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ゴブリンから始まる物語  作者: となりの戸愚呂
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69.想わぬ情報 2


 俺は恨めしそうに皆を見ながら話題を変えようと咳払いをした。


「んん!ところで、ガルシア。レイナ達にダンジョンの事を依頼したのは他にも理由があるんだろ?」


 俺の言葉に先程の顔から一変して少し真剣な表情で言った。


「ああ、ある。何でも5階層からは上層と比べると明らかにレベルの違う魔物が出てきたそうじゃないか」


「レベルの違う······ミノタウロスの事か?」


 俺がそう言うとガルシアは頷き、本来の目的を話した。


「それだ。だから危険度を計るべく調査も兼ねて金級である紅の戦乙女に依頼したいと考えたんだ。つってもコイツらからダンジョンの話を聞かなきゃ考えてなかったんだけどな」


「確かに、もしこれが鉄級以下の冒険者が依頼を承けたりしたら全滅は必須だろうな」


 ガルシアの真意にローナは納得した様に頷いた。どうやら俺がいつも入ってるダンジョンはおかしいらしい。

 ·······そうなると一応あの事も訊いてみた方が言いかもしれない。俺はそう考えガルシアに尋ねた。


「なぁ、これは普通なのか分からないんだが、以前リンとユン、シルバーウィングの2人と一緒にダンジョンに入った事があったんだ。その時の魔物の数が1人の時と比べて少し増えていたんだ。これって当たり前の事なのか?」


「おいおい、マジかよ」


「ルゴウ、それは残念ながら当たり前ではない」


 ガルシアとローナは驚き反面尚も深刻そうに呟くように言った。他の皆も同じ······ん?レイナはどうしたんだ?うつむきながら震えているが····まさか。


「そりゃ···腕がなるぜ!」


 レイナはガバッと拳を握りしめ、いい笑顔で言った。それを横目で見たユーリは若干引きながらボソッと口に出した。


「······でた、脳筋」


「ユーリ、レイナのこれは今に始まった事では無いですよ」


「事の重大さを分かってないのは今まで通りですものねぇ」


「おい、酷くないか!?」


 レヴィアもマリアもユーリに賛同し、まるで困った子を見るかの様に言うとレイナはその反応が不服のようである。

 ガルシアは少しイラっとしたように頭をガシガシと掻いた。


「良いからお前は黙ってろ。話が進まねぇ」


「くー、どいつもこいつも。俺の扱いが酷すぎる」


 レイナは悔しそうに呟くと大人しく座り直した。それを確認したガルシアは俺に向き直り訊ねてきた。


「でだ、ルゴウ。その増えるってのはどれくらいか分かるか?」


「その時は1体から2体位だった筈だが······正直更に増えるかまではわからない」


 俺がそう告げるとガルシアは腕を組み何かを思案していた。


「ふむ·······そうなると仮に人数によって数が多くなるのであれば、多人数になるほど厳しくなりそうだな。因みにだがボス部屋の所もか?」


「ああ、そうだった」


 ガルシアは考えがまとまったのかローナに向き合い神妙そうに尋ねた。


「そうなると·······なぁ、ローナ。改めて訊くがこの話を知った上で依頼を頼んでも問題無いか?お前ら以外で頼めそうなメンツはやはりいない」


「問題無い。そもそもダンジョン探索は常に危険が伴っているものだ。これくらいは些細な事だろう」


「そりゃそうだ。俺も問題無ぇぜ」


「······まぁ、何とかなるんじゃない?ヤバそうなら引き返せばいいし」


「私も問題ないわ」


「なら、装備を整えないとねぇ」


 ローナ達は気にした様子もなく、最初から断る気も無かったかのように言うとガルシアは頭を下げた。


「すまねぇ、助かる。出来る限りの支援もこちらで行おう」


「有難い。なら何時から開始するかだが·····」


 俺を置いて話し合いが進む。まぁ、冒険者とは関係無い立場だから観ているだけ済むんだが····こう言うのを横で観てると良いなぁって思う。レイナ達と関わってから人と会話する機会が増えたから尚更羨ましく感じてしまう。


 俺が感慨耽っているうちに話がまとまり、ガルシアが改めて確認した。


「では、この依頼は今日から受理されたモノとして、こちらで出来る限り物を準備しよう。物の受け渡しは····そうだなぁ、最短でも10日位は見積もって欲しい。その間にお前達も抜かり無いように準備しといてくれ」


