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ゴブリンから始まる物語  作者: となりの戸愚呂
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78.雨と談笑


 少し肌寒さを感じたので温もりを求めレイナをそっと抱き寄せ、乱れたシーツをくるみ直した。温かい。仄かにレイナの香りが鼻をくすぐってくる。幸せを感じる。そんな事をぼんやりと思っていると入り口の方からザーっと音が聞こえてきた。どうやら肌寒いのは雨が降っているせいだろう。一応は雨水対策として入り口付近は軽く段差を作っているので入って来ないと思うが、これ以上酷くなるのであれば補強が必要かもしれない。だけどそれは今じゃなくていいか。もう少しゆっくりしていよう。俺は二度寝する前に一度まだ寝ているレイナをぎゅっと抱き締め、軽く口付けを行った。


「ん·····んー·····」


 一瞬起こしてしまったかとは思ったがそんな事はなく変わらず寝ていたので俺も再度寝ることにした。雨が降っているとやることが無くなるからな。止むまではのんびり過ごすか。



ーーーーーレヴィア.side


 頭が痛い。昨日飲みすぎたのがいけなかったのかしら。いつもよりお酒の量が多かった気がするけど二日酔いなんて久しぶりね。とりあえずお水でも飲んで気を······うっ、駄目、先ずはトイレにーーーー


※ ~しばらくお待ちください~


 はあー、少しスッキリした気がするけどまだ気持ち悪い。お水、お水を飲みに行こう。

 私はふらつく身体に鞭を入れ宿のお姉さんからお水を貰いに部屋から出ました。階段を下り宿のお姉さんからお水を貰ってある程度落ち着きました。さて今日はどうしようかしら?向かい酒も良いですが、手持ちのお酒は飲みきってしいましたし········そうだ、冒険者ギルドなら食事も食べれてお酒も飲めますし一杯飲んでからお買い物でもしましょう。私はそう考え外に出ようとしたら宿のお姉さんから声を掛けられました。


「あー、レヴィアちゃん。外に出るのかい?」


「ええ、ちょっとギルドまで行こうかなと思いまして」


「なら、外套を着てきな。朝から雨が降っているから」


 そう言いながら窓の外に指を差すと確かに雨が降っていました。


「あら、気づかなかったわ。ありがとうございます」


 私は軽く会釈すると宿のお姉さんは軽く手を招き入れる様に振りました。


「いいよいいよ。どうせその感じだと自棄酒だったんだろう?レイナちゃんに先越されたのかい?」


「まぁ、そんな感じと言えばそうですけど·····でもレイナの相手が、ねぇ」


 レイナの相手を考えると何とも言えない感情にもなります。でも羨ましいかと言われれば羨ましいですよ。だってお互い満更でもなさそうですし。絶対くっつくと思いますよ。ただそうなると私は1人で寂しくお酒を飲むことになるので哀しくなるのですよ。


「あら、良い男じゃないのかい?」


「まぁ、性格は良い人(?)ですよ。性格はね····でも見た目がですねぇ」


 そうなんですよねぇ。性格"は"そこらの男よりも良いですけど·····生憎、人では無いのですよね。そこが残念です。まぁ、変身中は幾分かマシな感じでしたが、それでも私の好みでは無いですね。

 私の何とも言えない感じが伝わったのか宿のお姉さんは呆れたようなため息を溢しました。


「なんだブ男かい。相変わらず面白い子だねぇ。最近だったらほら、ゴブリンなんかとよく一緒の部屋で酒盛りしてたしね。あたしゃ、それがビックリでさぁ。最初視たとき思わず身構えちまったよ」


「ハハ、ソウデスネ」


 い、言えそうな感じじゃないですね。まさにそのゴブリンと仲が良く今頃はより深い関係になってるんじゃないかって····


「しかも朝まで一緒だったんだから変わってるにも程があるよ。レイナちゃん達が出て行った時に部屋の掃除するのに何度緊張したことか。でもびっくりするぐらい何も起きていなくてねぇ·····まぁ酒瓶はよく転がっていたけどね」


「ホントデスヨネェ····」


 ホントに今まで何も起きなかったのが不思議な位ですものね。よくまぁルゴウも手を出さなかったなとは······いえ、まぁ想像はつきますが。最初の内に襲ったら軽く捻られるのがオチですし。今だったら·····どうでしょうね?まぁ、一応念のためにと避妊の薬は買うように薦めましたが······そうなる機会が訪れるのでしょうか?


