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ゴブリンから始まる物語  作者: となりの戸愚呂
66/124

64·side.なんだこれは

63話と64話の外野視点です

想像以上に文字数が多くなってしまいました


ーーside:ローナーー


 私は今何を観ているんだ?いや、分かっているんだが理解が追い付いていかない。最初はレイナにとっては挨拶代わりの軽い打ち込みだろうが、並みの奴らでは打ち合いにすらならない程度の始め方だ。それをルゴウは難なく受け止めて打ち返している。ある程度の実力は理解しているつもりだったが問題は時間が経つにつれての事だ。

 レイナの調子が上がってきたのか剣のスピードやキレが増してきているのに対して、ルゴウも同じ様についてこられている。

 その光景を目の当たりにした私とマリアは今思っている事を確認する様に口を開いた。


「これは、金級並みの闘いになってるわね」


「あ、あぁ。マリアもそう思うか。だがそこではない」


「わかってるわ。ルゴウってゴブリンジェネラルでしょ。通常であればレイナと打ち合いにすらならないはずよ。それが "はぐれ" だとしても、ね」


 マリアの考えた事に賛同するように私は頷きながら言った。


「そうだな、キングで漸く打ち合いは可能になるが今の2人のペースについてこられるわけがない。ハッキリ言ってルゴウの強さは異常だ」


 そう、異常だ。通常では有り得ない事が目の前で繰り広げられている。更にマリアはその異常さに付け足すように言葉を重ねる。


「更に付け加えるなら彼、まだ魔法も仙術も使ってないのだけどもね。まぁレイナも闘気出してないし、何よりも武技使って無いのよね」


 そうなのだ、まだお互いに手札を切ってはいない。この後の2人の勝負がどうなるか読めない状態なのだが、1つ分かっていて信頼しているところはある。それはレイナの事だ。私は腕を組みつつマリアの言ったことに言い重ねた。


「まぁ、レイナはうちの大事な火力担当だからな。強くなくては困る。それに腕っ節なら上の階級相等なのだが·····いかんせん頭がな·······」


 マリアも困った様に腕を組み、片手を頬に添えながら言った。


「そうなのよねぇ。お馬鹿さんなのが治れば良いのだけど······まぁ、そこがレイナらしくて可愛らしいんだけどねぇ」


 確かにそこがレイナの憎めないところで愛らしい部分なのだ。ただ、お願いだから空気を読んだりしてほしい時もある。特に私が····いや、何でもない。結果的に助けられた場面もあったしな。


 マリアと話している内に気付いたのだが観戦してる人が増えてきている。そして私達と同じ様にこの光景に唖然としている者が多い。


「な、なんだこれは······」


「お、おい。アイツってこないだガストを倒したゴブリンじゃないか」


「だ、だよな。でも何でレイナさんと·····いや、その前に何でレイナさんとやりあえているんだ?」


「いや、待て。まだレイナさんは本気じゃないみたいだぞ。流石にあのゴブリンじゃ歯が立たないだろ」


 何やら色々と言い始めているようだが2人の闘いの観戦を止め離れようとする者はいない。武技も何も使ってない闘いだがあの2人の闘いは奇抜過ぎて目が離せないのだろう。

 レイナは普段から見ているから気にしてないが、大剣を様々な方向から振るい、または片手で振り回したりとあそこまで自由に扱えるヤツは中々いないだろう。


 かくいうルゴウも同じだ。二刀流なのは分かるがこの勝負で何故大剣を背負っているのか始めは理解できなかった。途中からレイナの攻撃に合わせて背中の大剣で防ぎ反撃の初動を早める為に使っている。正直それなら盾でもいいでのは無いかとは思う。あんな曲芸じみた事をするのであれば私の様に盾で堅実に攻めた方が良さそうな気もするのだが·····もしくは盾の方が守れる範囲が広いのではないかとも思う。ああじゃないと駄目な理由が有るのだろうか?


