81.マジかよ······
散々質問攻めにあった俺とレイナは話を無理矢理切り上げ、3人を街に送った。まぁ、道中も散々聞かれる羽目になったんだけどな。街に着いた頃にはもう日が大分傾いていて夕暮れ時になっていた。
「今日は本当に助かりました。しかも失くしてしまった武器の替わりまで戴けるなんて。本当にありがとうございます」
「これくらい問題ない。どうせダンジョンに潜ったら手に入るし、余っていた物だしな」
死蔵していた剣や盾、魔法を使う際にロッドや指揮者が持つようなタクトも渡した。これで明日からの冒険にはあまり支障は出ないことだろう。
「レイナさん。頑張って下さいね」
「私も応援してます」
「お、おう······」
シエスタとルーアがキラキラとした眼差しにたじたじになるレイナを横目に俺はダルに言った。
「仲間を増やすのかどうか分からないが、これからも頑張ってくれ。くれぐれも無茶はするなよ」
「はい、そうします。今回みたいな事は出来るだけ避けていってこれ以上は悲しい思いはしないようにします」
「後、ダル。別に敬語なんて不要だぞ」
「いえ、気にしないで下さい。これは同じ男としてルゴウさんを尊敬して使ってますので」
「尊敬って······」
道中とかの俺とレイナの事に対して思う事があったのだろう。だとしてもだ。こちとら恥ずかしい事だらけだったんだから何処に尊敬する部分があったんだろうか?
「では、またお会い出来ましたら声を掛けて下さい」
ダル達3人は俺達に頭を下げギルドの方へと歩いていった。なんかどっと疲れた気がする。今日はもう遅いし宿でもとって、明日は持ってきた武器とかをダリルの所のヤクト商会に売りにいくか。レイナに向き直るとレイナも疲れた様に肩を落としていた。
「あー、疲れた」
「だなぁ。まさかあそこまで聞かれるとは思っていなかったよ」
「ああ、ホントにだぜ。全く······恥ずかしいから止めて欲しいもんだな。さてと切り換えていくか。この後どうするんだ?1杯引っかけてくか」
気を取り直したレイナはコップを持って飲む素振りをしながらそう言ってきた。
「まぁ、もう日が大分沈んでいるしな·····飲むって言っても先ずは宿を確保するか。飲んだ後で空きがなかったら困るしな」
「よっしゃ!じゃあさっさと宿録ろうぜ。酒だ酒♪」
「あ、ちょ、引っ張るな」
レイナは嬉しそうに言いながら俺の手を引いて歩き出した。唐突の事でバランスを崩し転けそうになったが何とかバランスを整えレイナと足並みを揃えて歩きだした。さて、どうせ今日も1杯で終わるわけはないだろうな。
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「やっぱりレイナ。言った通りでしたでしょう」
「ああ、ホントに助かったよ。あんがとな」
「それはそれとしてその後の話を是非とも聞きたいのだけど·····」
「いや······それは······ちょっとな」
宿を録った後に偶然、レヴィアに出会い3人で飲みに居酒屋に足を運んだ。最初の内はダンジョンの情報交換を行っていたが酒が進むに連れてこの話になっている。避妊薬勧めたのレヴィアかよ。しかも発破掛けたのもレヴィアだし······いや、邪険には思わないぞ。むしろありがとうございます。
レヴィアはレイナの反応で納得した様な顔をし、とんでもない事を言い出してきた。
「レイナの反応で分かりまますよ。良いですねぇ。私も大分ご無沙汰ですし混ぜてもらおうかしら?」
「はぁ!?何でだよ!他に男作りゃあ良いじゃねか」
全くである。何故に混ざるという発想になったのか謎である。当の本人は唇を尖らせながら言ってきた。
「良いじゃないですか。幸せのお裾分けって事で。ルゴウもどうですか?一回だけでも良いんで」
「なんでヤらなきゃいけないんだよ」
するとレヴィアは顎に人差し指を当て、少し考えながらポツリと言った。
「んー、強いて言えば他に目ぼしい男がいないからかしら?ルゴウみたいに良さげな人ってそんなに出会わないし·····前にいた旦那はもう居ないですしね。私も溜まるモノはあるんですよ」
居たんだね旦那さん。ってか突っ込んで聞いたら割かし重そうな気がする。でも、これだけは聞いておこう。
「旦那って······レヴィアは今幾つだよ」
「女性に歳を聞くなんて失礼ですね。まあ、許しましょう。今年で78歳と成ります」
「マジかよ。全然見えない」
78歳でそのわざとらしい怒った顔からのピースはどうかと思うぞ。いや、似合わない訳ではないがな。だからと言って俺の言葉で気分を良くして自慢気な顔をしなくていいよ。
