75.指輪と膝枕
あれから少し時間が経ち、互いに満足がいき落ち着いた所で本題に移った。
「レイナ、これについて説明してもらえるか?」
先程までのぼせていたかのようにしていたが何処となくスッキリしたように今度は話してくれた。
「ああ、それはな····『繋ぐ指輪』って言うんだ」
「『繋ぐ指輪』?それってどういう物なんだ」
「本来はここじゃないダンジョンで稀に出てくるものなのだが、それを所有している者には少しの力が付与されるんだ。但し条件が在るんだ」
「その、な。愛し合う者同士が近くに入れば付与されるんだ。それに愛を分かち合うと所有者の相手にも同じ指輪が現れるって物なんだ。で、その証拠にホラ、これ」
そう言いながらレイナは自分の左手に着けているガントレットを外すと、俺の指に着けているる指輪と同じデザインの指輪が薬指にあった。
「なっ、本当だ」
「で、もう1つ実際にそうなのか知らないんだけどよ。何でもその対象を増やせるらしいんだ。但し増やしたからといって効果は倍増されないらしい」
何それ?ハーレム野郎御用達の物なんじゃない?まぁ、効果は倍増されないのは良心的だと思うが······幾らなんでもそれを必要に思うヤツなんて·······ここにいるか。いや、一応まだ仮定の話として2人だから許される筈だ。誰に許されるかわからんが。
「そ、そういう物だったのか。だからレイナは俺にくれたのか」
「おう。俺もリンもルゴウが好きだからな。これも日頃の行いが良かったと思って着けておけ。っと言ってもこれ外せないんだけどな」
「外す気は無いんだが、後出しで言うなよ」
俺が呆れながら言うとレイナは悪びれた様子もなく謝ってきた。
「わりぃわりぃ。と言うことでこれからも宜しくな」
「こちらこそ宜しくな」
ま、いつもの事だしこれくらい何ともないしな。それにしても繋ぐ指輪か。何でこのタイミングで出たんだろうか。運で片付けて良いのかわからんが気にした所で無意味だし止めておこう。
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俺達は大きなメダルを手にメダルを嵌める部屋まで移動した。一瞬扉を開ける際にまた鍵が必要だったらどうしようかと思ったが普通に開いた。一回開けたらそのままっぽいな。そして、台座の前まで移動すると先程までソワソワしていたレイナが待ちきれない様子で話してきた。
「遂に来た!なぁ、これを置いたら本当に使えるようになるのか?」
「あぁ、出来る筈だ」
「かぁー、わくわくするなぁ。早く使ってみてー」
そう言いながら早速台座にメダルを嵌め込むと俺の時と同様に始めは何も起きずレイナは頭をかしげると次第に台座が光出した。
「お、おお!?」
レイナは驚きの声を上げ、自信の手に光が集まり吸収されるとガバッと此方を向いた。
「っで、どうすれば出来るんだ!」
どうすればと言われてもどう伝えれば良いかわからないが、俺が普段行っている工程を説明した。
「俺のイメージだが、移動したいと思いながら掌に魔力を集中させると出てくる筈だ」
俺の説明の途中にも関わらず自分の手に念じるように力を込め始めた。
「こう······か?って、おお!出たぞ!っでルゴウの真似してこれを握ればーーー」
言いながらやったせいか言葉が途切れ、この場から姿を消した。俺も端から観たことが無いので素直に感動しているが少し時間がたってもレイナが帰って来ない。直ぐに戻って来るかなと思ったんだが行ってみるか。
俺は少し心配になり、レイナと同じように転移して入り口まで戻ると同時にレイナの声が聞こえた。
「おお!本当に移動した。すげぇ、何だこれすげぇ便利じゃんか!」
俺が目にしたのは喜びのあまり両腕の脇を締めてガッツポーズをとっているレイナである。前の自分を思い出す様な感じがしてついほっこりしてしまう。
俺の気配に気づいたのかレイナは変わらず嬉しそう顔をしながら振り向いた。
「ルゴウ!俺にも使えたぞ!」
「ああ、良かったな」
「おう、俺の我が儘に付き合ってくれてありがとうな」
「これくらい何でも無い。むしろ俺は道案内位しかしてないしな」