「了解した。こちらも準備の為に適当に依頼を承け資金を貯める事にしよう」


 さて、これでお開きになるのかと思ったらレイナはさも当たり前かの様に言ってきた。


「んじゃ、ルゴウそう言うことで宜しくな」


「え?どういうことだ?」


 俺がいきなりの事で聞き返すとレイナはやれやれといった様子で手を挙げた。


「どうもこうも聞いてなかったのかよ。俺達の準備が終わったらお前ん所行くから準備しとけよ」


「いつの間に俺も参加することになってんだ?」


 ちょっとローナ達が話してる最中は上の空だったが、俺の事は出てないだろ。するとレイナは腕を組み、さも当たり前かの様に言ってきた。


「そんなもん端からに決まってんだろ。お前がいなきゃ誰が5階層まで道案内するんだよ。それにお前がいりゃあ戦力も十分だしな」


 レイナの言葉にふむと納得したようにローナは頷いた。


「そうだな、ルゴウがいれば道中迷わず5階層まで行けるし何よりもレイナと渡り合える実力だ。戦力としても申し分無い」


「······うへぇ、ルゴウってそんなに強いんだ。·····ゴブリンのクセに生意気だ」


「私も知らなかったけどそうだったんですね。ホントに規格外のゴブリンね。色々と」


 ユーリは呆れた様にげんなりし、レヴィアはまるで困ったヤツを見るかの様にしている。


「あのなぁ、行く事には異論は無いがレヴィアもユーリも言い方酷いぞ」


「「いや、普通です」」


 くー、そこでハモらせて言うなよ。俺が何したって言うんだ·······いや、逆の立場なら分からない訳でもないが。

 俺は反論するのを諦め深くため息を吐き、俺としての方針を話した。


「はぁ、とりあえずは明日にでも帰って先に6階層の探索でも開始するよ。その方が色々とローナ達も楽だろ」


「それは有難いが······手間と時間が掛かるのではないか?」


 俺の事を心配してローナは言ってくれたが、俺は頭を横に振り何でも無い様に言った。


「そこは幸いと言っていいのか、俺の寝所とダンジョンが近いし、何より5階層迄は一瞬で行けるから問題無い」


「······ん?一瞬?そこまで距離は無いのか?」


 ローナの疑問に対して俺は伝え方が悪かったのだろうと思い、再度言い直した。


「え?いや、ダンジョンの入り口の前に行って······何かこう集中すれば光が出てくるんだ。すると6階層の入り口まで一飛び····できる····んだが············ってなにその反応。なんで皆頭の抱えてるんだ」


