57.嫌な思い出と現実 1
依頼に載っていたゴブリンの巣は俺達がいた場所から離れた所にある。基本的なゴブリンは自分達の縄張りに罠を設置しない。いや、正確には知能が足りていない。リーダー的存在が居れば仲間を指揮して罠を仕掛ける時がある。更に強い個体が集まればより狡猾に厭らしく罠を仕掛けたり誘導もする、らしい。
らしいと言うのは、全てローナから教えてもらった事であるからで俺はそれを聞いただけである。産まれた後も他のゴブリンとは関わらなかった····というか関わりを持とうとしなかったし、何より母さんを優先にしてたからな。······今頃母さんは何をしているんだろう?ちゃんと元の生活に戻れているんだろうか?俺は·····って話を戻そうか。
俺達は今、ローナとレイナを先頭に俺、リン、マリアの順で巣に向かって森の中を歩いている。今のところ罠らしいものは見つかってはいない。
前方を歩いているローナが何かに気づいたのか右手を上げ一旦停止のサインを出した。
「この先もう少し行けば、ゴブリンの巣がある筈だ。警戒は変わらずしておけ。私とレイナで前を担当するから後方にリンとマリア。遊撃はルゴウでいく。被害者が出ている可能性があるとの情報も出ているので見つけ次第確保するように」
「あいよー」「わかった」「わ、わかりました!」「りょーかい」
ローナの指示に俺達は頷いた。しかし被害者···か。やだねぇ、出来ればいない方がいい。母さん達みたいな人達は少ない方が良いに決まってる。まぁそれは俺の願望であって現実はそうはいかないのだろうが。
俺がそう考えているとリンが俺を気にしてか心配そうに言ってきた。
「ルゴウ大丈夫?」
「あ、ああ。大丈夫だ。ちょっと考え事してただけだ」
「うーん、あ!そういうときはぁ·····どーん!!」
俺の返答に何やら考えた後、何かを閃いたと思ったら俺に近づいてきて腕に抱きついてきた。
「········リンさん、何やってんの?」
「えへへー、元気出るかなぁって·····どう?」
どうって、鎧を着けているから残念ながら小ぶりな胸の感触が無いのが残念····じゃなくてそもそも落ち込んでは······まぁ、いたな。よくまぁ気づいたものだわ。それにその笑顔を見てたら元気づけられない訳ないじゃないか。
「まぁ元気づけてくれてるのはわかる。ありがとう。ただ女の子なんだから男の子に無闇に抱きつかないようにな」
「はーい。でも抱きつく相手は決めてるよ。ユンとルゴウだけだから」
「何故に!?どういうこと!?」
「えへへー、内緒だもん」
そう言うとリンはよりいっそう強く腕に抱きついて離れようとしなかった。
んー、どういう事なのかなぁ?何かリンに好かれるような事したっけか?仲の良い友人としてで良いんだよね。まぁゴブリンだしそうだよな。
そう考えていると何か視線を······ってうおっ!めちゃくちゃレイナが睨んできてやがる。あ、あれか緊張感ないだろうお前ら的なヤツか?それで睨んできてたのか。
そんなことを考えていたらレイナは視線に気づいたのかまたそっぽ向いた。今日はやけに機嫌悪いなぁ。
俺が訳がわからず頭を掻いている一方、マリアとローナはニヤニヤしながらこの光景を楽しんでいるのであった。
···············
······················
································
漸く目的地の近くに着いた俺達は物陰からゴブリン達の動向を見ながら機会を窺っていた。狩猟を終えて戻っていく3体、見張りとして立っているのが1体か。普通に突っ込んでも良いんだろうか?いけなくは無さそうだが·····
俺がそう考えているとローナが大まかな指針を提示してくれた。
「今回のゴブリンの巣では見張りが立っていると言うことは上位種がいる可能性がある。今のところ罠は無いから危険度は低いと思われる·····が気は抜かないように。陣形は今のままで行くとして奴らを出来るだけ油断させたい、が弓は無いしな。リンは気づかれずあのゴブリンを一撃で倒す事はできるか?」
そう言うとリンは困った表情で頬を指で掻きつつ言った。
「えっと、ごめんなさい。一撃じゃ厳しいと思います。僕は火系統の魔法が得意で音は結構出る方です。土系統魔法は練習中で出来なくは無いけど一撃では無理です」
「いや、気に病むような事じゃない。駆け出しの冒険者なら仕方の無いことだ。······となると一気に突っ込むしかないか」
そうローナが言うとレイナは何かを閃いたのか急にドヤ顔で言い出した。
「俺は突っ込むのに賛成だ。その方が気持ちがいい······が弓が無くてもルゴウなら解決するぞ」
レイナの言葉に意味がわからないといった様子のローナに対して、レイナといったらまるで自分の手柄の様に胸を張っている。······いやぁ、ね。アホな子みたいで大変可愛いんだが理由を言えよ。
「どういうことだ?」
いや、俺に聞かれても困るんだが何故に俺なんだ?レイナが知ってて弓の代わりに俺って······あ。
「あー、レイナひょっとしてアレのことか?」
「そうそう、アレならサクッと出来るだろう?」
「確かに時間も掛からないし問題無いな」
俺とレイナが2人で納得しているとローナが訳がわからんといった様子で言ってきた。
「2人で納得してもらっては困るんだが····説明してくれ」
そういえば今まで詳しく言ってなかったなと思い出し、ローナ達に説明することにした。
「俺が魔法使えるのは知っているよな」
「あぁ、知っているとも。種類が豊富だって事も。だから前衛と後衛どちらも支援出来るようにしてるんだ」
「で、本題のレイナが言っていたのはこれの事だ」
俺は手の平にいつも使っているロックシュートを作った。そしてそれをローナに渡した。
「なんだこれは?見た感じロックシュートだが形が変だぞ」
「ルゴウこれってあの時使ったやつ?」
「ああ、でも若干形状が違うなアレはこっちだな」
そういってもう1個螺旋状のヤツを作り手渡した。レイナ以外はしげしげといった様子で見ている。ってか何でレイナはまだドヤ顔してるんだ?
「こっちのヤツは貫通力を増してて殺傷能力を高くしてるんだ」
「へぇ、そうなんだ。ルゴウってやっぱり凄いね!」
リンの俺への評価が何でか高いな。ってか近いな。お陰で少し仰け反ってしまったぞ。
「ふむ、因みにだがルゴウ。魔法の腕前はどうなんだ?仕留められるか?」
ローナの疑問にふむと考え、今までの俺の技量を見直し素直に応えた。
「どれくらいと言われれば基準はわからないが、動かなければ確実に狙った場所に当てる自信はある。動いていたらその分当てやすい部分を狙って撃つ位だな」
「十分だな。よし、では見張りはルゴウに殺ってもらってから巣穴に侵入しよう。中に入ったら見つけ次第始末していこう」
「「「「了解」」」」
指針は決まったので俺は気配を消しつつ素早く移動し、螺旋状ではない通常のロックシュートを作りゴブリンの顔に狙いを着け準備は完了した。
ローナ達も準備が出来たみたいなので眠そうに欠伸をしているゴブリンに向け撃った。狙い通りに顔に当たり声を出させる事もなく始末できた。
「よし、行くぞ」
ローナのその号令と共に先程の布陣で巣穴に入っていった。
善行 5/108
書いたら文量が多かったので分割します
次話は来週のいつもの時間で投稿します




