71.稼いだ方がよさそう気がする
気分を切り替える為、エールに口をつけた俺はレイナとレヴィアに何となく気になった事を聞いた。
「なぁ、そう言えば聞きそびれたんだがドッグタグに書いてある文字は何て読むんだ?」
「あぁ、そう言えばルゴウはこの大陸の言葉を知らないんだったか」
「レイナ、知るわけないでしょ」
レイナは思い出しかの様に言うとレヴィア呆れていた。レヴィアは一度手にしているジョッキをテーブルに置き説明してくれた。
「そうねぇ、全部説明すると時間も掛かるし簡単に言いますね。大陸によって言葉は違うのだけどここクランブルク大陸ではそこに書いている文字が主流なの。で、そこに書いている内容は『リベリオン王国所属 冒険者 ルゴウ』と書いてます」
「なるほど·····ん?リベリオン王国?」
「今私達がいるのがリベリオン王国のロサルガって街です。と言ってもルゴウは王都に行くことは無いと思うから憶えなくて大丈夫ですよ」
「まぁ、確かに行く機会は無いだろうな」
今後もここの街以外は関わる気は起きないしな。俺が頷くとレイナはニヤニヤとしながら言ってきた
「その分だとルゴウの階級も知らないだろうが教えてやるよ。聞いて驚け、銅級だ、銅級!」
「ナ、ナンダッテー·······いや、銅級って言われても凄いのか分からんし。そもそも自分でも俺が知らないって言ってたでしょ」
胸を張られても分からんし、俺がツッコんで気づくとか······やっぱり馬鹿だコイツ。
「あ、そうだった。わりぃわりぃ」
俺は呆れた目で見ていると軽いノリで謝り、横目で観ていたレヴィアも呆れながら溜め息を吐いた。
「はぁ、階級の説明もしますね。冒険者の階級は下から順番に青銅、鉄、銅、銀、金、黒金、金剛になっています。目安としては鉄級で冒険者として一人前ね」
この世界では鉱石で表されているのか。で、俺は銅級だから下から3番目。
「·······だとしたら、いきなり銅級は流石に高くないか?」
俺がそう疑問を口にするとレイナ達は何とはないといった様子であった。
「たまにこういう事があるし、気にする事はねぇよ」
「そうですね。基礎さえ出来ていれば早々に鉄級に昇格できますし、実力も上だと判断されたら銅級に昇格しますしね。それに過去に凄いスピードで昇格していった猛者もいますしね」
凄いスピードってそれって明らかに転生者とかチーターだろ。いや、レイナみたいな事もあるし、素でヤバいヤツだったのか?判断つかん。
それにもう1つ何とも云えないことに気付いてしまった。俺の表情に気がついたレイナが尋ねてきた。
「どうしたんだ?そんな浮かない顔して」
「いや、今思ったんだが······これ持ってても宝の持ち腐れになりそうなんだよ。依頼とか承けないし。使っても身分証くらいの価値しかないし」
ぶっちゃけ依頼を承けても良いが、お金を手にしても使い道があまり無いんだよなぁ。洞窟暮らしだし、あんまり街にはダリルの所以外は寄る予定も無いしな。それに物々交換で補えそうだし。
俺がそう言うとレイナはニカッと笑みを浮かべた。
「確かにそうだな!んでもよぉ、依頼を承けたらお金が手に入るんだ。そしたらこうやって酒も飲みに行けるから暇があったらやった方がいいぞ」
んー、確かにそうだな。レイナ達も暫くはダンジョンの探索依頼でここに滞在するし、飲み代位は稼いでも良いかもしれない。
「まぁ、レイナ達と飲むのは嫌じゃないから少しは稼ぐことにするよ」
「そんときは奢れよ」
「そうですね。奢って貰いましょう」
「奢るのは良いが······程々で頼む」
俺がそう言うと2人は笑って応えてくれた。本当に良い友人を持てたと思う。つくづくあの時皆に出会い、この街に来れた事が嬉しく感じられた。
酒も進み、途中注文したツマミに手をつけているとレヴィアがふと思い出しかの様にレイナに尋ねた。
「所で話は少し戻るのですが·····本当に2人きりで大丈夫なの?」
「あ?何がだ?ダンジョンなら問題ねぇぞ」
レイナは飲んでいたエールから口を離し、何でも無いかの様に応えた。だが、レヴィアはそういう意味ではないらしく少し困った表情をしていた。
「そうじゃなくて········んー、レイナちょっと耳貸して」
レヴィアはそっと手招きすると、レイナは訝しげに顔を寄せた。
「ん?なんだよ。言いにくいことか?」
そしてレヴィアは何かを話しだすと、最初はレイナも頷いていたが次第に顔を真っ赤にして唐突に声を上げた。
「な!?ば、馬鹿!し、し、しねぇよ」
思わずレイナの出した声に驚き飲んでいたエールを喉に詰りむせ返ってしまった。いったい何を話したんだ?一方レヴィアは何食わぬ顔で淡々と言った。
「そうですか?でも一応もしもの事を考えた方がいいんのでは?別にレイナも嫌じゃないんでしょ」
「·············」
「ですから念のために、です」
「···········わ、わかったよ。あるわけ無いが·····念の····ため······な·····」
話の流れはよくわからないが、レイナも動揺しつつも渋々といったように段々と声のトーンを落として頷いた。ってか何故にチラチラと俺を見ているんだ?