 皆と言ってもレイナを除くが渋い顔をしている。ローナは深い溜め息を吐きながら言った。


「はぁ、なぁルゴウ。出来ればその情報も先に言ってくれないか」


「そうねぇ、他には無いでしょうね」


「え、ああ。特には無いが······どうしたんだ?」


「どうしたもこうしたも······いや、ルゴウはそのダンジョンが初めてだからしょうがないか」


 ローナは途中言い掛けたが諦めた様子である。一方でレイナは良い笑顔である。


「いいじゃねぇか。楽できるんだから。あ、ルゴウ因みになんだがそれって俺達も一緒に行けるのか?」


「いや、1人でしか使ったことが無いから何とも言えない」


「まぁ、使えなかったらそん時は探索だな!」


「「「はぁ·····」」」


 レイナのポジティブさと何も考えて無い事にローナ達は頭を抑えながら溜め息を吐いた。

 俺達のやり取りを見たガルシアも何が面白いのか笑ってる。


「くくっ、ルゴウやっぱりお前、面白いな」


「そりゃどうも。ところで話も着いたしもう解散で良いか?」


 これ以上特別な話は無いだろう思いそう告げると、ガルシアも頷いた。


「あぁ、構わねぇ。ローナ達もありがとな」


「いや、構わない。先程話した物品の事、宜しく頼む」


「しっかり手配しておく。その分成果は期待してるからな」


「おう、任せとけ!」


 レイナが気合い十分と言う風に返事をするとそれをたしなめるかの様にローナは釘を刺した。


「レイナ、お願いだから暴走するなよ」


「······ローナ大丈夫。そこはルゴウに委せれば万事解決」


 いや、ユーリどういうことだよ。何でお守り役になってんだよ。レヴィアもマリアも頷くなよ。


「そうですね。問題無いでしょう」


「おい、こら。何で俺が暴走する前提で話してんだよ。それにルゴウは関係無いだろ」


「さ、もう帰るわよぉ」


「っておい、無視するなよ。待てって」


 いつも通りというかレイナの言葉をスルーして席を立ち帰ろうとしていた。俺も続こうとしたらガルシアが不意に声を掛けてきた。


「あぁ、ちょっと待て。ルゴウは少しだけ残ってくれ。そんなに時間は取らせない」


「ん?まぁいいが····ローナ達は先に行っててくれ」


「ああ、わかった」


 俺だけ何故残したかわからず疑問に思っているとガルシアは作業机に戻り何かを手にとって戻ってきた。


「さて、お前に残ってもらった理由はこれだ」


「これは?」


 差し出されたのはネックレスというよりもドッグタグだった。色は鈍く光る茶色で中央には文字が刻まれていた。


「これはダリルからの推薦でお前を冒険者として認める証だ」


 ダリルがガルシアと話していたのはこの事か。だが全くもって意味がわからない。俺が冒険者?どういうことだ?

 俺はガルシアのその行動に訳がわからず、そのドッグタグを受け取らず躊躇した。


「なんでまたそんな物を?俺はーーー」


「そうゴブリンだ。本来冒険者になるにはある程度の素養が必要だ。それはどの種族でも適用される。先も話したが俺はお前の事を何も知らなかった。信用の置ける者か否かだ。ましてやお前は魔物だ。種族と言っても魔物に送られた前例はないし、いくら素養が有ってもおいそれと渡す事は出来ない」


 だが何故話にあった通りに前例が無いのに俺に渡してきたんだ?


「だったら尚更これを渡そうとする理由がわからない」


「理由と言ってもなぁ····まぁ俺の直感だな。お前なら大丈夫だろうって。これでも視る目はある方だとは思ってる。だから受け取れ」


 ガルシアは良い顔で再度俺の方にドッグタグを突きだした。俺はなんだか認められた気がして嬉しく思い、口許を弛ませながらドッグタグを受け取った。


「ああ、わかった。有り難く頂くよ」


 ガルシアも同じく口許を弛ませながら初めに会ったときよりも優しい口調で言った。


「改めて。ようこそ我がギルドへ」



ーーーーーーーーーーー


 ルゴウがドッグタグを受け取り部屋を少し経った頃にサーシャが訪れ、部屋に入るなり不安そうにガルシアに尋ねた。


「失礼します·····あのぉホントに良かったのですか?彼に冒険者の証を渡して。しかもいきなり銅級なんて。皆さん驚いてましたよ」


「良いんだよ、俺が決めた事だ。それにダリルの推薦だしな。それに実力も問題無いからな」


「ならいいんですけど······」


 ガルシアの言葉を聞いてもまだ何かを言いたげにしていた。それに気が付いていたガルシアは何でも無いかの様に言った。


「心配するなサーシャ。奴は俺達に不利益はもたらさないだろう。それに····」


「それに?」


「貴族の連中とか魔族の連中がアイツに目をつける筈だ」


「なるほど····確かにそうですね。下手に利用され脅威になりかねませんしね」


 サーシャは納得し頷くとガルシアは先程までとは違い肩の力を抜きながら言った。


「まぁ、それも本音でもある、が······何よりもアイツを見ていると面白いからだ」


「え?」


 サーシャはガルシアの言っている事が理解できず思わずキョトンとしてしまった。ガルシアは何が面白いのか口許を弛ませながら続けた。


「あれを見たら判るだろ?ゴブリンなのに何故か周りに女がいるんだぜ·····っつてもクセが強いのばっかだけどな」


「······まぁレイナさん達といるのは見掛けますけども········そこまで面白い事ですか?」


「あったりまえだ。今まで男っ気無かったレイナが気を許してんだぜ。面白くない訳が無いだろ」


「確かにそう思いますし、正直同じ女性としても変わってるとしか言い様が無いですが·······」


 サーシャは呆れた様に言うが対照的にガルシアは楽しそうにしていた。


「ま、気長に面白可笑しくアイツら観ていこうぜ。ここにいるうちだけどな」


「はぁ、わかりました」


「さ、用が終わったんなら戻れ。俺は仕事の続きをするからよ」


「はい、では先に職員には説明しておきますね」


「おう、委せた」


 ガルシアは部屋から出るサーシャに軽く手を振り自身の作業机に戻った。そしておもむろに置かれている紙に手にし、目を通しつつ溜め息を溢した。


「········王国から勇者が····ねぇ····」


 ガルシアはくだらなさそうに呟き、その紙を机の端に置くと書類と向き合い始めた。


 善行 6/108


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