 観ている内に私も2人の闘いに引き込まれていると聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「あー、もう始まってる。ユン早く早く」


「もー、リン待ってよー。急がなくても終わらないよー」


 あの声は昨日一緒に依頼を受けたルゴウの友人のリンか。隣の子はリンの友人かな。どこかでこの勝負を聞きつけて来たのだろうか。


「あら、リンちゃん。こっちよー」


 マリアもリンに気がついて手招きしながら呼ぶと、リンとその友人も私達に気づきこちらに向かってきた。


「あ、マリアさんとローナさん。昨日ぶりです!」


「あら、今日も元気良さそうね。あの後良いことあったのかしら?」


 マリアがそうリンに聞くと昨日の事を思い出したのか凄く照れた様に両手を頬に当ててモジモジとしながら言った。


「いやー、えへへー。ありましたけど内緒です」


「あらー、残念ねぇ。気が向いたら教えて貰おうかしら。ところでその子はお友達?」


「はい!友達で同じパーティーのユンです」


「はいー、ユンですー。よろしくお願いしますー」


「ユンちゃんよろしくね。私はマリアで隣にいるのがローナよ」


「ああ、よろしくな」


 自己紹介も済んだ頃にはルゴウとレイナに動きがあった。互いに距離を開き何やら言い合うとレイナはいつものアレを纏い始めた。アレとは一般の闘気とは別次元のものでレイナ専用のスキル『深紅之羽衣』だ。


「あれってー、闘気?なのかなー」


「闘気だとしてもレイナの闘気······他の人と違うような」


 リンとユンは初めて違うタイプの闘気を見たのだろう。驚くのも無理はないか。私は疑問に思っている2人にどういったモノなのか説明することにした。


「あれは『深紅之羽衣』と言って、通常の闘気とは違うスキルだ。使用者の戦闘意欲に作用され、高くなればなるほど身体能力を大幅に上げることが出来る。逆に低ければ発動はするが通常の闘気にやや劣る程度の力しか発揮しない。更にそこに気力や魔力を消費しないという馬鹿げたおまけも付いている」


「え!?」


「うわー、そんなのルゴウに勝ち目ないじゃないー」


 驚くのも無理はないしユンの言っている事もわかる。あの馬鹿げた性能のスキルはレイナと相性が良すぎる。正直、戦闘面に関してはレイナの右に出る奴はそうそう現れないだろうと思っているくらいだ。


 一方、ルゴウも闘気を纏い·····いや、あれは神通力か?透明感のある青色でレイナと違い荒々しさを感じられない。むしろ違和感がなくどことなく静けさみたいなのを感じられる。


 レイナの合図で再度打ち合い始め、ルゴウは先程よりも無茶苦茶な動作をしながらもレイナに後れを取られないよう立ち回っている。

 それにしてもレイナは本当に楽しそうだ。表情と『深紅之羽衣』の色の変わりの早さが今の感情を物語っているのが分かる。


「うへー、速すぎて目が追いつかないよー」


「う、うん。僕も無理だよー」


 リンとユンは必死に目で追いかけようとするがあまりの攻防に目を回していた。流石に駆け出しの冒険者じゃ無理か。まぁ他の冒険者も同じところか。

 段々と濃く鮮やかなっていく『深紅之羽衣』とレイナの表情にマリアは嬉しそうにそして困った様に言った。


「あらあら、レイナったらいつもより楽しそうね。でも·····」


 言わんとすることは観ればわかる。


「あぁ、だがそろそろルゴウも追い付けないんじゃないか」


 そう、段々とルゴウがレイナの攻撃に対応出来なくなってきている。私とマリアはレイナ相手によくやったとそう勝手に思っていた。

 ただ闘っている2人は違った。レイナは変わらず楽しそうに何かを待っている感じがあった。そしてルゴウがそれに応えるべくあることやってのけた。


 そう魔力と神通力を同時に、いや織り混ぜて纏い始めたのだ。先程までの淡い青色に蒼色が絡み付き、そして自然に溶け込み淡い色ながらも青く蒼い何とも不思議な色だ。しかもそれは全くのムラも無い完全に混ざりあっている様に見える。


