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ゴブリンから始まる物語  作者: となりの戸愚呂
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58.嫌な思い出と現実 2

人によってはちょっと胸クソ感が有りますので注意です


 巣穴の中はほの暗く、懐かしくもあり嫌なあの臭いが漂っていた。そして聞こえるのは嬌声と悲鳴、嗚咽、そしてそれを楽しむ嫌な鳴き声······胸糞悪い。自然と持っている剣に力が篭る。

 すると俺の様子に見かねたレイナが小声で言った。


「落ち着けルゴウ、行くときは皆一緒だ。だが役割は忘れるなよ」


 俺はレイナの声に圧し殺そうとはしてるが僅かに怒りを感じられ、少し冷静になれた。この感情を持っているのは俺だけじゃないと安心できたからだ。俺は軽く深呼吸をして気持ちを少し落ち着かせ礼を言った。


「······ふぅ、すまない。大丈夫だ忘れてはいない。存分に暴れてこい。背中と後ろは任せろ」


 俺はそう言ってレイナに親指を上に立ると同じ様にレイナも返してきた。


「おうよ」


 一瞬だけ良い笑顔を見せてくれたが直ぐに真剣な表情に戻りローナにアイコンタクトを送った。ローナは頷いき前を向いた。そして出ていく合図は無かったが2人同時に駆け出した。

 俺は何となくだがレイナの動作を見てたら今かなと思った時に駆け出したので少し遅れてしまった。だが問題無い範囲で付いて行けている筈だ。


 先の方ではもうレイナ達が切り込んでいて既に2体始末している。俺は周囲を警戒しつつ前衛の2人の動きに合わせて魔法で支援し、後方に来そうになるゴブリンを切り伏せていった。


「おらおら、どうした。もっとかかってこいや!」


「レイナ、あまり突っ走らない様に」


「わかってるって、やり易いんだからしょうがねぇじゃねぇか」


「まぁ、何時もよりは楽だけどね」


 堅実に攻めるローナに対して、豪快な攻めのレイナ。どちらも絵になる様な戦いぶりだ。想わず見とれそうになるが集中して遊撃の役割を果たしていく。リンも後方からロックシュートを使い、牽制したりダメージを与えてくれている。


 掃討するのに対して時間は掛からなかった。途中、他のゴブリンと比べて少し大きなゴブリンも出てきたがレイナ達に直ぐに始末されたし、大きな怪我等もなく終えた。だが終わってしまうと悲惨な現状が嫌でも目に写る。

 ゴブリンの死骸とは別に、散々弄ばれ殺された形跡のある男の死体、涙を流し虚ろな眼をした裸の女性、先程まで弄ばれ汚されてた女性、体のあちこちに痣があり汚されていた女性がいた。


 正直に見ていられない。あの時を思い出す。いや、あの時と違って出来ることは増えてる筈だ。だけど俺は彼女達に近づいては駄目だろう。ゴブリンなのだから···

 俺は生き残っている彼女達にせめてもと思いに体を綺麗にしてあげるため水の魔法を使うことにした。

 マリアは彼女達に近づき大きな怪我等が無いか確認し、回復魔法を使い治していっている。

 俺の出来ることが終わったのでレイナに言って残党がいないか確認をしに行く事を伝えた。レイナも一緒に行くと言ってくれたが断り、残って警戒してもらうようにした。その時のレイナの表情は······憶えていないが俺を気遣ってくれていたと思う。


 巣穴の奥の方に来てみたが対して広くはなかった。直ぐに行き止まりとなり、障害物等で身を隠せられるような場所もない。静かである。聞こえるのは少し離れているレイナ達の声だけだ。


 ········はぁ、頭では理解しているがどうも巣穴に入ってから冷静じゃない。戦闘に支障をきたす程では無いが気持ちが落ち着かない。理由はわかっている。母さんが居た時を思い出すからである。漂うあの獣と独特で噎せ返りそうな臭い、女性達の声とゴブリンの鳴き声。そして怯える母さんの顔が脳裏から離れない。嫌な思い出であり掛け替えのない思い出でもある。


 過去を引き摺り過ぎるのもよくはないが、何処かで折り合いを着けなければいけない。だが、所詮俺はゴブリンであり彼女達とこのまま行動をして良いのかとも疑念に思い始めている。


 そう考え始めた時に後ろから心配そうな声が俺に掛かった。


「ルゴウ大丈夫?ここに入ってから元気なさそうだけど」


 振り向くとリンが悲しそうな顔で俺を見ていた。俺はリンが何故そんな表情をしているかわからず、出来るだけ心配させないよう精一杯の笑顔を作り言った。


「ああ、大丈夫だ。俺は元気だぞ。ところでリンはーーーー」


「嘘だよ!なんか無理してそうだもん。今だって辛そうもん」


「っ!?い、いやいや、大丈夫だって本当に」


 俺がそう言ってもリンは納得していないのか尚も悲しそうな顔をしながらこちらを向け、俺に近づいてきた。俺は先程の自分に対しての疑念のためか僅かに後ろに下がってしまった。

 俺のその行動にリンは一瞬目を見開き、そして俯き拳を握りしめて震えていた。あぁ、やってしまった。後ろめたさから咄嗟に距離を取ろうとしてしまった。慕っていただけに傷つけてしまったかもしれない。その時そう思った。


