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ゴブリンから始まる物語  作者: となりの戸愚呂
62/124

61.釣られたった

遅くなり申し訳ありません。


注意喚起として、当たり前ですがお酒は20歳になってから飲みましょう。あくまで異世界での年齢の設定上の話です。


 冒険者ギルドで報告を済ませ、今日の成果を分配した後は解散となった。俺とレイナとリンは一度部屋に戻り身支度を整えてから再度冒険者ギルドで集合することになった。身支度と言っても装備を外し、濡れた布で身体を拭うだけである。·······一応言っておくがレイナと俺は同部屋だが、流石に一緒には着替えてたりはしていない。


 身支度を終えた俺とレイナは冒険者ギルドに向かうと既にリンが待っていた。


「あ、ルゴウ、レイナこっちこっちー」


 俺達が来た事に気づいたリンは笑顔で手を振っている。俺は軽く手を挙げてリンに近づいた。


「待ったか?」


「ううん、僕もさっき着いたばっかり。ねぇ、どこに行く?」


「そうだなぁ、あんまり店は知らないしな······レイナのオススメの所ってあるか?」


 レイナ達と飲み歩いてはいたが、何処が良いのか分からないからレイナに頼ることにした。レイナも少し考えるような素振りをしながら言った


「俺は飲めれば何処でも良いんだが····まぁ、無難に月の宴に行くか。あそこ飯も美味いしな」


「あ、あそこ行ったことある。確かにご飯美味しいもんね」


「なら決まりだな、んじゃ行くか」


 月の宴に行くことに決めた俺達は道中、依頼での動きなど振り返りながら、良いところ悪いところ話し合っていた。冒険者ギルドから少し離れた場所に在るのだが、思いの外その時間はあっという間に過ぎ目的地に到着した。

 店に入るとそんなに広くはないが賑わっている。酒を片手に談笑したり、出される料理を美味しそうに頬張ったり·····中には看板娘なのか忙しなく料理を運んできてくれる女性に目を向けたりしているのがちらほらと見受けられる。まぁ、同じ男だから分からんでもないが鼻の下明らかに伸びてるのはどうかと思うぞ。

 店に入ってきた俺達に気がついた先程の女性が近づいて来た。


「いらっしゃいま······せ····?」


 元気よく挨拶しようとしたが俺を視るなり動きと表情が固まったのがわかる。そしてどうしようという感情も察することが出来た。まぁ、うん。そうだよね。わかってる。

 レイナは全く気にした素振りもなく店員に聞いた。


「3人だが空いてるか?」


「え、ええっと·····は、はい。空いてますが····もしかしてそちらの·····方、も?」


 レイナは明らかに困惑している彼女に何を言ってるんだといった態度で言った。


「あぁ、コイツも入れて3人だ」


「だ、大丈夫····なんでしょうか?ゴブリン、ですよね?」


「大丈夫だ。コイツはそこら辺のヤツとは違うぞ」


「は、はぁ。とりあえず一応店長に聞いてはみますのでお待ちください」


 店員はそう言うと裏に下がり店長に話しに行った。レイナは気にした様子は無いがリンが若干不満そうである。


「むー、ルゴウは悪いことしてないのに·····ダメってことはないよね?」


「まぁ、あれが普通の反応だよ。俺は慣れてきたけどな」


「僕は納得できないよー。レイナもそうでしょ?」


「最初はそうは思ったが、俺も慣れた。それに今のところ入店拒否されたこと無いしな」


 そうレイナが言った時、先程の女性がこちに小走りで向かってきた。


「お、お待たせしましたー。大丈夫でしたのでご案内します」


「な、だろ」


「うーん、良かったんだけど·····腑に落ちない」


 そういって俺達は店員に席を案内され着くことになった。俺が椅子に座る前に店員は俺に手招きをしていたので近づくと耳元に顔を寄せながら小声で言ってきた。


「お願いなのですが問題が起きないようにしてくださいね。特にレイナさんが」


「はいはい、分かってますよ」


 俺は軽く溜め息を吐きながら答えると顔を話し「ご注文が決まりましたらお呼びください」と言い残して別の卓へと向かっていった。

 何故溜め息を吐いたかって?そりゃ毎回違う酒場でも言われているからである。ホントによく出禁にならないで済んでいるんだろうか不思議である。


 リンは俺と店員の話が気になったのか聞いてきた。


「ねぇ、何話してたの?」


「レイナのお守りしてくださいねってこと」


「?」


 リンは意味が分からないっという感じで首をかしげている。当の言われている本人は気にした様子は無く、何を頼むか悩んでいる様子である。


 注文を決め、俺とレイナはエールをリンは果実水、ツマミに適当な肉料理とサラダを頼んだ。リンがお酒を頼まなかったのは一般的に成人として認められるのが15歳からなのだが、リンは14歳でお酒はお預けである。本人は飲みたがっていたが成人になるまでお預けなと言って宥めた。········え、俺は良いのかって?ゴブリンに成人とかあるか分からないし、人とは成長スピードが違うと思う。現に······いや下世話な事だから割愛しておくので察して下さい。


「んじゃ、乾杯!」


「「乾杯!」」


 先に飲み物が届いたので飲み始めることにした。それぞれが手にコップを持ち、レイナの言葉と共に互いにコップをぶつけ合い一口飲んだ。


「カーっ!やっぱ身体動かしてからの一杯は美味いな!あ、ねぇちゃんもう一杯」


 そう言うとコップをテーブルにダンっと音を発てて置いた。·······やっぱりイッキ飲みしやがったよ。リンはレイナの飲みっぷりに感心してる様である。


「ねぇ、レイナ。そんなにエールって美味しいの?」


 リンがそう聞くと2杯目が届いたレイナは手にエールを持ちつつ、笑顔で言った。


「あぁ、うまいぞー。土地によっては味も変わるから楽しみになるもんだ。リンも飲めるようになれば分かるさ」


「へー、気になるなぁ」


「なぁにもう少しの我慢だ。飲めるようになったら連れていってやるよ」


「本当に!楽しみにしてるね!」


「そんときはルゴウも行くんだからな」


「はいはい」


 レイナに連れていってもらえる約束をしたリン楽しみそうな笑顔で言った。それにしても仲良くなったなぁ。リンも敬語が無くなってるし·····何が2人の中にあったんだ?

