層へと転移しようと手の平にカード状の光を出すと2つ現れた。ご丁寧にカード状の中心に5と10と記載されている。俺は10へと意識を集中させると手の平の中心に10のカード状の光が5を押し出し収まったのでそれを握るとレイナの下へと帰る事が出来た。レイナにその話をすると目を輝かせて俺もと言った後、直ぐに転移して暫くしてから帰ってきた。帰ってきた時のレイナの興奮状態は何とも可愛らしかった。
今日の探索はここまでとし住みかへ戻ってきた俺達なのだが········
「やっほー、レイナとルゴウ。来ちゃいました」
「レイナとルゴウ、久しぶりー!」
と何故か住みかにリンとレヴィアが来ていた。しかもレヴィアに関してはお酒飲んでいるし。俺とレイナは唐突過ぎてしばらく固まってしまった。
善行 9/108
戦闘が淡白なのは許して下さい
想像力が無さすぎるのでもっと鍛えます




