53.醤油って無いと不便だ
唐揚げを持ってきたレイナの反応はこうである。
「お、揚げ物かぁ。ルゴウよく知ってんな。コイツはエールとよく合うんだよぉ。冷める前に飲もうぜ」
知ってたのねぇ。たまたまここら辺では売ってなかったんだなぁ。ちょっと驚かしてやろうかなぁって思ったけどなんか残念だ。
内心では少し落ち込みつつレイナから瓶に入ったエールを貰い乾杯し唐揚げを食べていった。かぁー、やっぱこれですわ。エールは温いけど唐揚げのコッテリした油を流し込むにはこれがいいな。レイナも美味そうに食っては飲んでいる。
「かぁー、やっぱ揚げ物にエールは美味いなぁ。それにしてもこの揚げ物、前に食ったものより美味いんだが何使ったんだ?」
「あぁ、たぶんニンニクじゃないか?これが有るのと無いのじゃ風味が変わるからな」
「へー、そうなのか·····塩と胡椒だけじゃないんだな」
「お、おう。それだけだと味気無さそうだな」
初めて食べた人からしたらそれが美味しいのかもしれないが俺からしたら微妙だと思う。
俺はレイナが前に食べたとされる揚げ物がそうだったのかと思い、何とも言えない気持ちになりつつ唐揚げを頬張った。うーん、やっぱり醤油どっかないかなぁ。少し物足りなく感じる。ダリルだったら知っているかな?今度聞いてみるかな。
「調味料の組み合わせによっては美味しくなるから色々試してみるかなぁ」
「お、良いのが出来たらご馳走してくれよ」
レイナは良い笑顔で返事を返し唐揚げを頬張ってるがふと疑問に思ったことがある。
「いいぞ····ところでレイナって料理出来るのか?」
「あ?·····んぐ。そりゃお前。出来るわけないだろ」
レイナはそれはもうドヤ顔で俺に言い放った。いや、自慢げに言わないでくれよ。
「あ、でも幾らなんでもマリアみたいに食えない物は作らないぞ。食えなくはないが美味しくはないだけだ」
え····、意外だ。このパーティーの中でマリアが特に出来ないなんて·····
「となるとローナ、ユーリ、レヴィアで作ってるのか?」
「そうそう、特にローナの飯が美味いんだ。世話焼きだし間違いなく良い嫁さんになるね」
「へー····ん?でもそしたらなんでローナに男が出来ないんだ?料理も出来て美人なのに」
俺がそう口に出すとレイナはバツが悪そうにエールをちびちび飲みながら応えた。
「あー、そのー、な。タイミングが悪いというか。良い感じになりそうな時に限って俺達が酒入ってるときなんだよ。だから、な。わかるだろう」
「あー、レイナとレヴィアのせいか」
「ちょ、それは言わないでくれよ」
レイナは肩を落としながら言っていたがローナが可哀想過ぎるだろ。この2人のせいで恋人が出来ないって。だから周りに距離置かれるんだよ。
俺は溜め息を吐きつつ、残り僅かになったエールをいっきに飲み干した。俺の溜め息を見たレイナは唇を尖らせながら新しいエールを渡してきた。
「気持ち良く酔ってたんだから仕方ないじゃないか。それにこれでも反省して出来るだけ暴れないようにはしてるんだぞ。ほら一緒に飲みに行ったときも暴れてないだろ?」
「俺は反省する前のレイナの事は知らんのだが····まぁ聞いてたほど暴れてはないな」
確かに暴力沙汰は発生したり周囲を巻き込んだりはしていない。代わりに何杯も飲まされるけどな。あんまり嫌ではないがな。
「だろ、俺だって反省はするさ。うちのメンバーもそろそろいい歳に成りつつあるしな」
この世界にも婚期があるのか、レイナを見た感じ20代前半かなとは思うんだが。
俺がじっとレイナを見てると考えてた事に気がついたのか再度唇を尖らせて言った。
「なんだよ、失礼な事考えてるな」
「そんなことはないぞ。年齢がいくつかなと予想してただけだ」
「やっぱり失礼な事だな。言っておくがまだ20はいってないぞ」
「まだってことは19か?」
俺がそう言うとレイナは黙ってしまった。どうやら当たりらしい。若干の気まずい空気が漂い始めたがレイナがエールを飲みつつボソッと呟いた。
「·····まだ行き遅れじゃないからな。25までに男作れば問題無いし」
「作れる自信は?」
「ある!」
自信満々に言う根拠は何なんだ。いや、まぁ色んなとこに目を瞑れば美人だし、可愛らしいところもあるから不可能ではないとは思う。
後は本人が何処まで本気か、だとは思うがこの様子だと考えてないわ。エール片手に唐揚げ頬張ってるし。暫くは男要らなさそうな感じがする。
「そういやルゴウ。訓練場で俺に詰め寄ってきた女って友人····か?」
ふと思い出したかのようにレイナが聞いてきた。
「リンの事か?そうだが····それがどうしたんだ?」
俺がそう答えるとレイナはふむと何かを考えて更に聞いてきた。
「いやさ、もしかしたらアイツお前に気があるんじゃないかと思ってよ」
「な、何を言ってるんだ。俺はゴブリンだぞ。そんなのあるわけないじゃないか」
そうだぞ、あるわけがないじゃないか。人がゴブリンに好意を寄せるなんて有り得るのか?
俺がそう否定するがレイナは納得してない感じで言った。
「だってよ、ありゃあどう見てもただの友人って感じではないだろう。明らかに嫉妬してたしさ。それにさお前って·····んー、いやなんでもない」
そういって何かを言うのをやめてエールを飲み始めた。いや、言い切ってよ。気になるじゃんか。
「なんだよ途中から歯切れ悪くなったけど、すごい気になるんだが·····」
俺がそう言うとレイナは暫く黙ってエールを飲んでいたがボソッと呟いた。
「······寝惚けてたかもしれないが、たまにお前なんだけどお前じゃない姿を見るんだよ。一瞬だけどな」
「はぁ?」
意味がわからん、何を言ってるんだコイツは?俺が訳がわからない顔をしているとレイナは顔を真っ赤にして言った。
「昨日と同じで今朝も目が覚めた時に見知らぬ男が同じベッドに居たんだよ。驚いた時にはお前だったんだが·····ってやっぱり言うんじゃなかった。俺のこと馬鹿にしてる顔してるし」
「·······いや、だってなぁ」
「だぁー、もうこの話は終わりだ!忘れろ!おらお前も飲め」
そういってレイナは気恥ずかしくなったのかそこでこの会話を打ち切り俺に酒を押しつけてきた。
俺は何とも煮え切らない気持ちで酒を受け取りこれ以上この話をしないで飲むのであった。
·······しかしどう言うことだ?まぁ本人も言ってた様に寝惚けてたんだろう。俺は人族になれるようにするのが目標だがそれを話した記憶もないし。リンに関しては冗談かと思うが······うーん、謎だ····
善行 5/108




