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ゴブリンから始まる物語  作者: となりの戸愚呂
52/124

51.出会いたくは無かった


 俺は帰ってる道中に路地裏に続く道から不穏な声が微かに聞こえた。


「や···め········ぼく·······」


「うふ·······それ·······じゃな···」


 聞き取り難いがもうひとつの声は野太いような気がする。また悪漢が女性を襲いそうになってるんだろうか。

 昼前にもこの感じのやり取りが有ったがこの街の治安はどうなってるんだ?仕方ないか、聞こえてしまったんだ無視することも憚られるので行くしかないか。そう考えて俺は路地裏に続く道に入って行くことにした。


 路地裏を進んでいくと俺は"ソレ"を見た瞬間に本能が勝手に働いて物影に隠れた。

 何故にそんな行動をとったのかと言うと、見た目もあるかもしれないが"ソレ"は関わってはいけないモノだと判断できた。何故なら·····


「ホントにここでするんですか?誰か来ちゃうかも。それに····こ、心の準備が······」


「あらぁ、いいじゃないの。そ·れ·に·あなただって興味があるって言ったじゃない」


「で、でも·····緊張しちゃって····」


「"お姉さん"もこういうのは初めてだけど、楽しみましょう」


「は、はい·····」


 そう、その光景とは事を起こそうとしてるカップルがいるからである。·········カップルでいいんだよな。見た目が幼さが残ったと爽やか系の青年に対してゴリゴリの剥き出しの筋肉にツルリとした禿頭、仕草と言動に女性を併せ持った漢。

 ············やべぇ、数分前の自分に行くなって言いてぇ。別に同性愛を否定するつもりは無いんだけどこれは気まずいだろう。よ、よし。ここは静かに帰ろうか。そうしよう。

 そう考え俺は音を発てないように後退しようとした。


「あらぁ、そこのあなた。もう行っちゃうの?」


「!?」


「え?」


 き、気づかれてた。俺はその野太い声に思わず体を強張らせた。青年は漢の声で俺の方に顔を向け驚きの顔から次第に羞恥の顔していた。


「ってあらぁ。あなた噂のゴブリンさんじゃない」


「ど、ども。因みに噂って····」


 漢は俺に向き合い頬にてを当てて応えてくれた。


「ほらぁ、レイナちゃん逹が連れてきてギルドでもガストちゃんに勝ったって言うこととぉ。夜酒場に行ってはレイナちゃんとレヴィアちゃんを介抱してるって言うこと」


「な、なるほど」


 変な噂じゃ無くてよかったー。さっきから気にはなってるんだが聞くべき·····か?青年は男の後ろに隠れているし。俺が気になってる事を察したのか漢は言った。


「あらぁ、彼と私の関係が気になるのねぇ」


「え、い、いや···まぁ···大体は想像つくけど···」


「観ただけで分かっちゃったの?やだぁ、恥ずかしい」


 そう言って漢は恥ずかしそうに顔を隠し「きゃ」とかほざいている。正直段々とSAN値が削られてきた。俺が引いてる事にもお構いなしに漢は言った。


「そうなのよぉ。彼とは付き合っているの。彼ってば普段は可愛いらしいんだけど夜になると····」


「ちょ、ちょっとシュガーちゃん!」


「あら、私ったらもう。カイちゃんごめんなさい」


「いいよ、でもあまり言い回らないで。恥ずかしから」


「わかってるわよ。冗談よ、じょ·う·だ·ん」


 いやぁ、仲睦まじい事は良いことだね。人それぞれ愛の形は在るけども、俺はノーマルだからその世界はわからないなぁ。というか帰って良いかな?俺、邪魔じゃない。よし帰るか。


 俺は一刻も早くこの空間から逃げ出したいので2人がイチャつき始めたのを機に距離を少しずつ離していこうとした。


 だがシュガーと呼ばれる漢が俺の存在を思い出したのか話しかけてきた。


「そういえば、あなたは何でここに来たのかしら?やっぱり、興味在る?」


「いや、全くもってない」


 俺がきっぱりと告げると2人して残念そうな顔になる。シュガーはわかるが、カイ君?もかぁ。顔に似合わずそっちの道なんだね。


「あらぁ、残念。ゴブリンにしては体格も良いし十分素質もーーー」


「全力でお断りします!」


「わかったわよ、無理強いはしないわ」


「そうだね、シュガーちゃん諦めようか」


 またイチャつき始めそうだったので俺は咳払いをして本題に入ることにした。


「ん、んん!本題なんだが何で俺がここに来たのはまた路地裏で誰か襲われていると思ったから来ただけだ」


「あはは·····たまに勘違いされるんだよねぇ」


「そうなのよねぇ、何故かしら?それにしても······またってどういう事なの?」


 たまに勘違いされるんかい。シュガーに関しては自分の事だって考えないんだろうか。まぁ、今はどうでもいいから話を進めるか。


「朝方にもこういった路地裏で女性が男逹に襲われてたのを助けたんだ。んで今回もまたかって思って来たわけだが····邪魔してすまない」


「いいのよぉ。そういった事ならお姉さん許しちゃう。でも、その男逹は許せないわねぇ。私たち女の敵ね」


「いや、あんたは漢じゃ····」


「んもぉ、何を言ってるの。確かに身体は男でも心はいつも恋する乙女なの」


「さ、さいですか····」


 あー、これが漢女ってヤツかぁ。実際に接触してみるとキツいなぁ。常に女性らしい仕草をしているが筋肉がより強調されて俺のSAN値が更にガリガリと削れていく。

 でも隣の青年は気にした感じはない。むしろ魅とれている時が多々見受けられるし。


 俺はもうここに留まる理由も無いので早々に退散する事にした。


「これ以上は2人の邪魔しちゃ悪いから俺はもう行くよ」


「あらぁ、もう行っちゃうの?私達は気にしないわよ」


「そうだね。これも何かの縁だしもう少し話してもいいんじゃないかな。僕と彼女の話でも聞いて欲しいな」


 いや2人でイチャついてろよ。惚気話は聞いても良いんだが、今日は色々とお腹一杯だわ。


「いや、それはまた今度にしておく」


 俺がそう言うと2人は残念そうな顔をしていた。


「わかったわぁ。引き留めてごめんなさいね。レイナちゃんによろしく言っておいて」


「残念だよ、同志が増えるかなと想ったんだけど····」


 勘弁してくれ。そちらの道は踏み入れたいとは思わないよ。本物の女性の方が俺は好きだし。


 俺は2人に別れを告げると自然と足早にその場を退散してレイナのいる宿に向かっていた。あのシュガーの体を舐めるように見る感じがこうゾクッとくるんだよな。


 ようやく宿に着いた俺は部屋に戻ったがレイナからこんなことを言われてしまった。


「お、ルゴウ。やっと帰ってきたか。今日は店に行くの止めてサシで飲もうぜ。酒は有るからツマミよろしくな!」


 ······はいぃ!?


善行 5/108


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