「2人で何の話をしてるんだ?レイナもいきなり大声上げたし······」
「ルゴウには内緒ですよ」
「あ、ああ、お前には関係·····無くは····ない···が·······き、気にするな!」
「お、おう。わかった」
俺の疑問にレヴィアは微笑みながら応え、レイナは何か意味ありげに言ったが······さっきからチラチラ見てて余計に気になるんだが····
「どうしたんだ。さっきからチラチラ見て」
「何でもねぇよ!エール追加で3っつ!」
「レイナったらもう」
何故かレイナは怒った様に声をあらげると追加でエールを頼んだ。俺、何かしたかなぁ。
そんなレイナを見たレヴィアはまるで困った子を見るかの様にボソりと呟いた。
···················
··························
·······························
日が暮れ始めた頃合いには解散となった。結構飲まされたので少し身体がふらつくが意識はまだハッキリしている。それにしても途中から飲むペースを早めたものの、レイナはまだ余裕がありそうだ。
するとレイナはふと何かを思い出したのかそわそわとしだした。俺はどうしたのかと思い隣のレイナを見ていたら、意を決した様に言ってきた。
「あ、あのよ。さ、先帰っててくんないか。ちと野暮用があるからよ」
野暮用って·····こんな時間にか?でもまぁレイナの事だし直ぐ終わる用事だろうな。俺は対して疑問に思わず頷いた。
「ああ、わかった。でも大丈夫か?結構飲んでたろ。俺も暇だから付きあーーーー」
「いや、大丈夫だ。お前は付いて来なくていい」
「そ、そうか」
まさか食いぎみで断られるとは思っていなかったが·······何か言いづらい事なのだろうか?俺に言いづらい事で野暮用······あっ、1つだけ思いついたけど、もしかしてアレか·····女性には欠かせない物の事か?だとしたら付いて行っちゃまずいな。うん。
俺が内心で納得しているとレイナは片手を軽く挙げながら言った。
「じゃ、そう言うことで。先帰って酒でも準備しといてくれ」
「はぁ、はいよ。途中でツマミも買ってくよ」
「牛串買っといてくれよ。いや、鳥串でもいいぞ」
「了解。気をつけて行ってくるんだぞ」
「おうよ」
やっぱり帰ってからも飲むんだな。少し呆れたがレイナらしいな。それにいつ見てもあの笑顔はいいな。何だかんだで許せてしまう。そういうのもレイナの魅力なのだが·······何で男ができないんかねぇ。見る目無さすぎないかい?って何度目だこう思うのは。
俺はそんな事を考えながら離れていくレイナの背中を見送り、まだやっていると思われる屋台の方に歩いて行った。
まだ屋台がやっていたので串焼きを買い宿に戻るとレイナは帰って来ていなかった。久し振りの1人でゆっくりしていられる時間が出来たが、何故だか物寂しさを感じる。前までは1人だったからか気にした事は無いが今は気になる。·······何かをして気を紛らわすか。
俺はそう考え魔法の練習を始めた。最近エールを飲んでいる際に思っていたことがある。冷やしたいと。温くても美味いのだが冷えたヤツを飲みたい、そういう気持ちが出てきた。
なので氷魔法的なモノは出来ないかと試していこう。ロックシュートの件もあるから基本的に魔法は元となるモノを改良すれば出来なくは無いのでは無いだろうか?例えば水魔法の水温を下げてみたりして冷水は出来るのではないか?試しに創ってみよう。
まず手のひらに小さめウォーターボールを準備し維持します。で、イメージで冷たくなるようにして········形は変わらないな。冷たくなったのか?試しに触ってみるか。········冷たくはないな。何かが違うらしいがわからない。そもそもどうしたら冷たくなるんだ?空気も関係するのか?だとしたらアピールの仕方を変えよう。取り敢えずこれは飲むか。
暫くしても良い結果は出来ず、悶々として半ば自棄糞気味に最初の段階から風魔法と水魔法を合わせる様かつ冷たさをイメージした。すると掌から微かにだが冷気が感じられた。俺はすかさずそれを維持する為に神経を集中し小さな氷の塊を創ろうとした。次第に魔法で出てきたモノが形を作り出し俺の掌に小さな氷が現れた。
「やっと成功した·······」
俺はどっと疲れがきて肩の力を抜いていると扉が勢いよく開け放たれた。
「よー、帰ったぜー」
気を抜いていたせいか身体がビクッと反応してしまった。扉の方を見ると俺の反応に怪訝そうな表情でレイナは見てくる。
「なんだよビクついて。なんかやってたのか?」
「あぁ、ちょっと魔法の練習してたんだよ」
「なんだそういうことか。じゃ、飲もうぜ」
レイナは納得してワインの入った瓶を俺に渡すと自分の分も持ち、互いに栓を抜き乾杯した。流石に今出来た氷魔法を試す度胸は無いのでまた今度にしよう。
その夜は昼間の飲んでいたペースとは違い互いにゆっくり飲み、冷めた串焼きを食べながら時は経っていった。先程まで感じられていた寂しさ嘘のように消えたのが感じられながら。
善行 6/108
なかなか筆が進まず、仕事の関係上まとまった時間が取れなくてペースが安定しませんが、精一杯面白いと思えられるように頑張らせていただきます。