「確かにな」
嬉しそうなレイナの顔を見れたから俺としてもしてあげて良かったしな。それに本当に最後のミノタウロス戦以外何もしてないしな。
「さてと、戻ったらあの部屋で休憩するか」
「だな。腹も減ったしそうすっか」
今がどのくらいの時間か分からないが腹も減っているし昼ぐらいだと思って良いだろう。俺達は再度移動するため互いに手を繋ぎ転移した。勿論、レイナがやりたいとの事でレイナにやらせた。
戻ってからは台座の近くで互いに座り、干し肉と木の実を食べ腹を満たしたら出発·····ではなく互いに装具を外し休憩中である。レイナから膝枕を頼まれたので俺の膝の上にはレイナの頭が乗っている。俺は何となくレイナの頭を撫でながら6階層について話を振った。
「なぁ、レイナ」
「あ?何だ?」
「休憩が終わったら6階層に行くんだが、どういった感じで進めてこうか」
「そうだなぁ、今回は回復役と斥候役が居ないから無茶は出来ないしなぁ。今のところ危険な罠も無いし。とりあえず今まで通りで良いだろう」
確かにいつ罠が在るか分からないのが怖い所である。よくゲームとかマンガでは陰湿な物から致命的な物まで在るからな。6階層からは在るかもしれないと考えて動いた方がいいだろうな。
「そうするか。ただ俺も次から戦闘に参加するからな」
レイナは体の向きを変え、横向きから仰向けになりニカッと笑った。
「おうよ、俺達の連携みせてやろうぜ。あ、水頂戴」
「連携って·····これまで連携らしいものとってないじゃないか」
俺は少し呆れながらそう言いつつビー玉サイズの水球を指先に作り、口を開けて待っているレイナの口にそっと近づけた。レイナは近付いてきた水球をパクリと口に含み飲んだかと思うともう一度要求するように口を開けた。その様子を見て可愛らしく思い少し口元を緩めながらもう一度作り同じようにレイナの口に入れた。
コクりと喉を鳴らした後、2個目で満足したのか今度は俺の手を掴み自分の頭の方へ持っていった。撫でろってことですね。撫でますよ。俺が撫で始めると満足そうな表情を浮かべ、話の続きを再開した。
「一応何だが、参考までに他のダンジョンの話を聞きたいんだが覚えているか?」
レイナは考えるように顎に手を添え始め、考えついた事を口にした。
「んー、詳しくは覚えてねぇし。そう言うのはローナとかに任せてたからな。基本俺は頭よりも体を動かして出てきた奴らを倒す事に専念してたからな」
「あー、なるほど」
確かにレイナじゃわからないよな。ある程度は覚えていても細かい所までは流石になぁ。失敗したな。ローナ達に聞いておけば良かった。
俺の微妙な反応にレイナはご不満な様で少しむくれながら言ってきた。
「どうせ俺は馬鹿だからな。役に立てないですよー」
「はいはい、拗ねないで。わかる範囲で良いから教えてくれ」
俺は可愛く拗ね始めたレイナの頭をポンポンと叩き、再度撫でると少し良くなった気がした。最近····といっても付き合い始めた頃からこうやって甘えてくるのが増えてきた気がする。いや、正確にはリンと出会ってからだと思うがそれよりも増えている。イヤじゃない。むしろ大歓迎である。本人には言わない様にしているが、甘えて来るときはより女の子らしさが出て俺としてはそそられるのですよ。·······何がとは言わないし自重はするけどね。
「あんまりツッコムなよ。答えられないんだから」
「わかったって」
「罠はダンジョンによって多さは異なるがここまで少ないのは無かった気がする。魔物の格もバラバラだった筈だしな。順当になのはかえって不気味だし、ミノタウロスも出てきたから今後もこんな感じじゃないかと思う」
確かにレイナの言う通りだな。順当に強さは変わってきているし5階層で一気に上がったとなると戻る可能性がある。
「仮説を建てるなら次は4階層の魔物の延長線上でまた一気に上がるとしたら10階層になるか」
「だな。何が出るか楽しみになるぜ。つっても俺の予想は次はオーガ辺りだろうな」
オーガ?鬼って事か?響きからして戦いたく無いんだが。レイナは嬉しそうだけど····ゴブリンの俺で勝てるのか?