 だがリンは意を決したのか顔を上げ、俺に向かって駆け出し抱きついてきた。その目元に涙を滲ませながらである。俺はリンの行動の意味がわからず目を白黒させているとリンは話しかけてきた。


「大丈夫、だよ。ルゴウはルゴウ、だよ。他のゴブリンとは違うから。·····だから、だから気にしないで。僕から離れないで!」


 そう言って抱きしめてくる力が強くなった。だが、それでも·····


「いやでも、俺はゴブリンでアイツらとおなーーー」


「全然、違うよ!······だって、だってこんなに優しいのに。守って、くれてるのに。僕は·····僕は····」


 次第に声は小さくなり、涙は頬を伝い流れていた。何故彼女は泣いているのだろう?だけど何故だかわからないが、何となく気持ちが軽くなった気がする。そして気づけば俺は自然とリンの頭を撫でていた。リンは嫌がりもせず俺の胸に顔を埋めて泣いていた。


 リンが落ち着くまでそんなに時間は掛からなかった。俺の胸の中から顔を上げ、少しだけ腫らした目で俺を見つめ話し掛けてきた。


「ねぇ、ルゴウは何処にも行かない?黙って僕の前から居なくならない?」


 そんな顔で言われたらこう返すしかないだろ。いや、違うな。自然とそう思えたのだから素直に気持ちを伝えよう。


「ああ、リン達の前から居なくならないよ」


「うん!······でも、僕が欲しかったのはそうじゃないんだけどねー」


 そういってリンは頬を膨らませながら抗議の目線を送ってきた。

 ······いやぁ、言わんとする事はわかるけど、わかるけどさ。俺もそこまで鈍感ではないと思うし何となく察してるけど····一応、友達としてって事で良いんだよね。それ以上の事は含んでないよね。そう考えておくよ。

 そう俺は視線を空中にさ迷わせながらリンから視線をやり過ごし、とりあえず気を別に向けようとして再度頭を撫でた。


「むー、ルゴウの意地悪。でも今回はこれくらいにしておいてあげる」


「はいはい、ありがとな」


 そう言って気持ち良さそうな顔していた。そしてリンはふと呟く様に話し掛けてきた。


「ルゴウは何も悪くないよ。辛い時があったかもしれないど気を病まなくていいよ。その分救ってくれたんだから、ね」


「そう、だな。わかったよ。ありがとう」


 ······何て言うか、不思議な子だな。さっきまでの俺の心境が嘘みたいに晴れていくみたいだ······ところで救った?いつだ?何をだ?


「ところでリン。俺はいつ何を救ったんだ?」


 俺がそう言うとキョトンとして、首を傾げながら言った。


「僕が危ない所を助けてくれたし·····」


 あぁ、その事かーーー


「後はケビンさんに回復薬を渡しての妹の病気治したり、野盗に襲われている親子を助けたり、商人達を困らせていた野盗を倒したり、最近だったら悪い人達から女の人助けた事」


 んー、ちょっと待とうか。まず野盗はわかる。後は少し驚きだけどケビンって妹いたんだ。ってかあの回復薬が役に立てて良かったよ。問題は最後だ。それ昨日の事だよな、なんで知ってるの?


「······あ、あのぉところでリンさん。何で女の人助けたって事、昨日の話なのに知ってるの?」


 俺が何やら怖いものを感じながら恐る恐る聞くのに対しての何でもないかの様にリンは言った。


「ん?エミリアからたまたま聞いただけだよ。僕がルゴウの事の知ってるからお礼をしたいって言ってたよ」


「し、知り合いだったのね」


「うん、エミリアは友達だよ·····あ、ケビンさんの妹でもあるよ」


「そうだったんだー、ってあの人がケビンの妹だったの!?」


「そうだよ、だから助けてくれてありがとう」


 偶然ってあるものだなぁ、ってか世間が狭いな。街は大きい方だと思うけどアリスの親子といい他の知ってる人とよく会うな。

 俺がふとそんな事を思い耽っていると下から何かが聞こえた気がした。


「·····ルゴウは格好いいからわかるけど、僕が1番好きなんだから」


「えっ、何か言ったか?」


 小声でボソッと言っていたから聞こえなかった。今何て言った?

 俺が聞くとリンはハッと顔をして、次第に顔を赤らめて少し震えながら顔を俺の胸に埋めた。········いやぁ、可愛いんだが?何この小動物みたいなの。でもさっき言っていたの凄く気になるんだが。


「な、なぁリン。本当に何て言ったんだ?教えてくれ」


「·············もん」


「ん?」


「·······秘密だもん」


「えー」


 ホントに気になるんだが······まぁ言わないなら聞くのは止めておこう。俺はこの話は終わりにしようと考え話を切り替える事にした。


「さてと、ここに長く居すぎたから皆の所に帰るか。心配してるかもしれないしな」


「うん、そうだね」


 ·························うん、なら離れようか。何で抱きついたまま離れないんかなぁ。しかも力強めてない?


「あ、あのー、リンさん?離れてくれないと移動出来ないんだけど·····」


「あ、あともう少し!もう少ししたら離れるから、ね。お願い!」


「えー」


「えへへー」


 俺はなんだこの状況はと思い溜め息を吐きつつも、励ましてくれたお礼も兼ねて頭を撫でつつ好きにさせる事にした。リンも嬉しそうであるからいいか。


善行 5/108

次話は書いていますが、もしかしたら仕事で遅れるかもしれないです

ですが頑張ります

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