 レイナはそれを見た瞬間、よりいっそう嬉しそうな表情をしていた。まだまだ楽しめるとまるで新しい玩具を前にした子供のようだ。

 だが、私とマリアの反応は違う。ルゴウがやっていることに目を疑っている。闘気と魔力を合わせる技はある。だがそれは身体に闘気を武器に魔力をと別々に行うというもの。混ぜるとなると途端に難易度が上がるのだ。私も混ぜ合わせる事は出来るがあんなにキレイに混ぜ合わせることは出来ない。


「······魔力の操作に長けてるのは知っていたけど、あんなにキレイになんて·····凄いわね」


「あぁ、彼の認識を改める必要が出てきたな」


 彼がゴブリンであるのが惜しいと同時に私は思った。彼が人であるなら大きく名が知れ渡るだろう。それほどの逸材であるのが観てとれる。だが、彼はゴブリンだ。如何に友好的でも人に害意を向ければ討伐対象にもなりえやすい。いや、存在が危険とみなされる可能性が高まるだろう。


 そんな私の考えとは裏腹に周りの声が耳に入ってくる。


「おいおい、なんだあれ。何であのレイナさんの攻撃にまだついていけるんだ?」


「ん?あ、あれ?見間違えかな·····ん?」


「どうしたんだ?」


「いや、さっきからあのルゴウって奴の姿が違う風に見えるんだよ······気のせいか?」


「何を言って······ん?」


 他の冒険者が変な事を言い始めていた。私は何の事だと思ったがユンも目を擦って観ていた。


「リンー。さっきからルゴウの姿が知らない男の人に見えるんだけどー。気のせー?」


「えっ、いつものルゴウじゃない?」


「リンに聞いたのが間違えだったかなー」


「ユンってば酷いなー。ルゴウはいつも格好いいよ」


「はいはーい、惚気ですねー。でもー、気のせい·····じゃないよーなー」 


 ユン達の言葉に引っ掛かりを覚えた私は再度ルゴウを見た。そして言っている事に合点がいった。マリアも気がついたのかその事を口にした。


「確かに一瞬だけど、あの時のルゴウの姿に見えるわね」


「あぁ、打ち合う度にあの時の姿になってるように見える······がどういう事だ?」


「わからないわねぇ。でもやっぱりあの姿····良いわねぇ。最初見た時は思わずときめいちゃったもの。ルゴウって知ったとき落ち込んだわぁ」


「そうだったのか·····」


 マリアの言ってる事は分からなくもない。私も一瞬だが横にいるレイナとリンに羨ましいとは思ったが、ルゴウと分かったらそんな気は失くなったがな。······どこかに良い男いないかなぁ。


 私達の会話を聞いたリンが少し頬を膨らませながら言ってきた。


「マリアさんもルゴウを狙っているんですか?」


「そんなわけ無いじゃない。彼ってゴブリンでしょ。生憎私はちょっと遠慮するわ」


「何で駄目なんですか、あんなに格好いいのに!!」


 マリアの悪気の無い言葉にリンが怒り更に頬を膨らませながら詰め寄っていた。マリアもリンがまさかそんなに怒るとは思っておらず一瞬たじろぎはしたが直ぐに訂正するように言った。


