60.想うところ
少し遅れましたが、なんとか書けました
「誰だ?」「どちら様ですか?」
皆の元に戻った俺に対しての第一声がこれである。俺は説明してないのかよとレイナを見たら、「あー、言うの忘れてたわぁ」と惚けた様に言った。絶対に態とだ。ユーリとレヴィアで味をしめたヤツだ。
だがローナは何かに気づいたらしく恐る恐るといった様に口にした。
「ま、まさか····ルゴウ···なのか?」
「え?」
ローナの言葉に驚いたのかマリアは再度俺の方を見てきた。マリアも何かに気づいたらしいが驚いた様子である。
レイナはニヤニヤしながら2人に意地悪そうに言った。
「ルゴウはゴブリンだろう?なんでそう思ったんだ?」
レイナがそう言うと2人はふっと真顔に戻り指差して言った。
「いつもルゴウが付けてる赤い布、腰に剣が2本に背中に大剣。こんな変な装備はルゴウ以外見たことがない」
「それにもっともの決め手はリンちゃんが彼にベッタリくっついているもの。これで分からなかったらよっぽどの間抜けよ」
「な!?」
レイナにとってはもう少しこのネタで弄りたかった様だが見事に言い当てられショックを受けているようだ。当ててもらえるのは嬉しいんだが、変な装備って······薄々は分かっていたけども言わないでほしかった。冒険者ギルドでも似たような装備してる人はいなかったしな········
俺が少し気落ちしているのを横に話は続いていく。
「仙術の変身か·····噂で聞いただけだが実際に見るとな。しかし、ルゴウが人の姿をするとこうも違うとはな······意外だ」
「そうねぇ、顔は悪く無いわねぇ。因みにこれはレイナの趣味なのかしら?」
「ば、ばか、ちげぇよ!!俺の趣味じゃねぇよ」
マリアの言ったことに対して顔を真っ赤にしながらレイナは否定した。マリアは本当に?っと疑った様な目線を俺に向けて来たので少し照れるが説明することにした。
「これは俺の勝手な想像で作った姿だ。母さんの容姿に似立てて男性風に直したものなんだ」
「母親······か」
ローナはそう呟くと顎の下に手を添えながら少し考え込んだ後、探る様に聞いてきた。
「もし、もしもだルゴウ。もう一度母親に会えるとしたら会いたいか?」
ローナが何故そんな質問をしたのかが分からない。会いたいか?会いたいに決まっている。体調は大丈夫なのかとか元気なのかとか心配だし顔だって見たい。だが、その反面思うこともある。俺と会っても問題ないのか、と。折角忘れてかけていたあの時の事を思い出すのでは無いかと不安になってしまう。
いや、違うな。ハッキリ言うと会って拒絶されるのが怖い。ただそれだけだ。なら言うことは決まっている。
「俺は·······」
言葉の続きが出ない。まるで自分では言いたくないような、言ってしまったら駄目なような気がしてきてしまう。だから俺は······
「いや、まだ会わないでおこうと思う。いずれは会いたいが、な」
濁して言った。本心はあれど曖昧でどっち付かずな言葉である。リンとレイナに元気付けられていても怖いものは怖い。これが今の俺の精一杯である。
「そうか·····悪いな。忘れてくれ。気になったから聞いただけだ」
ローナは俺の言葉に思うことは有りそうだがこれ以上聞かないでくれた。そして、話を変えるべく今後の行動を言った。
「さて、この後の事なんだが、まずは保護した彼女たちを街まで届ける。帰るまでの陣形は少し替えてレイナとルゴウを前衛にする。後衛かつ彼女たちの護衛に私とマリア、リンで当たる。道中危険は少ないと思うが気を抜かないように。いいな」
「おう」「了解」「わかったわ」「わかりました」
それぞれ返事をし、保護した女性達を連れゴブリンの巣を後にした。道中、警戒はするが特に何事も無く街まで着くことが出来た。
··············が、ここで問題が発生した。
「身分証がないのか?何処から来たんだ?」
「えーと、何処と言われても·····」
「だから、コイツはルゴウだって言ってるだろう」
「いえ、しかし······どう見てもゴブリンじゃないですよね。いくら『紅の戦乙女』知り合いだと言っても何者か分からなくては入れれないんですよ」
「だー、もうめんどくせーな」
そういって頭をガシガシと掻きだすレイナ。頼りのローナ達は保護した女性達の引き渡しのため別な場所にいる。
·······ってか、彼女達がいないんならもういいんじゃないか?
