65.思い·····だせない····
目を開けると窓から明かりが差し込んでいた。昨日はレイナと闘い終わってから飲んだのだが、レイナにバカほど飲まされたのだが、いったいどれくらい飲んでたんだろうか。お陰で頭が痛い。
寝惚ける視界と頭痛の中でふと違和感に気がついた。今日は視界が開けていてあの感触が無い事にである。抱き枕にされなかったのかと残念に思っていると右手というか右半身と左腕が重くて動かせない。·······いやいやいや、たぶん片方はレイナだろうがもう片方は誰だ?
俺は気になり目線を下にするとレイナの頭が先に視界に入った。ち、近い。俺の胸元を枕にして寝ているが、いつもと違ってこれはこれで···じゃなくて左腕だ、左腕。一回レイナの事は置いておいて、頭を左側に少しずらして見える位置に変えた。
「Oh·····」
まさかの事に思わず頭の位置を戻し天井を見上げた。これはどういう事だってばよ。何で今日もリンがそこに寝ているんだ?昨日は分からんでもないが、今日はなんで一緒に寝てるんだ?思い出せ、こうなってる経緯を·····って途中から憶えてないな。飲み過ぎで頭が痛ぇし。
二日酔いで考える事も億劫になってきたのでもう一度寝ることにした。まぁ、起きたら少しは治まってるだろうし、そんときの俺に任せよう。
俺はそう結論付けてもう一度目蓋を閉じた。
··············
······················
·····························
寝ていたのは何れくらいか分からないが、顔に何かが当たった感触がしたのを切っ掛けに目が覚めた。すると目の前にはリンの顔があった。目が合うとリンは固まり、次第に顔を赤くしてぷるぷると震えだした。えっと、どうしたんだ?というか何かしたのか?
しばらく見つめ合う形になったが、何かに堪えきれなくなったリンは勢いよく俺の左腕の中に戻り顔を隠していた。いやいやいや、何でそこに!?
俺は身体を起こそうかと思ったら少し位置はずれているものの、レイナがまだ胸元を枕にして寝ているため動けない。
退かせば良いんじゃ無いかと思うだろ?退かせれないんだよ。お腹付近に押し当てられている感触が······じゃなくて起こすのも可哀想だろう。あ、あとちょいと元気なアイツが結構主張してるからシーツを捲りたくないし。
少し気持ちが落ち着いたのかリンが少し顔を上げてた。
「お、おはよう。ルゴウ」
「あぁ、リンおはよう」
「···········」
いや、黙らないでよ。なんか気まずいじゃんか。というか、何で離れないのですかね。汗臭くない?たぶんだけどレイナと闘った後は汗を拭わないで飲んでたから結構臭うと思うぞ。
俺はそう思い少しリンに離れてもらうように説得を試みた。
「あ、あのさリン。たぶん昨日汗拭ってなかったと思うから、俺結構汗臭くないか?離れた方が良いじゃないかな?」
俺がそう言うと少しキョトンとした表情をして不意に匂いを嗅ぎ始めた。いやいやいや、嗅がなくていいから!?