 俺のふとした疑問を他所に2人の会話は弾んでいた。




···················

··························

································


 酒も進み酔いが回り始めた頃、リンが何かを思い出したのか俺に聞いてきた。


「そういえばルゴウ。あのダンジョンって何処まで続いているかわかる?」


「ダンジョン?」


「あぁ、あのダンジョンか。5階層まで行ったんだが先がまだまだ有りそうな感じだったなぁ」


「へぇ、そうなんだ。魔物もあんまり変わらない感じなの?」


「そうだなぁ、スケルトンやグール、犬型のスケルトン、ホブゴブリンが出てきたな。5階層は牛型の巨人みたいなヤツがいたぞ」


 俺のその言葉に驚いたのか2人は目を見開いていた。何か可笑しいこと言ったかなぁ。するとレイナがまさかというように聞いてきた。


「なぁ、ルゴウ。そいつってこう人の2倍位の大きさで顔は牛、手には大きな斧を持ってなかったか?」


「あぁ、そうだが·····レイナは知っているのか?」


「あぁ、知ってる。ちなみにだがそれを1人で殺ったのか?進化の度合いは?」


 レイナの質問の意図が分からない。何故に段々険しくなってるんだ?


「そうだが····基本的に1人で潜ってるからな。確かそんときはゴブリンファイターだったかな。········可笑しいことなのか?」


 すると先程までの酔いが無かったかのように神妙そうにレイナは言った。


「だいぶな。ソイツはミノタウロスって言ってゴブリンファイターごときじゃ勝てないくらいだ。銅級のパーティーがやっとの魔物だ。それを1人でってなると余裕なのは金級か腕に自信のある銀級位だ」


「そ、そうだったのか」


 ·········無知ってマジで恐いな。道理で仙術使っても刃が通らない訳だ。それに下手したら死んでいたな。今後気をつけ·····れはしないな。強くならなければ殺される危険性が上がっていくしな。いつ魔物として討伐対象になるか分からないしな。


「·······なぁ、ルゴウ」


「何だ、レイナ?」


 何故だろう、イヤな予感がする。神妙そうな顔をしていたレイナは何か閃きその事で凄くワクワクした様に言った。


「明日、俺と勝負しないか!」


「だが断る」


 やっぱりロクなことじゃ無かった。嫌だよ、レイナ普通に強いし。前に間違って斬りかかって来たときあれで本気じゃ無かったんでしょ。本気出したら勝負にならなさそうだし。まぁ、自分の実力を試すにはいいんだけどさ。

 俺の一言に唇を尖らせて不満さを出しながら言った。


「何でだよー、良いじゃねぇか減るもんじゃないし」


「あんときのレイナは本気じゃ無かったんだろう?だったら剣だけでは勝負にならないだろう。魔法有っても厳しそうな気がするけど」


「大丈夫だって。ミノタウロスを倒したんだろう?それに土蜘蛛の頭も倒したじゃねぇか。いい勝負になるって。そうだ、もし俺に勝てたら何でも1つ言うこと聞いてやるよ」


「え、ナンデモ?」


「あぁ、もちろん。ただ出来る事だけにすれよ。あ、俺が勝ったらお前もだからな」


 何でもかぁ·····やっても良いかもな。うん、実力を試すにも良いしやろう。や、やましい気持ちは····ナイゾー。負けたとしてもレイナの事だから無茶は言わんだろう。


「うーん、それならやっても良いかな」


「よっしゃ、決まりだな。楽しみだなぁ」


 俺の了承に気分を良くしたレイナはワクワクしながらエールを呷っていく。すると視界の端からジト目で此方を見てくるリンの姿があった。そしてボソっと一言呟いた。


「······ルゴウのえっち」


 ぐっ、その言葉が胸に鋭く刺さってくる。俺はその目線から逃れるようと目を反らし手元のエールを呷っていく。


 暫く見つめてきたリンは俺の近ずき、耳元に顔を寄せレイナ聞こえないようにボソッっと小声で言った。


「僕ならそんなことしなくても何でもしてあげるよ」


「!?」


 俺はその言葉に驚き飲んでいたエールを噴き出しそうになった。リンは悪戯が成功したみたいに、にししと笑っている。


「冗談でそんなこと言っちゃダメだぞ」


「大丈夫、ルゴウ以外には言わないから。それよりもレイナと知り合った経緯教えてよ」


「はぁ、全く····了解。レイナ達と会ったのはなーーー」


 リンの冗談を深く考えない様にしてレイナ達との経緯を話し始めた。レイナもあの時の状況をレイナ達視点から話していたので会話が弾んでいった。

 今日も騒がしく愉しい時間が流れるのを感じながら夜が更けていった。


善行 6/108


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