そう思い俺はレイナに話し掛けた。
「なぁ」
「ん?なんだ、なんか思いついたか?」
レイナは頭を掻くのを止めて俺に向き直った。
「保護した女性達がいないんならもうこの姿じゃなくてもいいんじゃないか?」
するとレイナはその手があったかと驚いていた。いや、驚くような事じゃないだろ。
「そうだな、解いても問題ないな。やれ、お前の真の姿をこの頭の固い奴らに見せ付けてやれ」
いやいや、真の姿って·····合ってはいるがそんな仰々しいものじゃないぞ。
門番達は何を言ってるんだコイツらって顔をしながら見てくるのを横目に俺は変身を解いた。
俺の姿を見た門番達はいきなり人からゴブリンに変わった事に目が点となり、顎が外れんばかりに口を開いていた。そしてレイナのドヤ顔が隣にある。
「さ、これで問題ないだろ。ルゴウなんだから通してくれよ」
「「············」」
返事がない。ただの······じゃないな。驚き過ぎて耳に入ってないようだ。
「おーい、聞いてんのか?」
「······ハッ!?いきなりの事で意識が飛んでいった。確かにルゴウだな」
「あ、あぁ。問題は無い·····が、ルゴウ。出来れば街中ではそのままで居てくれ。他にも変身できるとしたら警備上面倒な事になるからな」
「わかった。気をつけるよ」
俺は門番の忠告を素直に頷き、通してくれた礼を言って街中に入った。その間レイナの顔は終始ニヤニヤしていた。
街中に入ってある程度時間が経った頃、ローナ達と合流した。
「元に戻ったんだな」
「あぁ、人の姿じゃ通してもらえそうに無かったからな。そっちはどうだった?」
俺の言葉に少し暗い表情をしたローナが言った。
「彼女達の身元は分かった。リンと同じく駆け出しの冒険者だったらしい。行方不明になってからまだ一週間は経っていないそうだ。今は療養施設に入ってもらっている」
「そうか····」
一週間か·····長いな。その間ずっと弄ばれていたんだ。やるせないな。
俺もなんとも言えない気持ちになりそうなところでレイナが声を上げた。
「湿っぽいものは無しだ。冒険者になったらこうなることも出てくるし死ぬこともある。それを覚悟して俺達はやってるんだ。ルゴウお前の責任じゃねぇんだからそこまでにしときな」
「あぁ、そう、だな」
完全には切り替えはできないがレイナの言っている事はわかる。慣れていくしかないだろう。レイナも察したのか軽く溜め息をこぼし言ってきた。
「それになルゴウ。その分お前がやって来た事のように助けていけば良いんだ。だからウダウダ考えて無いでさっさとやることやったら飲もうぜ」
「そうだな、そうするか」
「ようし、そうと決まればちっちゃと行こうぜ」
レイナの明るい言葉で先程までの暗い雰囲気は自然と失くなり、俺達は冒険者ギルドに向かって歩き始めた。他愛の無い会話をしながら今の時間を噛み締めるように·······
「レイナ、僕も一緒に参加してもいい?」
「·······良いけど変なことすんなよ」
「しないよー。レイナこそ酔ってるときにしないでね」
「す、するわけ無いだろう!?」
「ホントに?」
「べ、別にそんな仲じゃねぇし······俺は·····」
「これはこれは」
「面白そうですが、明日にでも聞きましょうか?」
「そうだな」
········他愛の無い会話だよな、これ。
善行 6/108
何とか時間を見つけて妄想しつつ書き進めていきたいと思います




