76.久し振りのあの部屋
あれから先に進んでいるが危険な場面は訪れず、幾つもの部屋らしき所に出たが目立った収穫も無くとある部屋に着いた。入った瞬間、入り口は鉄格子が下から現れ封鎖された。確かこの感じは前にも経験したことがある。これは·······
「これは今の俺達には当たりだな。これくらいの刺激がないとな」
レイナはニヤリと口元を吊り上げ、大剣を抜き正面に構えた。
「レイナはそうかもしれないがキツいと思うぞ」
「なぁにヤバくはないだろう。さ、そろそろ来るぜ」
レイナのその言葉と同時に魔方陣みたいな幾何学模様が無数に現れ、次々とその中心から魔物が顔を出してきた。俺は剣を2本抜き自然に構えつつ頷いた。
「だな。背中は任せておけ。存分に暴れてこい」
「おうよ。任せたぜ。んじゃ行ってくるわ」
そう言うとレイナが先陣をきって駆け出した。俺もそれに続く様に駆け出しながらロックシュートと5つ作り放った。狙いはつけていない。ただレイナの邪魔にならないような軌道で大雑把に胴体に向けたものだ。流石に全弾命中では無いが3体のゴブリンに風穴を開けた。そこにレイナが斬り込みオークを1体仕留めた。そこで終わらないのがレイナで、返す様に大剣を振るうと周りにいたゴブリン達を斬り払っていく。俺も負けじと2本の剣を使いゴブリンやオーク、狼を斬っていく。
「ははっ、まだまだ行くぜ。どんどん来い!!」
レイナは楽しくなってきたのかそう声を上げつつ、どんどんと闘気の色を濃くしていく。ペースも上がって来ているが魔物の数も負けじと増えていく。俺も仙気を纏い魔法を駆使しながら戦っているが減ってる感じがしない。だがまだまだ俺もいけそうだ。
たまに魔法や弓矢を使ってくるゴブリンもいたがそういったヤツは魔法を駆使して捌いていく。この時に驚いた事があった。レイナに向けて放たれた魔法や矢は殆んど叩き斬られていた事もそうだが、深紅之羽衣の性能なのかわからないが、魔法が当たっても無傷だったり矢に関しては弾かれていた。改めて馬鹿げたモノだと呆れるしかなかった。だからといって放置する訳もないので、レイナの側に行き俺も真似して剣で弾いたり叩き落としたりしている。俺のその行動にレイナは嬉しそうな表情を一瞬したが直ぐに切り替えて戦闘に集中した。
戦闘を開始してから時間は大分経っていると思うが中々終わりが見えない。俺もレイナもまだまだ気力·体力共に十分である。所々で亜種系統も出てきていたが苦戦もせず倒せている。それに戦っていく内に驚く事があった。
「『豪炎斬烈空』!」
レイナは大剣に炎を纏わせながら水平に勢いよく振り抜くと、炎を帯びた斬撃が飛んでいきゴブリンやオークを焼き斬った。血飛沫は飛ぶこともなく、代わりに焼け焦げた臭いが漂ってくる。斬撃が飛ぶってことも凄いが切れ味が衰えている様子はない。前にいた魔物は勿論、後続も次々と両断された。
「まだまだいくぜ!『爆砕衝』!」
掛け声と共に大きく跳躍し、魔物の群れのど真ん中に飛び込みつつそこにいたオークをぶったぎるや否や、そのままの勢いで地面に大剣を叩きつけた。叩きつけた大剣の先、前方のみに爆発が起こり地面を抉り飛ばし魔物を巻き込んでいった。
············一言言わせて貰おう。え、何それ?おかしくない?斬撃を飛ばすのはまだファンタジーだなぁって思うけどさ。叩きつけて前方にだけ爆発して礫飛ばすとかおかしいんじゃないの?それにたまに『竜爪斬』とか言って斬撃が一振りで3つになるとか意味がわからんがな。前に闘ったときレイナが闘気だけって言ってたのがここでわかった気がする。あんなもん受けきれるのは無理だし、尚更勝てっこ無いじゃんか。
俺はレイナの戦いっぷりに凹みつつ、俺の出来る範囲で魔法を駆使して戦い続けた。
