52.お酒が恋しくて
俺は考えていた。酒に合うツマミをどうするかだ。宿屋の女将さんに聞くと飯は用意出来るがツマミは無いとのこと。でも厨房は貸せるとの事で何にするか考え中である。
ここはガッツリとした肉を使ったものにするか。折角調味料も増えたことだし油もある。と言うわけで肉を買い出しに行った。
「いらっしゃ·····あぁレイナさんとこのゴブリンか。どうしたんだい?」
肉屋の店主は一瞬だが眉をひそめたが直ぐに思い出したのか俺に聞いてきた。
「レイナに頼まれて酒のツマミを作る為に材料の調達に着たんだ」
「はぁ、お前さんが作るのか·····え、作れるの?」
店主は俺が料理出来る事に驚いている様子である。俺はというと一瞬だがムッとしそうになったがゴブリンだし仕方ないと割り切り応えた。
「一応だが簡単なモノなら出来るぞ。あ、これで買えるだけ鳥のモモ肉とむね肉をくれ」
「ほー、そうなのか。まいど、鳥のモモとむねね。·····なんか勿体ないなぁ」
店主は俺からお金を受け取り注文の品を準備し始めた時にそう呟いた。俺は店主の言った意味が分からず尋ねることにした。
「ん?何がだ?」
「いやさ、お前さん腕っ節も強いだろ。飯も作れるし、それにあの2人に連れ回されても甲斐甲斐しく介抱してるじゃねぇか。ゴブリンにしとくのが勿体ないなぁって。むしろお前さんみたいのがレイナさんにはピッタリだって思ってよ」
「ッブ!?じょ、冗談ですよね」
何を言ってるのこの人。俺は幾らなんでも冗談だろうと思っていたが店主は笑ってはいなかった。
「いや、わりと真剣だ。お前さんが人間ならなぁ。レイナさんも幾分かマシ····落ち着くだろうなと。お待ちどうさん。あ、いっそのことゴブリンでも構わないから嫁にどうだ?いやむしろあの2人一緒にでもいいぞ」
「いやいや、それはここじゃ決めれる話じゃないし何より本人の意志が重要でしょ。ゴブリンが相手とか普通に嫌だろ」
むしろあんたに決定権無いだろ。何を言っているんだこのオヤジは。俺が言ったことに対して少し考え込んでいたが納得したように頷いてくれた。
「まぁ、確かにな。うちの娘がゴブリンなんぞ連れてきたら卒倒するわ。はいよ、モモとむねだ」
「だったら変な事言わないでくれよ。んじゃもう帰るよ」
「おう、また今度な」
俺は溜め息を吐きつつ商品を受け取り店主に別れを告げ、店主は笑顔で俺を見送るのであった。
宿に戻って着た俺は早速厨房の一部を借りてツマミを作ることに取り掛かった。酒にも合って肉といえば唐揚げでしょ。醤油が無いから塩唐揚げしか作れないのが残念。しょうがないか。
気を取り直して先ずは適度に切ったモモ肉とむね肉を器に入れる。そこに塩と胡椒、細かく切ったニンニク、お酒を少々入れて混ぜ合わせて、肉全体に絡まったら少し馴染ませておく。その間に窯の火を掛けてから少し底が深めのフライパンに油を入れて熱しておく。
準備に時間が掛かったので味も馴染んできたと思うので肉に片栗粉を付けて温まった油に投入する。·····あぁ久し振りに嗅ぐこの香ばしい匂い。そういや、酒屋のメニューには揚げ物無かった気がするが····まぁいいか。
良い感じの頃合いで木製のトングで返して両面をパリッと揚げて肉の周りに気泡が少なくなったやつは油から簀子を乗せた器に移し余分な油をきる。それを繰り返していくだけ。
途中、この美味そうな匂いに我慢出来なくなり摘まんでしまったが美味かった。久し振りの揚げ物は凄く美味かった。ここ重要。まぁ、宿の女将さんも匂いに釣られて一緒に摘まみ食いしたんだけどね。女将さんは途中から自分用にエール持ってきて飲みながら食ってたし。まぁ、仕事もほとんど無いだろうし良いの·····かな?あー、俺も早く飲みながら食いたい。
料理が完成し、後片づけを済ませて俺は足早にレイナの所に向かうのであった。
善行 5/108
ストックが心許なくなってきたので出来るだけ週一で投稿出来るようにしたいです