「まぁ、レイナちゃんも良いパートナーが出来たのは喜ばしい限りだよ。レヴィアちゃんも負けないで頑張って好い人見つけるんだよ」


「が、がんばります」


 ハッハッハーと笑いながら言ってきますが、ホントに何とも言えない感情になりますよ。後一言余計です。その気になれば私だって男の1人や2人くらい出来なくは無いです。なんなら過去に居ましたよ。20年前の話ですが。········まぁ、私はエルフですし寿命も長いのでまだまだ焦る時ではないんですよ。だから今はまだ居なくて大丈夫ですよ。


「私だって今の旦那見つける前はーーー」


「あ、もう行かないといけないので。行ってきます」


「あら、しょうがないね。気をつけて行ってくるんだよ。鍵はいつもの場所に置いていってねー」


「分かりました」


 私は宿のおば·····お姉さんに軽く手を振った後、部屋に戻り身支度を整えて冒険者ギルドに向かいました。あの話何度も聞いてるからもう懲り懲りなのですよね。


 雨に打たれ何度か心が折れながらもお酒の為と自分を奮い立たせ何とか冒険者ギルドに到着しました。私はびしょ濡れになった外套を脱ぎ、ある程度水気を切ってから食事のスペースに移動しました。


「すみませーん、エール1つお願いします。後、腸詰めも1つ」


「はーい、エールに腸詰めですね。お待ちくださーい」


 私は席に着きながら配膳している女性に言うと元気よく返事をし、せかせかと空になったコップを下げに厨房へと向かっていった。


 少しの間にぼーっと待っているとエールと程好く焼けた腸詰めが届きました。いい香りが鼻を刺激してきます。ですが、先ずは腸詰めを頂く前にエールを一口頂きましょう。·······はぁ、美味しい。昼からお酒が飲めるのは良いことですねぇ。濡れた甲斐がありましたよ。では、料理も冷めないうちに頂きましょう。うん、やはり出来立ては美味しいですね。ぷりっとしていて肉汁もいい感じに出てきます。今日のはちょっと味付けは濃いめですがお酒には合いますから問題ないでしょう。


 お昼からお酒が飲める幸せを噛み締めていると聞き覚えのある声が耳に入りました。


「いやー、雨がすごいね!外套無かったらビチャビチャだよー」


「だから嫌だったんだよー。今日外に出たく無かったのにー。うへー、靴の中がビチャビチャー」


「ごめんって。今日はルゴウ来てるかなぁ?」


「流石に来てないと思うよー。と言うかー、帰ったって言ってなかったー?」


「あ!?そうだった!」


「全くー、忘れないでよー。濡れ損じゃーん」


「あははー、ごめんね」


 あの声はリンとユンのものですねどうやらルゴウに会いに来たようですが、生憎彼は帰ってますしそこにレイナも同行してますしね。とりあえず声でも掛けておきましょうか。私は席を立ち上がり彼女達に近づきました。


「こんにちは。ルゴウ探しに来たの?」


「あ、レヴィアさん。こんにちは!」


「こんちゃー。そうなんですよー。リンが行こうって言うから来たけどー、もう帰ってますもんねー」


「そうねぇ、帰っちゃってるわね」


「そうですかー」


 私がそう言うとリンは残念そうな表情をしました。一方、ユンが顔を少ししかめて私に尋ねてきました。


「レヴィアさんは飲んでたんですかー?お酒の臭いが結構しますけどー」


 言うほど飲んではいないはずですけど····そんなに結構しますかね?まだ5杯位なのですが。


「少しだけですよ。レイナも居れば楽しいのですが····街から出てますしね」


「こんな雨の中外に出てるんだ」


「外······っと言ってもたぶん洞窟内じゃないかしら。ルゴウも一緒にいるし」


 ピシッと何かが凍る音が聞こえた気がしました。それと同時にリンの表情が固まったまま一切微動だに動いていません。······もしかしてこれって私やらかしましたか?リンは少しぎこちない動きをしつつ私に尋ねてきました。