「んー、確かに少し汗臭いかもしれないけど·····気にならないかな。むしろ····」
そう言うと再度嗅ぎ始めた。
「いやいやいや、なんでまた嗅ぎ始めてるの。絶対に臭いって。止めなさい!」
「あ、あともう少しだけ」
な、何この子?匂いフェチなの?じゃなくて嗅ぐのを止めなさい。恥ずかしいから。
俺は解放された左手を使いリンを少し離そうとした。それが間違えであったのだが····
「んん······!?」
リンが嗅ぐのを止めて少し驚いている。何処の部分を掴んだのか分からないが、ただ1つ分かるのは柔らかく少し小ぶりな膨らみであった。
俺は何を掴んだんだと疑問に思い、今掴んでいるモノの感触を確かめてしまった。
「や·····っん!ル、ルゴウ····」
「!?」
俺はようやく理解が追いつきバッと手を離した。やってしまったー!?もしかしなくてもさっきの感触ってリンの·····
俺は顔から血の気がサーッと引き、リンを見ると顔を真っ赤にしていた。
「す、すまない。わざとではないんだ。ただその····うん。ごめん」
俺がそう言うとリンは変わらず顔を真っ赤にしながらも、少しモジモジしながら言った。
「う、ううん。僕も悪かったから良いよ。大丈夫。別に······その······いやじゃなかったっていうか····その······」
途中から段々とゴニョゴニョと聞き取れなくなっていったが、怒ってはなかったらしい。だけど女の子に対してやってはいけないだろう。反省だ。
俺が落ち込み、リンはモジモジとしている中で不意にモゾモゾとレイナの方に動きがあった。
レイナの動きに気がついた俺はやっと起きたのかと思い視線を向けると、レイナの表情は少し不機嫌そうに、だが目は瞑っていた。
「········うるさい」
そう言うと俺の胸元から顔の方にレイナの頭が移動してきて俺の顎にレイナの頭が当たった。
「いだっ!?」
思わず口に出たがレイナは気にしてないのかそのままズルズルと登っていく。一瞬何処に行くんだ?そう思うのも束の間で、レイナが止まった時には俺の目の前にご立派なお山様があった。い、いや、まさかな······
「もがっ!?」
そう思うと不意に力強く抱き締められて視界が暗くなり、柔らかく息苦しい中にも何処と無く良い香りに包まれた。
そして、何かに満足したようにレイナは呟いた。
「んー····よし」
いや、良しじゃないよ!?もう一回寝るなよ。さっきの出来事で鎮まってきたアレが復活しちまったじゃないか。最高だよ、チキショー。
嬉しいやら悲しいやらそんな複雑な感情が入り乱れる中、リンがボソッと呟くように言った。
「むー、ずるい。僕もしたかった」
何で!?どういう事!?君達の中で俺はどういった存在なんだ?いや、その前に絵面。絵面が酷いことになってない?今の状態って昨日とほぼ同じだよね。
と、とりあえず起きたいけど、この離れるのが惜しい状況を何とかしないと·····起こしたいけどレイナもリンも俺の腕を下敷きにしてるし。どうしようか。
そう困っているとリンが代わりにレイナを起こすのを手伝ってくれた。
「レイナー、起きてー。朝だよー」
リンがレイナの肩を揺さぶっているのが顔の感触で何となく分かるが····それは止めて欲しい。揺れるあの感触が俺に刺激を与え、尚且つその度にレイナの香りが······ってい、いかん。鎮まれー、鎮まるんだ。理性を繋ぎ止めるんだ。
悶々とする俺の意思を知ることもなく、リンは尚も続けている。次第にレイナも目が覚めてきたのか返事はあった。
「ん·····なんだよぉ。もうちょい寝かせろよぉ」
そう言うと俺の頭を力強く抱き締めてきた。く、苦しい·····余計に息が出来ない。
リンが退けてくれた事により左手の自由が利くようになったので俺もレイナから少し距離を取ろうとお腹を少し押した。本当はレイナの腕を何とかしようと考えたが間違って胸を触ったら殴られそうだからな。
「ん·····あ?」
俺の抵抗に気づいたのか抱き締めていた腕の力が弱まったのを感じた。俺は少し惜しい気もするが折角のチャンスだと自分に言い聞かせてレイナの胸から脱出した。
レイナの方を見るとまだ眠たそうに半分目蓋が下がりながら、少しシャツが捲れながらも腹を掻いていた。
俺はレイナの行動に目のやり場に困り·····はしてない。むしろもう慣れたので気にしないで今日の行動について話をすることにした。
「今日はどうするんだ?また依頼でも受けるか?」
「んー、つってもなぁ。明日からはパーティーで動くしなぁ·····ふあぁ······」
「僕は今日もパーティーで集まって依頼することになっているんだよね」
レイナは未だに起きる気配もなく、大きな欠伸をしてそう言った。この分だとだらだらと寝てそうだな。リンは残念そうな表情をしていたが何かを思いついたのか少し照れながら言った。
「ルゴウにお願いがあるんだけど·····いい?」
「お願い?なんだ、依頼を手伝ってほしいとかか?」
俺がそう言うとリンは首を横に振り、モジモジとしている。
「ううん、そうじゃなくて。その·····えっとね。今日の依頼頑張れるようにって頭撫でてほしいんだ」
「ん?別にいいが······何でだ?」
「ルゴウにしてもらえたら、今日も一日元気で出来るかなーって思って······えへへ」
リンは気恥ずかしくなったのか片手の指で自分の頬を掻いていた。それで頑張れるんなら幾らでも撫でるんだが······俺にやられて嬉しいものなのか?
