49.テンプレ的な下衆
俺は『サラサの薬処』を目指し独りで街中を歩いていた。周りから目線は相変わらず······いや、若干違う。初めは驚きはする者もいたが何かに納得して通り過ぎる者、酒場とかで見知った人達からは軽い挨拶をもらったりしていた。俺は軽い挨拶を返しながら思う。順応早くないか君達?それとも俺だけかこんなに気にしてるのは。
そんな俺の気持ちを余所に街中はいつもの日常を送っている。俺は何とも言えない気持ちを抱えながら歩いていると路地裏になっている所から微かに声が聞こえた。
「や、止めてください。放してください」
「イヤなこった」
「こんなに可愛い娘は拝めないから楽しませて貰いましょうか」
あー、何?テンプレみたいなヤツ。いやこれが日常的なものなのか。治安は良さそうかなとは思ったけど気のせいだったのかなぁ。正直助ける義理も無いんだけど聞こえてしまったものは無視出来ないしなぁ。悩んだ結果、俺は溜め息と共に路地裏に入ってく事にした。
路地裏に入ると少しソバカスがあるが整った顔立ちの女性が3人組の男に両手を抑えられ、服も破かれ肌が露出させられていた。
俺はその光景を見たとき何とも云えない感情が沸き上がり、気づけば怒気を孕んだ声が出ていた。
「おい、そこで何をしてるんだ」
俺がそう言うと男たちはこちらに目を向け、女性は一瞬助けが来たと喜びの表情をしたが絶望に変わった。いや、まぁ気にしてないよ。それが普通だわ。悪漢に襲われそうになってるのにそこにゴブリンが登場だからね。
男たちは俺を見て最初は邪魔された事を不快に思った目線を送っていたが、今はニヤニヤしながら表情をしている。そして1人の男からこんな声があがった。
「なんだ?誰かと思ったが、弱っちぃゴブリンじゃないか」
そう言うと他の男からも声があがりはじめた。それはもう最低の笑顔と共にである。
「あ、良いこと思いついた。なぁ俺達で犯すのも面白くないしコイツにも手伝ってもらおうぜ。絶対面白いって」
「あぁ?まぁ面白そうではあるが俺は嫌だなぁ」
「まぁ、俺達で楽しんだ後にでもコイツを宛がえば良いんじゃないか?それにコイツの仕業にすりゃ俺達は責められない」
「確かにそうだな。頭良いな。よしそうと決まればコイツをまず拘束するか」
「「おうさ」」
俺が同意しないまま勝手に下衆な提案が採用され、男が2人剣を抜きながら寄ってくる。もう1人は女を拘束しながら胸を揉んで楽しんでいた。
「ヒヒっ安心しな、斬りはしないで平打ちで寝ててもらうだけだから」
「そうそう、起きたら良いこと待ってるぜー」
ニヤニヤ顔が腹立たしい、考えている事が他のゴブリンと同等·····いや以下かもしれない。再び怒りが沸き上がるが、こんなんでも殺してしまったら別の問題が生まれるかもしれない。レイナたちに迷惑は掛けられないからな。なら痛い目をみて後悔してもらうしかないか。
そう考えをまとめた俺はファルシオンを抜き、刃を反した。奴等は俺の行動に対して吹き出した。
「ハハハ、見ろよあのゴブリン。剣の持ち方も知らんらしい」
「いやー、流石ゴブリン。あったま悪いなー」
「んじゃ、お手本を見せてあげますかねっと」
俺を馬鹿にしながら1人が剣を振り上げながら突っ込んできた。ガストと比べると雲泥の差と言えないほどのお粗末なものである。剣に覚えがない俺でも判るくらい走っている間も何も考えず突っ込み、何処からでも好きな所に打ち込んで下さいと言わんばかりである。
俺はそんな甘い一撃を受け止める気持ちすら起きなかったので相手の間合いに合わせ一歩踏み込み思いっきり水平に横薙ぎを行った。
男は反応できず、また何が起こったかも分からず横の壁に打ちつけられ気を失った。それを見たもう1人の男は呆気に取られている。まるで何が起こったかもわからなかったように。