「あ、あー。ルゴウと一緒なんだ。ち、因みにほ、他の人も一緒に行ってるんですか?」


 この動揺の仕方は間違いなくやらかしましたね。かといって嘘を言うわけにもいけませんし····まぁ、何とかなるでしょう。それに面白くなりそうですしね。


「いいえ、ルゴウと2人きりですよ」


「へ、へぇー。レイナとルゴウが2人きりですか」


「え、えーとー。リン?大丈夫ー?」


 リンの抑揚の無い物言いに気遣う様にユンが声を掛けていますが変わらない固まった表情をしています。


「僕は大丈夫だよ。うん、大丈夫。だ、だってレイナだもん。何か起きる訳は無いんじゃないかな」


 んー、これは少し煽ってみると面白そうな気配がしますね。つついてみましょうか。


「私としてはナニか起きてて欲しいですね。折角のお薬が無駄になるのも嫌ですし」


「お、お薬って?」


「それはアレですよ。貴女達も冒険の前に使う、アレ」


「!!?」 


「あー、避妊薬のことかー。なるほどー」


 やはり面白い反応を示しますね。ちょっと性格が悪い感じになってしまいましたが善しとしましょう。更にもう一押ししましょうか。


「まぁ、私達位になると必要性があまり無いんですけどね。レイナに限っては必要じゃないかと思って持っていく様に言ったんですよね」


「あちゃー、となるとリン先越されちゃったねー」


「··········」


 ·······あ、あれ?煽り過ぎてしまったでしょうか?心なしか震えているような気がします。意地悪し過ぎちゃいましたかね。助け船を出した方が良さそうですね。私はリンの予想外の反応に少し反省し声を掛けようとした時、絞り出すようにリンは声を出しました。


「················るい」


「「え?」」


「ずるいよ!レイナったら先駆けしちゃって!僕も一緒に行きたかった!!なんなら同時でも良かったのに!いや、むしろ最初は僕に譲って欲しかったのに!」


 ガバッと顔を上げると涙眼になりながら勢いよく言い放ち、それはもう悔しそうにしていました。正直、私もまさかの反応で思わずに呆然としてしまいました。ユンもまたびっくりした様子で視ていました。


「そりゃあ、僕だってパーティーの依頼とかで都合が付かない日もあるよ。お金稼がないと宿だってご飯だって苦労するし。実力だってそんなに無いしさ。約束は守って貰えるとは思うけど·······それでもずるいものはずるいよ!」


 憤慨するリンを視て、既に当人同士で話し合いがあった様ですね。あれはショックを受けていると言うよりも先駆けしたレイナに怒っているのでしたか······いやいや、何で私は納得しようとしてるのでしょうか?煽っておいてなんですが既に当人達が結託してたのが驚きですよ。むしろお互いにそう言うの有りなんですね。正直反応に困ります。ユンも呆れてるでしょうに。


「ずるいって言ったてー、流石に今から行けないよー。またずぶ濡れになっちゃうしー。それにシュート達も困るよー」


「うー、だってー」


「はいはい、今回は諦めようよー。また今度にしよーねー」


「うぅ、わかった。今度にする」


 何とかユンが宥めてくれたお陰で納まりましたが、これで良いのでしょうか?いや、良いと言うことにしておきましょう。これはこれで面白い限りですしね。果たしてルゴウはどうするのか見物ですね。


「さて、貴女達。このあと暇でしょ?ちょっと付き合って貰って良いですか?」


「暇ですし良いですよ。ね、ユン」


「やること無いしー、奢りなら尚善しー」


「そうねぇ良いですよ。後輩ちゃんに奢って挙げましょう。その代わり面白い話聞かせてね」


「わーいー、奢りだ奢りー」


「もうユンってば·····宜しくお願いします」


 私達はお酒や果実水を注文し、私の冒険者としてのエピソードや失敗談、リンとユンも同じ様に失敗談や惚気話などをし、話の華を咲かせていきました。


················

·······················

····································


「ご馳走になりました!今日はありがとうございます」


「ありがとうございましたー」


「良いですよ。ではまたね」


 楽しい時間もあっという間で私達は解散することになりました。外は朝と比べると少し雨脚が弱まり小雨程度にまで落ち着いています。このままフラフラっと帰っても良いのですが、まだ飲み足りないと言えば飲み足りない気がします。んー、また雨が強くなっても嫌ですしお酒を買って帰りましょうか。