「それで元気になるのならやるが····ってうわっ
!?」
俺が言い切る前にリンは正面から抱き着いてきて、俺の胸に顔を擦り付けるように頭を差し出してきた。
リンの行動にびっくりしたが、まぁいつもの事だと割り切り溜め息交じりに頭を撫でた。
「えへへー、ありがとう」
「はいはい」
リンは満足そうにしているので良しとしよう。だが、横からの視線が痛い。見なくても分かる。なんかレイナがジト目で見ていそうだ。
そして、上体を起こし不機嫌そうにレイナはボソリと言った。
「なぁに朝からイチャついてんだよ。ルゴウもデレデレしやがって」
「別にイチャついてはいないぞ、それにデレデレもしてない」
「はっ、どうだかな」
「······あ、そうだ。レイナも僕と同じようにしてもらったら良いんじゃない?ほら、早く早く」
何を思ったのかリンがそんなことを言い出しレイナを手招きしだした。レイナもまさかの事で驚きそして顔を真っ赤にしだした。
「い、いや、べ、べ、別にうらやましい、とかじゃなくてだな····ルゴウだって俺にしたくはないだろう」
「俺は構わないが·····逆にレイナがイヤじゃないのか?」
撫でるのはイヤではないが、好きでもなく、況してや人間の男じゃなくゴブリンにはされたくないだろう······リンを除いてだが。
レイナはわなわなと震えながら絞り出すように呟いた。
「い、イヤじゃないけどよぉ。でも····」
「もー、良いからこっちきて」
「ちょ、ちょっとまった!?」
リンはレイナの態度にめんどくさくなったのか、レイナの手を取り俺の所に引き寄せた。レイナも大して抵抗もせず、なされるがままリン同様俺の胸元の位置まで近くなった。
「えっと····良いの?」
「うん、続きしてー。レイナにもやってね」
俺はどうしようか迷っているとリンは元気よく返事をした。まぁ、後で怒られても良いからやってしまうか。俺は意を決してレイナとリンを撫でることにした。
「!?」
レイナの頭を撫でる瞬間にビクッと身体を強張らせていたが、次第に力が抜け照れつつもされるがままになっていった。撫で心地はどちらも文句つけようがない。リンは変わらず正面から抱き着いているし、レイナも最初はまだ俺との距離は離れていたものの段々と近くなり自分から頭を寄せてきてるし。·······絵面大丈夫かなぁ。
暫く撫でているとリンが何かに気づき少し顔を真っ赤にしている。俺は一瞬どうしたんだと疑問に思ったが直ぐに理解した。うん、そういやまだそうだった。ナニがなんて言わないよ。寧ろ何で気づかなかったんだろう。
俺は何とも言えずリンから目を背けると、リンも俺の胸に顔を隠すように埋めていた。いや、退いて欲しいんだけど。早急にね。
················
························
······························
2人とも満足し俺から離れてリンはまだ若干顔を赤くしながらパーティーの所に行った。レイナは「·······寝る」っと言ってから俺から顔を隠すように横になって寝息をたて始めた。
さて、俺はこのあとどうするかなぁ。何となく街中をブラついてみるかな。今日でここから離れることにもなるし。まぁ、たまにヤクト商会に物を売りに来るのだが見て廻りたいしな。
俺は支度を整え、聞こえてないとは思うがレイナに出掛けてくる旨を言い残し、街へと出掛けた。
善行 6/108