攻撃を出来るだけ中断させる事無く、頭の中でイメージしたモノを空中に作り出した。イメージといっても普段のファイアボールに酸素を多く纏わせるため風魔法で補助し温度を上げていくだけである。氷魔法の応用で行うからそこまでは苦労しない筈だしな。
すると俺の思惑通りに段々とファイアボールは青みを帯び始め、そして激しく燃え盛り始めた。··········作っておいてあれだけど、撃っても大丈夫だよね。着弾時爆発しないよな。とりあえず奥にいる魔法とか弓矢を使うゴブリンに撃っておくか。
俺は横目で見た自身で作ったファイアボールに不安を持ちつつ放つと、ファイアボールは通常よりも速く飛んでいきゴブリンメイジの腹に風穴を開けその後続にも貫通していった。正直想像以上の威力で驚いた。
「······へぇ、流石だな。こりゃ負けてらんねぇ、なっと!」
レイナも少し目を丸くしていたが更にやる気が増した様でどんどんと斬り払っていく。その成果もあってか魔物は段々と増えること無く遂に········
「はぁー、やっと終わったー。疲れたー」
俺は先程までの緊張を解き、その場に座りこんだ。魔物の数多すぎやしないか。やっぱり人数が増えるとその分こういった部屋も増えてんのかな。俺は携行している袋の中からライの実を口に入れるとレイナが近づいてきた。
「お疲れさん。いやぁ、結構いたなぁ。あ、それ俺にもくれ」
レイナは手を出してきたので俺は袋の中からライの実を取り出し渡した。
「はいよ。結構ってもんじゃないよ。流石にこれはしんどいぞ」
「まぁ、しんどかったが楽しかったな。俺もかなり動きやすかったし」
そう言いながら俺の横に腰を下ろし、ライの実を食べた。食べた瞬間酸っぱそうにしていたが仄かに甘味を感じたのかもう一個と催促してきたので渡した。
「俺も頑張った甲斐があったよ。すまないがちょいと休憩したら魔石を回収するか」
「だな。そういやこれだけ倒して魔石も手に入ることだしそろそろなんじゃないか?」
「ん?なにがだ?」
「いや、ルゴウってゴブリンジェネラルじゃん。こんだけ有ってその前にも回収したんだから進化するんじゃないかなって」
まぁ、確かに進化するかもしれないが·····足りない様な気がする。ゴブリンファイターの時も何となく直感で進化するかもなぁって感じだったしな。
「あー、どうだろう?まぁ手に持ってみないわからないな」
「ん?手に持つだけなのか?食べるんじゃ無いのか?」
「いや、食べないからね!?絶対硬いし美味しくないから!」
レイナの疑問に俺は驚きつつ全力で否定した。あんな石ころ食える訳無いだろ。歯が折れるわ!俺の言葉に対してレイナはキョトンとした様な表情をしていた。
「そうなのか。獣系の魔物がよくバリボリ食ってるからそうなのかと思ったが違うのか」
他の魔物ってそうやって吸収するのか。よくまぁ食べれるな。真似したいとは思わないけど。
俺はレイナに実際に吸収の仕方を見せるため近くにあった魔石を手にとって見せた。
「他の奴らは知らんが、俺の場合はこんな感じで手に持つと魔石の力を吸収するんだ。吸収された魔石は石ころに変わるんだよ」
実際に吸収された魔石だったものをレイナに渡すと感心したようにまじまじと見ている。
「へー、そうなのか。なんか面白いな」
「面白いか?それに俺がもし魔石を食べてたら引くだろ」
「だな。もしそうだとしたら間違ってルゴウが俺のおっぱいに噛みついたらゾッとするしな。痛いってもんじゃないだろうな」
「絶対に噛まないから安心してくれ。そんな立派なモノを失いたくはない!」
例え顎の力が強くてもそんな事は絶対にしない。やっても甘噛み程度だ。レイナは俺の言葉に笑いながら自身の胸に手を当てながら言った。