「そうでしょう。まぁ私ってエルフ族だから長命で中々老けにくいだけなんですけどね。ただ150を過ぎる辺りからは段々と老け始めますので今はまだ花盛りですね。と言うわけでどうですか?」
「いや、だとしてもだな······」
「あら、歳を聞いた瞬間に年増は嫌って事ですか?失礼しちゃいますね」
「いや、歳は正直に関係がないんだが·····その一種の気の迷いでヤる訳にもいかんだろう。それにレイナとも約束したしな」
「あら、どういう事?」
「その······しばらくはレイナだけを愛しするって事をだな·····」
「そ、そんな約束をしてたんですか?」
意外だったのか驚いた様子で口にするレヴィアに俺は頷いた。
「ああ、そうだ」
「んー、レイナはそれを承諾したの?」
レヴィアは少し困った様にレイナに言うと、深い溜め息を吐きながら溢した。
「俺としては嬉しい事なんだが······リンに申し訳ないとも思ってるんだよな」
「この間、リンと逢いましたがやっぱり良い子ですしね。··········たぶんその約束は無理じゃないかしら」
「だよなぁ。ま、俺としては別にリンに関しちゃ異論はねぇし。ぶっちゃけそんな約束果たさなくて良いんだけどな。ただレヴィア。お前は別だ!」
「なんでですか!?良いじゃないですか。少し位おこぼれくらい。大丈夫ですよレイナ達から取りませんから」
「いや、だからと言ってもだな·····」
「私がルゴウと仲を持てるような切っ掛けを作ったんですよ。これくらい恩返しと思って下さいよ。それに2人っきりでとは言いませんよ」
俺はレヴィアが何故そんなに諦めないのかが理解出来ない。
「てかレヴィア······なんでそんなに積極的なんだ?正直に言って俺は凄く混乱してるんだが。頼むから正直に言ってくれ」
「······分かりました。正直に言いましょう。ぶっちゃけ羨ましいからです。レイナを視たときの幸せオーラがとても懐かしくて、ああ、私も昔はそうだったなぁ。私も久しぶりにあの幸せを味わいたいなぁって思ったからです。後は興味本位です。実際にゴブリンの性欲とか興味ありましたので。群れて無く善良で安全なゴブリンが居れば気になりますよ」
「前半は何となく理解したが、最後ので台無しだよ!別に性欲に関しては俺は普通な方だと思うぞ」
どっちにしても欲望が駄々漏れじゃねぇか!そんなもん気の迷い以外言いようが無いだろうが。
「えっ!」
「えっ······何その反応」
俺の言葉に驚いたレイナは声をあげた事に逆に俺も驚いた。
「い、いやぁ。俺も初めてだったからどうか分からないんだが······あれで普通なのかなと思って······」
「···························すまん、やり過ぎな気もしてた時もあるから。無理はさせないようにはしてる」
「···········何となく察しました。これは本当に監督しないとダメな奴ですね。リンにも参加して貰って一度ルゴウの限界を見定めましょう。その方が良いです」
レイナと俺のやり取りを見て諦れらた様子で言った。
「いや、そこまでしなくても······俺が自重すればいい話だし」
「駄目です!どうせ互いに暴走しあって足腰立たない位の状況が目に見えています」
「だとしてもだなぁ······レイナも何か言ってくれよ」
「······確かにレヴィアの言う通りになる時があるから反論出来ないんだよ。っく、ここはそうするしかないのか」
「いや、何で流されそうになってるんだよ。一旦レイナも冷静に考え直してくれ」
「いや、冷静に考えているんだよ。確かに俺も今の状況は幸せなんだが·····正直にキツい時もあるっちゃあるし。出来ればお前に満足してもらいたいし·····むしろ限界を知っておいた方が今後の為かなとも思っている」
「お、おう。そこまで考えていたのか。今までも自重はしようとはしてたんだが·····レイナが可愛くて歯止めが利かなくなるんだよ」
「な·····い、いきなり言うのはよせよ。照れるから」
照れつつも体を俺に近づけてくるレイナ。こういうのがいけんのですよ。
「はいはい、ご馳走さまです。それは後にしてくださいね。そう言う事なんで私とリンも参加しますので心しておいて下さいね。と言っても私も旦那しか経験ないんで助言できるかどうか······」
最後の方は聞き取れなかったがレヴィアも参加することになってしまった。嬉しいか嬉しくないかでいうと嬉しい方である。でも何と言うか複雑な気持ちでもある。まぁでも酒の席での話である。どうせ冗談に終わるだろう。まだまだレイナ達も飲み足りないと思うしその内忘れるだろう。うん、そうだと思ってよう。
俺はもう考えるのを止めて手元のエールを一気に飲み干した。
「おー、一気に飲みましたねぇ。では私も······」