「か、格好いいとは思うわよ(人の姿の時は)。でも······そうねぇお姉さんには勿体ないわ。リンちゃんが羨ましいもの」


「えへへー、格好いいよねぇ。それにお似合いだなんてー」


 リンはマリアの言葉に機嫌を良くして少し照れた様に言った。


「そこまでは····いえ、何でもないわ」


「うへー、リンってば面倒くさー。まぁリンらしいけどねー」


 マリアは正解を引き当てたが、リンが拡大解釈してることを言及するのは避けた。その様子を観ていたユンは飽き飽きとしたようにボソッと呟いていた。

 気を取り直したユンが私に尋ねてきた。


「ねー、ルゴウが人の姿に見えるのってー、レイナさん達ならわかるー?」


「そうねぇ····」


「ふむ······ルゴウのスキルの影響で幻覚を引き起こしているのか·······?一応参考に人の姿の特徴を教えて欲しい」


 正直確証はないがそうではないかとは思うが少し情報が欲しい。私の見ている姿と違えば幻覚なのだが······


「特徴はー、んー、黒髪で整った顔立ちかなー」


「黒髪で整った顔立ち·····か。私の見ている姿と似てるかもしれないな。そうなると幻覚としては·····」


「でもローナ、今その姿になったとしてレイナに影響は出ないじゃないかしら?それに魔法らしい魔法は使ってないようだし」


 確かに魔力を纏わせてるだけで他にそれらしい事もしていない。そしたらなんなのだ?

 私達の言葉を聞いたユンは顎に手を添えて考えていたが何かを諦めた様に言った。


「んー、ローナさん達でも分からないかー。まー、ルゴウだしって事でいいかなー」


「それで良いのか?私は気になるのだが·····」


「まぁ、今は考えても無駄かもしれないわねぇ。それよりもそろそろ決着が着きそうよ」


 マリアがそう言うと確かに着きそうであった。やはりローナの『深紅之羽衣』には歯が立たずルゴウが徐々に劣勢になってきてローナが遊び始めている。ローナの奴·····まだ終わらせたくないからルゴウに稽古がてら、態と打ち込ませたり受け止められるギリギリを攻めている。まぁ、楽しそうなのは良いがやられている本人は可哀想と言うか必死なのだが。


 しかしルゴウもよくあそこまでローナの『深紅之羽衣』の能力を引き出せたものだ。最初の赤色から比べたら鮮やかな紅色になって少し澄み始めている。まだまだこんなものではないが凄い成果だ。本当にゴブリンであるのが惜しいと思ってしまうよ。


 決着が着くのにそんなに時間は掛からなかった。ルゴウの魔力が尽きそうになった時にレイナの攻撃に対応出来ず一撃をもらい、後方に吹き飛ばされていた。慌てて駆け寄ったレイナがルゴウの容態を確認して直ぐに携行していた魔法袋から手持ちの回復薬を使っていたのが見えた。私達も駆け寄ったが回復魔法の必要は無かったが一応マリアに頼んでやってもらった。リンがレイナをじっと見つめていたのが少し怖かったと付け足しておこう。

 まぁ、そうなったのもレイナの処置のせいだがな。まさか気絶して飲ませれないからと言って口移しをするなんてな。冒険者で応急処置でこの方法を使うがそこまでする必要は無かったと思うのだが予想以上に焦っていたらしい。


 その後はルゴウが起きる前にレイナから、この事は絶対にルゴウには言うなと顔を真っ赤にしていたので私達は黙っておくことにした。暫くこの事でイジれそうだしな。1人を除いてはだが·····


 その1人とはリンの事でレイナと何やら話し合った後、少しスッキリした表情になり逆にレイナは少しムスっとしていたが······まぁ2人の中で何かあるのだろう。面白そうだから今度ルゴウがいない時にレイナに聞いてみるか。


 ルゴウが起きた後は皆で冒険者ギルド内にある食事処の席で食事や酒を摂りつつ語り合っていた。まぁ、ルゴウがレイナと一緒に寝ているのは知ってはいたが、その話をルゴウが慌てて止めようとしたがレイナの盛大な自爆で想像以上の事になっていたことが分かったり、その事でリンがレイナを睨んだところユンがそれを煽ったり······と色々と楽しく面白く有意義な時間となった。


 ただ私は思うことがある。リンとレイナの話を聞いていると私も出会いが欲しいと思うのだよ。もういい年になってきてるし、このままじゃ婚期を逃しそうで······冒険者家業も悪くは無いのだけども家庭を持ちたいとも思ってしまうのだ。はぁ、良い男がいないものか·······

外野視点は今後暫く書く予定は無いと思いますが場合によっては書くかもしれません

その時は生温かい目で見守ってください

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