67.俺はノーマルだ!
俺の願いは叶うこともなく、暫くシュガーと一緒に街中を歩いている。街行く人から以前とは違った奇異な目で見られているのがわかる。心なしか周りから距離を取られている気がする。いやうん、そうだよね。ゴブリンと筋肉ゴリゴリでブラジャーをしている変態だもの、そりゃ距離も置きたくなるわ。
シュガーの話を適当にあしらいつつ歩くと冒険者ギルドに着いた。本当はアリスの所に行こうかと考えたがこんな変態連れていきたくないし、何よりも悪影響になりかねん。
それにシュガーを連れて街中を歩き回りたくは無いのでここなら良いだろうと考え来てしまった。
「あら、冒険者ギルドに用があったの?」
「まぁ·····なんとなくで来た訳だが」
あわよくばカイ君がいることを願っている訳だが····果たしているのだろうか。いや、いて欲しい。
冒険者ギルドに入ると今日は人が少ない様に感じられる。だが俺達に奇異な目線が向けられているのは確かだ。とりあえずカイ君はいるのだろうか?
俺がギルド内を見渡すと以前に見たことのある面持ちの青年が掲示板前で女性と仲良さげに話しているのが目に入った。
······何故だろう、何となく俺は見てはいけないような光景に冷や汗をかきつつ隣の人物を見ると、僅かに震えていたのが目に入った。
するとシュガーは掲示板の方に歩き出した。表情は確認出来なかったがこれは大事になるのでは?俺は不安に思いシュガーに声を掛ける事にした。
「ちょ、ちょっと、シュガー····さん」
俺の声届かずカイ君の方へと歩いていく。背後まで来ると気配に気づいたのかカイ君は後ろ振り返った。
「シュガーちゃん······」
カイ君はシュガーの姿を確認するとそれはもう先程よりもいっそう嬉しそうな表情を向けている。そして······
「んもう、カイくーん。偶然じゃなぁい」
「偶然だねー、今日も一段と愛らしいよ」
「やだもぉ、カイ君ったらぁ」
シュガーがガバッとカイに抱き着くとそれはもうお互いに嬉しそうに熱くむさ苦しい抱擁をかましている。それを隣で見た女性は引いて····ない!?むしろ恍惚そうな顔をしてらっしゃるだと!?
「ぐふっ·····ぐふふ····」
ひえっ!?なんだコイツ!何でそんなに嬉しそうなんだ、ってか変な声出しとるし。そんで止めろ、恍惚そうな表情しながら両手を頬に当てるな。折角の整っている顔が台無しだぞ。
「もうカイ君に逢えなくて寂しかったんだからぁ」
「ごめんよ、寂しい思いをさせてしまって」
「ううん。今こうして逢えたのだからいいわ。それにルゴウちゃんのお陰で逢えたのだもの」
「え、ルゴウ君もいるのかい?」
シュガーがそう言うと2人して俺の方を見た。止めろ、こっち見んな。関わりたくないんだ。
俺が他人のフリをして離れようとすると目の前に先程の女性が立っていた。先程見た表情がまるで嘘だったかの様に俺を探るような感じで話し掛けて来た。
「あ、あのぉ·····」
「え、あ、はい」
突然目の前にいたので驚いている俺を他所に、女性は少しモジモジとしていたが意を決し口を開いた。
「あ、あの!受けですか、攻めですか!」
「君は何を言ってるんだ」
いや、ホントに何を言ってるんだよコイツ。初対面に聞く話じゃないだろ。俺が凄く冷めた目で見ているとめげない様子で軽口で言ってきた。
「やだなぁ、わかってるクセにー。受けか攻めかで聞かれたらアレしかないじゃないですかー。やっぱりゴブリンだから攻めなんですよね」
「············」
俺の変わらない表情から次第に何かを感じとったのか少し冷や汗を滴らし始めた。
「あ、あれ?なんでまるでその汚物を見るような目をしてるんですか?私変な事言いましたっけ?」
「········はぁ、一応言っておくがシュガーとはただの知り合いだ。それ以上の事は何もない」
俺はそれはもう深い溜め息を吐きつつ、キッパリと否定すると彼女はわなわなと震えながらまるで信じられないといった風に口を開いた。
「えっ······う、嘘、ですよね·····」
「嘘ついてどうする。それ俺はノーマルだ」
「そんなぁ。貴方も同じ人だと思ったのに·····それに折角の異種枠がー!」
そう言うと女性は膝から崩れ落ちる様に着き、手を床に着け落ち込んだ。なんとなくだがこれ以上関わってはいけないような気がする。
「あはは、ナタリーってちょっと変わってるんだよね」
「ちょっとじゃないだろ。かなりって言っていいぞ」
笑顔で言ってくるが俺のドン引き具合をわかって欲しい。後、シュガーはいつまでカイとくっついているんだい?
「でも彼女は僕らの大切なパーティーメンバーでもあるし、善き理解者でもあるからねぇ。それに·····」
「彼女も私達と同じく同性が好きなのよ。あ、因みに残りのメンバーも同志よ」
「ア、ハイ······」
要らねぇ、そんな情報要らないから。なんだよお前らのパーティーって同性愛者の集まりかよ。すごいな!
「ルゴウ君もどう?入るかい?」
「いや、俺はノーマルなんで遠慮しときます」
「そっかー、残念。まぁ気が変わったらいつでも待ってるからね。それじゃ僕たちはこれからパーティーメンバーで次の依頼の話があるからこれで失礼するね」
「ルゴウちゃん道中楽しかったわ。また今度ね。ほらナタリーもいくわよ」
「あー、私の妄想が実現しないなんてー。あんまりだー」
未だに落ち込むナタリーをシュガーは引き摺って残りのメンバーと思われる元へ向かって行った。俺は彼等に小さく手を振ると安堵のため息を吐いた。······よかった、解放された。ここに来て良かった。
さてこれからどうするかなと考えていたら受付にいた女性が近づいて来た。·····確かサーシャって言ったかな。
「あのー、紅の戦乙女と一緒にいたゴブリンさん、ですよね?」
「ああ、そうだが······何か用か?」
「はい、ギルドマスターが呼んでいますのでご案内しても良いですか?」
「問題無いが·····何の用か教えて欲しいんだが····わかるか?」
呼ばれるような事はしてないと思うが····何だろうか?そう言えばヤクト商会のダリルがギルドマスターと話し合っていた記憶があるのだが、その事だろうか?まぁ内容は知らないけども。
俺がそう言うとサーシャは申し訳なさそうに軽く頭を横に振った。
「いえ、残念ながら。ただ紅の戦乙女のメンバーもいらっしゃいます」
ローナ達も居るのか······だったらダリルは関係無さそうだが···············んー、わからん。
「とりあえず、行ってみるか」
「では、こちらです」
俺はこれ以上考える事を止めて、サーシャの案内でギルドマスター達が居る場所に向かった。
善行 6/108
今回は短めになってしまいましたが、続きを書こうとしたら長くなりそうな気がしたのであえて切りました。
構想はまだ練ってる段階ですが、面白く観ていただける様に頑張らせて頂きます。