「お、やるってのか?負けねぇぞ」
「いや、勝ち負けを競ってる訳じゃないからな」
何でこの人たちは便乗するかね。飲み終えたレヴィアは追加で6つエールを注文し、着いた一杯をまた一気に飲み干した。それに続く様にレイナも一気に飲み干した。
「あー、美味しいですね」
「だな。やっぱりワインや火酒とは違うもんがあるよな」
「いや、そうだが。一気に飲むなよ体に悪いから。今ので一気に飲むのは終了な」
「だー、もうケチケチ言うなよ」
「そうですよ。先にやったのはルゴウ何ですから。終わりだって言うならルゴウも私達と同じ様にこの一杯を飲み干して下さいね」
「········この一杯だけだからな」
と言っても常温のエールを2杯連続一気に飲むのは飽きるしな·······ちと冷やしたら変わるかな。俺は手元のコップに氷の魔法でエールを軽く冷やし飲んだ。お、意外と味が違うな。少し飲みやすいぞ。苦味と言うかのど越しと言うか良いような気がする。
俺が一気に飲み終えるとレヴィアから呆れた目線が飛んできた。一方レイナは手元の新たなエールを見つめて何か言いたげである。
「なんでエールに魔法何か使ってるんですか。もしかしてお酒の成分飛ばしました?」
「いや。飛ばしてないぞ」
「なぁ、もしかして今のって雨の日にやってもらった魔法か?ほら、火酒冷した時のやつ。エールにも合うのか?」
「冷やす········?」
レヴィアはレイナの言葉に疑問を持ち首を傾げているが先ずはレイナに応えるか。
「まぁ、俺は好きな部類ではあるが·······レイナも試してみるか?」
「おう、頼む!」
レイナは俺に突き出すようにコップを渡したので、俺はそれを手に取り氷の魔法でエールを冷やし渡した。渡した時にコップが少し冷たくなっていたのか「おぉ」っと感嘆の声を挙げ、口にすると目がカッと開きグビグビと一気に飲み始めた。
「カー、なんだこりゃ。すげぇな!冷やすと結構違うんだな」
コップをテーブルに叩きつけるかの様に勢いよく置き、凄く満足そうに言った。いや、気持ちは分からんでもないがな。でも言わせてもらおう。
「だから一気に飲むなって」
「わりぃわりぃ、美味くてついな。所でレヴィアなんで固まってるんだ?」
レイナの言葉に我に返ったのかレヴィアは恐る恐ると言った感じで聞いてきた。
「え、いや、あまりの出来事に驚いちゃって。もしかして今のって氷魔法の応用ですか」
「ああ、そうだが········駄目だったか?」
「そんなことはありません!むしろそれをやってるルゴウが変なんです。合成魔法ですよ合成魔法。そうそう出来るモノでは無いんですよ!」
勢いよく立ち上がりそう言いい俺は思わず体がビクッとなってしまった。これってそうそう出来るもんじゃなかったの?確かに試行錯誤の結果何とか出来たけど思いつけば出来そう何だが·····
レヴィアの言葉に疑問に思ったのかレイナは俺より先に尋ねた。
「合成魔法?そんなすごいもんなのか?」
「当たり前じゃないですか!私だって苦労して出来るようになったのにルゴウも出来るって。しかもゴブリンですよゴブリン!普通は出来ませんよ」
「へぇー、あっ。おねーさん、エール追加で2つ」
「はーい」
レイナは空返事で返すと追加でエールを頼むとレヴィアがレイナの反応を咎めるように言った。
「ちょっと、レイナ!何でそんな軽い感じなのですか!?驚くべき所ですよ」
「つってもなぁ。ルゴウはそこいらのヤツと同じ物差しで観ても意味無いからなぁ。それに便利だし良いじゃねぇか」
カラカラと笑うレイナに頭を抱えるレヴィアがゆっくりと腰を下ろし深い溜め息を吐いた。
「確かにそうですけど········いや、もう諦めましょう。私のにも氷魔法で冷やしてくれます?」
「あ·····ああ、いいぞ。なんかすまんな」
俺は謝りつつ、渡されたエールを冷やしレヴィアに返すと再度溜め息を吐かれた。
「いいですよ········もう。貴方は元々そうでしたし、そういうモノだと考えない様にします。········あ、本当に美味しいですね」
「だろ!さ、気難しい話はこれくらいにして楽しく飲もうぜ!」
「そうしましょうか」
「お、おう」
何と言うか俺は居たたまれない感情になりつつその魔力が続く限り酒を冷やし続けた。2人とも飲むペース上がってるし、魔力はガンガン削れるしでかなり疲れた。後、風呂の話になったときにレヴィアから羨ましいと言われたが肝心の排水のやり方にドン引きされた。そんな事するなら浄化の魔法で水質をキレイにした方が早いとの事だった。そんな便利な魔法があるんですねぇ·······あの苦労は一体何だったんだろうか。時間がある時にレヴィアに教えてもらうか。
善行 7/108