そんな隙だらけの状態を俺が黙って観ているわけもなく一気にもう1人の男に間合いを詰め寄り袈裟斬りを行った。
男は俺が目の前に来たときに漸く意識を戻して剣を振り上げようとするが、間に合わずもろに食らい後方に飛んでいった。
今の一連の動作を観ていたもう1人の男は女性の胸を楽しむことを忘れて呆然としていた。俺が最後の男に向かって歩き出すと意識を取り戻し慌てた風に言った。
「ま、待ってくれ。な、なぁコイツやるから見逃してくれよ。あ、わかった俺達と組もうぜ。その方があんたも沢山良い思いが出来し、なぁ」
男はそんな提案をしてきながら女性の胸から手を放して俺の前へと投げ出すようにつきだした。女性は恐怖の為かその場から動こうとせず体を震わせながらこちらを見ていた。
俺は溜め息と共に男に近付きながら言った。
「はぁ、お前。救いようが無い位のクズだな。悪いけど俺は組むつもりも手を出すつもりも無い」
「へっ!?」
そう言って一瞬だけ脚に仙気を纏わせ、素早く男に間合いを詰めて水平に横薙ぎを食らわせた。男は情けない声と共に後方に飛んでいきそのまま立つことはなかった。
俺は剣を納めて女性と向き合うと、女性は体をビクッと震わせた。いや、次は自分がと思われるのは仕方ないけど·····気持ち的に来るものはくるなぁ。
俺は若干気落ちしながらも女性に出来るだけ優しく声を掛けた。
「大丈夫だから、楽にしていいよ」
そうは言ったものの不安な表情は一向に晴れない。まぁ、そうだよねぇ。悪漢の次は·····ねぇ。
「はぁ、いやもう馴れては来ているけどね」
俺は何度目かわからない溜め息を吐くと女性は恐る恐ると言った感じで声を出した。
「ほ、本当に·····襲って来ない·····んですか?」
「襲わないよ」
「もしかして、女には興味がなくてむしろ····」
「いや、女性が好きだから。特におっぱいが大きい方が」
そう言うと女性は自分の胸を隠すように抱きながら後退った。なんでやねん。男色では無いことと自分の好みを言っただけでこうなるって。それとスルーしそうになったけどこの状況下でその発想は普通出てこないわ。
俺はもういいやと思い上着を脱いで渡した。2枚着で良かったよ。お陰でシャツだけど。女性は俺の行動に一瞬やっぱりと顔をしたが俺の次の行動に疑問を持ち尋ねてきた。
「これは·····?」
「服、破れてるだろ。無いよりはマシだと思うからこれ着ときな。臭くは······無いはず」
「あ、ありがとう····ございます」
そうお礼を言って女性は俺の上着を着て幾分かマシになった。さて一件落着したことだし当初の目的に戻るかな。その前に一応聞いてはおくかな。
「俺はこれから買い物に行くんだが、このまま1人で帰れるか?」
「え、えーと。あはは、腰が抜けちゃって力が入らない」
女性は何とか立とうと頑張ってみるが駄目だったみたいで照れながら言った。俺はどうしようかなっと考えていると女性が申し訳なさそうに言ってきた。
「あのぉ、家まで送ってくれると助かるんですけども·····ここに長く居たくないですし」
まぁ、気持ちがわからない訳でもないからそうしとくかなぁ。コイツらも何時目が覚めるかもわからないし。
「わかった、じゃあ掴まって」
「うん、お願いします」
俺はそう言って女性を背中におぶり、また女性は落ちないようにしっかりと肩に掴まって路地裏から出て女性を家に送るのであった。
途中揺れが強かったのか、はたまた落ちそうだったのかわからないが掴まる手が強くなったり、臭いが気になったのか執拗に臭いを嗅がれた気がした。俺·····臭うのだろうかちょっとショックだ。後あんまり強く引っ付かないで欲しいな。気にはしないようにしてたけど背中に幸せな感触とちょっと危ない感触が交ざってマイサンが元気になりそうだから。あ、ヤバい。意識しちゃダメだ!無に·····無に·····無···理かも···
善行 5/108