「ルゴウはおっぱい好きだもんなぁ。そんなに良いもんなのか?俺はたまに肩が凝るからもう少し小さくてもいいんだが」
「いや、レイナはそれくらいの大きさでいいぞ。なんだったら肩が凝るなら何時でも揉むから安心してくれ」
俺は拳を突きだし親指を上に向け立てると、レイナはジト目で返してきた。
「じゃあ、俺がもしおっぱいが小さくて俺よりおっぱいが大きい女がいたらどっちが好きなんだ?」
「そんなの決まってるじゃないか。レイナに決まってる」
まぁ大きい方が好きだが、だからと言ってレイナを選ばないという選択肢は存在しないな。それに小さいのもそれはそれで良いし。
「そ、そうか····そこはおっぱいじゃないんだな」
レイナは嬉しかったのか少し顔を赤らめ、むず痒く感じたのか頬を人差し指でポリポリと掻いていた。
「当たり前だ。比べるまでも無いしな」
「ん、んん!は、話を戻すけどよ。もし進化するってなると次はゴブリンキングだよな」
レイナはこれ以上は恥ずかしいと思ったのか咳払いを入れ話題を無理やり変えた。俺はもう少し照れている所を見たかったがまたの機会ということにしよう。
「そうなるな。まぁ、一息入れたら試してみるか」
軽い休憩を済ませてあちこちに散らばっている魔石を回収し、今まで拾った物も合わせて吸収してみたが特に体に変化を感じる事は無かった。レイナにもその旨を伝えると「これでも足りないのか」と少ししょんぼりとしていた。まぁ、理由は進化した俺とまた闘いたいだけだと思うがな。
気を取り直してここからは宝箱タイムである。さぁさぁ、こんだけ苦労したんだから良いものが入っているはずだ。何が入っているかなとワクワクしながら開けてみるとなんと!!中には·············赤い液体の入った小さな瓶が3本と青い液体の入った小さな瓶が2本、鍵が1本だ。たぶんライフポーションとマナポーションだがいつもの瓶の形状が違う。もう一回り大きいのだがこれは?俺が首をひねるとレイナが何かに気が付いたのか口を開いた。
「お、こりゃ当たりだな。どっちも上級じゃねぇか」
「ライフポーションとマナポーションのか?」
「ああ、効力が高いから重宝されるんだよ。持ってて損はしねぇぜ」
どれくらい効くのか予想つかないが普通のライフポーションじゃ治らなければそっちを使うとしよう。マナポーションも·····まぁ正直使う機会があんまり無いから、いざと云うときに使うか。そう考えていたらレイナが鍵を拾い上げまじまじと見ていた。
「この鍵って何に使うんだ?」
「たぶん5階層の時に使ったから、予想としてなんだが10階層辺りで使うんじゃないか?あの転移できる扉のな」
本当にそうなのかは分からんが形状は似ているのでそうだと思う。ただ、もしそうだとしたらその先の階層が続く事になるのだが······一体何階層まであるのやら。
「へー、これで開けるのか」
レイナは感心した様に言ったが俺は頭を横に振り補足した。
「いや、たぶん他にも何本か必要だと思うぞ」
「ってなるとこれからの階層も全部の部屋に行って探さないといけないのか」
「そうなるな。これは骨が折れるな」
ショートカット出来るルートを確保出来るのは有難いことだが、この階層みたいに部屋数が増えると憶えるのが大変だ。道順を憶えないと時間も掛かるし、二度手間はしたくは無い。······紙買っておけば良かったな。簡易的なマップが有れば楽になっただろうな。今更悔いても仕方ないが。今度ロサルガに行ったときにでも買っておこう。
俺はちょっとした反省を行いながらポーション類を回収し、俺達は来た道を戻りながら次の階層へと続く道を探索し直した。
善行 6/108