 私はお酒を求めフラフラっとお店まで足を進めていると見知らぬ男達が私の行く手を阻むように立っていました。


「あのー、何の用ですか?邪魔なんですけど」


 私の言葉に変わらずニヤニヤとしているのが何か気持ち悪いですね。さっき迄の良い気分が台無しじゃないですか。すると1人の男が代表するように口を開きました。


「いやー、こんな雨の中1人で歩く何てどうしたのかなぁって思ってさ。暇なら俺達と一緒に遊んで行かないかなぁって誘おうとしてたんだよ」


 外套越しから私を品定めするかのように全身を視てくる目線が気持ち悪い。相手にしなくても良いでしょう。ですが段々とイライラはしてきます。


「ごめんなさいね。今から帰ろうと思っていた所なの。だから邪魔だから退いてくださらない?早々に」


「連れないこと言わないでさー。少しだけ、な?雨宿り次いでに楽しい夜を過ごそうぜ」


 私を言葉を無視して自分達の要求を押し付けて囲む様にニジリ寄ってくる男達に本当に嫌気が差しますし、何より気持ち悪い。


「これ以上邪魔するようでしたら·····ブチのめしますよ」


「ブチのめします·······あーははは。この人数をか?女1人でか?こりゃ傑作だ」


 周り男達も釣られるように笑い始めました。ひとしきり笑うと目付きを鋭くし先程よりも低い声を出してきました。


「軽く痛めつけるぞ。んで、その後はヒィヒィ言わせて後悔と俺達無しじゃ生きられない様に仕込んでやるよ!」


 その言葉を切っ掛けに一斉に私に襲い掛かってきました。私はその場から大きき跳躍し、男達の包囲網を抜け一番後ろにいた男の腕を掴み一気に振り回し投げ飛ばしました。


「げっ·····ぐばっ!?」


 残りの男達がその様子からか呆然としていますが構うことはありません。ちゃんと警告はしましたし、楽しかった時間を台無しにしてるのは貴方達ですから。これはお仕置きです。


 私は魔力を使い身体能力を向上させ、1人の男に急接近し、全力で顔面に拳をめり込ませ吹き飛ばしました。


「こ、この調子に乗んじゃねぇ!」


 正気に戻った男が私に殴り掛かろうとしますが、大振りでしかも動きが遅いですね。私は男の攻撃が当たらないよう屈みながら前に出て、伸びきった腕を掴み、そのままの勢いを殺さずに力いっぱい地面に叩き着けました。


「がっはっ!!」


「こ、このヤロウ!」


「今だ!やっちまえ!」


 まだ来ますか。ならばと思いまだ掴んでいる腕を更に強く握り絞め、思いっきり振り回し近づいた男にブチ当てます。途中何かイケナイ音が男の腕の方から聞こえた気がしますが·····まぁ、良いでしょう。このまま彼には武器になってもらいましょう。


※~しばらくお待ち下さい~


「はー、スッキリしましたー」


 武器なってくれた彼を振り回し続けていたら立ってる男達が誰も居なくなってしまいました。とりあえずコレらはそこら辺に捨て置きましょう。

 私は掴んでいた腕から手を離し、お酒を求めて歩きだしました。閉まって無ければ良いのですが·····開いてなければ居酒屋ですかね。そこで酔いが醒めた分を飲んでおきましょう。

 あ、そうだ。出発を待ってるのも暇ですし私も晴れたら向かおうかしら。やっぱりレイナが居ないと寂しいですしね。ローナに一言言っておきましょう。ついでにリンも連れて行けば面白そうですね。まさに一石二鳥ですね。

 


善行 6/108

Q.レヴィアの力って強くない?

A.魔力で身体強化してますが、お酒のせいで制御がかなり大雑把になります。なので今回の用な事が度々起こります。


Q.振り回された男や仲間は無事なの?

A.重傷です。仲良く寝込んでます。振り回された男は無事な訳はありません。一応息はしていますのでご安心下さい


Q.レヴィアって歳はいくつなの?

A.78さーーーー重大なエラーが発生しました

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