レイナは俺の不安そうな様子を見て安心させようと思ったのか撫でている俺の手をとり、自分の頬に優しく押し当てた。
「大丈夫だって。ルゴウが本気出したら屁でもないさ。それに魔法も使えば楽勝だし、なんたって俺がいるんだ。心配すんなって」
「ああ、そうだな。レイナは俺よりも強いからな。頼りにしてるよ」
「おうよ、任せとけ。ルゴウも頑張ってくれよ」
「がんばりますよっと」
俺はそう返事をしながらレイナの頬に当てていた手をそっと離し、レイナの脇の下に手を挿し込みそのまま俺の方に引き寄せた。レイナも俺の行動にされるがまま引かれ、俺の膝の上に座らされた。そして俺はそのまま後ろからレイナのお腹付近に手を通し抱き締めた。
「なっ、おい、ちょっと!」
レイナは驚きと照れくささで声をあげたが全く抵抗はしなかった。俺は俺で悪びれもせずただ正直に言った。
「いやー、すまん。ちょっと我慢出来なくて·····つい」
レイナは俺の態度に呆れたのか態とらしく大きく溜め息を吐つつも寄り掛かりながら言った。
「はぁ、しょうがないヤツだなぁ。ただこれ以上は駄目だからな」
「わかってるって。ただこうしたかっただけだから」
「全く······本当に駄目だからな」
口では呆れてる感じではあるが、実際は満更でもなく嬉しそうにしている。先程レイナが甘えてくるとは言ったが、それと同じくらい俺もこうして甘えてしまう頻度が多くなっている気がする。人の事は言ってられないな。
休憩を終えた俺達は装備を整えて6階層へ進んだ。見た感じは前の階層とは変わらない感じである。罠が無いか進むが特にそれらしいものは無いが油断は出来ない。すると何かに気が付いたのかレイナが止まった。
「ルゴウ、この先に魔物がいるぞ」
「え······そうなのか?」
「ああ、といってもこの感じは大したことは無さそうだけどな」
すごいな、そこまでわかるのか。俺は何にも分からなかったぞ。これが経験の差なのか。
俺がレイナに関心しているのが伝わったのかドヤ顔を決めてきた。
「ま、これくらい出来なきゃ上位の冒険者としては恥ずかしいからな。ルゴウも慣れたら出来るようになるさ」
「いつかは出来る様になりたいが、暫くはレイナに任せるよ」
「了解、任された。さってまだそんなに強くはないと思うが····一回試しに連携取ってみるるか」
レイナはそう言うと大剣を抜き、何時でも行ける準備を終えた。俺も剣を2本抜き態勢を整えて頷き返した。
「そうだな。互いの動きを深めたいしな。とはいっても、この間の依頼である程度出来ていたしな。今更な感じはあるがな」
「違いない。背中は任せたぜ」
「おう、任された」
俺達はそれを合図とし、一気に魔物がいる方へ駆け出した。行った先には太った巨体で豚顔が2体いた。たぶんオークと呼んでいいのだろう。まだ此方に気付いた様子はないので俺は牽制がてらお馴染みのロックシュートを素早く作り奥の1体の顔に目掛けて放った。オークは俺の攻撃に反応出来ずそのまま撃ち抜かれた。仲間が殺られてやっと気付いたが時は既に遅く、レイナが近接しており大剣を勢いよく振り下ろし真っ二つに引き裂かれた。
·········呆気なかった。初のオーク戦だが直ぐに終わってしまった。もう少し俺が苦戦するかと思ったが身構え過ぎたのか?
俺が釈然としない気持ちになるなか、レイナも物足りない様である。
「んー、やっぱりオークじゃ今の俺達の相手にならねぇな。もう少し数がいれば良かったんだが·····次の機会にとっておくか」
「······オークってそんなに強くは無いのか?」
「まぁ、ゴブリンファイターとか同じ位か?つってもコイツら動きがトロいから劣るかもしんねぇけど」
前の俺だったら苦戦してたんだな。あの時進まなくて良かった。
「んー、まだまだ動き足りねぇしどんどん進むか」
「そうだな。攻略していくか」
倒したオークの魔石を回収し、俺達は先へと進んでいった。
善行 6/108




